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35話 フィアラは遠慮していた
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あわわわわわ……。
私は国王陛下から、お褒めの言葉と報酬までいただいてしまった。
何年かはなにもしなくても生きていけてしまうくらいの巨額を……。
どんなにお金をもらっても、執事長をやめたりサボったりするつもりはない。
執事業務は楽しくて楽しくて仕方がないのだ。
とはいえ、額が額。
王宮からの帰り際、馬車の中でダイン様に確認してしまった。
「やはりこの大金は返したほうが良かったような……」
「国が総力をあげてもなかなか捕まえることのできなかった裏組織をフィアラが潰したんだ。正当な金だと思うが」
私はあくまで元お父様の不正の証拠を掴むために色々と提案しただけだ。
裏組織が捕まったのはただの偶然である。
偶然起きてしまったことで報酬をいただいてしまうことに少々抵抗があるのだ。
「フィアラは謙虚だからな……、戸惑うのも無理はないか。どうしても納得できず返したいならば、別の形で陛下に恩返しすれば良いと思う」
「恩返しですかぁ。んー……、とは言っても私にできることとしたら、使用人や執事のお仕事か、国務のお手伝いくらいですけど」
「十分すぎるだろう。それに、陛下から『今後も国務はフィアラも正式に雇いたい』と言っていたではないか」
「嬉しい限りですね」
「やれやれ……。ここまで仕事を楽しくできるなんて羨ましくも思う」
ダイン様と話していて、このお金は受け取ってもバチはあたらないのかなと思えるようにはなった。
なにかあったときのために、この大金は大事に保管しておくことにした。
♢
侯爵邸に帰り、屋敷の中へ入るとジェガルトさんが待っていましたといったような顔をして出迎えてくれた。
「おかえりなさいませ。フィアラ様に大事な客人がお見えです。応接室で待っておりますので、どうかそのまま向かっていただきたいと」
「私にですか? 今度は誰だろう……」
「今回は私の口からは言えません。直接お会いしていただきたく思いますので」
裏組織を壊滅させた功績がなぜか私になっている。
そのため、ここ最近は私に挨拶しに来てくださるのだ。
上位貴族や王族、さらには王宮秘密組織の諜報部隊の方々までもが……。
おかげでこう言う場合の挨拶も慣れたものだ。
いつものように応接室の扉を開ける。
年齢は三十代後半くらいの女性。
私と似たような髪型をしているものの、服装や身につけているものは決して良品とは思えない。
最近高貴な方々と会いすぎていているため、無意識に比べてしまって申しわけなく思ってしまう。
それでも相手が誰であろうと私は今までと同じ動作をした。
「お待たせして申しわけございません。フィアラと申します」
両手を前で繋ぎ、そのまま深く頭を下げて挨拶した。
普段ならすぐに相手も挨拶をしてくるのだが、今回はなかなか返事が返ってこない。
仕方なく身体を元の体勢に戻したのだが、なぜか女性はボロボロと大粒の涙をこぼしていた。
「フィアラ……」
「はい?」
「ごめんね……!」
なぜか私は謝罪されてしまった。
もちろんそのようなことをされた覚えもないし、初対面……だと思う。たぶん。
私の隣ではジェガルトさんまで泣きそうな雰囲気だ。
いったいどういうことなのだろう……。
「フィアラと最後に会ったのは、あなたがようやく立てるようになったころだから覚えていないのも当然よね。信じてもらえないかもしれないけれど、あなたのお母さんでリエルよ」
「えっ!?」
私は国王陛下から、お褒めの言葉と報酬までいただいてしまった。
何年かはなにもしなくても生きていけてしまうくらいの巨額を……。
どんなにお金をもらっても、執事長をやめたりサボったりするつもりはない。
執事業務は楽しくて楽しくて仕方がないのだ。
とはいえ、額が額。
王宮からの帰り際、馬車の中でダイン様に確認してしまった。
「やはりこの大金は返したほうが良かったような……」
「国が総力をあげてもなかなか捕まえることのできなかった裏組織をフィアラが潰したんだ。正当な金だと思うが」
私はあくまで元お父様の不正の証拠を掴むために色々と提案しただけだ。
裏組織が捕まったのはただの偶然である。
偶然起きてしまったことで報酬をいただいてしまうことに少々抵抗があるのだ。
「フィアラは謙虚だからな……、戸惑うのも無理はないか。どうしても納得できず返したいならば、別の形で陛下に恩返しすれば良いと思う」
「恩返しですかぁ。んー……、とは言っても私にできることとしたら、使用人や執事のお仕事か、国務のお手伝いくらいですけど」
「十分すぎるだろう。それに、陛下から『今後も国務はフィアラも正式に雇いたい』と言っていたではないか」
「嬉しい限りですね」
「やれやれ……。ここまで仕事を楽しくできるなんて羨ましくも思う」
ダイン様と話していて、このお金は受け取ってもバチはあたらないのかなと思えるようにはなった。
なにかあったときのために、この大金は大事に保管しておくことにした。
♢
侯爵邸に帰り、屋敷の中へ入るとジェガルトさんが待っていましたといったような顔をして出迎えてくれた。
「おかえりなさいませ。フィアラ様に大事な客人がお見えです。応接室で待っておりますので、どうかそのまま向かっていただきたいと」
「私にですか? 今度は誰だろう……」
「今回は私の口からは言えません。直接お会いしていただきたく思いますので」
裏組織を壊滅させた功績がなぜか私になっている。
そのため、ここ最近は私に挨拶しに来てくださるのだ。
上位貴族や王族、さらには王宮秘密組織の諜報部隊の方々までもが……。
おかげでこう言う場合の挨拶も慣れたものだ。
いつものように応接室の扉を開ける。
年齢は三十代後半くらいの女性。
私と似たような髪型をしているものの、服装や身につけているものは決して良品とは思えない。
最近高貴な方々と会いすぎていているため、無意識に比べてしまって申しわけなく思ってしまう。
それでも相手が誰であろうと私は今までと同じ動作をした。
「お待たせして申しわけございません。フィアラと申します」
両手を前で繋ぎ、そのまま深く頭を下げて挨拶した。
普段ならすぐに相手も挨拶をしてくるのだが、今回はなかなか返事が返ってこない。
仕方なく身体を元の体勢に戻したのだが、なぜか女性はボロボロと大粒の涙をこぼしていた。
「フィアラ……」
「はい?」
「ごめんね……!」
なぜか私は謝罪されてしまった。
もちろんそのようなことをされた覚えもないし、初対面……だと思う。たぶん。
私の隣ではジェガルトさんまで泣きそうな雰囲気だ。
いったいどういうことなのだろう……。
「フィアラと最後に会ったのは、あなたがようやく立てるようになったころだから覚えていないのも当然よね。信じてもらえないかもしれないけれど、あなたのお母さんでリエルよ」
「えっ!?」
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