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circus man
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虚しいかな、7日しかない命なのにその鳴き声をテーマパークの軽快なメロディにかき消されるセミにすこし同情した。7月も5日をすぎたころ、なぜか俺は、政宗さんと政宗さんと愉快な仲間たちとテーマパークに来ていた。
「…なんで?」
「どしたの冰澄くん」
「尚也くん…おかしいと思わない?」
「?」
「明らかにカタギじゃない人がテーマパークに」
「ああ!ん~もうおれはなれたからね!」
「ああ…うん…うん。俺も慣れた…」
全力でテーマパークを楽しむつもりであろう尚也くんは、さっそく北谷さんを財布、ではなくお願いしてキャラクターが催されたポップコーンを買っていた。
「冰澄」
「はい?」
「ん」
言葉少なに俺に園内の地図とパンフレットを渡した政宗さんの装いは、もちろんカジュアルだ。隠しきれていない何かが漂ってはいるが、実は俺はいつもの黒シャツスーツの方が好きだったりする、絶対言わないけど。
俺がにこにこ政宗さんを見たせいか政宗さんは訝しげに口を開いた。
「どうした、んな可愛い顔してよ」
「可愛くないです。かっこいいって言ってください」
「かっこいいかっこいい、お前は本当にかっこいいよ」
「愛が感じられないですね」
「愛は感じてくれよ?」
安っぽいリップ音付きのキスを額に受けながら俺はパンフレットを開いた。かわいいというより闇を感じる虚ろな目をしたパークのキャラクターの写真を見ていると、やけに周りがさっきより静かになった。
「あれ?尚也くんたちは?」
「北谷は、片桐弟に引っ張られて行った、片桐は……クソ、最悪だ」
「えっ?」
急な暴言に驚いて振り向くと、政宗さんの機嫌を損ねた原因がわかった。
「あれ!?片桐さんと高梨さん、…と?」
「冰澄く~ん!」
何故かいる高梨さんとその近くにいた男の人が俺に手を振った。タレ目がちで口元のほくろがなんだか、魅力的な男の人。俺を知っているようだし知り合いだと思うが、この声には聞き覚えがある。
いやいやそんなまさか。
「楓さん!?!?!?」
「あらすっごいびっくりしてる、この姿は初めてね。はじめまして!前園楓です!」
語尾にハートが着きそうな勢いに、ちょっとめまいがしたけどよくよく見ればなんとなく楓さんだ。
「びっくりしました、」
「だろうな」
「なんか言いたげだなおいくそヤクザ」
「んだと化け物よォ…」
「ちょっとちょっとやめてくださいって」
今にも喧嘩しそうな2人も間に入って止めていると楓さんの後ろから何かを感じた。きらきらしている、第一印象だ。
大きな双眼が俺を羨望の交じった視線で貫いた。
「えっと、この子は?」
「あっ初めましてね!冰澄くん、この子うちの息子君。中学三年生」
「楓さんのむす…」
「冰澄さん!!!!!」
「はい!!!??」
飛び出した少年は俺に詰め寄ると双眼を余計に輝かせた。じっと見つめ返す、はたと気づいた。
この子、誰かに似てる気がする。
楓さんは前に息子は義理の息子で血縁はないと言っていた。
楓さんじゃない誰かだ。
あっ。
ピタリとハマった解答に正解を求めれば彼は細長い瞳をもっと細くしてにこやかに笑った、口元の人差し指の意味だけが俺を待っていた。太陽の光に反射した短い金髪が、穏やかに笑う。
「冰澄さん!!!」
「えっ…あっ…はい!」
「俺俺!俺!前園桜介っていいます!!!!!」
「おーすけくん?」
「はい!おれあの…!冰澄さんの大ファンで!俺!うわマジで本物だやばい…」
ぴょんぴょんと俺の目の前で跳ねる新キャラ(は失礼かもしれないが)に俺は、たじろいだ。
「…なんで?」
「どしたの冰澄くん」
「尚也くん…おかしいと思わない?」
「?」
「明らかにカタギじゃない人がテーマパークに」
「ああ!ん~もうおれはなれたからね!」
「ああ…うん…うん。俺も慣れた…」
全力でテーマパークを楽しむつもりであろう尚也くんは、さっそく北谷さんを財布、ではなくお願いしてキャラクターが催されたポップコーンを買っていた。
「冰澄」
「はい?」
「ん」
言葉少なに俺に園内の地図とパンフレットを渡した政宗さんの装いは、もちろんカジュアルだ。隠しきれていない何かが漂ってはいるが、実は俺はいつもの黒シャツスーツの方が好きだったりする、絶対言わないけど。
俺がにこにこ政宗さんを見たせいか政宗さんは訝しげに口を開いた。
「どうした、んな可愛い顔してよ」
「可愛くないです。かっこいいって言ってください」
「かっこいいかっこいい、お前は本当にかっこいいよ」
「愛が感じられないですね」
「愛は感じてくれよ?」
安っぽいリップ音付きのキスを額に受けながら俺はパンフレットを開いた。かわいいというより闇を感じる虚ろな目をしたパークのキャラクターの写真を見ていると、やけに周りがさっきより静かになった。
「あれ?尚也くんたちは?」
「北谷は、片桐弟に引っ張られて行った、片桐は……クソ、最悪だ」
「えっ?」
急な暴言に驚いて振り向くと、政宗さんの機嫌を損ねた原因がわかった。
「あれ!?片桐さんと高梨さん、…と?」
「冰澄く~ん!」
何故かいる高梨さんとその近くにいた男の人が俺に手を振った。タレ目がちで口元のほくろがなんだか、魅力的な男の人。俺を知っているようだし知り合いだと思うが、この声には聞き覚えがある。
いやいやそんなまさか。
「楓さん!?!?!?」
「あらすっごいびっくりしてる、この姿は初めてね。はじめまして!前園楓です!」
語尾にハートが着きそうな勢いに、ちょっとめまいがしたけどよくよく見ればなんとなく楓さんだ。
「びっくりしました、」
「だろうな」
「なんか言いたげだなおいくそヤクザ」
「んだと化け物よォ…」
「ちょっとちょっとやめてくださいって」
今にも喧嘩しそうな2人も間に入って止めていると楓さんの後ろから何かを感じた。きらきらしている、第一印象だ。
大きな双眼が俺を羨望の交じった視線で貫いた。
「えっと、この子は?」
「あっ初めましてね!冰澄くん、この子うちの息子君。中学三年生」
「楓さんのむす…」
「冰澄さん!!!!!」
「はい!!!??」
飛び出した少年は俺に詰め寄ると双眼を余計に輝かせた。じっと見つめ返す、はたと気づいた。
この子、誰かに似てる気がする。
楓さんは前に息子は義理の息子で血縁はないと言っていた。
楓さんじゃない誰かだ。
あっ。
ピタリとハマった解答に正解を求めれば彼は細長い瞳をもっと細くしてにこやかに笑った、口元の人差し指の意味だけが俺を待っていた。太陽の光に反射した短い金髪が、穏やかに笑う。
「冰澄さん!!!」
「えっ…あっ…はい!」
「俺俺!俺!前園桜介っていいます!!!!!」
「おーすけくん?」
「はい!おれあの…!冰澄さんの大ファンで!俺!うわマジで本物だやばい…」
ぴょんぴょんと俺の目の前で跳ねる新キャラ(は失礼かもしれないが)に俺は、たじろいだ。
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