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19 ポップスさんの謎に迫る
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「あぁ……やっぱりそうなるわよね」
使用人のハイタムとロウタムから全てを聞いて、ため息を吐いた。
「主人様、我々は尾行して証拠を記録するだけでいいとの指令でしたので何もできませんでしたが、放っておいて良かったのですか? 私個人としてはあの者達に対して怒りが治りません」
「ありがとう……ですが、嫉妬心もなければ怒りも出てこないので……それくらい冷めちゃったんですよね。円滑に離婚が成立できれば……」
「心中察知致します」
「証拠の映像はしっかり残してありますよね?」
「はい。二人で手をつないで入店していくところまでの映像になりますが、証拠としては充分でしょう」
ならば、いつでも離婚の切り出しはできるか。
しかし、このままガルカから不倫等の慰謝料を請求しても、私の財産を持ってかれてしまいガルカが儲かってしまう可能性がある。
どうしたらいいのだろう……。
♢
離婚問題も考えなければいけないが、今大急ぎでやらなくてはいけないことがある。
注文された新作のデザインを沢山書かなければいけない。
すっかり馴染んだ公園で、絵を描き始めた。
「今日も外でデザイン描いているのかい?」
「あら、ポップスさん」
「ほう、ついに驚かなくなったのか」
そうではない。なんとなくだが、ポップスさんが来るんじゃないかと思っていた。だからデザインを描きながら、辺りを警戒していたのだ。
毎回脅かされていてはたまったものじゃない。
「今日もその格好ですか……」
「あぁ、気に入っているからな。できればもう一着同じものを作りたいのだが」
「まさか洗濯していないで毎日着ているのですか!?」
「いや、普段は別の制服を着なければいけないのでな。その間に洗濯をさせている」
そんなに愛用してくれているのは嬉しいが、このデザインは王族を意識したものだ。
こんな場所でその格好をしていては目立つし、周りから勘違いされてしまいそうな気もするが……。
「ポップスさんどちらに住んでいるのですか?」
「……すまない、それは」
ポップスさんは下を向いて黙り込んでしまった。
まずいことを言ってしまったのかもしれない。
「ごめんなさい。失礼なことを……」
「いや、いいのだ。こんなことも言えない俺がいけないのだから」
ポップスさんを困らせてしまい頭を下げて謝る。
材質も高級な服をすぐに作ったくらいだから、貴族の人かと疑った。
しかし、貴族の中にポップスという名前の人物はいなかったはず。
もしかしたら新しく契約した王宮直属の仕立屋でこの衣装も……と思ったのだが、私以外の依頼は王族と公爵家からしか行っていないと言っていた。
ますますポップスさんは何者なのだろうかと、興味が沸いてしまっているのだ。
「ところでシェリルさん、デザイナーの仕事は忙しいのか? その大量の用紙を見ると大変そうに見えるんだが」
「えぇ、最近ある場所で服の製造をしていただくことになったら、新しい依頼が大量に増えたので」
「やはりそうか、ならばよかった」
「え?」
気のせいだろうか。ポップスさんはまるで知っているような素振りで言ってる気がする。まるで確認しているかのようだ。
「失礼だが、旦那とはどうなったのだ?」
「あぁ……不倫されていますからね……離婚はしたいんですけど、このまま離婚を切り出せばあの人たちの思う壺なので……」
「というと?」
なんでなのかはわからない。
直感なのだが、ポップスさんに話せば、私の悩みが解決するような気がしてしまうのだ。
離婚後の慰謝料や財産分与の話をしてしまった。
こんなこと他人に話すべきことではないとはわかっていたのだが……。
それでもポップスさんは黙って最後まで聞いてくれた。
「ふむ、そういうことならば、問題は簡単に解決できると思うがな」
「そうなんですか!?」
ポップスさんの言葉に私は耳を傾けた。
「つまりだ……これを……こういうわけでな……であるから……」
「そんなことできるんですか!?」
まるで国王陛下と話をしているような気分だった。
それくらいに話の内容は陛下が言うような発言だ。一般的に考えれば非現実的なもので、とてもうまくいくとは思えないのだ。
「俺に任せておけ。この服のデザインをいただけたお礼だ」
「すでにお礼はいただきましたよ? 前回私の話をずっと聞いてくれていたではありませんか」
「では、上手くいったらまた俺にデザインしていただけないだろうか?」
「わかりました」
全てを信じているわけではない。
だが、ポップスさんの言ったことが本当になりそうな気がしてならない。なんとも不思議な感じなのだ。
どちらにしても離婚はすることになるので、この際ポップスさんが言ってくれたとおりに行動してみることにした。
使用人のハイタムとロウタムから全てを聞いて、ため息を吐いた。
「主人様、我々は尾行して証拠を記録するだけでいいとの指令でしたので何もできませんでしたが、放っておいて良かったのですか? 私個人としてはあの者達に対して怒りが治りません」
「ありがとう……ですが、嫉妬心もなければ怒りも出てこないので……それくらい冷めちゃったんですよね。円滑に離婚が成立できれば……」
「心中察知致します」
「証拠の映像はしっかり残してありますよね?」
「はい。二人で手をつないで入店していくところまでの映像になりますが、証拠としては充分でしょう」
ならば、いつでも離婚の切り出しはできるか。
しかし、このままガルカから不倫等の慰謝料を請求しても、私の財産を持ってかれてしまいガルカが儲かってしまう可能性がある。
どうしたらいいのだろう……。
♢
離婚問題も考えなければいけないが、今大急ぎでやらなくてはいけないことがある。
注文された新作のデザインを沢山書かなければいけない。
すっかり馴染んだ公園で、絵を描き始めた。
「今日も外でデザイン描いているのかい?」
「あら、ポップスさん」
「ほう、ついに驚かなくなったのか」
そうではない。なんとなくだが、ポップスさんが来るんじゃないかと思っていた。だからデザインを描きながら、辺りを警戒していたのだ。
毎回脅かされていてはたまったものじゃない。
「今日もその格好ですか……」
「あぁ、気に入っているからな。できればもう一着同じものを作りたいのだが」
「まさか洗濯していないで毎日着ているのですか!?」
「いや、普段は別の制服を着なければいけないのでな。その間に洗濯をさせている」
そんなに愛用してくれているのは嬉しいが、このデザインは王族を意識したものだ。
こんな場所でその格好をしていては目立つし、周りから勘違いされてしまいそうな気もするが……。
「ポップスさんどちらに住んでいるのですか?」
「……すまない、それは」
ポップスさんは下を向いて黙り込んでしまった。
まずいことを言ってしまったのかもしれない。
「ごめんなさい。失礼なことを……」
「いや、いいのだ。こんなことも言えない俺がいけないのだから」
ポップスさんを困らせてしまい頭を下げて謝る。
材質も高級な服をすぐに作ったくらいだから、貴族の人かと疑った。
しかし、貴族の中にポップスという名前の人物はいなかったはず。
もしかしたら新しく契約した王宮直属の仕立屋でこの衣装も……と思ったのだが、私以外の依頼は王族と公爵家からしか行っていないと言っていた。
ますますポップスさんは何者なのだろうかと、興味が沸いてしまっているのだ。
「ところでシェリルさん、デザイナーの仕事は忙しいのか? その大量の用紙を見ると大変そうに見えるんだが」
「えぇ、最近ある場所で服の製造をしていただくことになったら、新しい依頼が大量に増えたので」
「やはりそうか、ならばよかった」
「え?」
気のせいだろうか。ポップスさんはまるで知っているような素振りで言ってる気がする。まるで確認しているかのようだ。
「失礼だが、旦那とはどうなったのだ?」
「あぁ……不倫されていますからね……離婚はしたいんですけど、このまま離婚を切り出せばあの人たちの思う壺なので……」
「というと?」
なんでなのかはわからない。
直感なのだが、ポップスさんに話せば、私の悩みが解決するような気がしてしまうのだ。
離婚後の慰謝料や財産分与の話をしてしまった。
こんなこと他人に話すべきことではないとはわかっていたのだが……。
それでもポップスさんは黙って最後まで聞いてくれた。
「ふむ、そういうことならば、問題は簡単に解決できると思うがな」
「そうなんですか!?」
ポップスさんの言葉に私は耳を傾けた。
「つまりだ……これを……こういうわけでな……であるから……」
「そんなことできるんですか!?」
まるで国王陛下と話をしているような気分だった。
それくらいに話の内容は陛下が言うような発言だ。一般的に考えれば非現実的なもので、とてもうまくいくとは思えないのだ。
「俺に任せておけ。この服のデザインをいただけたお礼だ」
「すでにお礼はいただきましたよ? 前回私の話をずっと聞いてくれていたではありませんか」
「では、上手くいったらまた俺にデザインしていただけないだろうか?」
「わかりました」
全てを信じているわけではない。
だが、ポップスさんの言ったことが本当になりそうな気がしてならない。なんとも不思議な感じなのだ。
どちらにしても離婚はすることになるので、この際ポップスさんが言ってくれたとおりに行動してみることにした。
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