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10 ハーベスト視点
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一体どういうことなのだ。
ジュリエルが姿を消して帰ってきたかと思えば、まさかあのライト様が一緒に来るなんて……。
あの男がシャロンの病を治してくれるかもしれないと聞いた時は、父様と一緒に喜んだ。
だが、シャロンの病は治らなかった。
そんな男がこの国で優秀な回復師というのだから、おかしな話だ。
しかも、なぜ私の婚約者と一緒の部屋で二人きりでいるのだ。
ちょっと倒れた程度なのに一体何日看病していれば気が済むのだ。
私は嫉妬深い。このようなことがあって許されるものか。
せめて部屋だけでも別々にできないものだろうか。
「あ! そうか!」
簡単なことだった。
私もジュリエルの部屋で一緒に過ごせばいいだけのことだった。
父様からは結婚するまでは別々の部屋と命じられてきたが、この際仕方ないだろう。
すぐに父様の元へ向かった。
♢
「父様、ジュリエルとライト様が一緒の部屋というのは危険すぎます。どうか私も一緒の部屋で過ごすことをお許しください」
父様の表情は曇っている。
「ハーベストよ……聞きたいのだが、ジュリエルのことを好きなのか?」
「もちろんです。私の許婚が優秀な知能を持ち、国からも慕われていますし、私に対しても優しいのですよ」
ジュリエルは私の話をしっかりと聞いてくれるし、私のわがままも聞いてくれる優しい人だ。
このまま結婚して幸せな家庭になるのは間違いないだろう。
「……そうか、ならば何もいうことはない。お前の好きにするがいい。だが、結婚前に共に同じ部屋で過ごすことは許せぬ」
「そうですか……」
「なぁに、少しの辛抱だ。私もだがな……それに、なぜかあの男が来てからはシャロンの病も落ち着いているだろう? あの男とシャロンをくっつけたら病気が治るかもしれんな」
「またまたご冗談を……」
悔しいが一緒にはいられない。でも父様の言うとおり、シャロンが毎日のように訴えていた病気も落ち着いた。
それだけはとても喜ばしいことなので、本当にライト様のおかげかもしれない。
それでもやはり気分が悪い。
何度かジュリエルに話しかけようとしたが、必ずライト様がくっついてきている。
こんなことならば、もっとジュリエルとの時間を作っておくべきだった……。
だが、シャロンの病気が気になって仕方がないのだ。
一体私はどうしたらいいのだろうか。
ジュリエルが姿を消して帰ってきたかと思えば、まさかあのライト様が一緒に来るなんて……。
あの男がシャロンの病を治してくれるかもしれないと聞いた時は、父様と一緒に喜んだ。
だが、シャロンの病は治らなかった。
そんな男がこの国で優秀な回復師というのだから、おかしな話だ。
しかも、なぜ私の婚約者と一緒の部屋で二人きりでいるのだ。
ちょっと倒れた程度なのに一体何日看病していれば気が済むのだ。
私は嫉妬深い。このようなことがあって許されるものか。
せめて部屋だけでも別々にできないものだろうか。
「あ! そうか!」
簡単なことだった。
私もジュリエルの部屋で一緒に過ごせばいいだけのことだった。
父様からは結婚するまでは別々の部屋と命じられてきたが、この際仕方ないだろう。
すぐに父様の元へ向かった。
♢
「父様、ジュリエルとライト様が一緒の部屋というのは危険すぎます。どうか私も一緒の部屋で過ごすことをお許しください」
父様の表情は曇っている。
「ハーベストよ……聞きたいのだが、ジュリエルのことを好きなのか?」
「もちろんです。私の許婚が優秀な知能を持ち、国からも慕われていますし、私に対しても優しいのですよ」
ジュリエルは私の話をしっかりと聞いてくれるし、私のわがままも聞いてくれる優しい人だ。
このまま結婚して幸せな家庭になるのは間違いないだろう。
「……そうか、ならば何もいうことはない。お前の好きにするがいい。だが、結婚前に共に同じ部屋で過ごすことは許せぬ」
「そうですか……」
「なぁに、少しの辛抱だ。私もだがな……それに、なぜかあの男が来てからはシャロンの病も落ち着いているだろう? あの男とシャロンをくっつけたら病気が治るかもしれんな」
「またまたご冗談を……」
悔しいが一緒にはいられない。でも父様の言うとおり、シャロンが毎日のように訴えていた病気も落ち着いた。
それだけはとても喜ばしいことなので、本当にライト様のおかげかもしれない。
それでもやはり気分が悪い。
何度かジュリエルに話しかけようとしたが、必ずライト様がくっついてきている。
こんなことならば、もっとジュリエルとの時間を作っておくべきだった……。
だが、シャロンの病気が気になって仕方がないのだ。
一体私はどうしたらいいのだろうか。
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