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9 家族での食事

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「あの……ザーレムさん。私はメイドとして働かせていただいているのに一緒に食事をして良いものなのですか?」

 他の使用人さんやメイドさんはしっかりと食べずに主人様の食事を見守っています。
 それなのに何故私だけ家族の方と一緒に食事をさせていただいているのかが分からないのです。

「問題ないよ。これはむしろ俺からの命令だと思ってくれても良い。だから遠慮せず食べてくれたまえ」
 そうは言われても、他の使用人さんたちに申し訳なく思ってしまいます。

「ジューリー、お前は俺の友達だろ? 友達の家に食事をしにきた。その程度で考えてくれりゃ良いんだよ」
「で……ではお言葉に甘えて……」

 結局食事を一緒にさせてもらいました。

「……美味しい!?」
 思わず口に出して言ってしまいました。
 これは私が作った料理です。
 調理場で味見したときと比べても、明らかに今の方が美味しいのと感じました。

「お前、なんで疑問形なんだよ?」
「いえ、味見したときよりも今の方が美味しいと感じてしまって……」
「当たり前だろ! 食卓囲んでみんなで食べてんだから! 家族で食事してりゃ味だって上乗せされて美味く感じるだろうよ」

 そういうものなのでしょうか。
 今まで一人で食事をしてきた私には理解できませんでした。
 ですが、心が温かい人たちに囲まれて食べるご飯は格別だったのです。

「満足したかね?」
「はい! ありがとうございます」
「ジューリーはずっと孤独だったんだものね。だから、せめて食事くらいは一緒にしないといけないからね」

 ザーレムさんの優しい気配りがとても嬉しかったのです。
 ついつい、食が進んでしまい全部綺麗に食べきりました。

「ところで、メイド長から聞いたんだが……」
「え……!?」
 嫌な予感しかしません。

「ここのメイド長になる気はないかね?」
「謹んでお断り致します。私はそのような立場の人間ではありませんし、家事も料理も全て独学なので……」

「そうか、残念だね。でもこれだけの技量があるとは想定以上で驚いているんだよ。まさか王宮で一番凄かったメイド長をも超えるなんてね……」

 驚いてしまいました。まさか王宮で一番凄かった人だったなんて……。しかもその人に推奨されていたとは……。

「失礼かもしれないけれど、ジューリーを失ってしまった君の元家族の人たちが可哀想だね」
「全くだ。ま、おかげで俺たちが喜べているんだけどな」

 そういえば今頃あの人たちはどうなっているのでしょうか。
 そろそろマーヤと元婚約者の……えぇと、名前なんでしたっけ。

 こちらでの生活があまりにも充実して幸せになったので、嫌だった過去のことなど忘れてしまいそうですね。

 ともかく、そろそろお二人は結婚されたのでしょうか。
 私にはもはや関係のないことですが、お幸せにどうぞ。
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