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第6章
第6章39幕 開始<commencement>
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『一回戦第一試合開始ー!』
私は控室でモニターのようなものを眺めながら自分の出番を待っています。
第一試合は近接格闘スタイルのプレイヤーと中距離での鞭によるスリップダメージで勝利を狙うプレイヤーが戦っています。
お互い勝ち残った時のことを考えているのが、すこし動きが悪い感じがします。
大会の序盤に使用し、勝った戦法は次に多少の対策を持ってこられるはずなので、手の内をあまり見せないような方法で勝つのが好ましいですね。
私もその試合を見て、立ち回りを考えます。
最初の一戦は純粋な剣技のみでの勝負で勝てるのが望ましいですね。
私はそう考えながら【称号】を入れ替えます。
【暗殺者】はあえて残しますが、魔法に関する【称号】は全て外し、ピュアファイターをアピールしていきましょう。
そして珍しく採用した【称号】が【舞剣士】です。
エルマが10個の装備【称号】に採用しているもので、AGIが高ければなかなかの性能を発揮する【称号】です。
汎用的に使える剣スキルの≪舞剣≫が扱え、そして回避性能も高い優秀な【称号】だと思っています。
【称号】の装備を終えた頃には第一回戦が終了し、一回戦第二試合が開始されます。
そちらも、やはりというか、近接戦闘がなされています。
後半に進むにつれて、装備バリエーションが多い、もしくは、手の内が知られてても確実に倒せる実力者ということになります。
私が出場する一回戦第四試合に勝利した場合、おそらく勝ち上がるアリスと二回戦第二試合で当たります。そしてもし、そこに勝てた場合は、先ほどの一回戦第一試合の勝者と一回戦第二試合の勝者が戦って勝利した方と私が対戦することになります。
なのでここはしっかり見ておかないと行けませんね。
『一回戦第二試合決着! 勝者さぶり!』
でしょうね。終始余裕のある立ち回りで、順当と言える勝利でした。
一回戦第二試合が終わった頃、コンコンコンと控室の扉がノックされます。
「一回戦第四試合に出場するタグ19番の方でお間違いないでしょうか」
「あ、はい。そうです」
「では試合開始まで待機する場所までご案内いたします」
なるほど。自分が次対戦する相手は、自分の試合が終わるまで分からず、尚且つ直前の手の内は見れない。ということですね。
これなら少しなら無茶しても、確実な対策を取られる事はないでしょう。
案内された待機場にはモニターもなく、闘技場の入口の横ですが、歓声も聞こえません。
精神統一にはこのような時間が大事なのかもしれませんね。
私はそう思いながら装備をインベントリから取り出します。
魔法刀の【月影斬 クレッセント・アンピュート】ではなく、【ヴァナトシュ・ブレイド】という薄い刃の剣を取り出します。
非常に軽く、剣速が出るので、【舞剣士】と相性が良い剣です。装備効果には特殊なものがありますが、固有のスキルは一つもなく、素材として溶かしたり、エンチャントを行うのが主流の武器です。
ある意味で対戦相手の油断を誘えるかもしれません。
『一回戦第三試合終了!』
その後の勝者アナウンスは聞こえず、試合が終了したことだけがわかります。
何事も無ければ勝者はアリスのはずですが。
「では準備をお願いします」
扉の前に立っていた運営NPCにそう言われ、私は固い椅子から立ち上がり、待機場を出ます。
懐かしいですね。
VRになってからは初めてこの闘技場に入るのですが、何故か懐かしくおもいます。
私と対戦相手が闘技場のスペースに現れた事を確認した司会のNPCがすぅと息を吸い、アナウンスをします。
『一回戦第四試合ー!』
「食らいな!」
開始の音声が聞こえた瞬間、すぐ背後で声がし、後方から振り下ろされるハンマーを背中で感じ取ります。
「≪舞剣:回転≫」
反射的に発動した【舞剣士】のスキルでハンマーの一撃を交わし、そしてハンマーを斬り付けます。
私の一太刀でハンマーが両断された対戦相手は少し驚愕の顔を浮かべていましたが、すぐに格闘戦を仕掛けてきました。
「ふっ! なかなか、いい剣だ!」
この人この武器のことを知らないの? などと考えつつも、足と剣を持っていない左手をうまく使い格闘戦に耐えます。
隙を見つけては斬り付けますが、ギリギリで回避され、致命傷を与えられずにいます。
仕方ありませんね。
私はそう考え、左手であるスキルを発動します。
同時に右手の剣を振り、対戦相手が後ろに下がり、交わしたタイミングでスキルを二重発動します。
「≪舞剣:瞬歩≫、≪手刀≫」
≪舞剣:瞬歩≫を発動し、一瞬で対戦相手との距離を詰め、発動していた≪手刀≫で上半身を袈裟切りにします。
「ぐぅ……!」
致命傷にはなりましたが、HPが多く、勝負を決めるほどではありませんでした。
すぐに反撃の姿勢にうつった対戦相手は拳を私の顔に向けて伸ばしてきますが、その手を≪舞剣:防衛≫で切り落とします。
「……降参」
『一回戦第四試合決着! 勝者チェリー!』
武器を破壊した瞬間に勝利を確信し、油断をしていたら負けていたかもしれません。
そのまま再び運営NPCに連れられ、控室に詰め込まれます。
トーナメント表を確認すると、やはり、次の対戦相手はアリスの様でした。
まるで手の内を知らないアリスに対し、どう戦うべきなのかを考えながら、私は【月影斬 クレッセント・アンピュート】を装備し、念の為に、【短雷刀 ペインボルト】も装備しておくことにしました。
一時間ほどが経ち、一回戦の全試合が消化されました。
私やステイシー、ムンバも勝利し、二回戦へと駒を進めました。
私は二回戦第二試合なので、一回戦が終了した直後、先ほどの待機場へと連れられて行きます。
少しの精神統一、と考え、深呼吸をし始めるとすぐに二回戦第一試合の決着アナウンスが聞こえ、私は闘技場へと向かいました。
to be
私は控室でモニターのようなものを眺めながら自分の出番を待っています。
第一試合は近接格闘スタイルのプレイヤーと中距離での鞭によるスリップダメージで勝利を狙うプレイヤーが戦っています。
お互い勝ち残った時のことを考えているのが、すこし動きが悪い感じがします。
大会の序盤に使用し、勝った戦法は次に多少の対策を持ってこられるはずなので、手の内をあまり見せないような方法で勝つのが好ましいですね。
私もその試合を見て、立ち回りを考えます。
最初の一戦は純粋な剣技のみでの勝負で勝てるのが望ましいですね。
私はそう考えながら【称号】を入れ替えます。
【暗殺者】はあえて残しますが、魔法に関する【称号】は全て外し、ピュアファイターをアピールしていきましょう。
そして珍しく採用した【称号】が【舞剣士】です。
エルマが10個の装備【称号】に採用しているもので、AGIが高ければなかなかの性能を発揮する【称号】です。
汎用的に使える剣スキルの≪舞剣≫が扱え、そして回避性能も高い優秀な【称号】だと思っています。
【称号】の装備を終えた頃には第一回戦が終了し、一回戦第二試合が開始されます。
そちらも、やはりというか、近接戦闘がなされています。
後半に進むにつれて、装備バリエーションが多い、もしくは、手の内が知られてても確実に倒せる実力者ということになります。
私が出場する一回戦第四試合に勝利した場合、おそらく勝ち上がるアリスと二回戦第二試合で当たります。そしてもし、そこに勝てた場合は、先ほどの一回戦第一試合の勝者と一回戦第二試合の勝者が戦って勝利した方と私が対戦することになります。
なのでここはしっかり見ておかないと行けませんね。
『一回戦第二試合決着! 勝者さぶり!』
でしょうね。終始余裕のある立ち回りで、順当と言える勝利でした。
一回戦第二試合が終わった頃、コンコンコンと控室の扉がノックされます。
「一回戦第四試合に出場するタグ19番の方でお間違いないでしょうか」
「あ、はい。そうです」
「では試合開始まで待機する場所までご案内いたします」
なるほど。自分が次対戦する相手は、自分の試合が終わるまで分からず、尚且つ直前の手の内は見れない。ということですね。
これなら少しなら無茶しても、確実な対策を取られる事はないでしょう。
案内された待機場にはモニターもなく、闘技場の入口の横ですが、歓声も聞こえません。
精神統一にはこのような時間が大事なのかもしれませんね。
私はそう思いながら装備をインベントリから取り出します。
魔法刀の【月影斬 クレッセント・アンピュート】ではなく、【ヴァナトシュ・ブレイド】という薄い刃の剣を取り出します。
非常に軽く、剣速が出るので、【舞剣士】と相性が良い剣です。装備効果には特殊なものがありますが、固有のスキルは一つもなく、素材として溶かしたり、エンチャントを行うのが主流の武器です。
ある意味で対戦相手の油断を誘えるかもしれません。
『一回戦第三試合終了!』
その後の勝者アナウンスは聞こえず、試合が終了したことだけがわかります。
何事も無ければ勝者はアリスのはずですが。
「では準備をお願いします」
扉の前に立っていた運営NPCにそう言われ、私は固い椅子から立ち上がり、待機場を出ます。
懐かしいですね。
VRになってからは初めてこの闘技場に入るのですが、何故か懐かしくおもいます。
私と対戦相手が闘技場のスペースに現れた事を確認した司会のNPCがすぅと息を吸い、アナウンスをします。
『一回戦第四試合ー!』
「食らいな!」
開始の音声が聞こえた瞬間、すぐ背後で声がし、後方から振り下ろされるハンマーを背中で感じ取ります。
「≪舞剣:回転≫」
反射的に発動した【舞剣士】のスキルでハンマーの一撃を交わし、そしてハンマーを斬り付けます。
私の一太刀でハンマーが両断された対戦相手は少し驚愕の顔を浮かべていましたが、すぐに格闘戦を仕掛けてきました。
「ふっ! なかなか、いい剣だ!」
この人この武器のことを知らないの? などと考えつつも、足と剣を持っていない左手をうまく使い格闘戦に耐えます。
隙を見つけては斬り付けますが、ギリギリで回避され、致命傷を与えられずにいます。
仕方ありませんね。
私はそう考え、左手であるスキルを発動します。
同時に右手の剣を振り、対戦相手が後ろに下がり、交わしたタイミングでスキルを二重発動します。
「≪舞剣:瞬歩≫、≪手刀≫」
≪舞剣:瞬歩≫を発動し、一瞬で対戦相手との距離を詰め、発動していた≪手刀≫で上半身を袈裟切りにします。
「ぐぅ……!」
致命傷にはなりましたが、HPが多く、勝負を決めるほどではありませんでした。
すぐに反撃の姿勢にうつった対戦相手は拳を私の顔に向けて伸ばしてきますが、その手を≪舞剣:防衛≫で切り落とします。
「……降参」
『一回戦第四試合決着! 勝者チェリー!』
武器を破壊した瞬間に勝利を確信し、油断をしていたら負けていたかもしれません。
そのまま再び運営NPCに連れられ、控室に詰め込まれます。
トーナメント表を確認すると、やはり、次の対戦相手はアリスの様でした。
まるで手の内を知らないアリスに対し、どう戦うべきなのかを考えながら、私は【月影斬 クレッセント・アンピュート】を装備し、念の為に、【短雷刀 ペインボルト】も装備しておくことにしました。
一時間ほどが経ち、一回戦の全試合が消化されました。
私やステイシー、ムンバも勝利し、二回戦へと駒を進めました。
私は二回戦第二試合なので、一回戦が終了した直後、先ほどの待機場へと連れられて行きます。
少しの精神統一、と考え、深呼吸をし始めるとすぐに二回戦第一試合の決着アナウンスが聞こえ、私は闘技場へと向かいました。
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