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13 崩壊の始まり

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「まさかロイスがわざわざ服を買いにくるとは思わなかったね」
「親父……! そういうのは黙ってくれ。後で言われると恥ずかしいだろ!」
「はっはっは! ジューリーも満更ではないようだし、めでたいめでたい!」

夕食中、会話は先ほどのデートの話を散々振ってきました。
デートの出来事が夢のようで、今もなおドキドキしたままです。
私は何も言えず、顔が赤くなっているのを隠すためにゆっくりとスープを飲んで誤魔化していました。

「めだたいついでにジューリーにとってはホッとする話を用意したんだが、聞くかね?」
「は、はい。お願いします」
「君が育った家の当主が運営している店が、俺の取引先の一つであることは存じているね?」
「はい。最初は驚きましたが……」

私が王都の外で死を待っているときに拾ってくださったのが、目の前にいるザーレムさんでした。
その人がまさか義父様として関わっていたニッシモと繋がりがあると知って驚いたものです。

「ジューリーのことは、ハイマーネ家の中で高評価で尚且つ貴重な存在なんだよね。だから、ニッシモ=アルファードとは二度と取引しないと宣言したよ」
「え?」

少なからず、ザーレムさんがどういう方かは分かってきているつもりです。
大商人のザーレムさんとの取引を中止されるということは、どれほど危険なことか……。

「当たり前なんだね。だって、俺があのときジューリーを発見できなかったら、間違いなく君は野田れ死んでいたんだよ? 人殺しを促すようなところと取引したくないんでね」
「親父が取引をしないって宣言されたことを同業者が知ったら、どこからも相手にされなくなるんじゃね?」

商売は信用が第一です。
一番偉い立ち位置にいるザーレムさんが「二度と取引しない」などと宣言されればその噂は広まり、やがては誰も取引したいとは思わなくなるでしょう。
もしくは、とんでもなく高値での取引を要求してくるかもしれませんが……、そんなことでは商売として成り立たなくなりますね。

「そんなことは知らん。勝手にしてほしいんだね。店が潰れようとも俺にはもう関係ない。金目的で結婚しようとしていたダルムって男もこれでおしまいだろうね」
「久々に親父がキレているところを見た気がする。親父を敵に回してしまうとはな……。知らなかったとはいえ、関係者はもうおしまいだろう」

アルファード家にも、ダルムに対しても情は全くありません。
あの方々に強いて言うならば、巡り合わせでザーレムさんに拾っていただき、ロイス様と恋仲になれたことに感謝するべきでしょうか。

私は今とても幸せになっていますので、どうぞあちらの方々も頑張ってくださいね。

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