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カルム様の体調不良
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私は日課として、毎朝ルビーと一緒にエドナ山脈の泉で水浴びをする。
その後でカサラス王国のあちこちにある小さな村へ飛んでいき、水の加護を与えているのだ。
もうそろそろ、国全体に水の加護を与えられてきたのではないだろうか。
午前中に作業は終わってしまうので、午後は特に決まっていない。
いくら泉でルビーの力が莫大に増加したとしても、一日中力を放出していたらさすがに過労になってしまう。
だからこそ毎日午前中だけ活動することにしているのだ。
こうなってくると問題なのは私自身。
午後はどこかで仕事をしようかと思ったのだが、それを相談したらカルム様だけでなくイデアにまで止められた。
エウレス皇国では嫌というほど国務をやらされていたから、午後の時間は何をしたら良いのか毎日悩まされているのである。
今日も午前の作業を終えて王宮に帰ってきたところ……。
「カルム様、ただいま帰りました」
「うむ……。毎日頑張ってくれて感謝している」
カルム様とお会いするのは実は久しぶりだったりする。
最近のカルム様は多忙でなかなか会う機会がなかったのだ。
だからこそ、今王宮の通路で偶然会えたことがとても嬉しかった。
だが……。
「顔色が悪く見えますが、大丈夫ですか?」
口には出さなかったが、以前より更に痩せ細っているように見えるのは気のせいだろうか。
「あぁ……問題ない。リリアの顔を……見たら元気が出た」
その割には、口調が途切れ途切れだし、顔色が明らかに悪い。
「カルム様、一度部屋でお休みになられた方が良いかと思いますが。お仕事で私に出来ることがあればお手伝いします」
「それは……ダメだ。リリアに仕事を押し付けるような行為は。とにかく! 迷惑をかけるわけにはいかないのだ……」
カルム様の態度が普段と違い違和感がある。
迷惑だとは思わないし、ある程度の仕事を与えてくれた方が、私としてはむしろ嬉しいのだけれど……。
「そうですか……昼下がりから夜までは何もすることがなくて、何か私にもできそうな仕事を探そうかと思っていましたが」
「過労はダメだ。リリアは聖女の力を使って国に十分に尽く……している……それに……」
と、言っている矢先、カルム様が床に倒れてしまった。
大事そうに持っていた書類も床に散乱している。
「カルム様!!」
慌てて声をかけるが返事がない。
しかもこんなときに限ってカルム様は一人で動いていたようで、周りには誰もいない。
私ではカルム様を運べるほどの筋力はないので、今頼れるのは肩に乗っかっているルビーだけ。
人が乗れるサイズくらいまで少しだけ大きくなってもらって、医務室へ運んでもらった。
その後でカサラス王国のあちこちにある小さな村へ飛んでいき、水の加護を与えているのだ。
もうそろそろ、国全体に水の加護を与えられてきたのではないだろうか。
午前中に作業は終わってしまうので、午後は特に決まっていない。
いくら泉でルビーの力が莫大に増加したとしても、一日中力を放出していたらさすがに過労になってしまう。
だからこそ毎日午前中だけ活動することにしているのだ。
こうなってくると問題なのは私自身。
午後はどこかで仕事をしようかと思ったのだが、それを相談したらカルム様だけでなくイデアにまで止められた。
エウレス皇国では嫌というほど国務をやらされていたから、午後の時間は何をしたら良いのか毎日悩まされているのである。
今日も午前の作業を終えて王宮に帰ってきたところ……。
「カルム様、ただいま帰りました」
「うむ……。毎日頑張ってくれて感謝している」
カルム様とお会いするのは実は久しぶりだったりする。
最近のカルム様は多忙でなかなか会う機会がなかったのだ。
だからこそ、今王宮の通路で偶然会えたことがとても嬉しかった。
だが……。
「顔色が悪く見えますが、大丈夫ですか?」
口には出さなかったが、以前より更に痩せ細っているように見えるのは気のせいだろうか。
「あぁ……問題ない。リリアの顔を……見たら元気が出た」
その割には、口調が途切れ途切れだし、顔色が明らかに悪い。
「カルム様、一度部屋でお休みになられた方が良いかと思いますが。お仕事で私に出来ることがあればお手伝いします」
「それは……ダメだ。リリアに仕事を押し付けるような行為は。とにかく! 迷惑をかけるわけにはいかないのだ……」
カルム様の態度が普段と違い違和感がある。
迷惑だとは思わないし、ある程度の仕事を与えてくれた方が、私としてはむしろ嬉しいのだけれど……。
「そうですか……昼下がりから夜までは何もすることがなくて、何か私にもできそうな仕事を探そうかと思っていましたが」
「過労はダメだ。リリアは聖女の力を使って国に十分に尽く……している……それに……」
と、言っている矢先、カルム様が床に倒れてしまった。
大事そうに持っていた書類も床に散乱している。
「カルム様!!」
慌てて声をかけるが返事がない。
しかもこんなときに限ってカルム様は一人で動いていたようで、周りには誰もいない。
私ではカルム様を運べるほどの筋力はないので、今頼れるのは肩に乗っかっているルビーだけ。
人が乗れるサイズくらいまで少しだけ大きくなってもらって、医務室へ運んでもらった。
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