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第二章 貧民街編

13 やばい状況

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「さっきから気になっていたんだが、ミーナのお知り合いさんもなかなかの色気だよな」
「シャイン様たちは関係ないでしょ!? 狙いは私なんだから!」
「いや? お前たちの持っている荷物と身体が狙いだよ。可愛い子四人もいっぺんに相手できるんだから、最高の一日だぜ」

 襲われるのが確定だなこれは。
 ならば、容赦する必要もないだろう。
どうせ貧民街なら無法地帯なんだし。

「うがぁあ!!」

 私に一番近かった男に対して、とりあえず得意の背負い投げを披露した。
 相手は受け身を知らないようで、身体が地面にもろに直撃する。
 私自身が非力でも、重力が加わってくれれば多少はダメージを与えられるのだ。

「なにしやがる!?」
「だって、私たちを襲う気なんでしょう? 自己防衛するに決まってんじゃん!」
「ふざけんな!! その女からヤっちまえ!」

 大勢でかかってくるのかよ。
 どこまで腐ってんだこいつらは。

 合気道と柔道技を駆使して、なんとか五人は地面に叩きつけたが、体力の消耗が激しい。
 しかも、息の上がっているところで最初にミーナに近づいていたボスらしき男が卑怯なことをしてきた。

「いやーー!!」
「たすけてぇ……」

 無防備のアルマとエレナに対して人質みたいなことをしてきたのだ。
 これでは反撃がとれない。

 せっかく地面に叩きつけたのに、男たちがむくりと起き上がり、再び私は囲まれてしまった。
 あ、これって絶対にヤバイやつだ。

「よくも恥をかかせてくれたな……」
「てめぇには何倍にもして恥をかかせてやるから覚悟しろ!」
「まずは服を剥ぎ取っちまえ!!」

 反抗をしたくても、すでに私の体力も限界だったし、どうしようもできない。
 はぁ……、貧民街に来ていきなり絶体絶命になるなんて……。
 こんなことになるなら、ブロンダが用意していた毒をあのときに飲んでいたら悲惨な運命を避けられたかもしれないと、再び後悔がはじまる。
 だが、私の服を脱がされそうになったときだった。

「いや、少し待て!!」
「なんでだ!? コイツは俺たちに攻撃を……」
「そうではない。その女は最後にしろ。まずはそいつの仲間が哀れになっていく姿を見せつけてやろう。所詮テメェ一人で何もできない無力な情けない女だと絶望させてやろうぜ」
「さすが兄貴!!」

 おいおいおい、ちょっと待て!
 どこまで貧民街のチンピラはゲスな奴らなんだよ!
 私が思い描いていた想定よりもはるかにクズばかりではないか。

「ふざけないでよ!」

 私はそう言いながら、なんとか二人の男を投げ飛ばして動けなくさせた。
 だが、相手はまだ残っていて、ついに体力の尽きた私は取り押さえられ、地面に叩きつけられた。
 さすがに三人もの男から体を押さえつけられたら抵抗しても勝てない。

「ミーナたちには何もしないで!」
「いやだね! ミーナの親が貧民街を仕切っていた頃はある程度制限をかけられ俺たちも黙っているしかできなかった。だが、そいつがいなくなったおかげでようやく俺たちに自由が手に入ったんだからな!」

「は!? え!? ミーナの親がいなくなったって……?」
「あいつはここ数ヶ月顔を見てねぇ。つまり、ミーナならどういうことかわかるよな?」

「まさか……死んだとでも!?」
「そういうことだ。この地で仕切っていた奴が急に消えた。つまりどこかで死んだと断言してもいい。せっかく帰ってきたのに生憎だったな」
「く……」

 ミーナが悔しそうにしていた。
 あぁ、私の判断は失敗だったようだな。
 やっぱり私一人で貧民街へ来るべきだったのだ。
 わざわざ危険な目に遭わせてしまうなんて……。

 もうどうしようもできない。
 折角前世の記憶があるのに、何もできないなんて情けない。
 私は見ていられないので目を瞑り、現状を見ないように逃げようとした。

「ぐふぅっ!!」
「え?」

 突然、ボスらしい男の悲鳴が聞こえたので再び目を開ける。
 いつの間にか、体格がよくて見ただけでもかなり強いと思えるような男が、ボスを苦しめていたのだ。
 味方か!?
 一体誰!?

「お父さん!!」

 ミーナが涙をこぼしながら口にした言葉だった。
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