12 / 19
12 【ザグレーム視点】犯罪がエスカレートしていく
しおりを挟む
人混みをなるべく避け、廃墟された建物の中へ入る。
「ここには仕掛けがありましてね、ここをこうやって開けると……」
シャーラが瓦礫をヒョイっと持ち上げることに驚いた。だが、この瓦礫は非常に軽いダミーのようなものだった。
瓦礫の中から出てきたのは地下へ続くハシゴだ。
「この奥に行けば知り合いのアジトですが、行きますか?」
「あぁ……。もう後戻りはできないし」
シャーラと共に地下へと降りていく。
降りた先は一本の狭い通路で更に進んでいった。
「確か……この扉の中です」
シャーラがガサゴソと扉の横にある妙な仕掛けを弄ったあとに扉を開けた。暗証番号のようなものか。
「あら! 誰かと思ったらシャーラじゃないの!」
「元気だったー!?」
「そっちの男性は彼氏っすか?」
なんということだ……。
アジトというから怖そうな男がいっぱいかと思っていた。
だが、三人とも俺と同い年くらいの二十代くらいの女性だった。
しかも全員可愛いぞ。
「私の結婚する相手ですよぉ。ですが、私達指名手配されて困ってたのでこちらに逃げてきましたの。私の知る限りここが王都でも最強の裏組織だと存じているので」
「最強の? ま、ウチら元冒険者だし、パクった物だけで生活くらいはできて当然だけど」
「で、二人とも入会希望っすか?」
「そっちの男も捨て駒くらいには使えるねー」
裏組織三女が俺の方をジロリと睨んできた。
さっきまでは女だと浮かれていたが、そんな余裕はない。
今にも殺されてしまうのではないかという恐ろしい殺気と眼力を受けて、全身が震えてしまっているのだ。
「もうっ! 私の愛するザグレームに酷いこと言わないで欲しいですわ! 今ピッタリ四十二万円しか持っていないんですけど、これで私達を国外まで連れて行ってくれません?」
「ほう、ピッタリ三分割できる金額っすか!」
「文句ないわねー」
「なるほど、アタイらに依頼で来たってわけか」
最後にリーダーらしき女がにこりと笑う。
「ちょうど良かった。アタイらもね、王都に一泡吹かせてこの国とオサラバしようと思ってたのよ。その金は役立つわね」
「交渉成立でいいのでしょうか?」
三女は揃ってコクリと頷く。
一時はどうなるかとビビってしまったが、さすがシャーラだ。今持つべきものは悪の仲間である。
「でも一体どうやって俺たちを国外へ連れて行ってくれるのだ? 既に馬車は使えず、王都の出入口も使えないんだぞ……」
「ふ……アタイらがどうして地下で密かに生きてきたか知らないからそんなことが言えるのさ。確かに王都の出入口は現状一か所しかない。それ以外は非常に高い壁で囲まれているから外へは出れない状態だ」
外からの危険生物が王都に侵入しないように、先祖の人間が建てた壁だと聞いたことがある。
この壁は強力で、最強生物である魔獣でも壊せないらしい。
「だが! アタイらが出入口を作ってそこから脱出するのさ」
「どうやって!? 壁は地下深くまで埋め込まれてて掘っても出られないらしいんだぞ。まさかあの高い壁を飛び越えるとでも!?」
「いくら元冒険者でも、流石にそんな跳躍力はないさ。けど、今作っている兵器を使えば壊せる。ついでに王都の半分以上は木っ端微塵になるのさ」
スケールがあまりに大きいことを言うものだから、再び震え始めてしまった。
シャーラは驚くどころかニコニコしている。
「一体……何を?」
「時限爆弾よ」
俺って、シャーラを愛人にして、それがバレて離婚騒動になったんだよな……。
慰謝料を払うのが嫌だから、メアリーナの金を奪って国外へ逃げようとしただけなんだぞ。
最初は不倫だけしか悪いことはしていなかったんだ……。
だが、逃げるためとはいえ俺は今、王都を滅ぼす組織と一緒に手を組んでしまったんだ!?
「ここには仕掛けがありましてね、ここをこうやって開けると……」
シャーラが瓦礫をヒョイっと持ち上げることに驚いた。だが、この瓦礫は非常に軽いダミーのようなものだった。
瓦礫の中から出てきたのは地下へ続くハシゴだ。
「この奥に行けば知り合いのアジトですが、行きますか?」
「あぁ……。もう後戻りはできないし」
シャーラと共に地下へと降りていく。
降りた先は一本の狭い通路で更に進んでいった。
「確か……この扉の中です」
シャーラがガサゴソと扉の横にある妙な仕掛けを弄ったあとに扉を開けた。暗証番号のようなものか。
「あら! 誰かと思ったらシャーラじゃないの!」
「元気だったー!?」
「そっちの男性は彼氏っすか?」
なんということだ……。
アジトというから怖そうな男がいっぱいかと思っていた。
だが、三人とも俺と同い年くらいの二十代くらいの女性だった。
しかも全員可愛いぞ。
「私の結婚する相手ですよぉ。ですが、私達指名手配されて困ってたのでこちらに逃げてきましたの。私の知る限りここが王都でも最強の裏組織だと存じているので」
「最強の? ま、ウチら元冒険者だし、パクった物だけで生活くらいはできて当然だけど」
「で、二人とも入会希望っすか?」
「そっちの男も捨て駒くらいには使えるねー」
裏組織三女が俺の方をジロリと睨んできた。
さっきまでは女だと浮かれていたが、そんな余裕はない。
今にも殺されてしまうのではないかという恐ろしい殺気と眼力を受けて、全身が震えてしまっているのだ。
「もうっ! 私の愛するザグレームに酷いこと言わないで欲しいですわ! 今ピッタリ四十二万円しか持っていないんですけど、これで私達を国外まで連れて行ってくれません?」
「ほう、ピッタリ三分割できる金額っすか!」
「文句ないわねー」
「なるほど、アタイらに依頼で来たってわけか」
最後にリーダーらしき女がにこりと笑う。
「ちょうど良かった。アタイらもね、王都に一泡吹かせてこの国とオサラバしようと思ってたのよ。その金は役立つわね」
「交渉成立でいいのでしょうか?」
三女は揃ってコクリと頷く。
一時はどうなるかとビビってしまったが、さすがシャーラだ。今持つべきものは悪の仲間である。
「でも一体どうやって俺たちを国外へ連れて行ってくれるのだ? 既に馬車は使えず、王都の出入口も使えないんだぞ……」
「ふ……アタイらがどうして地下で密かに生きてきたか知らないからそんなことが言えるのさ。確かに王都の出入口は現状一か所しかない。それ以外は非常に高い壁で囲まれているから外へは出れない状態だ」
外からの危険生物が王都に侵入しないように、先祖の人間が建てた壁だと聞いたことがある。
この壁は強力で、最強生物である魔獣でも壊せないらしい。
「だが! アタイらが出入口を作ってそこから脱出するのさ」
「どうやって!? 壁は地下深くまで埋め込まれてて掘っても出られないらしいんだぞ。まさかあの高い壁を飛び越えるとでも!?」
「いくら元冒険者でも、流石にそんな跳躍力はないさ。けど、今作っている兵器を使えば壊せる。ついでに王都の半分以上は木っ端微塵になるのさ」
スケールがあまりに大きいことを言うものだから、再び震え始めてしまった。
シャーラは驚くどころかニコニコしている。
「一体……何を?」
「時限爆弾よ」
俺って、シャーラを愛人にして、それがバレて離婚騒動になったんだよな……。
慰謝料を払うのが嫌だから、メアリーナの金を奪って国外へ逃げようとしただけなんだぞ。
最初は不倫だけしか悪いことはしていなかったんだ……。
だが、逃げるためとはいえ俺は今、王都を滅ぼす組織と一緒に手を組んでしまったんだ!?
1
お気に入りに追加
1,040
あなたにおすすめの小説
【完結】妹が旦那様とキスしていたのを見たのが十日前
地鶏
恋愛
私、アリシア・ブルームは順風満帆な人生を送っていた。
あの日、私の婚約者であるライア様と私の妹が濃厚なキスを交わすあの場面をみるまでは……。
私の気持ちを裏切り、弄んだ二人を、私は許さない。
アリシア・ブルームの復讐が始まる。
今夜、元婚約者の結婚式をぶち壊しに行きます
結城芙由奈
恋愛
【今夜は元婚約者と友人のめでたい結婚式なので、盛大に祝ってあげましょう】
交際期間5年を経て、半年後にゴールインするはずだった私と彼。それなのに遠距離恋愛になった途端彼は私の友人と浮気をし、友人は妊娠。結果捨てられた私の元へ、図々しくも結婚式の招待状が届けられた。面白い…そんなに私に祝ってもらいたいのなら、盛大に祝ってやろうじゃないの。そして私は結婚式場へと向かった。
※他サイトでも投稿中
※苦手な短編ですがお読みいただけると幸いです
婚約破棄をされて魔導図書館の運営からも外されたのに今さら私が協力すると思っているんですか?絶対に協力なんてしませんよ!
しまうま弁当
恋愛
ユーゲルス公爵家の跡取りベルタスとの婚約していたメルティだったが、婚約者のベルタスから突然の婚約破棄を突き付けられたのだった。しかもベルタスと一緒に現れた同級生のミーシャに正妻の座に加えて魔導司書の座まで奪われてしまう。罵声を浴びせられ罪まで擦り付けられたメルティは婚約破棄を受け入れ公爵家を去る事にしたのでした。メルティがいなくなって大喜びしていたベルタスとミーシャであったが魔導図書館の設立をしなければならなくなり、それに伴いどんどん歯車が狂っていく。ベルタスとミーシャはメルティがいなくなったツケをドンドン支払わなければならなくなるのでした。
完結 喪失の花嫁 見知らぬ家族に囲まれて
音爽(ネソウ)
恋愛
ある日、目を覚ますと見知らぬ部屋にいて見覚えがない家族がいた。彼らは「貴女は記憶を失った」と言う。
しかし、本人はしっかり己の事を把握していたし本当の家族のことも覚えていた。
一体どういうことかと彼女は震える……
伯爵令嬢は身の危険を感じるので家を出ます 〜伯爵家は乗っ取られそうですが、本当に私がいなくて大丈夫ですか?〜
超高校級の小説家
恋愛
マトリカリア伯爵家は代々アドニス王国軍の衛生兵団長を務める治癒魔法の名門です。
神々に祝福されているマトリカリア家では長女として胸元に十字の聖痕を持った娘が必ず生まれます。
その娘が使う強力な治癒魔法の力で衛生兵をまとめ上げ王国に重用されてきました。
そのため、家督はその長女が代々受け継ぎ、魔力容量の多い男性を婿として迎えています。
しかし、今代のマトリカリア伯爵令嬢フリージアは聖痕を持って生まれたにも関わらず治癒魔法を使えません。
それでも両親に愛されて幸せに暮らしていました。
衛生兵団長を務めていた母カトレアが急に亡くなるまでは。
フリージアの父マトリカリア伯爵は、治癒魔法に関してマトリカリア伯爵家に次ぐ名門のハイドランジア侯爵家の未亡人アザレアを後妻として迎えました。
アザレアには女の連れ子がいました。連れ子のガーベラは聖痕こそありませんが治癒魔法の素質があり、治癒魔法を使えないフリージアは次第に肩身の狭い思いをすることになりました。
アザレアもガーベラも治癒魔法を使えないフリージアを見下して、まるで使用人のように扱います。
そしてガーベラが王国軍の衛生兵団入団試験に合格し王宮に勤め始めたのをきっかけに、父のマトリカリア伯爵すらフリージアを疎ましく思い始め、アザレアに言われるがままガーベラに家督を継がせたいと考えるようになります。
治癒魔法こそ使えませんが、正式には未だにマトリカリア家の家督はフリージアにあるため、身の危険を感じたフリージアは家を出ることを決意しました。
しかし、本人すら知らないだけでフリージアにはマトリカリアの当主に相応しい力が眠っているのです。
※最初は胸糞悪いと思いますが、ざまぁは早めに終わらせるのでお付き合いいただけると幸いです。
飽きて捨てられた私でも未来の侯爵様には愛されているらしい。
希猫 ゆうみ
恋愛
王立学園の卒業を控えた伯爵令嬢エレノアには婚約者がいる。
同学年で幼馴染の伯爵令息ジュリアンだ。
二人はベストカップル賞を受賞するほど完璧で、卒業後すぐ結婚する予定だった。
しかしジュリアンは新入生の男爵令嬢ティナに心を奪われてエレノアを捨てた。
「もう飽きたよ。お前との婚約は破棄する」
失意の底に沈むエレノアの視界には、校内で仲睦まじく過ごすジュリアンとティナの姿が。
「ねえ、ジュリアン。あの人またこっち見てるわ」
ティナはエレノアを敵視し、陰で嘲笑うようになっていた。
そんな時、エレノアを癒してくれたのはミステリアスなマクダウェル侯爵令息ルークだった。
エレノアの深く傷つき鎖された心は次第にルークに傾いていく。
しかしティナはそれさえ気に食わないようで……
やがてティナの本性に気づいたジュリアンはエレノアに復縁を申し込んでくる。
「君はエレノアに相応しくないだろう」
「黙れ、ルーク。エレノアは俺の女だ」
エレノアは決断する……!
妹に一度殺された。明日結婚するはずの死に戻り公爵令嬢は、もう二度と死にたくない。
たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】
恋愛
婚約者アルフレッドとの結婚を明日に控えた、公爵令嬢のバレッタ。
しかしその夜、無惨にも殺害されてしまう。
それを指示したのは、妹であるエライザであった。
姉が幸せになることを憎んだのだ。
容姿が整っていることから皆や父に気に入られてきた妹と、
顔が醜いことから蔑まされてきた自分。
やっとそのしがらみから逃れられる、そう思った矢先の突然の死だった。
しかし、バレッタは甦る。死に戻りにより、殺される数時間前へと時間を遡ったのだ。
幸せな結婚式を迎えるため、己のこれまでを精算するため、バレッタは妹、協力者である父を捕まえ処罰するべく動き出す。
もう二度と死なない。
そう、心に決めて。
ぽっちゃりな私は妹に婚約者を取られましたが、嫁ぎ先での溺愛がとまりません~冷酷な伯爵様とは誰のこと?~
柊木 ひなき
恋愛
「メリーナ、お前との婚約を破棄する!」夜会の最中に婚約者の第一王子から婚約破棄を告げられ、妹からは馬鹿にされ、貴族達の笑い者になった。
その時、思い出したのだ。(私の前世、美容部員だった!)この体型、ドレス、確かにやばい!
この世界の美の基準は、スリム体型が前提。まずはダイエットを……え、もう次の結婚? お相手は、超絶美形の伯爵様!? からの溺愛!? なんで!?
※シリアス展開もわりとあります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる