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1 平和的な婚約破棄
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「ジュリーン……本当に申し訳ないんだが、私はやはり順序は守らなければいけないと思うんだ」
「何が申し訳ないんですか? しっかりと要点を言っていただかないと分かりませんよ」
婚約者であるザザンガさんからの呼び出しで、急遽彼の家に来ました。
ザザンガさんがおどおどとした態度をするときは必ず私にとって悪い知らせです。
わざわざこんな夜遅くに呼び出してきたくらいなので、余程のことに間違いないかと……。
「実は……婚約を無かったことにしてほしいんだ。もちろん、僕の過失だから慰謝料はしっかりと払うよ」
私は驚いてしまいました。
まさかそこまでとんでもない発言だとは考えもしなかったからです。
しかも既に婚約破棄の用紙を持っています。私がサインをしたらそれだけで成立してしまうのですよ? お互いに親の同意が不要の年齢ですから。
「婚約破棄……ザザンガさんのお父様もそれで良いと言っていたのでしょうか? しっかりとお話はされていますよね?」
「いや、まだなんだ。これは僕のポリシーのようなものだから……」
ザザンガさんは妙なところでこだわりが強い人ですからね。特に順番や順序に関しては異常なまでに真面目です。
「今回はどのようなこだわりでそうなったのですか?」
「実は、ジュリーンよりも前に婚約を誓った幼馴染がいるんだが、小さいころに国外へ出て行ってしまっていた。だからもう終わったと思っていたんだ。だが昨日、王都へ帰ってきた。だから僕は先に婚約を誓った幼馴染との約束を守りたくて」
婚約者がいたとは初耳です。でもおかしいですね。私たちの婚約はお父様とザザンガさんのお父様が決めた政略結婚なはずです。ザザンガさんのお父様であるジャーニー様からもそのような話など聞いたことがありませんし、何か裏がありそうです。
ザザンガさんは性格に難もありますし、問題ばかりですが、あくまで私の婚約者だと思っています。ですから、しっかりとフォローはしますよ。
「一度、聞かなかったことにするので、一旦ジャーニー様とお話しした方がよろしいかと思います。その上でジャーニー様の許可も出たらもう一度話してくれませんか?」
このまま私が『はいそうしましょう』と言ってしまえば、きっとザザンガさんにとって取り返しのつかないことになってしまうでしょう。これは勘です。とびかく、焦らずにいきましょうね、と思ったのですが……。
「そういうわけにもいかないんだよ。父上は絶対に反対する。でも反対を押し切ってでも、たとえ勘当されても僕は順序をしっかり守りたいんだ」
あぁ……これはもはやどうしようもできないパターンでした。
「分かりました。私はザザンガさんの指示に従います。お父様にもこの後お伝えしますし、慰謝料もしっかりと払っていただくことになるでしょう。その上でも順序をしっかり守りたいのであればそれも仕方がないことです」
こんなにあっさりと受け入れましたが、ザザンガさんは己の信念に対しての順序は絶対に守り通す方なので、何があっても折れません。
これ以上は説得しても無駄だと判断しました。
それに、政略結婚でしたし、愛も特に芽生えませんでした。私としては悔しさもなければ後悔もありません。
ザザンガさんのことも嫌いになったわけではありませんから、今後の活躍と幸せを期待するとしましょうか。
「何度もいうが本当にすまない。ジュリーンも幸せになってほしい」
「はい、ザザンガさんも幼馴染さんとお幸せな家庭を築いてくださいね」
変な話かもしれませんが、私とザザンガさんは最後に握手を交わして、トラブルになることもなく婚約破棄が決まりました。
「では僕は今からすぐにこの用紙を役所に届け出てくるから……」
「分かりました。どちらにしてもザザンガさんがここまで決めたのですから、私のお父様もそこまで文句は言われないかとは思いますので」
とは言っても、この後お父様になんて言えばいいでしょうか……。こちらの方が大変ですね。
「何が申し訳ないんですか? しっかりと要点を言っていただかないと分かりませんよ」
婚約者であるザザンガさんからの呼び出しで、急遽彼の家に来ました。
ザザンガさんがおどおどとした態度をするときは必ず私にとって悪い知らせです。
わざわざこんな夜遅くに呼び出してきたくらいなので、余程のことに間違いないかと……。
「実は……婚約を無かったことにしてほしいんだ。もちろん、僕の過失だから慰謝料はしっかりと払うよ」
私は驚いてしまいました。
まさかそこまでとんでもない発言だとは考えもしなかったからです。
しかも既に婚約破棄の用紙を持っています。私がサインをしたらそれだけで成立してしまうのですよ? お互いに親の同意が不要の年齢ですから。
「婚約破棄……ザザンガさんのお父様もそれで良いと言っていたのでしょうか? しっかりとお話はされていますよね?」
「いや、まだなんだ。これは僕のポリシーのようなものだから……」
ザザンガさんは妙なところでこだわりが強い人ですからね。特に順番や順序に関しては異常なまでに真面目です。
「今回はどのようなこだわりでそうなったのですか?」
「実は、ジュリーンよりも前に婚約を誓った幼馴染がいるんだが、小さいころに国外へ出て行ってしまっていた。だからもう終わったと思っていたんだ。だが昨日、王都へ帰ってきた。だから僕は先に婚約を誓った幼馴染との約束を守りたくて」
婚約者がいたとは初耳です。でもおかしいですね。私たちの婚約はお父様とザザンガさんのお父様が決めた政略結婚なはずです。ザザンガさんのお父様であるジャーニー様からもそのような話など聞いたことがありませんし、何か裏がありそうです。
ザザンガさんは性格に難もありますし、問題ばかりですが、あくまで私の婚約者だと思っています。ですから、しっかりとフォローはしますよ。
「一度、聞かなかったことにするので、一旦ジャーニー様とお話しした方がよろしいかと思います。その上でジャーニー様の許可も出たらもう一度話してくれませんか?」
このまま私が『はいそうしましょう』と言ってしまえば、きっとザザンガさんにとって取り返しのつかないことになってしまうでしょう。これは勘です。とびかく、焦らずにいきましょうね、と思ったのですが……。
「そういうわけにもいかないんだよ。父上は絶対に反対する。でも反対を押し切ってでも、たとえ勘当されても僕は順序をしっかり守りたいんだ」
あぁ……これはもはやどうしようもできないパターンでした。
「分かりました。私はザザンガさんの指示に従います。お父様にもこの後お伝えしますし、慰謝料もしっかりと払っていただくことになるでしょう。その上でも順序をしっかり守りたいのであればそれも仕方がないことです」
こんなにあっさりと受け入れましたが、ザザンガさんは己の信念に対しての順序は絶対に守り通す方なので、何があっても折れません。
これ以上は説得しても無駄だと判断しました。
それに、政略結婚でしたし、愛も特に芽生えませんでした。私としては悔しさもなければ後悔もありません。
ザザンガさんのことも嫌いになったわけではありませんから、今後の活躍と幸せを期待するとしましょうか。
「何度もいうが本当にすまない。ジュリーンも幸せになってほしい」
「はい、ザザンガさんも幼馴染さんとお幸せな家庭を築いてくださいね」
変な話かもしれませんが、私とザザンガさんは最後に握手を交わして、トラブルになることもなく婚約破棄が決まりました。
「では僕は今からすぐにこの用紙を役所に届け出てくるから……」
「分かりました。どちらにしてもザザンガさんがここまで決めたのですから、私のお父様もそこまで文句は言われないかとは思いますので」
とは言っても、この後お父様になんて言えばいいでしょうか……。こちらの方が大変ですね。
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◇ ◇ ◇
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