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17話 フィアラはダインの仕事を手伝った
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「あのサボり魔め! 本当にどうしようもない子爵だ……。そろそろ制裁を加えねばならんな」
「と、言うわけですから同じような仕事内容でしたら私でもできるかと……。せめてダイン様のお手伝いという形でやってはいけませんか?」
私がそう言うと、侯爵様はダイン様の表情を観察した。
「俺は……、元気だから問題ない!」
ダイン様は元気なフリをして隠そうとするが、明らかに辛そうな表情をしている。
「フィアナよ、本日に限り特別任務を与える。家の仕事はしなくて良いからダインの仕事のサポートを頼みたい」
「承知しました」
「……俺としたことが情けない。すまないな、フィアナ」
「ゆっくり休んで早く回復くださいね」
さて、久しぶりに書類の仕事を頑張りますか。
あれ?
子爵邸のときは、苦しみながら頑張ってやらなきゃと思いながら作業をしていた。
だが、今はなぜかワクワクしている。
それに家の仕事はしなくて良いとまで言われてしまったような……。
こんなにダラけてしまって良いのだろうか。
しっかりと書類作業をチェックしてから、掃除と夕飯の準備くらいはしておかなきゃ。
♢
「全てチェックが終わりました。ミスだらけで大変でした……」
侯爵様の部屋に、完成した書類を届けに来た。
ダイン様はよほど辛かったのか、すぐに気絶する勢いで睡眠に入った。
むしろ、体調不良のときに睡眠ができるなら回復が早くなるからそっとして、私は黙々と作業をしていたのだ。
「まさか……。まだ夕方にもなっていないのだぞ。あれだけの量をこんなに早く? 念のために確認させてもらっても?」
「もちろんです。ご確認をお願いいたします」
書類を侯爵様に渡し、それを一枚ずつ目視していく。
侯爵様の瞳が、左から右へと、何度もすごいペースで動いている。
やがて、私のことを信じられないといったような顔をしていた。
「ざっくりと確認しただけではあるが……。デジョレーンによるミス表記が、全て修正されている。素晴らしい正確さとスピードだ」
「ダイン様の負担も軽くなったので、少しでも早く元気になってくれれば良いのですが」
「はっはっは。キミはこんなに貢献してくれたにもかかわらず、ダインのことばかりを気にかけるのだな。もっとこう、仕事をやったのだぞとアピールしてきても良いというのに」
「元気になってもらいたいなと思ってやったことですから」
ダイン様は、このあと夕食を食べに食堂部屋まで来てくれた。
顔色も良くなっていて、少しだけごはんを食べられるようになっていた。
今日の夕食はダイン様専用に水分多めのタマゴ粥を作っておいた。
美味しそうにゆっくりとすすってくれた。
「フィアラのおかげで、ずいぶんと楽になった。迷惑をかけてしまいすまなかった」
「早く元気になってくださいね」
私はダイン様に微笑みながら、飲み物を注いだ。
すると、ダイン様の顔が再び真っ赤になってしまった。
「大丈夫ですか?」
「気にするな。もう問題はない」
「顔が……」
「良いから! 俺は大丈夫だ。ありがとう」
私は心配していたのだが、翌日にはすっかり元気になったダイン様の姿を見ることができたのだった。
「ところで、デジョレーン子爵のことだが……」
「はい?」
朝食時、突然侯爵様が食事を止め、私に真剣な表情で話しはじめた。
「重い制裁を加えることにした。キミに仕事を任せていたことも判明したし、最近の彼の仕事ミスは重大なものでもあるからな」
私はこの件に関しては特になにも言うことはない。
これはお父様の自業自得なのだろうから。
「と、言うわけですから同じような仕事内容でしたら私でもできるかと……。せめてダイン様のお手伝いという形でやってはいけませんか?」
私がそう言うと、侯爵様はダイン様の表情を観察した。
「俺は……、元気だから問題ない!」
ダイン様は元気なフリをして隠そうとするが、明らかに辛そうな表情をしている。
「フィアナよ、本日に限り特別任務を与える。家の仕事はしなくて良いからダインの仕事のサポートを頼みたい」
「承知しました」
「……俺としたことが情けない。すまないな、フィアナ」
「ゆっくり休んで早く回復くださいね」
さて、久しぶりに書類の仕事を頑張りますか。
あれ?
子爵邸のときは、苦しみながら頑張ってやらなきゃと思いながら作業をしていた。
だが、今はなぜかワクワクしている。
それに家の仕事はしなくて良いとまで言われてしまったような……。
こんなにダラけてしまって良いのだろうか。
しっかりと書類作業をチェックしてから、掃除と夕飯の準備くらいはしておかなきゃ。
♢
「全てチェックが終わりました。ミスだらけで大変でした……」
侯爵様の部屋に、完成した書類を届けに来た。
ダイン様はよほど辛かったのか、すぐに気絶する勢いで睡眠に入った。
むしろ、体調不良のときに睡眠ができるなら回復が早くなるからそっとして、私は黙々と作業をしていたのだ。
「まさか……。まだ夕方にもなっていないのだぞ。あれだけの量をこんなに早く? 念のために確認させてもらっても?」
「もちろんです。ご確認をお願いいたします」
書類を侯爵様に渡し、それを一枚ずつ目視していく。
侯爵様の瞳が、左から右へと、何度もすごいペースで動いている。
やがて、私のことを信じられないといったような顔をしていた。
「ざっくりと確認しただけではあるが……。デジョレーンによるミス表記が、全て修正されている。素晴らしい正確さとスピードだ」
「ダイン様の負担も軽くなったので、少しでも早く元気になってくれれば良いのですが」
「はっはっは。キミはこんなに貢献してくれたにもかかわらず、ダインのことばかりを気にかけるのだな。もっとこう、仕事をやったのだぞとアピールしてきても良いというのに」
「元気になってもらいたいなと思ってやったことですから」
ダイン様は、このあと夕食を食べに食堂部屋まで来てくれた。
顔色も良くなっていて、少しだけごはんを食べられるようになっていた。
今日の夕食はダイン様専用に水分多めのタマゴ粥を作っておいた。
美味しそうにゆっくりとすすってくれた。
「フィアラのおかげで、ずいぶんと楽になった。迷惑をかけてしまいすまなかった」
「早く元気になってくださいね」
私はダイン様に微笑みながら、飲み物を注いだ。
すると、ダイン様の顔が再び真っ赤になってしまった。
「大丈夫ですか?」
「気にするな。もう問題はない」
「顔が……」
「良いから! 俺は大丈夫だ。ありがとう」
私は心配していたのだが、翌日にはすっかり元気になったダイン様の姿を見ることができたのだった。
「ところで、デジョレーン子爵のことだが……」
「はい?」
朝食時、突然侯爵様が食事を止め、私に真剣な表情で話しはじめた。
「重い制裁を加えることにした。キミに仕事を任せていたことも判明したし、最近の彼の仕事ミスは重大なものでもあるからな」
私はこの件に関しては特になにも言うことはない。
これはお父様の自業自得なのだろうから。
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