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7 気晴らしに公園で
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ここ最近、デザインを描くための集中力に支障が出てしまっている。
いくら使用人を雇って監視をつけたとはいえ、私にのしかかってきたストレスは絶大なものだった。
こういった時は、仕事をする場所を変えてみるのも良いかもしれない。
筆と用紙、それから必要最低限の物を持って、近くの公園に移動した。
たとえ私が外に出ていても、使用人達がしっかりと監視を続けてくれている。
もしも二人で外出するからついてくるなと言われた場合、返事だけしておいてこっそりと尾行するようにお願いしてある。
本来ならば、如何わしい状況を記録しておいて、証拠を突き出して離婚したいのだけれど……。実家と仕事のために、今は不倫行為を阻止することが、私に出来る最大の抵抗だった。
「ここならば良いデザインが描けそうね」
昼下がりの公園は人通りもまばらで、日差しも心地よく、私のストレスまでもが緩和されていくようだ。
思ったとおり、普段のペースに戻った。
次々と新しいデザインを描き上げていく。
「ほう……これは君が描いたのかい?」
「ひゃっ!」
描くのに夢中だったので、突然の呼びかけに驚いてしまい変な声が出てしまった。
「脅かしてすまなかった。あまりにも綺麗な絵だったので声をかけてしまったのだよ。気に触るようならすぐに失礼するが……」
「あ、いえ。大丈夫です。夢中で描いていたので気がつかなかっただけですから」
声をかけてきた男をじっと眺めてみた。
口調からしてどこかの貴族かと思ったが、服装は民間人が着ていそうな格好をしている。失礼ながら、あまりオシャレだとは思えない。
帽子を被って、尚且つ色眼鏡とマスクを装着しているので顔がはっきりと見えているわけではないが、なんとなく悪い人ではなさそうだ。
「ところで、この絵は衣服だろう。どこで販売しているのだ?」
「これはまだ商品化されていません。新しく販売する服のデザインを描いているんですよ」
「ほう! 素晴らしい。ところで君の名は?」
「シェリル=アルブライデです」
「おっと、失礼した。わた……俺はポップス。家名はないのだよ」
まさか捨て子なのだろうか。この格好ではそれも頷けてしまう。
「描くのを続けてても良いでしょうか?」
「あぁ、邪魔してすまなかった。だが、もしよければこのデザインもう少し見ても良いだろうか?」
「構いませんよ」
私の描いたデザインは、本来は販売するまでは他人に見せないことにしている。
もしもデザインを盗まれたりしたらたまったもんじゃない。
だが、ポップスさんはそんなことを出来るようには失礼ながら全く思えなかった。
それに、私の描いたものに興味を持って見てくれていることが嬉しかったのだ。
しばらく私は気にせずに描くのを続けた。
「どれも素晴らしいな。シェリルさん、すまないが……俺に似合いそうな服のデザインを描いてもらえないだろうか?」
「……わかりました」
今日描く分の仕事量は終わっていた。
折角なので、ポップスさんと出会った記念に何か描いてあげることにした。
「ありがとう! 光栄だ」
「大袈裟ですよ……。ところで、どんな服装が良いとか希望ってあります?」
「そうだな……王族に憧れているからな……国の上級貴族が着そうなデザインがいい」
「わかりました」
描くだけならお安い御用だ。
残念ながら、それを着工して着せてあげられるようにすることは無理だが。
それでもデザイン画だけでも良いと言っているので、本人が喜ぶならばまぁ良いだろう。
いくら使用人を雇って監視をつけたとはいえ、私にのしかかってきたストレスは絶大なものだった。
こういった時は、仕事をする場所を変えてみるのも良いかもしれない。
筆と用紙、それから必要最低限の物を持って、近くの公園に移動した。
たとえ私が外に出ていても、使用人達がしっかりと監視を続けてくれている。
もしも二人で外出するからついてくるなと言われた場合、返事だけしておいてこっそりと尾行するようにお願いしてある。
本来ならば、如何わしい状況を記録しておいて、証拠を突き出して離婚したいのだけれど……。実家と仕事のために、今は不倫行為を阻止することが、私に出来る最大の抵抗だった。
「ここならば良いデザインが描けそうね」
昼下がりの公園は人通りもまばらで、日差しも心地よく、私のストレスまでもが緩和されていくようだ。
思ったとおり、普段のペースに戻った。
次々と新しいデザインを描き上げていく。
「ほう……これは君が描いたのかい?」
「ひゃっ!」
描くのに夢中だったので、突然の呼びかけに驚いてしまい変な声が出てしまった。
「脅かしてすまなかった。あまりにも綺麗な絵だったので声をかけてしまったのだよ。気に触るようならすぐに失礼するが……」
「あ、いえ。大丈夫です。夢中で描いていたので気がつかなかっただけですから」
声をかけてきた男をじっと眺めてみた。
口調からしてどこかの貴族かと思ったが、服装は民間人が着ていそうな格好をしている。失礼ながら、あまりオシャレだとは思えない。
帽子を被って、尚且つ色眼鏡とマスクを装着しているので顔がはっきりと見えているわけではないが、なんとなく悪い人ではなさそうだ。
「ところで、この絵は衣服だろう。どこで販売しているのだ?」
「これはまだ商品化されていません。新しく販売する服のデザインを描いているんですよ」
「ほう! 素晴らしい。ところで君の名は?」
「シェリル=アルブライデです」
「おっと、失礼した。わた……俺はポップス。家名はないのだよ」
まさか捨て子なのだろうか。この格好ではそれも頷けてしまう。
「描くのを続けてても良いでしょうか?」
「あぁ、邪魔してすまなかった。だが、もしよければこのデザインもう少し見ても良いだろうか?」
「構いませんよ」
私の描いたデザインは、本来は販売するまでは他人に見せないことにしている。
もしもデザインを盗まれたりしたらたまったもんじゃない。
だが、ポップスさんはそんなことを出来るようには失礼ながら全く思えなかった。
それに、私の描いたものに興味を持って見てくれていることが嬉しかったのだ。
しばらく私は気にせずに描くのを続けた。
「どれも素晴らしいな。シェリルさん、すまないが……俺に似合いそうな服のデザインを描いてもらえないだろうか?」
「……わかりました」
今日描く分の仕事量は終わっていた。
折角なので、ポップスさんと出会った記念に何か描いてあげることにした。
「ありがとう! 光栄だ」
「大袈裟ですよ……。ところで、どんな服装が良いとか希望ってあります?」
「そうだな……王族に憧れているからな……国の上級貴族が着そうなデザインがいい」
「わかりました」
描くだけならお安い御用だ。
残念ながら、それを着工して着せてあげられるようにすることは無理だが。
それでもデザイン画だけでも良いと言っているので、本人が喜ぶならばまぁ良いだろう。
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