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第二章 貧民街編

19 みんなに入ってもらった

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 数日後、貧民街の人たちが一生懸命掃除して、技師が手入れをしてくれたおかげで温浴できる状態になった。
 川の水を直接巨大な浴槽にゆっくりと流し、途中で火を熱が伝わりやすい金属にあて超高温状態にする。
 そこに水がゆっくりと通過していけば、五十度程度の熱めのお湯が完成し、それが浴槽に溜まる仕組みだ。
 溜まっていく間に五十度のお湯も少しは冷め、入浴する頃には程よくなっているだろう。
 この辺は私も自信はないが。

 早速試運転をするわけだが、貧民街に住む人たちほぼ全員が川に集まっている。
 流石に大袈裟だろう……。

 技師の手により、川の水をパイプに流すようにカラクリを動かしてもらった。
 すでに十分加熱して高温になった金属を通り、お湯になった水溶液がどんどん溜まり、お湯からは白い湯気が出ている。
 うんうん、いい感じだ。


 私がまず最初にお湯に触れてみたが、ちょうどいい。
 早く入りたいが、これだけ人がいたら服を脱げるわけがない。

「風呂とは一体、どうすればいいのだ?」
 ザイラスが私に不思議そうな顔をしながら聞いてきた。

「服を脱いで、全裸でお湯に浸かるんですよ。長湯すると体調崩すので、少ししたら出てください。気持ちいいですよ」
「ほう。ならば皆のもの! 早速服を抜いで入るぞ!!」

 前世の記憶が混じっているので、今の私には裸には抵抗がある。
 だが、そもそもこっちでは裸体や下着に対して発情する者はほぼいない。
 故に、男女関係なく服を脱ぎはじめてしまった。

「ちょ……! 男女別々に入った方が」
「なぜだ?」
「いえ、なんでもありません……」

 スティールまで服を脱ぎはじめてしまい、引き締まった筋肉が顕になってしまった。
 あぁ、カッコいい。
 もしかして、こんなことで発情してしまうのは私だけか!?

「どうしました? シャイン様は入らないのですか?」

 全裸のスティールが隠すこともなく私に近寄ってきた。
 私はチラッとだけ見てからすぐに目を逸らす。

「あ、あとで入ります。まずは皆さんが楽しんで」
「さすがシャイン様です。発案者なのに民を優先しようとする。これぞ領主の鏡です!!」

 スティールが素っ裸状態で全力で褒めてくれた。
 いやいや、違うんだって。
 私は一番風呂に入りたかったの!
 でも、こんな大勢の前で素っ裸になる行為に抵抗があるだけだ。
 そんなことは言えなかった。

「領主様、このお風呂とやらはかつて経験したことのない気持ちよさです!!」
「体がポカポカしてきますぅ~!」
「これがお風呂……。こんな贅沢を経験できるなんて……シャイン様には感謝です」

 あちらこちらから風呂に対して大絶賛をいただく。
 王都でも風呂なんて入れる人は限られていたからな……。
 だが、できればお風呂文化は一般的になれるようにしたい。
 私自身が気軽に入浴できるようにするためにもだ!

 そしてしばらくして貧民街ではお風呂文化のおかげで、私が気になっていた体臭問題はほぼ解決した。
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