上 下
241 / 259
第6章

第6章25幕 遊園地<amusement park>

しおりを挟む
 夢の中に板私を外からノックで呼ぶ声が聞こえます。
 「智恵理お嬢様、ご起床の時間にございます」
 「ふぇあ!」
 聞きなれない声に驚き、私はベッドから飛び起きます。
 「ご朝食の準備も整っております。ご準備できましたら、扉の前の者へお申し付けください。食堂までご案内いたします」
 「わかりました」
 私はそう返事をし、ベッドから出て、鏡をチェックします。
 寝癖が酷い。
 一応手櫛で整え、扉を開けます。
 「おはようございます。智恵理様。ではご案内いたします」
 そう言ったメイドに連れられ、私は、食堂へと歩きます。

 「やぁ。チェリー。遅かったね」
 サツキが片手を持ち上げながら、そう言います。
 「おはよう。あれ? ステイシーは?」
 「まだ起きてきていないようだね」
 「和久井が起こしに行っているのですが、まだでございます」
 「きにしなくていいんじゃなーい?」
 永谷の答えに、エルマが返します。
 「先にお食事をと言われましたので、瑠麻お嬢様、智恵理お嬢様、月見お嬢様、琴音お嬢様の分のお食事をご用意させていただきます」
 永谷がそう言うとコック服を着用した人が4人、食事を持って現れます。
 朝食なので軽めに作ってくれたようなので、寝起きの胃も驚かずに消化を始めてくれました。

 朝食を食べ終え、食後のコーヒーを飲みながら、今日の予定を話し合います。
 「今日は特に決めてないんだよね。うちの別荘にご案内したかっただけだし」
 「ならこういうのはどうだ? 遊園地にでも行かないか?」
 サツキがそう提案をしてきます。
 「遊園地? どうして?」
 「いやね。少し取材があってね。良かったらご一緒してくれないかとね」
 「私はいいよ。遊園地とか小学生の時に行ったきりだったし」
 「あたしもかまわないよ。じゃぁ永谷準備して」
 「かしこまりました」
 ステイシーとマオ、もこちねるの意見を聞かず、エルマが永谷にそう告げます。
 「うちには聞かんのかい」
 「マオ、も、聞かれなかった、わ」

 そう言うわけで、特に多くもない荷物をまとめに一度部屋へ帰ってきました。
 ちなみに部屋に帰る際、ステイシーは朝ごはんを食べ損ねることになるので、サンドウィッチを用意する、と永谷が言ってくれました。

 着替えて、出かける準備をした後、荷物を持って私は部屋を出ます。するといつからそこにいたのか、またメイドが立っていまして、荷物を持ってくださるそうなので、おとなしく引き渡します。
 リビングへとやってくると、すでにサツキとマオ、もこちねるがまったりくつろぎモードで待っていました。
 「おまたせ」
 私がそう声を掛けると、もこちねるが、右手をひょいっとあげ、返事をします。
 「ステイシー、まだ起きてこないの?」
 「あぁ。まだ起きていないらしい。そろそろ部屋に突入してもいいんじゃないか?」
 サツキがそう一言呟くと、もこちねるが立ち上がります。
 「そんならまかしとき」
 なぜか腕まくりとサムズアップをしてもこちねるはリビングを出て行きました。

 5分ほどすると、ステイシーがもこちねるによって、半ば引き摺られるように持ってこられました。
 「眠いー」
 「車ん中で寝れるやろ?」
 おかんかよ。

 そうこうしていると、エルマが遊園地で遊ぶに適した格好へとチューンアップして屋て来ました。
 「ふっふっふ。おまたせ諸君! さぁ遊園地へれっつごーだ!」
 エルマの高いテンションを受けて、私も少し、気持ちが高ぶってきます。
 さきほどメイドに預けた荷物はすでに車へと積み込んであるとのことなので、そのまま、永谷が待っている車まで歩き、乗り込みます。
 「皆様、お忘れ物はございませんでしょうか」
 一応の確認かそう声を掛けられますしたので、私達は各々、ない、と伝えます。
 「では出発致します。3時間ほどでおつきになりますのでおくつろぎください」
 そう言って永谷は車を走らせ始めました。

 寝ているステイシーにいたずらをしながら、皆で遊んでいると3時間というものは一瞬で過ぎ、遊園地へと到着しました。
 「懐かしいなー。遊園地ー」
 バッと目を覚ましたステイシーが一番最初におりてそう言いました。
 私達もステイシーに続いて降り、遊園地の雰囲気を確かめます。
 「無理を言ってすまないね。入場券はワタシが全員分支払おう。とはいっても、これは取材の内だから、あとから返って来るんだけどね」
 そうウィンクをしながらチケット売り場へとサツキは歩いていきました。
 「でもほんと遊園地なんて久しぶりだよー」
 「そう、ね。まだ真琴が、中学生に、なる前、だもの」
 「いや。僕そのあとに友達といってるから」
 姉弟の微笑ましい会話を聞きながらサツキを待っていると、永谷を含めた全員分の飲み物も買ってきてくれました。
 「永谷さんもくるかい?」
 「いえ、私は一度本家にお戻りし、そちらでやることがございますので」
 「そうか。それは残念だ。これを」
 そういって飲み物を渡すと、受け取った永谷は深くお辞儀をし、車の中へと戻っていきました。
 「さて、みんな行こうか」
 サツキがそういい歩き出すと、「おー!」と声をあげたエルマともこちねるがサツキに並ぶようについて行ったので、残った私達も、続いていきます。

 「まずはやはりジェットコースターだろうか」
 サツキはそう言いながら、この遊園地で一番人気のジェットコースターへと向かいます。
 週末、ということで人は多く、待ち時間もほどほどに長かったですが、みんなで話しているとその時間は苦ではなく、むしろ楽しい時間と思えました。

 「やっとのれるで!」
 もこちねるがそう言い、列の先頭でぴょこぴょこ跳ねてアピールしています。
 このジェットコースターは椅子が二人掛けなので、サツキとエルマ、私ともこちねる、ステイシーとマオの三組に分かれ、乗り込みます。
 「チェリーこのジェットコースター、写真撮ってくれるんやで」
 「そうなの?」
 知らなかったことなので、もこちねるに聞き返します。
 「あんた近くに住んでるのに来たことないんか?」
 「いや、覚えてなくて」
 「それはしゃーない。二度目の落下の時撮られるから、何かおもろいことしたろ?」
 そう言ってにひっと笑うもこちねるの提案に私は乗りました。
                                      to be continued...
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

仮想空間のなかだけでもモフモフと戯れたかった

夏男
SF
動物から嫌われる体質のヒロインがモフモフを求めて剣と魔法のVRオンラインゲームでテイマーを目指す話です。(なれるとは言っていない) ※R-15は保険です。 ※小説家になろう様、カクヨム様でも同タイトルで投稿しております。

おもしろ夫婦のゲーム・ライフ

石動 守
SF
「ゲームがやりたい~~!」 と魂の叫びを上げる妻に、夫はその場を提供する。 しかし、妻は 「嫌よ! 毎日見てる顔とゲーム内でも一緒とか」  少々愛情を疑う夫であったが、妻の意見を採用する。  さて、VRゲームを始める二人、どんなゲーム・ライフを送ることになるのやら…… *先の長い小説です。のんびり読んで下さい。 *この作品は、「小説家になろう」様、「カクヨム」様でも連載中です。

インフィニティ・オンライン~ネタ職「商人」を選んだもふもふワンコは金の力(銭投げ)で無双する~

黄舞
SF
 無数にあるゲームの中でもβ版の完成度、自由度の高さから瞬く間に話題を総ナメにした「インフィニティ・オンライン」。  貧乏学生だった商山人志はゲームの中だけでも大金持ちになることを夢みてネタ職「商人」を選んでしまう。  攻撃スキルはゲーム内通貨を投げつける「銭投げ」だけ。  他の戦闘職のように強力なスキルや生産職のように戦闘に役立つアイテムや武具を作るスキルも無い。  見た目はせっかくゲームだからと選んだもふもふワンコの獣人姿。  これもモンスターと間違えられやすいため、PK回避で選ぶやつは少ない!  そんな中、人志は半ばやけくそ気味にこう言い放った。 「くそっ! 完全に騙された!! もういっその事お前らがバカにした『商人』で天下取ってやんよ!! 金の力を思い知れ!!」 一度完結させて頂きましたが、勝手ながら2章を始めさせていただきました 毎日更新は難しく、最長一週間に一回の更新頻度になると思います また、1章でも試みた、読者参加型の物語としたいと思っています 具体的にはあとがき等で都度告知を行いますので奮ってご参加いただけたらと思います イベントの有無によらず、ゲーム内(物語内)のシステムなどにご指摘を頂けましたら、運営チームの判断により緊急メンテナンスを実施させていただくことも考えています 皆様が楽しんで頂けるゲーム作りに邁進していきますので、変わらぬご愛顧をよろしくお願いしますm(*_ _)m 吉日 運営チーム 大変申し訳ありませんが、諸事情により、キリが一応いいということでここで再度完結にさせていただきます。

沢山寝たい少女のVRMMORPG〜武器と防具は枕とパジャマ?!〜

雪雪ノ雪
ファンタジー
世界初のフルダイブ型のVRゲーム『Second World Online』通称SWO。 剣と魔法の世界で冒険をするVRMMORPGだ。 このゲームの1番の特徴は『ゲーム内での3時間は現実世界の1時間である』というもの。 これを知った少女、明日香 睡月(あすか すいげつ)は 「このゲームをやれば沢山寝れる!!」 と言いこのゲームを始める。 ゲームを始めてすぐ、ある問題点に気づく。 「お金がないと、宿に泊まれない!!ベットで寝れない!!....敷布団でもいいけど」 何とかお金を稼ぐ方法を考えた明日香がとった行動は 「そうだ!!寝ながら戦えばお金も経験値も入って一石三鳥!!」 武器は枕で防具はパジャマ!!少女のVRMMORPGの旅が今始まる!! ..........寝ながら。

Free Emblem On-line

ユキさん
ファンタジー
今の世の中、ゲームと言えばVRゲームが主流であり人々は数多のVRゲームに魅了されていく。そんなVRゲームの中で待望されていたタイトルがβテストを経て、ついに発売されたのだった。 VRMMO『Free Emblem Online』 通称『F.E.O』 自由過ぎることが売りのこのゲームを、「あんちゃんも気に入ると思うよ~。だから…ね? 一緒にやろうぜぃ♪」とのことで、βテスターの妹より一式を渡される。妹より渡された『F.E.O』、仕事もあるが…、「折角だし、やってみるとしようか。」圧倒的な世界に驚きながらも、MMO初心者である男が自由気ままに『F.E.O』を楽しむ。 ソロでユニークモンスターを討伐、武器防具やアイテムも他の追随を許さない、それでいてPCよりもNPCと仲が良い変わり者。 そんな強面悪党顔の初心者が冒険や生産においてその名を轟かし、本人の知らぬ間に世界を引っ張る存在となっていく。 なろうにも投稿してあります。だいぶ前の未完ですがね。

VRおじいちゃん ~ひろしの大冒険~

オイシイオコメ
SF
 75歳のおじいさん「ひろし」は思いもよらず、人気VRゲームの世界に足を踏み入れた。おすすめされた種族や職業はまったく理解できず「無職」を選び、さらに操作ミスで物理攻撃力に全振りしたおじいさんはVR世界で出会った仲間たちと大冒険を繰り広げる。  この作品は、小説家になろう様とカクヨム様に2021年執筆した「VRおじいちゃん」と「VRおばあちゃん」を統合した作品です。  前作品は同僚や友人の意見も取り入れて書いておりましたが、今回は自分の意向のみで修正させていただいたリニューアル作品です。  (小説中のダッシュ表記につきまして)  作品公開時、一部のスマートフォンで文字化けするとのご報告を頂き、ダッシュ2本のかわりに「ー」を使用しております。

【第1章完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。

Recreation World ~とある男が〇〇になるまでの軌跡〜

虚妄公
SF
新月流当主の息子である龍谷真一は新月流の当主になるため日々の修練に励んでいた。 新月流の当主になれるのは当代最強の者のみ。 新月流は超実戦派の武術集団である。 その中で、齢16歳の真一は同年代の門下生の中では他の追随を許さぬほどの強さを誇っていたが現在在籍している師範8人のうち1人を除いて誰にも勝つことができず新月流内の順位は8位であった。 新月流では18歳で成人の儀があり、そこで初めて実戦経験を経て一人前になるのである。 そこで真一は師範に勝てないのは実戦経験が乏しいからだと考え、命を削るような戦いを求めていた。 そんなときに同じ門下生の凛にVRMMORPG『Recreation World』通称リクルドを勧められその世界に入っていくのである。 だがそのゲームはただのゲームではなく3人の天才によるある思惑が絡んでいた。 そして真一は気付かぬままに戻ることができぬ歯車に巻き込まれていくのである・・・ ※本作品は小説家になろう様、カクヨム様にも先行投稿しております。

処理中です...