14 / 15
14【視点】アルファード家、なくなる
しおりを挟む「ちょっとー! ちょっとちょっとちょっとーーーー!! 家がなくなるかもしれないってどういうことですか!?」
マーヤが慌てふためき、両親のニッシモとミーンに訴えかけた。
落胆した顔をしながら、ニッシモは答える。
「……すまん、急にうちの店の取引先から、もう二度と取引しないと断ってきた。もう我が家はおしまいだ……」
「大袈裟でしょう!? 他のところでやっていけばいいじゃないのー!」
状況を軽く見ているミーンは、希望を捨てていなかった。
だが、ニッシモはどうしようもできないことをしっかりと伝える。
絶望に満ちた表情をしながら。
「無理だな……。取引相手がダーレーアビアとバイアリタークの両国共に一番の大商人だったんだ。そんな相手が怒って取引をしないと宣言してきたんだぞ。こんなことになってしまっては、うちの店と今後取引したいと思うようなお人好しな者はいないだろう……」
「あ……あなた、それでもなんとかならないの?」
「大商人に嫌われたくはないだろう。あのお方が嫌った相手と取引を続けていれば、今度は自分の店まで取引をしないと言われかねない。そんなリスクを犯してまでうちの店と関わろうと思う奴がいると思うか?」
ついにミーンからも笑顔が消える。
「うぅ……そんな……そんなことになったら、私とダルム様の婚約も……」
「いや、それは問題ないだろう。ダルム男爵はお前の魅力に惚れていたのだろう? マーヤはダルム男爵と幸せになりなさい」
「はいっ!」
マーヤだけはまだ諦めていなかった。
だが、婚約相手のダルムがアルファード家の金が目当てだということをマーヤは知らなかった。
♢
「なんだと!? 店が潰れて家もなくなる? どういうことだ!?」
突然マーヤからそう告げられ、冷静さを失っていた。
「大商人から二度と取引はしないって言われてしまったそうで……。いくら貴族のはしくれとは言っても、このことが噂になってしまったら存続も危うくなるんじゃないかと……」
「なんということだ……これではマーヤとの婚約もなかったことにするしか」
冷静さを失っていたため、うっかりと本音を漏らしてしまったのだ。
マーヤは驚いた表情をしながらも、なんとか婚約を成立させねばと必死だった。
「なんですって!? 私はダルム様と幸せな家庭を望んでいますよ!」
「俺だって被害者だ。この際はっきり言うが、アルファード家の金と商売に期待していたのだ。それがなくなってしまえば、いくらお前に魅力があっても結婚する価値はない。それでも一緒にいたいのなら体相手にでもなるか?」
「ひ……ひどい……」
マーヤはどうすることもできなかった。
だが、それでも良いから居場所を確保したかったのである。
「それでも良いです……。私を捨てないて……」
「ほう……そこまで考えているのか。婚約自体はすでに貴族たちには知られている状態だ。婚約破棄をした上でもなお、俺のそばにいたいと?」
「え……ええ、そうです」
「ならばそれもよかろう」
なんとか住む場所を確保したいという思いだけでダルムにしがみつく。
ダルムは渋々了承してしまったのである。
だが、ダルムの判断が大きな間違いだったことをまだ知らなかった。
その数日後、アルファード家の住処はなくなり、ニッシモとミーンの野宿生活が始まる。
マーヤもダルムの元でなんとか居候を試みたが、すぐに身体を飽きられ、捨てられてしまったのだ。
マーヤも野宿生活が始まった。
マーヤが慌てふためき、両親のニッシモとミーンに訴えかけた。
落胆した顔をしながら、ニッシモは答える。
「……すまん、急にうちの店の取引先から、もう二度と取引しないと断ってきた。もう我が家はおしまいだ……」
「大袈裟でしょう!? 他のところでやっていけばいいじゃないのー!」
状況を軽く見ているミーンは、希望を捨てていなかった。
だが、ニッシモはどうしようもできないことをしっかりと伝える。
絶望に満ちた表情をしながら。
「無理だな……。取引相手がダーレーアビアとバイアリタークの両国共に一番の大商人だったんだ。そんな相手が怒って取引をしないと宣言してきたんだぞ。こんなことになってしまっては、うちの店と今後取引したいと思うようなお人好しな者はいないだろう……」
「あ……あなた、それでもなんとかならないの?」
「大商人に嫌われたくはないだろう。あのお方が嫌った相手と取引を続けていれば、今度は自分の店まで取引をしないと言われかねない。そんなリスクを犯してまでうちの店と関わろうと思う奴がいると思うか?」
ついにミーンからも笑顔が消える。
「うぅ……そんな……そんなことになったら、私とダルム様の婚約も……」
「いや、それは問題ないだろう。ダルム男爵はお前の魅力に惚れていたのだろう? マーヤはダルム男爵と幸せになりなさい」
「はいっ!」
マーヤだけはまだ諦めていなかった。
だが、婚約相手のダルムがアルファード家の金が目当てだということをマーヤは知らなかった。
♢
「なんだと!? 店が潰れて家もなくなる? どういうことだ!?」
突然マーヤからそう告げられ、冷静さを失っていた。
「大商人から二度と取引はしないって言われてしまったそうで……。いくら貴族のはしくれとは言っても、このことが噂になってしまったら存続も危うくなるんじゃないかと……」
「なんということだ……これではマーヤとの婚約もなかったことにするしか」
冷静さを失っていたため、うっかりと本音を漏らしてしまったのだ。
マーヤは驚いた表情をしながらも、なんとか婚約を成立させねばと必死だった。
「なんですって!? 私はダルム様と幸せな家庭を望んでいますよ!」
「俺だって被害者だ。この際はっきり言うが、アルファード家の金と商売に期待していたのだ。それがなくなってしまえば、いくらお前に魅力があっても結婚する価値はない。それでも一緒にいたいのなら体相手にでもなるか?」
「ひ……ひどい……」
マーヤはどうすることもできなかった。
だが、それでも良いから居場所を確保したかったのである。
「それでも良いです……。私を捨てないて……」
「ほう……そこまで考えているのか。婚約自体はすでに貴族たちには知られている状態だ。婚約破棄をした上でもなお、俺のそばにいたいと?」
「え……ええ、そうです」
「ならばそれもよかろう」
なんとか住む場所を確保したいという思いだけでダルムにしがみつく。
ダルムは渋々了承してしまったのである。
だが、ダルムの判断が大きな間違いだったことをまだ知らなかった。
その数日後、アルファード家の住処はなくなり、ニッシモとミーンの野宿生活が始まる。
マーヤもダルムの元でなんとか居候を試みたが、すぐに身体を飽きられ、捨てられてしまったのだ。
マーヤも野宿生活が始まった。
13
お気に入りに追加
1,233
あなたにおすすめの小説
どうして別れるのかと聞かれても。お気の毒な旦那さま、まさかとは思いますが、あなたのようなクズが女性に愛されると信じていらっしゃるのですか?
石河 翠
恋愛
主人公のモニカは、既婚者にばかり声をかけるはしたない女性として有名だ。愛人稼業をしているだとか、天然の毒婦だとか、聞こえてくるのは下品な噂ばかり。社交界での評判も地に落ちている。
ある日モニカは、溺愛のあまり茶会や夜会に妻を一切参加させないことで有名な愛妻家の男性に声をかける。おしどり夫婦の愛の巣に押しかけたモニカは、そこで虐げられている女性を発見する。
彼女が愛妻家として評判の男性の奥方だと気がついたモニカは、彼女を毎日お茶に誘うようになり……。
八方塞がりな状況で抵抗する力を失っていた孤独なヒロインと、彼女に手を差し伸べ広い世界に連れ出したしたたかな年下ヒーローのお話。
ハッピーエンドです。
この作品は他サイトにも投稿しております。
扉絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID24694748)をお借りしています。
【完結】妹が私から何でも奪おうとするので、敢えて傲慢な悪徳王子と婚約してみた〜お姉様の選んだ人が欲しい?分かりました、後悔しても遅いですよ
冬月光輝
恋愛
ファウスト侯爵家の長女であるイリアには、姉のものを何でも欲しがり、奪っていく妹のローザがいた。
それでも両親は妹のローザの方を可愛がり、イリアには「姉なのだから我慢しなさい」と反論を許さない。
妹の欲しがりは増長して、遂にはイリアの婚約者を奪おうとした上で破談に追いやってしまう。
「だって、お姉様の選んだ人なら間違いないでしょう? 譲ってくれても良いじゃないですか」
大事な縁談が壊れたにも関わらず、悪びれない妹に頭を抱えていた頃、傲慢でモラハラ気質が原因で何人もの婚約者を精神的に追い詰めて破談に導いたという、この国の第二王子ダミアンがイリアに見惚れて求婚をする。
「ローザが私のモノを何でも欲しがるのならいっそのこと――」
イリアは、あることを思いついてダミアンと婚約することを決意した。
「毒を以て毒を制す」――この物語はそんなお話。
見た目普通の侯爵令嬢のよくある婚約破棄のお話ですわ。
しゃち子
恋愛
侯爵令嬢コールディ・ノースティンはなんでも欲しがる妹にうんざりしていた。ドレスやリボンはわかるけど、今度は婚約者を欲しいって、何それ!
平凡な侯爵令嬢の努力はみのるのか?見た目普通な令嬢の婚約破棄から始まる物語。
完結 裏切りは復讐劇の始まり
音爽(ネソウ)
恋愛
良くある政略結婚、不本意なのはお互い様。
しかし、夫はそうではなく妻に対して憎悪の気持ちを抱いていた。
「お前さえいなければ!俺はもっと幸せになれるのだ」
真実の愛だけに生きると宣言した彼は……
四季
恋愛
「国護りの王女だろうが何だろうが関係ない! 婚約は破棄する! 俺は真実の愛だけに生きる!」
私の婚約者であり隣国の第一王子でもある彼は、国のためにと嫁ごうとした私を拒み、国民の目の前で婚約破棄を告げた。
婚約者の私より彼女のことが好きなのですね? なら、別れて差し上げますよ
四季
恋愛
それなりに資産のある家に生まれた一人娘リーネリア・フリューゲルには婚約者がいる。
その婚約者というのが、母親の友人の息子であるダイス・カイン。
容姿端麗な彼だが、認識が少々甘いところがあって、問題が多く……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる