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8分の1の生き甲斐
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(視点 政宗)
「冰澄さんは…?」
「寝た。泣き疲れたんだろ」
「そうですか。」
片桐はあからさまに胸を撫で下ろした。それも仕方がない、片桐は冰澄を可愛がっている。
「……どうにか、してあげたいのは山々なのですが」
「今動けば余計あいつの首を締める。それだけは避けたい。……できればあいつの知らないところで解決したいがそれは多分無理だ。」
「ダリオ・クラークですか。」
「あれのせいで台無しだ。」
ため息をこぼしてから、ダリオが去り際俺に渡した手紙を見下ろした。
宛先は書いてない。
「それ、誰からすか?」
「たぶん、ダリオ本人から俺宛てにだ。」
手紙の封を解いて、中身を確かめる。一枚の手紙と、数枚の写真だった。写真に写ってる男には見覚えがある。
「その男、マフィアで今最も危険視されている男ですね。」
北谷の言葉は真実だ。
閉鎖的な組織だという。そもそもこの男の連ねる組織をマフィアといっていいのかさえ曖昧だ。それに組織は表と裏で一つずつ。鷹峯コーポレーションは、世界各地に拠点をおく組織だ。この頃は貿易にも手を出している。
「……鷹峯克巳(たかみねかつみ)、主にヨーロッパで活動してるやつだ。一度だけ見たことあるが……あれは、よくわからん」
「なんだってそいつの写真が?」
片桐の言うように、写真は全部で3枚、1枚目はサングラスにブラックスーツの鷹峯、2枚目は、1枚目と同じ格好で大手企業の社長と話している。
3枚目は、サングラスを外した鷹峯、どこかのパーティのときのだろう。
ワイン片手に大物を相手する様は、優雅で底知れぬ恐怖を感じる。きっとその理由はこの薄気味悪い笑みなのだろう。
「随分、男前ですね。組長と並んだら迫力ありすぎて失神しそうっす」
「たしかに色男ですね。完璧な日本人顏ではありませんし、…ハーフかクオーターですかね?」
「ああ、多分な。珍しいことじゃねぇよ。」
写真を机の上に放り投げてから、封筒に入っている手紙を取り出した。
「組長、まだ一枚入ってます。」
手紙を開こうとした手を止めた。片桐の言葉に封筒に視線を戻せば、確かに何かまだ一枚入っている。
「……また写真か?」
封筒から写真らしき一枚を出して目を見開いた。後ろから北谷と片桐が息をのむ音が聞こえた。
「なんで、冰澄さんの写真が…?」
「この頃に撮られたものではありませんね。頬にガーゼをしてますし」
後ろの会話が右から左に流れた。
バイト帰りだろうか、マフラーをした制服の少年は、信号機の下で信号が変わるのを待っている。
_胸騒ぎがする。
ダリオからの手紙をゆっくりと確実に開いた。
"似ているだろう?"
たった一言、それだけしか書かれていなかった。
冰澄の写真と鷹峯克巳の写真を並べてみる。
「……ああ、目がそっくりだ。」
無意識に溢れた言葉を聞いた北谷が血相を変えて部下に電話をしに出て行った。
「冰澄さんは…?」
「寝た。泣き疲れたんだろ」
「そうですか。」
片桐はあからさまに胸を撫で下ろした。それも仕方がない、片桐は冰澄を可愛がっている。
「……どうにか、してあげたいのは山々なのですが」
「今動けば余計あいつの首を締める。それだけは避けたい。……できればあいつの知らないところで解決したいがそれは多分無理だ。」
「ダリオ・クラークですか。」
「あれのせいで台無しだ。」
ため息をこぼしてから、ダリオが去り際俺に渡した手紙を見下ろした。
宛先は書いてない。
「それ、誰からすか?」
「たぶん、ダリオ本人から俺宛てにだ。」
手紙の封を解いて、中身を確かめる。一枚の手紙と、数枚の写真だった。写真に写ってる男には見覚えがある。
「その男、マフィアで今最も危険視されている男ですね。」
北谷の言葉は真実だ。
閉鎖的な組織だという。そもそもこの男の連ねる組織をマフィアといっていいのかさえ曖昧だ。それに組織は表と裏で一つずつ。鷹峯コーポレーションは、世界各地に拠点をおく組織だ。この頃は貿易にも手を出している。
「……鷹峯克巳(たかみねかつみ)、主にヨーロッパで活動してるやつだ。一度だけ見たことあるが……あれは、よくわからん」
「なんだってそいつの写真が?」
片桐の言うように、写真は全部で3枚、1枚目はサングラスにブラックスーツの鷹峯、2枚目は、1枚目と同じ格好で大手企業の社長と話している。
3枚目は、サングラスを外した鷹峯、どこかのパーティのときのだろう。
ワイン片手に大物を相手する様は、優雅で底知れぬ恐怖を感じる。きっとその理由はこの薄気味悪い笑みなのだろう。
「随分、男前ですね。組長と並んだら迫力ありすぎて失神しそうっす」
「たしかに色男ですね。完璧な日本人顏ではありませんし、…ハーフかクオーターですかね?」
「ああ、多分な。珍しいことじゃねぇよ。」
写真を机の上に放り投げてから、封筒に入っている手紙を取り出した。
「組長、まだ一枚入ってます。」
手紙を開こうとした手を止めた。片桐の言葉に封筒に視線を戻せば、確かに何かまだ一枚入っている。
「……また写真か?」
封筒から写真らしき一枚を出して目を見開いた。後ろから北谷と片桐が息をのむ音が聞こえた。
「なんで、冰澄さんの写真が…?」
「この頃に撮られたものではありませんね。頬にガーゼをしてますし」
後ろの会話が右から左に流れた。
バイト帰りだろうか、マフラーをした制服の少年は、信号機の下で信号が変わるのを待っている。
_胸騒ぎがする。
ダリオからの手紙をゆっくりと確実に開いた。
"似ているだろう?"
たった一言、それだけしか書かれていなかった。
冰澄の写真と鷹峯克巳の写真を並べてみる。
「……ああ、目がそっくりだ。」
無意識に溢れた言葉を聞いた北谷が血相を変えて部下に電話をしに出て行った。
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