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12 デート
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ロイス様とお出かけする日になりました。
「天気がも良いし絶好のデート日和になったな!」
「そうですねぇ」
ロイス様はデートと認識してくださっているようです。
デートとは、お付き合いしている人たちが……いえ、どちらでもいいですね。
私としてはデートと言われてとても嬉しい気持ちになりましたので、これからはデートと言うことにしましょうか。
「どこ行きたいんだ? ……って聞いてもまだこの街のことはわかんねーよな」
「ロイス様の行きたいところについていこうかと思います」
「お前はなぁ……! 俺の行きたいところじゃなくて、ジューリーが満足できる場所に連れて行きたいんだぞ?」
「そうですね。ならばロイス様の行きたい場所に連れて行ってくだされば満足できるかと。ロイス様の好きなことを知れるわけですから」
「そ……そうか? ならば構わんが……」
ロイス様は顔を赤らめながら、手で頬を掻いています。
煽てたわけではありませんよ?
私はまだ、ロイス様のことを深くは知りませんからね。
彼の好きなところに行けば、趣味や好物をより知れるので、私もきっと楽しめるでしょう。
「よし、馬車での移動はやめて歩いていくが構わないか?」
「もちろんです」
どうやら近場で何かをするようですね。
どこへ行くのか楽しみです。
「そ……外は危険もあるからな、ジューリー。手を貸せ」
「え? あ、はい!」
なんということでしょうか……。
私の右手がロイス様の手によって優しく包まれました。
心臓の鼓動が早くなっているのを感じます。
このようなサプライズは想定外でした。
思考回路がショートしてしまいそうな状態のまま、屋敷を出て外を歩きます。
♢
暑くもなく寒くもない人間の身体に適した気温で、湿気も程よく太陽の日差しが心地いいです。
歩きはじめてから三十分ほど経過していますが、散歩には最適な気候ですね。
ずっと私の手はロイス様に預けたままで、緊張とドキドキが止みません。
おや、ここは先ほど通った道ですね。
道に迷ってしまったのでしょうか。
私は気にせずにロイス様と会話をしながら歩き続けました。
さて……およそ一時間ほど歩きましたが、なんとハイマーネ家へと戻ってきてしまいました。
「ロイス様? 何か忘れ物でもされたのでしょうか?」
「いや? そんなことはないが」
「……?」
一体どういうことでしょうか。
私としては、ロイス様と二人きりで外を歩けて心地よい一時間でしたが。
「これが俺のやりたいことだ」
「……はい?」
「ジューリーと外をノープランで歩くことだよ。恥ずかしいからいちいち言わせるなよ……」
私の顔は真っ赤になりました。
友達同士だとロイス様は仰っていましたが、その粋などとっくに超えているとしか思えません。
「疲れたか?」
「いえ、むしろ元気です」
「そうか、ならばデートは続けよう。今度は馬車で街へ行く」
馬車で向かった先はなんと、ハイマーネ家当主のザーレムさんが経営しているファッション関係のお店でした。
ご主人様のお店は来たのは初めてですが、場所くらいは知っています。
「ここでジューリーの服を買いたい」
「……?」
またしても私の脳内では理解できないことですね。
ザーレムさんに言えば、ここの店にある服は無料で手に入るはずです。
それにも関わらず、ロイス様は買うと言いました。
一体何を考えているのでしょうか。
店内へと入ると、店を任されている店員さんと沢山のお客様、そしてザーレムさんもいました。
「ロイスにジューリーか。一体どうしたのだ?」
「オーナーさんよ、ジューリーに似合う服を見繕ってくれ」
「オーナー? おいおいロイス。……あ、そういうことか。はいはい、承知いたしました。では綺麗なお嬢様、こちらへどうぞ」
「は……はい?」
ロイス様は普段、ザーレム様のことは「親父」と呼んでいますよね?
更にザーレムさんは、接客をするような口調に変わりました。
何かの演技でしょうか。
私は言われるがままザーレムさんに連れられ試着室へと案内されます。
「おい、こちらのお客様に似合いそうな服を何着か用意してくれたまえ」
ザーレムさんは店員にそう命じます。
持ってきた服はどれも可愛くて私好みのものが多いですね。
「さ、着替えてくだされ」
「は……はい」
着替えてからカーテンを開けるとロイス様がいました。
顔を赤らめながら私の全身をじっと見つめてきます。
「良い……これは良い! よし、これは買おう!」
「良いのですか?」
「当たり前だ。俺の好きな店でジューリーに似合いそうな服を俺が買う。タダで入手するのではなく、一緒に出かけて買った服を着てもらいたいんだ」
ようやく理解できました。
買っていただいた服を着て店を出ます。
「今日は私のために最高のデートを提案していただき、感謝しています。服もありがとうございました」
「ジューリーが更に可愛くなった。親父の店を選んで正解だったな」
「一生大事にします」
「大袈裟だな。服ってのは消耗品だ。古くなる前に俺がまた勝手やる。だから、また……その……デートをしてくれよ?」
「はいっ! もちろんです!!」
帰りの馬車の中でも、私はロイス様の手を離しませんでした。
「天気がも良いし絶好のデート日和になったな!」
「そうですねぇ」
ロイス様はデートと認識してくださっているようです。
デートとは、お付き合いしている人たちが……いえ、どちらでもいいですね。
私としてはデートと言われてとても嬉しい気持ちになりましたので、これからはデートと言うことにしましょうか。
「どこ行きたいんだ? ……って聞いてもまだこの街のことはわかんねーよな」
「ロイス様の行きたいところについていこうかと思います」
「お前はなぁ……! 俺の行きたいところじゃなくて、ジューリーが満足できる場所に連れて行きたいんだぞ?」
「そうですね。ならばロイス様の行きたい場所に連れて行ってくだされば満足できるかと。ロイス様の好きなことを知れるわけですから」
「そ……そうか? ならば構わんが……」
ロイス様は顔を赤らめながら、手で頬を掻いています。
煽てたわけではありませんよ?
私はまだ、ロイス様のことを深くは知りませんからね。
彼の好きなところに行けば、趣味や好物をより知れるので、私もきっと楽しめるでしょう。
「よし、馬車での移動はやめて歩いていくが構わないか?」
「もちろんです」
どうやら近場で何かをするようですね。
どこへ行くのか楽しみです。
「そ……外は危険もあるからな、ジューリー。手を貸せ」
「え? あ、はい!」
なんということでしょうか……。
私の右手がロイス様の手によって優しく包まれました。
心臓の鼓動が早くなっているのを感じます。
このようなサプライズは想定外でした。
思考回路がショートしてしまいそうな状態のまま、屋敷を出て外を歩きます。
♢
暑くもなく寒くもない人間の身体に適した気温で、湿気も程よく太陽の日差しが心地いいです。
歩きはじめてから三十分ほど経過していますが、散歩には最適な気候ですね。
ずっと私の手はロイス様に預けたままで、緊張とドキドキが止みません。
おや、ここは先ほど通った道ですね。
道に迷ってしまったのでしょうか。
私は気にせずにロイス様と会話をしながら歩き続けました。
さて……およそ一時間ほど歩きましたが、なんとハイマーネ家へと戻ってきてしまいました。
「ロイス様? 何か忘れ物でもされたのでしょうか?」
「いや? そんなことはないが」
「……?」
一体どういうことでしょうか。
私としては、ロイス様と二人きりで外を歩けて心地よい一時間でしたが。
「これが俺のやりたいことだ」
「……はい?」
「ジューリーと外をノープランで歩くことだよ。恥ずかしいからいちいち言わせるなよ……」
私の顔は真っ赤になりました。
友達同士だとロイス様は仰っていましたが、その粋などとっくに超えているとしか思えません。
「疲れたか?」
「いえ、むしろ元気です」
「そうか、ならばデートは続けよう。今度は馬車で街へ行く」
馬車で向かった先はなんと、ハイマーネ家当主のザーレムさんが経営しているファッション関係のお店でした。
ご主人様のお店は来たのは初めてですが、場所くらいは知っています。
「ここでジューリーの服を買いたい」
「……?」
またしても私の脳内では理解できないことですね。
ザーレムさんに言えば、ここの店にある服は無料で手に入るはずです。
それにも関わらず、ロイス様は買うと言いました。
一体何を考えているのでしょうか。
店内へと入ると、店を任されている店員さんと沢山のお客様、そしてザーレムさんもいました。
「ロイスにジューリーか。一体どうしたのだ?」
「オーナーさんよ、ジューリーに似合う服を見繕ってくれ」
「オーナー? おいおいロイス。……あ、そういうことか。はいはい、承知いたしました。では綺麗なお嬢様、こちらへどうぞ」
「は……はい?」
ロイス様は普段、ザーレム様のことは「親父」と呼んでいますよね?
更にザーレムさんは、接客をするような口調に変わりました。
何かの演技でしょうか。
私は言われるがままザーレムさんに連れられ試着室へと案内されます。
「おい、こちらのお客様に似合いそうな服を何着か用意してくれたまえ」
ザーレムさんは店員にそう命じます。
持ってきた服はどれも可愛くて私好みのものが多いですね。
「さ、着替えてくだされ」
「は……はい」
着替えてからカーテンを開けるとロイス様がいました。
顔を赤らめながら私の全身をじっと見つめてきます。
「良い……これは良い! よし、これは買おう!」
「良いのですか?」
「当たり前だ。俺の好きな店でジューリーに似合いそうな服を俺が買う。タダで入手するのではなく、一緒に出かけて買った服を着てもらいたいんだ」
ようやく理解できました。
買っていただいた服を着て店を出ます。
「今日は私のために最高のデートを提案していただき、感謝しています。服もありがとうございました」
「ジューリーが更に可愛くなった。親父の店を選んで正解だったな」
「一生大事にします」
「大袈裟だな。服ってのは消耗品だ。古くなる前に俺がまた勝手やる。だから、また……その……デートをしてくれよ?」
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帰りの馬車の中でも、私はロイス様の手を離しませんでした。
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