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5 命の恩人

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 馬車に乗っている数日間、ザーレムさんの気さくな振る舞いによって心が打ち解けてしまいました。

 その流れで、結局あの場所にいた経緯を話してしまったのです。
 ザーレムさんだけでなく、護衛やメイドさんまでもが最後まで真剣に話を聞いてくださり、話したことで少しだけすっきりしました。

「まさかアルファード家とファイファン家でそのようなことになっていたとはな……」
「両家とも知っているのですか?」

 男爵家ですから、大商人とは無縁かと思っていたのですが……。

「直接話したことはないのだが、確か両家とも小さな商店を営んでいるだろう? そこの商品を提供しているのが俺の部下がやっている物だったはず」
 まさか直接的ではないにしても、繋がりがあったとは驚きでした。
 失礼な発言なのは重々承知ですが……。

「君には悪いが、ジューリーの話を全て信じるわけにはいかないのだよ。だが、本当だとわかればそれ相応の処置も可能だがね」
「いえ、これ以上ご迷惑をかけるわけにはいきませんし、こうして話を聞いてくださり、私の命も助けてくれただけでもありがたいです」
「遠慮深いんだな。まぁこのことは覚えておこうかね……」

 別に復讐したいとか考えているわけではありません。
 ただ、マーヤとダルム様の婚約が上手くいかないで欲しいなとは心のどこかで少しばかり思ってしまってはいますが。

「さて、もうすぐバイアリタークの王都へ到着する。提案なのだが、しばらく俺の家で働く気はないかね? 無論相応の対価も払うし衣食住は提供する。住み込みでよければ専用の部屋も与えよう」
「……良いのですか!?」

「話を聞いた限りではアルファード家で理不尽ながらも家事や炊事は学んだのだろう? ちょうど人数を増やす予定だったので、俺としても好都合なのだよ」
 ザーレムさんのおかげで、人生をやり直す気になれました。
 そのスタートをこんなに手厚くもてなされて良いのでしょうか。

 しかし、この提案を断る理由はありませんし、とても嬉しかったのです。

「ありがとうございます。よろしくお願いします」
「決まりだね。ではこのまま我が家へ向かうとしよう」
 馬車に揺られながら、バイアリタークの王都へ到着しました。

 巨大な湖に浮かぶ水の都のような場所です。
 向かった先は、王宮からすぐそばにある王族が住むような区域へ進みます。
 やはりどの国も王都の構造は同じようでした。
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