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第4章 精霊駆動
第4章51幕 別れ<separation>
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『今みんなどこにいるの?』
パーティーチャットで皆に聞きます。
『今休憩所ー。見るものとか無かったー』
するとステイシーから返事がありました。
『そうなの?』
『修練場は軍事機密だから見せられないってさ』
エルマもそう教えてくれます。
『わかった。じゃぁ休憩所まで戻るね』
『まってるー』
私は休憩所へ向かって歩き出しました。
「おまたせ」
「いや。それほどまってないよ。それより用は済んだのかい?」
「うん。精霊駆動貰えた。でもちょっと変」
「変とはどういうことだい?」
「えっとね。ずっと起点のクエストがわからない状態だったのは話したっけ?」
「あぁ。聞いたね」
「その起点のクエストを『アクアンティア』で見つけたんだけど、それを進行したら精霊駆動がもらえちゃった。その先のクエストが今まだ出てない」
「なるほどね。あぁ。あれじゃないか? 段階クエスト」
「段階クエスト?」
「うん。一つ目のクエストで手に入れたものを加工するときに何かしらのクエストが発生するタイプさ」
あっ。そうかもしれません。
「思うに精霊駆動とやらは、複数の入手方法があるのかもしれないね」
「かもしれないね」
入手する方法が一つだけとは限りませんよね。
「さてこのあとはどうするつもりなのかな?」
「私は本都市に戻ろうかなって」
「じゃぁそれでいいね。皆もいいだろうか?」
サツキがステイシーとエルマに聞きます。
「いいよー」
「いいよ」
「あれ? マオは?」
「マオは馬車で寝てるよ」
「なるほど」
「じゃぁ本都市に戻ろう」
休憩所でクルミと合流します。
「用は済んだ?」
「うん。本都市に行こうと思う」
「わかった。馬車だすね。マオさんは中で寝てる」
「お願いね」
「じゃぁ乗って。皆さんもお乗りください」
「本都市まではちょっと距離があるのでゆっくりお過ごしください」
そう言いながらクルミは馬車を発進させます。
「この旅路が最後になっちゃうんだね」
クルミが少し悲しそうに言います。
「大丈夫。またお世話になるよ」
「だといいな」
私達もクルミも疲れているのか、本都市へ向かう道中会話はほとんどありませんでした。
「もうじき到着です」
「長い間ありがとね」
「ううん。久々に楽しい仕事だった」
「もし、もし早めに支店が開けるようだったらすぐ連絡するから」
「これ受け取って」
そう言って手綱を片手で持ち、カバンに入れていたものを私にくれます。
「これは?」
「精霊紙と精霊筆。これで連絡して」
「わかった。ありがとう」
「待ってるね。溜めたお金でフレンデールだけは引き取ろうと思ってる」
「ならそれは経費だね」
私は小包を渡します。
「受け取れないよ」
「受け取って。今までの仕事っぷりとかそう言うの諸々ひっくるめての最終報酬だから」
「わかった。いつかチェリーのお店で働くときに労働で返す」
「ありがとう」
「じゃぁ到着。皆さんも足元お気をつけてお降りください」
クルミが馬車を停め、私達は馬車から降ります。
「ご利用ありがとうございました。またいつの日にか」
「うん。きっと」
「お世話になったねー」
「ありがとね!」
「助かった、わ」
「君のこれからに幸あることを願う」
皆が別れを告げると、少し泣きそうな顔をしたクルミは御者台に飛び乗り走り去っていきました。
「なんかちょっと寂しい」
「分かるよ。まぁ永久の別れじゃないんだ。いつかまた会える。それもそう遠くないうちに」
「そうだね」
慰めてくれているのかは分かりませんが、サツキの言う通り、永久の別れではないのでグッとこらえ、私は『精霊都市 エレスティアナ』へと帰ってきました。
「宿は宿泊のままになってるよね?」
エルマがそう聞いてきます。
「そうだと思うけど、サツキどうだった?」
私も色々あってよく覚えていないので、サツキに聞きます。
「無論、長期間で宿泊予定を詰めてきたからね。向こう4.5日は泊まれるはずだ」
「よかった。じゃぁ一度宿屋に行こうか。みんなも一度ログアウトしたいでしょ?」
「そうだねー」
「あたしも少し向こうでやることある」
「マオも」
「ワタシもだ。じゃぁ行こうか」
歩き出したサツキについて私達も宿に向かって歩き始めます。
「アンナさんお久しぶりです」
「あー! チェリーさん! お久しぶりです」
「『エレスティアーナ』に行ってきまして、ハンナとカンナの挨拶ついでにアンナさんのことも話してきました」
「ありがとうございます。元気そうでしたか?」
「ええ」
「良かったです。あっお部屋そのままですのですぐ宿泊できますよ」
「ありがとうございます」
「またお話聞かせてくださいね」
「はい。ではまた」
私はそうアンナに挨拶をし、部屋へ行きます。
自動で鍵穴に刺さる鍵を再び見てやはり便利だ、と思いつつ部屋へ入ります。
心なしか家具が喜んでいるような気がしなくもないですが、ベッドに入り、一度ログアウトします。
夕食にちょうど良い時間だったので早速自動調理機の拡張を使ってみます。
やはり日本人ですし、ここは和食でしょう。
自動調理機を動かし、和食を作ってもらいます。
数分眺めていると、いつものようにプレートに乗って食事が出てきました。
季節の野菜や魚のてんぷらが乗っていて、味噌汁もついている大変すばらしい物でした。
家ではあまり食べることのない、ちゃんとした和食を久々に食べ、身も心も休まります。
やはり日本人たるもの、和食ですね。
デザートの拡張の中には和菓子などもあったのでそれを作らせ、舌鼓を打ちます。
買ってよかったです。
食事をしたら少し眠くなってしまったのですが、ゆっくりお風呂にでも浸かろうと思ったのでお湯を溜めます。
ついでに脱いだ服を洗濯機に放り込み、乾燥までのコースを起動します。
「ふぅー」
やはりお風呂もいいですね。疲れが一気に取れるというか。
あまり長く入っていると逆に疲れてしまうんですけどね。
何事も適度にやらないといけませんよね。
頭をわしゃわしゃ洗い、汚れを落とし切ったので、風呂から上がります。
「お湯捨てといて」
音声端末にそう指示を出し、脱衣所へと戻ります。
感想されたパジャマを着込み、牛乳をのんで体を冷ますついでに動画投稿サイトで動画を見ます。
どのくらい時間が経ったでしょうか。
少しうとうとしてしまい、どこまで見たのか忘れてしまいました。
なので私はベッドに入るべく立ち上がり、部屋へ戻ります。
自分の匂いのするベッドに入ると否応なく夢の世界に引きずり込まれてしまいました。
はっと目を覚まします。
手元にあった携帯端末で時間を確認するとまだ夜中の2時を過ぎたところでした。
端末をのぞき込んでいたので新着のメッセージに気が付きます。
『智恵理先輩。お久しぶりです。最上桃子です。久々にお話したいので折り返し連絡くれますか?』
小中高校時代の後輩で、実家のすぐ隣に住んでいた所謂幼馴染です。
何かあったのかな、と少し心配になりながら私は折り返しの電話を入れます。
to be continued...
パーティーチャットで皆に聞きます。
『今休憩所ー。見るものとか無かったー』
するとステイシーから返事がありました。
『そうなの?』
『修練場は軍事機密だから見せられないってさ』
エルマもそう教えてくれます。
『わかった。じゃぁ休憩所まで戻るね』
『まってるー』
私は休憩所へ向かって歩き出しました。
「おまたせ」
「いや。それほどまってないよ。それより用は済んだのかい?」
「うん。精霊駆動貰えた。でもちょっと変」
「変とはどういうことだい?」
「えっとね。ずっと起点のクエストがわからない状態だったのは話したっけ?」
「あぁ。聞いたね」
「その起点のクエストを『アクアンティア』で見つけたんだけど、それを進行したら精霊駆動がもらえちゃった。その先のクエストが今まだ出てない」
「なるほどね。あぁ。あれじゃないか? 段階クエスト」
「段階クエスト?」
「うん。一つ目のクエストで手に入れたものを加工するときに何かしらのクエストが発生するタイプさ」
あっ。そうかもしれません。
「思うに精霊駆動とやらは、複数の入手方法があるのかもしれないね」
「かもしれないね」
入手する方法が一つだけとは限りませんよね。
「さてこのあとはどうするつもりなのかな?」
「私は本都市に戻ろうかなって」
「じゃぁそれでいいね。皆もいいだろうか?」
サツキがステイシーとエルマに聞きます。
「いいよー」
「いいよ」
「あれ? マオは?」
「マオは馬車で寝てるよ」
「なるほど」
「じゃぁ本都市に戻ろう」
休憩所でクルミと合流します。
「用は済んだ?」
「うん。本都市に行こうと思う」
「わかった。馬車だすね。マオさんは中で寝てる」
「お願いね」
「じゃぁ乗って。皆さんもお乗りください」
「本都市まではちょっと距離があるのでゆっくりお過ごしください」
そう言いながらクルミは馬車を発進させます。
「この旅路が最後になっちゃうんだね」
クルミが少し悲しそうに言います。
「大丈夫。またお世話になるよ」
「だといいな」
私達もクルミも疲れているのか、本都市へ向かう道中会話はほとんどありませんでした。
「もうじき到着です」
「長い間ありがとね」
「ううん。久々に楽しい仕事だった」
「もし、もし早めに支店が開けるようだったらすぐ連絡するから」
「これ受け取って」
そう言って手綱を片手で持ち、カバンに入れていたものを私にくれます。
「これは?」
「精霊紙と精霊筆。これで連絡して」
「わかった。ありがとう」
「待ってるね。溜めたお金でフレンデールだけは引き取ろうと思ってる」
「ならそれは経費だね」
私は小包を渡します。
「受け取れないよ」
「受け取って。今までの仕事っぷりとかそう言うの諸々ひっくるめての最終報酬だから」
「わかった。いつかチェリーのお店で働くときに労働で返す」
「ありがとう」
「じゃぁ到着。皆さんも足元お気をつけてお降りください」
クルミが馬車を停め、私達は馬車から降ります。
「ご利用ありがとうございました。またいつの日にか」
「うん。きっと」
「お世話になったねー」
「ありがとね!」
「助かった、わ」
「君のこれからに幸あることを願う」
皆が別れを告げると、少し泣きそうな顔をしたクルミは御者台に飛び乗り走り去っていきました。
「なんかちょっと寂しい」
「分かるよ。まぁ永久の別れじゃないんだ。いつかまた会える。それもそう遠くないうちに」
「そうだね」
慰めてくれているのかは分かりませんが、サツキの言う通り、永久の別れではないのでグッとこらえ、私は『精霊都市 エレスティアナ』へと帰ってきました。
「宿は宿泊のままになってるよね?」
エルマがそう聞いてきます。
「そうだと思うけど、サツキどうだった?」
私も色々あってよく覚えていないので、サツキに聞きます。
「無論、長期間で宿泊予定を詰めてきたからね。向こう4.5日は泊まれるはずだ」
「よかった。じゃぁ一度宿屋に行こうか。みんなも一度ログアウトしたいでしょ?」
「そうだねー」
「あたしも少し向こうでやることある」
「マオも」
「ワタシもだ。じゃぁ行こうか」
歩き出したサツキについて私達も宿に向かって歩き始めます。
「アンナさんお久しぶりです」
「あー! チェリーさん! お久しぶりです」
「『エレスティアーナ』に行ってきまして、ハンナとカンナの挨拶ついでにアンナさんのことも話してきました」
「ありがとうございます。元気そうでしたか?」
「ええ」
「良かったです。あっお部屋そのままですのですぐ宿泊できますよ」
「ありがとうございます」
「またお話聞かせてくださいね」
「はい。ではまた」
私はそうアンナに挨拶をし、部屋へ行きます。
自動で鍵穴に刺さる鍵を再び見てやはり便利だ、と思いつつ部屋へ入ります。
心なしか家具が喜んでいるような気がしなくもないですが、ベッドに入り、一度ログアウトします。
夕食にちょうど良い時間だったので早速自動調理機の拡張を使ってみます。
やはり日本人ですし、ここは和食でしょう。
自動調理機を動かし、和食を作ってもらいます。
数分眺めていると、いつものようにプレートに乗って食事が出てきました。
季節の野菜や魚のてんぷらが乗っていて、味噌汁もついている大変すばらしい物でした。
家ではあまり食べることのない、ちゃんとした和食を久々に食べ、身も心も休まります。
やはり日本人たるもの、和食ですね。
デザートの拡張の中には和菓子などもあったのでそれを作らせ、舌鼓を打ちます。
買ってよかったです。
食事をしたら少し眠くなってしまったのですが、ゆっくりお風呂にでも浸かろうと思ったのでお湯を溜めます。
ついでに脱いだ服を洗濯機に放り込み、乾燥までのコースを起動します。
「ふぅー」
やはりお風呂もいいですね。疲れが一気に取れるというか。
あまり長く入っていると逆に疲れてしまうんですけどね。
何事も適度にやらないといけませんよね。
頭をわしゃわしゃ洗い、汚れを落とし切ったので、風呂から上がります。
「お湯捨てといて」
音声端末にそう指示を出し、脱衣所へと戻ります。
感想されたパジャマを着込み、牛乳をのんで体を冷ますついでに動画投稿サイトで動画を見ます。
どのくらい時間が経ったでしょうか。
少しうとうとしてしまい、どこまで見たのか忘れてしまいました。
なので私はベッドに入るべく立ち上がり、部屋へ戻ります。
自分の匂いのするベッドに入ると否応なく夢の世界に引きずり込まれてしまいました。
はっと目を覚まします。
手元にあった携帯端末で時間を確認するとまだ夜中の2時を過ぎたところでした。
端末をのぞき込んでいたので新着のメッセージに気が付きます。
『智恵理先輩。お久しぶりです。最上桃子です。久々にお話したいので折り返し連絡くれますか?』
小中高校時代の後輩で、実家のすぐ隣に住んでいた所謂幼馴染です。
何かあったのかな、と少し心配になりながら私は折り返しの電話を入れます。
to be continued...
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