どうしてこんな拍手喝采

ソラ

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華やぐ青春の香り

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「冰澄~さっき見てたぞ迷子の子保護者見つかってよかったな」

「あ、佐藤。そっか2-Bってグラウンド出店だっけ。お疲れ。どう?売上」

「おお、冰澄のとこには負けるけどなかなか繁盛してるぜ。たくっよぉ冰澄と誓先輩と明人先輩がいる2-Aに勝てるわけねーよ。」

「ごめんハイスペックが多いんだ。俺は呼び込みくらいしかできないけど」

「何言ってんだお前見た瞬間女子はたちまちケモミミカフェだぜ。くそー西乃芽山軽音部の力半端ねぇな。」

佐藤は首にかけていたタオルで汗を拭きながらニカリと笑った。佐藤とは一年の頃一緒のクラスだった。

「なぁいっちょうちのクラスの宣伝してくれね?横の三年に客取られてんの」

たしかに横の三年の店に客の列がある。

佐藤は一緒のお願いと言いながら頼み込んでくる。仕方がないもう恥なんて捨てた。

「いいよ一回だけね。看板持って。」

「おう!!」

2-Bは確かお好み焼きだ。
俺は一度息をこぼしてからにっこりと笑った。

「2-Bお好み焼きやってまーす!もうそろそろ12時だからみなさんがっつりいってみませんか!校舎の中は甘いもの甘いものしかありませんよー!2-Bのお好み焼き絶品だからよかったら食べて行ってください!一枚で200円!ハーフは100円!お昼ご飯にもってこいですよ!」

「お好み焼きだって。」

「美味しそう。」

「おなかすいたしちょうどいいも」

「がっつり食いてぇわ。」

客がこっちに並んだのを見て俺は佐藤を振り返った。

「これでいい?看板ありがとう。」

「お前の声まじでよく通るよなさすが軽音部。」

「はいはい。俺もう行くよ?呼びこまなきゃ。」

「おう!!ありがとな!今度ジュースおごるわ!」

繁盛しだした2-Bに笑みをこぼしてから、屋台の列を抜けて、校門前のポスターやら呼び込みやらがいっぱいの場所まで来た。

「2-Aケモミミカフェ二階でやってまーす!オススメは、ケモミミカフェパンケーキと自称イケメンのウエイターです!」

「げっ2-Aの波津じゃん。」

「2-Dの後藤くん」

「お前と並んで呼び込みしたくねぇ…あ、2時からの軽音部見に行くからな。」

「ありがとう後藤くん。」

後藤くんはツンデレだという新しいことを知った。


12時をちょっと過ぎればさすが西乃芽山と思うほどの人が大量にやってきた。
近所の人にとっては夏祭り感覚なのだ。

「2-Aケモミミカフェやってますよー」

「あ!軽音部のボーカルの子だ」

「本当だー!2-Aね。行ってくるー!」

「ありがとうございます!」

たぶん走り回ってる先輩たちに謝ってから確実に人を入れていった。
不意に周りがざわついたのを感じて、みんなの視線が集まる受付を見た。

うわ……すごいイケメンだ。

長身のすごく顔の整った人がいる。

さすが西乃芽山、きっと在学生のお兄さんだろう。西乃芽山は無駄に美男美女が多いので有名だ。

「2-Aケモミミカフェやってまーす」

「ケモミミカフェ?珍しいのやってるんだね。」

「あ、こんにちわ!ケモミミカフェどうぞー…って言いたいところなんですけど今たぶん人が多いと思うので13時ごろに行ったらベストです!」

「ありがとう。それくらいに行ってみるよ。呼び込み大変だね。頑張って」

「ありがとうございます!」

ゆったりと微笑んでからイケメンさんは中へ入っていった。

後藤くんに水を買ってきてもらいそれを飲みつつ呼び込みをしている地さっきとは比じゃないくらい周りがざまついた。

「うわ、すげー。波津見てみろよイケメン集団。」

「え、なに?」

後藤くんの指差した方向受付を見てみるとすごい身長の高い集団。一人は、2メートル近く、金髪の短髪の人。
二人目は、いつも冷静で表情をあまり表には出さないインテリ系の人。
三人目は眩しく光るスキンヘッド。

そんな人たちにガードされるように歩いてくるボス感を隠しきれてない人。

「……なぁあの集団こっち来てねぇか?」

「後藤くん、休憩、休憩入ったら?」

「突然!?」

「とにかく!休憩入ったらいいと思う!俺は休憩入るから!!」

「待て波津!看板忘れてる!」

「ありがとう後藤くん!ケモミミカフェ来たら優遇するよう言っとくよ!」

「いやいらねーよ!」

後藤くんに背を向け、後藤くん曰くイケメン集団に駆けた。

「冰澄。」

「まさ、むねさん。みなさん…。」

「こんにちわ冰澄さん。ずいぶん珍しい格好だね。」

「似合ってるのがまたなんというか…。」

「社長、独占欲が機嫌に出てますよ。」

各々が好きな感想を述べる中政宗さんはじっと俺を見た。俺も政宗さんを見た。

今日の政宗さんはいつものブラックスーツではなく、黒のパンツに白のシャツ、この格好でも目立ってしまうのは、もう仕方がないことだろう。

1番目を引いてしまうのが、メガネといつもみたいに髪型がピッシリしてないところだ。

いつもは右側を掻き上げた髪型でピシッとなっている。

「政宗さん、今日はなんだか新鮮ですね。」

「ああ、いつものスーツだとさすがに目立つからな。」

「……かっこいい」

ポツリとこぼれた言葉に数秒自分でも気づかなかったが、すぐに気づいて口を両手で覆った。

「なんでもないです!」

俺の言葉に政宗さんたちはすこし笑みをこぼした。

「冰澄、本当は今すぐにでも連れて帰りたい」

「だ、だめですよ。2時からライブなんです!」

「そうか軽音部だったな。その格好では出るなよ。」

「出ません!」

不意に政宗さんがふっと笑った。

本当に不意打ちだった。

「冰澄、顔が赤いな。」

「暑いんですよ、暑いんです!」

「そうか?」

「暑いの!」

俺は看板で顔を隠しつつ、歩き出す。政宗さんは俺の横に並んで、屋台の賑わいを見つつ、俺の頭についている耳を触った。

「ため息が出るほど似合うな。」

「ありがとうございます。結構好評ですよ。」

「…だろうな。」

「?。あ、そういえば楓さんたちもきてますよ」

「進んで会いに行くほどのやつでもない。」

真顔でそんなこと言うものだから苦笑しか出なかった。
校舎の入り口付近までくれば、めっきり人は多くなってくるはずなのにまるで大名行列のごとく俺たちの周りにはほとんどいなかった。

「あー冰澄~。さっきはさんきゅー!」

「あ、佐藤!売上上がった?」

「めっちゃ上がった!マジでありがとう!今度ジュースどころか昼飯おごるわ!」

「一番高い定食ね。」

「ぐっ…!ああわかった!あ、今から休憩だろ?ナンパ気をつけろよー」

佐藤はまだなにか言おうとした。けれどその先はあまり言って欲しくない。

横に政宗さんがいる。

「お前さっきもナンパされてたろ?迷子の前!男にナンパされてんの初めて見たけど女にも気をつけろよ!」

「佐藤のバカ!!」

「突然傷ついた!!」

佐藤に舌を出してから政宗さんの腕を引いて校舎に入った。

「冰澄、冰澄、そんなに引っ張るな。」

「あ!すみません…!」

「いい。……それよりさっきの」

「え?さっきの?何かありました?」


「冰澄さんが頑張ってるね話をそらそうと。」

「高梨さんさすがに怒られるっすよ。」

「やはり学園祭にはナンパがつきものですね。」

「うるさいです!」

折角話をそらそうとしたのに、こういう時に限ってこの人たち俺の味方してくれない。

「ナンパされたのか?」

「ちょ、ちょっとだけ声かけられたくらいですよ。」

「男にか」

「ええっと、はい、まぁ……んぐ!」

言い訳しようと口を開いた瞬間政宗さんにキスされた。政宗さんはしれっとした顔でため息をこぼした。

「早めに来るべきだったな。」

「な、な、何やってるんですか!見られたらどうするんですか!」

「困ることはないだろう?」

「ありますよ…」

政宗さんは意地悪そうに笑うだけだ。この人は本当に読めない。
何してもかっこいいから憎めないし怒れない。




「政宗さんはどこか行きたいところあります?」

ズボンのポケットからパンフレットを取り出しながら聞いてみる。すると後ろで北谷さんたちが一斉に吹き出した。

「社長にそんなこと言うの冰澄さんくらいだねー」

「わ、笑いすぎですよ。…そういえば今日はみなさん政宗さんのこと"社長"って呼ぶんですね?」

「さすがにいつもの呼び方だとばれますから。」

北谷さんは笑いながら答えた。

笑われたことにちょっとむっとしつつ俺はパンフレットを見ながら歩き出した。

「冰澄が行きたいところでいい。」

「俺のでいいんですか?」

政宗さんの顔を見上げながら聞けばふにゃりと政宗さんが笑った。

う…っわー……。

「ああ、お前の好きなところでいい。」

「あ、あ、ありがとうございます」

「?」

突然崩れたように笑うものだから、つい失礼だけどなんだか可愛いなんて思ってしまった。

今日はなんだかいろんなことを知れる。

政宗さんがくしゃりと笑うとちょっと可愛いこととか。

俺は上機嫌でパンフレットの地図を見た。

「あ、お化け屋敷ありますよ。去年はなかったんですよ。」

「行くか?」

「そうですね折角だし行こうかな」

「片桐が嫌がるな。」

「え!?片桐さんおばけ苦手なんですか?」

「社長!バラすのやめてくれませんか!」

「本当なんだ!」

「昔社長室に幽霊がいるだのお祓いだのほざいたことがあった。」

「片桐さん…!」

俺は耐えきれず大声を出して笑ってしまった。
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