上 下
8 / 22

8 ブルライン視点

しおりを挟む
「ブルライン~、こっちの店で食べたいんだけど」
「このブローチと、アクセサリー、あ、この服も欲しいわぁ」
「私にも指輪買ってくださらない?」

 ここ最近、キャンベルが変わってきてしまった気がする。
 やたらと強請ってくるようになったのだ。
 本当に愛する幼馴染だからこそ、希望はかなえるようにしたいのだが……。

「キャンベルよ……少々無理がある。父から得ている小遣いでは足りないのだよ」
「そんなぁ……だって、私にはブルラインしかいないのに……そんなに私のこと嫌いになってしまったというの?」
「いや、そんなわけないだろう」
「そうでしょう……やっぱりなんだかんだで婚約を目前にして、あの女の方を意識するようになっちゃったんでしょ」
「いや……違うぞ」

 なぜかは知らないがキャンベルがわがままになってしまった。

「もう……ブルラインに見捨てられたら生きていく気もしないんだから……言っちゃうわよ?」
「おいおい、今日はまだイチャイチャしていないぞ……」
「そうじゃなくて! あの女に言いふらしますよってことよ」

 嫌な予感しかしなかった。キャンベルは都合が悪くなると脅してくる悪い癖があるからだ。

「何を言うつもりだ……」
「私とブルラインが恋仲ってことを」
「ばかな! そんなことすればキャンベルだって未来はないだろう」
「だってどうせ捨てられてしまうのなら私なんてどうなったって良いわよ。ブルラインと豪華で幸せな毎日しか考えられないわ」

 キャンベルの目が本気だということはすぐにわかった。
 このままではまずいし、バレないためになんとかして金を集めるしかない。
 キャンベルが変なことをしないように、なるべく言うことを聞くしか未来はないのかもしれない。
 それでも幼馴染のキャンベルは愛おしく思ってしまう。

 ♢

「今日は、ここのお店でご飯食べましょう」
「ここはやたら高いし……」
「大丈夫よ、この店、後払いもできるし」

 すでに私のお金はない……しかし無ければ不倫がバレてしまう。
 間も無く結婚するわけだし、アエルなら相当な財産を持っているはずだ。

 貸してもらえるように頼んでみるか。
 今までアエルに断られたことなどないから、何とかなるはずだ。
 それにこの店、私だって前々から一度は入ってみたかったし、後のことはなんとかなるだろう。

「わかった……入ろう」

 この日、私は初めて代金の支払いを月末に払う『付け払い』をするのだった。
 一萬紙幣五枚分ならなんとか貸してくれるはずだ……。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】妹が旦那様とキスしていたのを見たのが十日前

地鶏
恋愛
私、アリシア・ブルームは順風満帆な人生を送っていた。 あの日、私の婚約者であるライア様と私の妹が濃厚なキスを交わすあの場面をみるまでは……。 私の気持ちを裏切り、弄んだ二人を、私は許さない。 アリシア・ブルームの復讐が始まる。

【完】ある日、俺様公爵令息からの婚約破棄を受け入れたら、私にだけ冷たかった皇太子殿下が激甘に!?  今更復縁要請&好きだと言ってももう遅い!

黒塔真実
恋愛
【2月18日(夕方から)〜なろうに転載する間(「なろう版」一部違い有り)5話以降をいったん公開中止にします。転載完了後、また再公開いたします】伯爵令嬢エリスは憂鬱な日々を過ごしていた。いつも「婚約破棄」を盾に自分の言うことを聞かせようとする婚約者の俺様公爵令息。その親友のなぜか彼女にだけ異様に冷たい態度の皇太子殿下。二人の男性の存在に悩まされていたのだ。 そうして帝立学院で最終学年を迎え、卒業&結婚を意識してきた秋のある日。エリスはとうとう我慢の限界を迎え、婚約者に反抗。勢いで婚約破棄を受け入れてしまう。すると、皇太子殿下が言葉だけでは駄目だと正式な手続きを進めだす。そして無事に婚約破棄が成立したあと、急に手の平返ししてエリスに接近してきて……。※完結後に感想欄を解放しました。※

欲に負けた婚約者は代償を払う

京月
恋愛
偶然通りかかった空き教室。 そこにいたのは親友のシレラと私の婚約者のベルグだった。 「シレラ、ず、ずっと前から…好きでした」 気が付くと私はゼン先生の前にいた。 起きたことが理解できず、涙を流す私を優しく包み込んだゼン先生は膝をつく。 「私と結婚を前提に付き合ってはもらえないだろうか?」

その令嬢は、実家との縁を切ってもらいたい

キョウキョウ
恋愛
シャルダン公爵家の令嬢アメリは、学園の卒業記念パーティーの最中にバルトロメ王子から一方的に婚約破棄を宣告される。 妹のアーレラをイジメたと、覚えのない罪を着せられて。 そして、婚約破棄だけでなく公爵家からも追放されてしまう。 だけどそれは、彼女の求めた展開だった。

【完結】結婚式前~婚約者の王太子に「最愛の女が別にいるので、お前を愛することはない」と言われました~

黒塔真実
恋愛
挙式が迫るなか婚約者の王太子に「結婚しても俺の最愛の女は別にいる。お前を愛することはない」とはっきり言い切られた公爵令嬢アデル。しかしどんなに婚約者としてないがしろにされても女性としての誇りを傷つけられても彼女は平気だった。なぜなら大切な「心の拠り所」があるから……。しかし、王立学園の卒業ダンスパーティーの夜、アデルはかつてない、世にも酷い仕打ちを受けるのだった―― ※神視点。■なろうにも別タイトルで重複投稿←【ジャンル日間4位】。

【完結】婚約者は自称サバサバ系の幼馴染に随分とご執心らしい

冬月光輝
恋愛
「ジーナとはそんな関係じゃないから、昔から男友達と同じ感覚で付き合ってるんだ」 婚約者で侯爵家の嫡男であるニッグには幼馴染のジーナがいる。 ジーナとニッグは私の前でも仲睦まじく、肩を組んだり、お互いにボディタッチをしたり、していたので私はそれに苦言を呈していた。 しかし、ニッグは彼女とは仲は良いがあくまでも友人で同性の友人と同じ感覚だと譲らない。 「あはは、私とニッグ? ないない、それはないわよ。私もこんな性格だから女として見られてなくて」 ジーナもジーナでニッグとの関係を否定しており、全ては私の邪推だと笑われてしまった。 しかし、ある日のこと見てしまう。 二人がキスをしているところを。 そのとき、私の中で何かが壊れた……。

あなたは旦那様にふさわしくないなんて側室ですらない幼馴染の女性にけなされたので、私は離婚して自分の幼馴染と結婚しようと思います

ヘロディア
恋愛
故郷に愛している男がいるのに、無理やり高貴な貴族に嫁がされた主人公。しかし、そこでの夫には、幼馴染を名乗る女が毎晩のようにやって来て、貴族の夫婦のすべき営みを平然とやってのけていた。 挙句の果てには、その女に「旦那様にふさわしくないし、邪魔」と辛辣な態度を取られ、主人公は故郷の男のもとへ向かう決意を固めたが…

愛する人の手を取るために

碧水 遥
恋愛
「何が茶会だ、ドレスだ、アクセサリーだ!!そんなちゃらちゃら遊んでいる女など、私に相応しくない!!」  わたくしは……あなたをお支えしてきたつもりでした。でも……必要なかったのですね……。

処理中です...