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婚約破棄編
7 コレの婚約者
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「リーレル殿も顔をあげたまえ」
公爵に命じられ、顔を声の主に向ける。
顔立ちが整い、全身が王服で覆われ、非の打ちどころが一切ない完璧な容姿だ。
お会いするのは舞踏会で初めて挨拶したとき以来である。
「ご無沙汰しておりますベルモンド公爵」
「うむ、舞踏会では建前上挨拶しかできずすまぬ。その上、婚約者を激怒させたようだが」
「お気になさらず。彼とは別件で先日婚約破棄されたので、何も関係がありませんので」
「ほう!」
何故かベルモンド公爵は喜んでいるように見えた。
無理もないか。
マクツィアの悪評が王族まで轟いてもおかしくはない。
「ところでレオン殿たちは何をしていたのかね?」
「ウィリアムのところへ向かうところだった。ちょうど良いタイミングで会えたというわけだよ」
コレはあっさりと嘘をついたよ……。
本当は買い物に行く予定だったでしょう!
今更嘘ですと言ったらお兄様の建前も悪くなるので公爵には黙っておく。
「左様か。ならば乗るが良い」
「助かる。ほら、リーレルも行くぞ」
「え!? 私がこのような煌びやかな馬車に……」
「構わぬ。リーエル殿も乗りたまえ」
あぁ……私も共犯のようなものだな。
まさか公爵に嘘をついて馬車に乗せていただくことになるとは……。
馬車の中で、お兄様は何事もなかったかのように平然とした態度でくつろいでいた。
一方、公爵はやたら私の方をジロジロと見てくる。
私は緊張しているので目線をなんとか反らし、カーテンを見るようにしていた。
だが、私の気持ちにお構いもせず、アレが口にした。
「ウィリアムと話せよ」
「お兄様!?」
このような機会など、そうそうあることではない。
私の本音をお兄様が代弁していたとも言える。
本当は話をしたい。
だが、私はお兄様のように堂々とした態度ができないのだ。
「申し訳ございませんベルモンド公爵! 兄と違いあなたのような高い身分のお方と接することに慣れていないもので……」
「気にせずともよい。私のことはレオン殿同様、気軽に接して構わぬ」
「いきなりハードル高すぎますよ……」
一連のやり取りで、お兄様とベルモンド公爵との間には何かしら深い関係があるだろうと予想した。
そうでなければ、ベルモンド公爵がお兄様のことをこれほど温厚にもてなすことはないはずだ。
だからといって、私は公爵相手に敬語を崩すことなどできない。
「レオン殿よ、リーレル殿に例のことをまだ伝えていないように思えるが、言わぬのか?」
「むしろ、言って良いのか? まだ早いだろ」
「構わぬ。いずれ時が来れば知ることとなる。それに、リーレル殿の気持ちも理解はしているつもりだ。いきなり王族の家に招待されることなど本来はあり得ぬこと。何故私とレオン殿が親しい関係かも説明が必要だろう……」
私が思っていたことを、公爵が全て代弁してくれた。
それに、二人には何か秘密があるようだし……、って……!
まさか!?
お兄様とベルモンド公爵は……そういう関係だったのでは!?
あくまで私の想像だが、考えれば考えるほど、そうだとしか思えなくなってきてしまった。
お兄様は貴族界では女性からも男性からも人気がある。
顔立ちから、よく女性だと勘違いされることもあるくらいだし、見方によっては可愛い。
ベルモンド公爵も王族でありながら未だに婚約の話を聞いたことがない。
お兄様の婚約相手は、私たち家族に対して未だに名前も教えてくれないし、会ったこともない。
全ての辻褄が揃っているし……あり得る!
「……知りたいです。何か伏せているのであれば、今すぐにでも!」
先ほどまで公爵に対して喋ることもままならなかったが、妄想が現実の可能性がわかった途端に、緊張から解放された。
むしろ、別の意味で緊張している。
「ふむ、レオン殿は構わぬか? それとも自身の口で教えるか?」
「ウィリアムから伝えてくれ。俺よりも公爵のアンタが言ったほうが真実味が高いだろうし」
「承知した」
私の顔を見ながら真剣な表情をしていた。
公爵の容姿は、私のドストライクなのでお兄様が手に入れるなんて少々悔しい気分だが……。
「実は、婚約をしているのだ」
「やはり!!!」
公爵に命じられ、顔を声の主に向ける。
顔立ちが整い、全身が王服で覆われ、非の打ちどころが一切ない完璧な容姿だ。
お会いするのは舞踏会で初めて挨拶したとき以来である。
「ご無沙汰しておりますベルモンド公爵」
「うむ、舞踏会では建前上挨拶しかできずすまぬ。その上、婚約者を激怒させたようだが」
「お気になさらず。彼とは別件で先日婚約破棄されたので、何も関係がありませんので」
「ほう!」
何故かベルモンド公爵は喜んでいるように見えた。
無理もないか。
マクツィアの悪評が王族まで轟いてもおかしくはない。
「ところでレオン殿たちは何をしていたのかね?」
「ウィリアムのところへ向かうところだった。ちょうど良いタイミングで会えたというわけだよ」
コレはあっさりと嘘をついたよ……。
本当は買い物に行く予定だったでしょう!
今更嘘ですと言ったらお兄様の建前も悪くなるので公爵には黙っておく。
「左様か。ならば乗るが良い」
「助かる。ほら、リーレルも行くぞ」
「え!? 私がこのような煌びやかな馬車に……」
「構わぬ。リーエル殿も乗りたまえ」
あぁ……私も共犯のようなものだな。
まさか公爵に嘘をついて馬車に乗せていただくことになるとは……。
馬車の中で、お兄様は何事もなかったかのように平然とした態度でくつろいでいた。
一方、公爵はやたら私の方をジロジロと見てくる。
私は緊張しているので目線をなんとか反らし、カーテンを見るようにしていた。
だが、私の気持ちにお構いもせず、アレが口にした。
「ウィリアムと話せよ」
「お兄様!?」
このような機会など、そうそうあることではない。
私の本音をお兄様が代弁していたとも言える。
本当は話をしたい。
だが、私はお兄様のように堂々とした態度ができないのだ。
「申し訳ございませんベルモンド公爵! 兄と違いあなたのような高い身分のお方と接することに慣れていないもので……」
「気にせずともよい。私のことはレオン殿同様、気軽に接して構わぬ」
「いきなりハードル高すぎますよ……」
一連のやり取りで、お兄様とベルモンド公爵との間には何かしら深い関係があるだろうと予想した。
そうでなければ、ベルモンド公爵がお兄様のことをこれほど温厚にもてなすことはないはずだ。
だからといって、私は公爵相手に敬語を崩すことなどできない。
「レオン殿よ、リーレル殿に例のことをまだ伝えていないように思えるが、言わぬのか?」
「むしろ、言って良いのか? まだ早いだろ」
「構わぬ。いずれ時が来れば知ることとなる。それに、リーレル殿の気持ちも理解はしているつもりだ。いきなり王族の家に招待されることなど本来はあり得ぬこと。何故私とレオン殿が親しい関係かも説明が必要だろう……」
私が思っていたことを、公爵が全て代弁してくれた。
それに、二人には何か秘密があるようだし……、って……!
まさか!?
お兄様とベルモンド公爵は……そういう関係だったのでは!?
あくまで私の想像だが、考えれば考えるほど、そうだとしか思えなくなってきてしまった。
お兄様は貴族界では女性からも男性からも人気がある。
顔立ちから、よく女性だと勘違いされることもあるくらいだし、見方によっては可愛い。
ベルモンド公爵も王族でありながら未だに婚約の話を聞いたことがない。
お兄様の婚約相手は、私たち家族に対して未だに名前も教えてくれないし、会ったこともない。
全ての辻褄が揃っているし……あり得る!
「……知りたいです。何か伏せているのであれば、今すぐにでも!」
先ほどまで公爵に対して喋ることもままならなかったが、妄想が現実の可能性がわかった途端に、緊張から解放された。
むしろ、別の意味で緊張している。
「ふむ、レオン殿は構わぬか? それとも自身の口で教えるか?」
「ウィリアムから伝えてくれ。俺よりも公爵のアンタが言ったほうが真実味が高いだろうし」
「承知した」
私の顔を見ながら真剣な表情をしていた。
公爵の容姿は、私のドストライクなのでお兄様が手に入れるなんて少々悔しい気分だが……。
「実は、婚約をしているのだ」
「やはり!!!」
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