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日常生活のできごとその2
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ルビーが降らせた雨は十分に溜まり、ついに王都の雨は一旦止み、雲が消えて太陽が照らしている。
これで王都に限るが水の溢れる都と化したと言えるだろう。
だが、カサラス王国は他にも小さな集落や街が存在している。
今度はそこへ飛び、加護を与える必要があるのだ。
距離があるので毎日一か所ずつ行動をしている。
今日もルビーと共に現地で一仕事を終え、ワクワクしながら王宮へ帰った。
そろそろ完成したはずなので、現場へ行ってみるとカルム様もそこにいたのだ。
「これが温浴施設ですか。広くて良い感じですね」
「うむ。リリアに言われたとおりの設計で建設してもらったのだ」
ここまで忠実に再現してくれる建設士もすごいと思う。
温浴好きにはたまらない要素が満載なのだ。
「ここに水を溜めて水浴びというのをするわけだな。ミズギというのはデインゲル王国に仕入れに向かわせた者達に頼んであるので間も無く帰ってくる頃だろう」
「そういえばエウレス皇国には仕入れに行かなくなったのですね」
「当然だ。リリアのおかげで王都内で自給自足ができるようになったのだから。デインゲル王国とは深い繋がりがある。友好の為にも引き続き取引をしていくつもりだ」
まるで、エウレス皇国とはもう取引をしないような言い方だった。
無理もないか。
最近知ったのだが、カルム様も国王陛下もエウレス皇国のことが大嫌いだと言っていたのだ。
出来れば法外な価格で物資を仕入れる取引を止めたかったらしいが、それでは民衆から死者が出てしまう状況だった為に仕方なく取引を続けていたらしい。
「リリアには本当に感謝している。まさか王都にこのような娯楽を作れる日が来るとは思わなかった」
「い、いえ。私は特に何も……」
急に私の両手を握って必死になって褒めてくれるので、私の顔が真っ赤になってしまった。
「いつもリリアだけが頑張ってもらっていて申し訳ないと思っている。私が力になれそうなことがあれば、なんでも言って欲しいのだ」
「なんでもですか……? 聖女のことでなくともですか?」
「無論! リリアの心のケアができるのならばそれでも良い!」
もしも私のわがままを受け入れていただけるのならば、カルム様に頼みたいことなど決まっている。
「一日だけで良いので、カルム様と一緒に出かけたいです」
イデアに対してわがままを聞いてもらえたので、私には何かの勢いがついている。
今までだったらこんなこと頼めないし、躊躇して言えなかったが、覚悟を決めて言ってしまった。
それに、カルム様と出かけられれば色々とメリットがある。
「ふむ。私も同じことを考えていた」
「え!? そうなのですか!?」
もしかして私とデートを考えてくださったのか。
このように両手で手を握られながら言われたらそうしか思えない。
ドキドキが最高潮になった気がする。
「ルビーの背に乗ればカサラス王国の疎開地も容易に連れて行ってもらえそうだ」
いや、私も同じようなことを考えてはいたけどさ……。
カルム様と遠乗り出来れば、カサラス王国の人や動物が住んでいる場所へ行ける。
そこで聖なる力を解放できるだろうなって思ったんだけど、このタイミングでは正論を言って欲しくはなかったかな。
だが、カルム様はそれほど国のことを考えているのがよくわかる。
私の気持ちはもう暫く表向きにしないで心の中に留めておこう。
「よろしくお願いいたします」
「う、うむ。他にも色々と理由はあるんだがな……」
カルム様は手で頬を掻きながら苦笑いをしていた。
これで王都に限るが水の溢れる都と化したと言えるだろう。
だが、カサラス王国は他にも小さな集落や街が存在している。
今度はそこへ飛び、加護を与える必要があるのだ。
距離があるので毎日一か所ずつ行動をしている。
今日もルビーと共に現地で一仕事を終え、ワクワクしながら王宮へ帰った。
そろそろ完成したはずなので、現場へ行ってみるとカルム様もそこにいたのだ。
「これが温浴施設ですか。広くて良い感じですね」
「うむ。リリアに言われたとおりの設計で建設してもらったのだ」
ここまで忠実に再現してくれる建設士もすごいと思う。
温浴好きにはたまらない要素が満載なのだ。
「ここに水を溜めて水浴びというのをするわけだな。ミズギというのはデインゲル王国に仕入れに向かわせた者達に頼んであるので間も無く帰ってくる頃だろう」
「そういえばエウレス皇国には仕入れに行かなくなったのですね」
「当然だ。リリアのおかげで王都内で自給自足ができるようになったのだから。デインゲル王国とは深い繋がりがある。友好の為にも引き続き取引をしていくつもりだ」
まるで、エウレス皇国とはもう取引をしないような言い方だった。
無理もないか。
最近知ったのだが、カルム様も国王陛下もエウレス皇国のことが大嫌いだと言っていたのだ。
出来れば法外な価格で物資を仕入れる取引を止めたかったらしいが、それでは民衆から死者が出てしまう状況だった為に仕方なく取引を続けていたらしい。
「リリアには本当に感謝している。まさか王都にこのような娯楽を作れる日が来るとは思わなかった」
「い、いえ。私は特に何も……」
急に私の両手を握って必死になって褒めてくれるので、私の顔が真っ赤になってしまった。
「いつもリリアだけが頑張ってもらっていて申し訳ないと思っている。私が力になれそうなことがあれば、なんでも言って欲しいのだ」
「なんでもですか……? 聖女のことでなくともですか?」
「無論! リリアの心のケアができるのならばそれでも良い!」
もしも私のわがままを受け入れていただけるのならば、カルム様に頼みたいことなど決まっている。
「一日だけで良いので、カルム様と一緒に出かけたいです」
イデアに対してわがままを聞いてもらえたので、私には何かの勢いがついている。
今までだったらこんなこと頼めないし、躊躇して言えなかったが、覚悟を決めて言ってしまった。
それに、カルム様と出かけられれば色々とメリットがある。
「ふむ。私も同じことを考えていた」
「え!? そうなのですか!?」
もしかして私とデートを考えてくださったのか。
このように両手で手を握られながら言われたらそうしか思えない。
ドキドキが最高潮になった気がする。
「ルビーの背に乗ればカサラス王国の疎開地も容易に連れて行ってもらえそうだ」
いや、私も同じようなことを考えてはいたけどさ……。
カルム様と遠乗り出来れば、カサラス王国の人や動物が住んでいる場所へ行ける。
そこで聖なる力を解放できるだろうなって思ったんだけど、このタイミングでは正論を言って欲しくはなかったかな。
だが、カルム様はそれほど国のことを考えているのがよくわかる。
私の気持ちはもう暫く表向きにしないで心の中に留めておこう。
「よろしくお願いいたします」
「う、うむ。他にも色々と理由はあるんだがな……」
カルム様は手で頬を掻きながら苦笑いをしていた。
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