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3 居場所なんてどこにもない
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「すまない、ジューリー……事実だ」
ダルム様は申し訳なさそうに言ってきますが、私は茫然としてしまいました。
「そうですか……ならば何も言うことはありません……婚約……破棄を」
もうダメです。まともに喋れないほど号泣しています。
「……本当にすまない。家には金が必要だったんだ。だがアルファード家から、もしもマーヤさんと結婚し、婿養子としてアルファード家に嫁いでくれるのならばそれ相応の金を出すと……」
「それで、納得したのですね……」
「不本意ではあるがな……別にジューリーのことが憎くて決めたわけではないんだ」
どうやらダルム様は家のことを考えた上での苦渋の決断のようです。
もちろん私自身は納得できませんし悔しい思いでいっぱいです。
ですが、アルファード家のような理不尽な理由ではないので少しばかりほっとしました。
そう思えたのは一瞬の間だけでしたが……。
「おいおいダルムよ、それでは元婚約者のことがまだ好きですみたいな言い方ではないか。そんな嘘ではむしろ相手を苦しめることになるぞ?」
ダルム様のお兄様が嫌味たらしくやってきました。
「兄上、余計なことを言わないでほしい」
「事実じゃないか。お前だってそこにいる元婚約者よりも、妹の方が可愛いしできればマーヤが良かったと言っていただろう?」
「え!?」
なんと言うことでしょうか。
まさかそんなことは……確かに何度かマーヤと三人で食事をしたこともありましたが……。
「はぁ……兄上は意地悪だ。これでは二人とも手に入れる野望が水の泡だ」
「お前は欲張りなのだ。面倒なことになるから結婚相手は一人に絞れ。俺はお前のことを思ってあえて言ったまでだ」
どうやら……、これも事実のようですね。
ここまで立て続けに裏切られると疑う気すらなくなります。
「すまないなジューリー。バレては仕方がないので全部白状しよう。お前のことは愛していた。だが、一緒にいたマーヤの方が俺の好みなのだ。そんな子から求婚されては断れるはずがないだろう。本来ならばお前のことも同時に愛して愛人として俺のもとに残すつもりだったのだが……」
そんなことまで聞きたくありませんでした。
横で笑っているところを見るからに、ダルムのお兄様も私の悲しむ姿を見て楽しんでいるようでした。
こうなってしまうと、泣いてしまえば余計に喜ばせてしまうでしょう。
必死に感情を抑えてなに喰わぬ顔で言い返します。
「そうですか……本音を聞けて良かったです。もう私はウンザリなので王都を去ります」
「気でも狂ったのかジューリーよ。王都の外へ出れば何があるかわからんだろう。自ら死ぬような選択を選ぶと言うのか?」
確かに王都の外には何があるのか知りません。
他国があると噂も聞いてはいますが、果たしてどこにあるのか、人間の足で辿り着けるのかなど全く知らないのです。
「どうせ私の居場所はないようなものですから。それに愛していたマーヤとダルム様にこれほどまで酷く言われてしまったら、私は死んだようなものです」
「そうか、ダルムの元婚約者よ。達者でな。お前が自ら王都から消えてくれれば俺たちやアルファード家はより平和なのだ」
喜ばせてしまったのは失敗のようですね。
ですが構いません。
それほどこんなところにいたいとは思えなかったのです。
ファイファン男爵家を出て、さらに一人で歩き、ある程度の食料と水だけ購入して王都の門を出ました。
ダルム様は申し訳なさそうに言ってきますが、私は茫然としてしまいました。
「そうですか……ならば何も言うことはありません……婚約……破棄を」
もうダメです。まともに喋れないほど号泣しています。
「……本当にすまない。家には金が必要だったんだ。だがアルファード家から、もしもマーヤさんと結婚し、婿養子としてアルファード家に嫁いでくれるのならばそれ相応の金を出すと……」
「それで、納得したのですね……」
「不本意ではあるがな……別にジューリーのことが憎くて決めたわけではないんだ」
どうやらダルム様は家のことを考えた上での苦渋の決断のようです。
もちろん私自身は納得できませんし悔しい思いでいっぱいです。
ですが、アルファード家のような理不尽な理由ではないので少しばかりほっとしました。
そう思えたのは一瞬の間だけでしたが……。
「おいおいダルムよ、それでは元婚約者のことがまだ好きですみたいな言い方ではないか。そんな嘘ではむしろ相手を苦しめることになるぞ?」
ダルム様のお兄様が嫌味たらしくやってきました。
「兄上、余計なことを言わないでほしい」
「事実じゃないか。お前だってそこにいる元婚約者よりも、妹の方が可愛いしできればマーヤが良かったと言っていただろう?」
「え!?」
なんと言うことでしょうか。
まさかそんなことは……確かに何度かマーヤと三人で食事をしたこともありましたが……。
「はぁ……兄上は意地悪だ。これでは二人とも手に入れる野望が水の泡だ」
「お前は欲張りなのだ。面倒なことになるから結婚相手は一人に絞れ。俺はお前のことを思ってあえて言ったまでだ」
どうやら……、これも事実のようですね。
ここまで立て続けに裏切られると疑う気すらなくなります。
「すまないなジューリー。バレては仕方がないので全部白状しよう。お前のことは愛していた。だが、一緒にいたマーヤの方が俺の好みなのだ。そんな子から求婚されては断れるはずがないだろう。本来ならばお前のことも同時に愛して愛人として俺のもとに残すつもりだったのだが……」
そんなことまで聞きたくありませんでした。
横で笑っているところを見るからに、ダルムのお兄様も私の悲しむ姿を見て楽しんでいるようでした。
こうなってしまうと、泣いてしまえば余計に喜ばせてしまうでしょう。
必死に感情を抑えてなに喰わぬ顔で言い返します。
「そうですか……本音を聞けて良かったです。もう私はウンザリなので王都を去ります」
「気でも狂ったのかジューリーよ。王都の外へ出れば何があるかわからんだろう。自ら死ぬような選択を選ぶと言うのか?」
確かに王都の外には何があるのか知りません。
他国があると噂も聞いてはいますが、果たしてどこにあるのか、人間の足で辿り着けるのかなど全く知らないのです。
「どうせ私の居場所はないようなものですから。それに愛していたマーヤとダルム様にこれほどまで酷く言われてしまったら、私は死んだようなものです」
「そうか、ダルムの元婚約者よ。達者でな。お前が自ら王都から消えてくれれば俺たちやアルファード家はより平和なのだ」
喜ばせてしまったのは失敗のようですね。
ですが構いません。
それほどこんなところにいたいとは思えなかったのです。
ファイファン男爵家を出て、さらに一人で歩き、ある程度の食料と水だけ購入して王都の門を出ました。
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