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第6章
第6章40幕 鏡像<mirror image>
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私は反対側の入口から入ってきてたアリスと目が合います。
するとアリスは口をパクパクとさせていました。
あれは……「本気で行くよ」と言っているように見えましたので、私はコクリと頷きます。
するとニコッと笑ったアリスが数歩下がり、戦闘準備を完了したことを表現します。
私も振り向き、数歩歩きます。
「二回戦第二試合開始ー!」
そうアナウンスがかかります。
私はすぐに腰に携えた【月影斬 クレッセント・アンピュート】を抜刀し、距離を詰めます。
まずは純粋な剣技だけで攻める!
そう考えての行動です。
4秒ほどの疾駆でアリスを剣の範囲に捉え一太刀浴びせます。
それを薄い鏡で防いだアリスがスキル宣言を行います。
「≪鏡の世界≫」
何かがひび割れるパリンという音を聞いた私は困惑します。
そこにはもう一人の私がいて、そして私の動きを鏡像のように再現しています。
いや。鏡像のようにではなく、鏡像そのものなんですね。
そしてここにはいないアリスの声が聞こえます。
『≪写し身≫』
その言葉を聞いた瞬間再びパリンという音が聞こえ、先ほどの世界ではない、現実に帰ってきます。
そして現実に帰ってきた私はさらに驚きます。
アリスが刀を……【月影斬 クレッセント・アンピュート】を持っていました。
「!?」
驚いた私は反射的に後ろに数歩分飛び、距離を開けます。
しかし、すぐに追撃してきたアリスにさらに驚かされます。
アリスの一太刀を何とか受け、思考を巡らせます。
あの追撃の速度は速すぎる。たぶん、ステータスを同一化できるスキルじゃない。相手の武器をコピーした上で、その情報を自分のステータスに上乗せするタイプ。ということは見せていない技は効果がありそうだけど、完全に武器をコピーされてるし、武器の性能はばれてると考えた方がいいかな。
となると残るは【称号】だけど、おそらくこちらもばれていると見た方がいいかな。ということはこのスキルには何かしらの制約があるはず。発動にかかる時間は考えられない。制限時間。これが一番しっくりきます。
ならば、時間が来るまで耐え抜けばいい。
そう考えた私は、【短雷刀 ペインボルト】も抜き、防戦を開始しました。
体感時間ではかなりの時間が経過したころ、一つの違和感に気付きます。
お互いスキルはほぼ発動せず、ただ斬り合っているだけなのに、私だけ消耗が大きいと。
今までの戦闘経験から考えて2倍ほどの疲労感があります。
なるほど。そう言うことですか。
私にもアリスにもダメージが入っていなかったので分かりました。
なるほど。これは決闘ではかなり相性が良いですね。
だから私はアリスの一太刀を無理やり躱し、一撃、軽く皮膚を斬ります。
「っ!」
やはりそうですね。アリスをきったはずですが、ダメージは私に入っています。
私が気付いたことにアリスが気付いたのか距離を取るため飛びましたが、気付いてしまえばこちらのものです。
コピー不可能な技、もしくは、純粋な技術で攻めればいいのです。
本来ならば武器を変えることで対処しますが、今回のルールでは武器の変更ができません。
念の為装備してきた【短雷刀 ペインボルト】が役に立ちますね。
「≪喚起〔ペインボルト〕≫」
【短雷刀 ペインボルト】から精霊が出現します。
力を失ったかの様に光らなくなった【短雷刀 ペインボルト】を鞘に納めます。
「≪サンダー・エンチャント≫」
精霊魔法を行使し、【月影斬 クレッセント・アンピュート】に雷属性を付与します。
そして【月影斬 クレッセント・アンピュート】に元々備わっている≪付与≫により精霊魔法を付与することで、威力を底上げします。
そして、アリスのスキルがもし、すべてのダメージを無効化し私に移す様なものであれば、最初からダメージを受けていれば勝てていたはずです。そうしないということは移せるダメージに限界があるはずです。
そこまで準備をし、攻撃に入ろうとした瞬間、アリスの持っている【月影斬 クレッセント・アンピュート】が雷を纏っていることに気が付きます。
なるほど。こちらの現在の装備状態も完全に再現できるわけですね。
つまりここからは一閃で勝負の決まる世界になった、対等、それも私にとっては有利といえる対等、な条件が生まれたということに他なりません。
「終わりにしましょう」
私が一言呟き、疾駆します。
≪影渡り≫が使えれば、高速移動なんてしなくてもいいのに、と少し心の中で悪態を吐きながら、走り一閃します。
それを大きな動きで回避したアリスに私は≪舞剣≫で追撃します。
「≪斬撃停止≫、≪舞剣:残滓≫」
斬撃を一定時間残せる【月影斬 クレッセント・アンピュート】の≪斬撃停止≫と相性の良い≪舞剣≫スキルの残滓は、斬撃の向き、角度、長さなどを変更するスキルです。正確には、斬撃の起動を保存し、それを変更するスキルなのですが、【月影斬 クレッセント・アンピュート】に≪斬撃停止≫があるので、こちらの方が便利というだけですが。
目の前に斜めに斬ったその斬撃を≪舞剣:残滓≫で正面に伸ばし、左足に直撃させます。
「あぅ!」
この試合でアリスからスキル宣言以外の声を初めて聞きました。
「勝負ありですね」
私は【月影斬 クレッセント・アンピュート】で背中を斬り付け、勝利しました。
「まさかの展開ー! アリスが敗れるー! 二回戦第二試合決着ー! 勝者チェリー!」
司会のNPCがそう騒ぎ立てていますが、疲労状態が酷いことになっている私は早く控室で休みたい、と考えていました。
次の試合が終わり、私は控室に帰ってきてソファーに崩れ落ちます。
「はぁ……疲れた……」
そしてこの後に対戦するのが、二回戦第一戦の勝者なのですが、もう誰が勝ったのか見る余裕もなく、私は深い睡眠の世界へと入っていきました。
to be continued...
するとアリスは口をパクパクとさせていました。
あれは……「本気で行くよ」と言っているように見えましたので、私はコクリと頷きます。
するとニコッと笑ったアリスが数歩下がり、戦闘準備を完了したことを表現します。
私も振り向き、数歩歩きます。
「二回戦第二試合開始ー!」
そうアナウンスがかかります。
私はすぐに腰に携えた【月影斬 クレッセント・アンピュート】を抜刀し、距離を詰めます。
まずは純粋な剣技だけで攻める!
そう考えての行動です。
4秒ほどの疾駆でアリスを剣の範囲に捉え一太刀浴びせます。
それを薄い鏡で防いだアリスがスキル宣言を行います。
「≪鏡の世界≫」
何かがひび割れるパリンという音を聞いた私は困惑します。
そこにはもう一人の私がいて、そして私の動きを鏡像のように再現しています。
いや。鏡像のようにではなく、鏡像そのものなんですね。
そしてここにはいないアリスの声が聞こえます。
『≪写し身≫』
その言葉を聞いた瞬間再びパリンという音が聞こえ、先ほどの世界ではない、現実に帰ってきます。
そして現実に帰ってきた私はさらに驚きます。
アリスが刀を……【月影斬 クレッセント・アンピュート】を持っていました。
「!?」
驚いた私は反射的に後ろに数歩分飛び、距離を開けます。
しかし、すぐに追撃してきたアリスにさらに驚かされます。
アリスの一太刀を何とか受け、思考を巡らせます。
あの追撃の速度は速すぎる。たぶん、ステータスを同一化できるスキルじゃない。相手の武器をコピーした上で、その情報を自分のステータスに上乗せするタイプ。ということは見せていない技は効果がありそうだけど、完全に武器をコピーされてるし、武器の性能はばれてると考えた方がいいかな。
となると残るは【称号】だけど、おそらくこちらもばれていると見た方がいいかな。ということはこのスキルには何かしらの制約があるはず。発動にかかる時間は考えられない。制限時間。これが一番しっくりきます。
ならば、時間が来るまで耐え抜けばいい。
そう考えた私は、【短雷刀 ペインボルト】も抜き、防戦を開始しました。
体感時間ではかなりの時間が経過したころ、一つの違和感に気付きます。
お互いスキルはほぼ発動せず、ただ斬り合っているだけなのに、私だけ消耗が大きいと。
今までの戦闘経験から考えて2倍ほどの疲労感があります。
なるほど。そう言うことですか。
私にもアリスにもダメージが入っていなかったので分かりました。
なるほど。これは決闘ではかなり相性が良いですね。
だから私はアリスの一太刀を無理やり躱し、一撃、軽く皮膚を斬ります。
「っ!」
やはりそうですね。アリスをきったはずですが、ダメージは私に入っています。
私が気付いたことにアリスが気付いたのか距離を取るため飛びましたが、気付いてしまえばこちらのものです。
コピー不可能な技、もしくは、純粋な技術で攻めればいいのです。
本来ならば武器を変えることで対処しますが、今回のルールでは武器の変更ができません。
念の為装備してきた【短雷刀 ペインボルト】が役に立ちますね。
「≪喚起〔ペインボルト〕≫」
【短雷刀 ペインボルト】から精霊が出現します。
力を失ったかの様に光らなくなった【短雷刀 ペインボルト】を鞘に納めます。
「≪サンダー・エンチャント≫」
精霊魔法を行使し、【月影斬 クレッセント・アンピュート】に雷属性を付与します。
そして【月影斬 クレッセント・アンピュート】に元々備わっている≪付与≫により精霊魔法を付与することで、威力を底上げします。
そして、アリスのスキルがもし、すべてのダメージを無効化し私に移す様なものであれば、最初からダメージを受けていれば勝てていたはずです。そうしないということは移せるダメージに限界があるはずです。
そこまで準備をし、攻撃に入ろうとした瞬間、アリスの持っている【月影斬 クレッセント・アンピュート】が雷を纏っていることに気が付きます。
なるほど。こちらの現在の装備状態も完全に再現できるわけですね。
つまりここからは一閃で勝負の決まる世界になった、対等、それも私にとっては有利といえる対等、な条件が生まれたということに他なりません。
「終わりにしましょう」
私が一言呟き、疾駆します。
≪影渡り≫が使えれば、高速移動なんてしなくてもいいのに、と少し心の中で悪態を吐きながら、走り一閃します。
それを大きな動きで回避したアリスに私は≪舞剣≫で追撃します。
「≪斬撃停止≫、≪舞剣:残滓≫」
斬撃を一定時間残せる【月影斬 クレッセント・アンピュート】の≪斬撃停止≫と相性の良い≪舞剣≫スキルの残滓は、斬撃の向き、角度、長さなどを変更するスキルです。正確には、斬撃の起動を保存し、それを変更するスキルなのですが、【月影斬 クレッセント・アンピュート】に≪斬撃停止≫があるので、こちらの方が便利というだけですが。
目の前に斜めに斬ったその斬撃を≪舞剣:残滓≫で正面に伸ばし、左足に直撃させます。
「あぅ!」
この試合でアリスからスキル宣言以外の声を初めて聞きました。
「勝負ありですね」
私は【月影斬 クレッセント・アンピュート】で背中を斬り付け、勝利しました。
「まさかの展開ー! アリスが敗れるー! 二回戦第二試合決着ー! 勝者チェリー!」
司会のNPCがそう騒ぎ立てていますが、疲労状態が酷いことになっている私は早く控室で休みたい、と考えていました。
次の試合が終わり、私は控室に帰ってきてソファーに崩れ落ちます。
「はぁ……疲れた……」
そしてこの後に対戦するのが、二回戦第一戦の勝者なのですが、もう誰が勝ったのか見る余裕もなく、私は深い睡眠の世界へと入っていきました。
to be continued...
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