短編集

谷町ミネ

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流れる星の願い

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 夜空を見上げると、星が瞬いていた。透き通るような寒さの中、玲奈は一人で丘の上に立っていた。毎年、流星群が見えるこの夜を、彼女はいつも楽しみにしていた。

 玲奈が初めて流れ星を見たのは、小学校の頃だった。あのとき、母が「流れ星に願い事をすると叶うのよ」と教えてくれた。子供だった玲奈は無邪気に、好きなアイスが毎日食べられますように、なんて願いをかけたものだった。あの頃のような素直さを、いつの間にか失ってしまった気がする。

 大人になり、日々の忙しさに追われ、いつしか願い事をすることも忘れてしまった。自分の望みさえも、ぼんやりとした霧の中に消えてしまったように感じていた。だが、流れ星を見るたびに、心の奥に小さな灯火がともるような気がする。

 「……何を願おうか」

 ふと口に出してみたが、言葉が出てこない。叶えたいことなんて、本当は何もないんじゃないか――そんな考えが頭をよぎった。

 そのとき、一筋の流れ星が夜空を駆け抜けた。その光に導かれるように、玲奈は目を閉じ、心の奥に問いかけた。「本当に欲しいものは何?」と。

 ……少しの沈黙が流れたあと、玲奈の心に一つの答えが浮かび上がった。

 「どうか、私がもう一度、自分の心に素直になれますように」

 自分でも驚くほど自然に、その言葉が浮かび上がってきた。気づけば、彼女の目から涙が一筋こぼれ落ち、冷たい夜風がそれをそっと拭っていった。

 玲奈は星空を見上げて微笑んだ。流れ星はもう消えてしまったけれど、願いは確かに心に残っている気がした。そして、少しだけ軽くなった心を抱いて、彼女はゆっくりと家路についた。
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