どうしてこんな拍手喝采

ソラ

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After a long time spiral

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(政宗 視点)


「行かなくて、いいんですか?」

その問いは北谷の中で驚くほど響きわ渡ったのか、揺れる瞳は定まり俺を見るためにこちらを向いた。

「さっさと行ってこい。」

「……失礼します」

早足に動いて部屋を出た北谷に俺は小さく息をこぼした。

「俺の周りは、女々しい奴が多いな。」

「女々しいと言うよりは自己責任が強い人たちじゃないですか?」

「どちらにせよ言われるまで気づかない奴らだ。お前が言わなかったら俺もそろそろ言おうかと思ってたが……予想外にお前の言葉が響いたらしい。」

「そうですかね?」

小さく笑う冰澄は、首をかしげた。
高梨の視線が痛いくらい伝わる。何かを見ようと、探ろうと、それはたぶん俺と一緒だろう。
誰だって気になる、まだ高校二年の少年が言う言葉ではない。その裏にある物。

「……冰澄、お前はあるのか。
生きるか死ぬかの境界を、躊躇なく越そうとすることが」

「ありますよ。飛び降りはしませんけど」

「それでも越えることはできるんだろう」

「俺は、水に流されて死にたい。」

かすかに香ったのは、冰澄独特に空気だ。
時間が流れを遅くする。冰澄のいる場所は、どこかで止まっている。かなり、昔で止まっている。

「川でも海でも池でもどこでもいい。ただ、誰にも見つからない場所で死にたい。もう誰にも俺を見つけさせないことができるし、俺の中に誰も入ってこない。」

「そうなれば、独りだ。」

「それでいい、もう何も思いたくない。俺の中にもともとあった音と水の音でいい。心拍数はいらない、もちろん俺の心拍数も。あっていいのは、優しい歌声と鳴り響くギターの音、リズムを刻む足音、それだけでいい」

俺はゆっくりと冰澄に近づきその頬に触れた。

「お前に話さないことがたぶん俺にはたくさんある。話しても話しきれない。話さないのは、まだお前に普通の"高校生活"を送らせたいからかもしれない。」

「俺もう"高校生活"送ってますよ?」

「ああ、それでいい。今はまだ死にたくなってもいい、もうそれでいい、俺が引っ張る。絶対に越えさせない。冰澄、いろんな奴と会って話をしろ、俺が許可するやつ全員に会え、片桐の弟にも、楓の息子にも、俺の部下にも、いろんな奴にあって話をしろ、きっと全員お前が境界を越そうとしたとき引き止めて引きずり戻してくれる。」

呆気にとられる冰澄を見て笑みをこぼした。冰澄の頬を摘んで引っ張る。

「うわぁ、やめてください!」

「お前も大概馬鹿だったな」

ゆっくりと唇を重ねる。

少し照れくさそうに笑った冰澄を見て俺は、決めた。海に行こう、川にも行こう、池にだって湖にだって、連れて行って、そこで死にたいと思うのが嫌になる程幸福な時間を与えてやろう。


--だから邪魔をするな、鷹峰克己
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