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第3章 ファイサル
第3章14幕 お仕置きpart.2<punishment part.2>
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階段を上りきった瞬間、私達の目に大きな魔法が見えました。
「!?」
酷く驚き、反射的に障壁を生成しようとしますが、間に合わず、私の身体がその魔法を受け止めてしまいました。
「キャッ!」
誰の口から漏れたかわからない短い悲鳴をどこか遠くに聞き、私は階段を転がり降りていきます。
「チェリー!」
あっ。≪蜃気楼≫で隠れてるのに声をだしちゃ……。
「もう一人いるみたい」
そう聞き覚えのない声が私の耳に届きます。
霞む目で、残りのHPを確認します。
16000前後ですね。約四分の一のHPが持っていかれたようです。
高レベルの魔法系プレイヤーだったら私のHPを一つの魔法で0にすることくらいたやすいのでそこまで高レベルではなさそうですが、魔法の衝撃が強く、いまだに動くことができません。
「見えない誰かさんも吹っ飛んじゃえ≪シャドウ・ボール≫」
闇魔法……。人気がないのであまり使っている人いないんですよね。燃費悪いですし。
エルマは姿を隠しているので、私からは見えませんが、まだ階段付近にいるはずでしょう。そこで貫通力に優れた≪ピアス≫や≪スピア≫シェイプの魔法を放たれたら、私もろともデスペナルティーになります。
≪ボール≫なら一枚の障壁で防げる。
「……≪ホーリー・シールド≫っ……」
階段の上から3段目くらいに障壁を設置し、相手の闇魔法を防ぎます。
「もう瀕死かと思ったけどね? 魔法系にしてはVITが高いね」
私のことを詳しく知らないみたいですね。好都合です。
「いくらシールドを張ったって無駄だよ」
そう言ってポーションを飲む姿が私の目には映っていました。
あの程度の魔法を撃つだけでポーションを飲まないといけないのは、魔法系ではない証明になります。
なるべく早く見極めないと……!
冷たい地面から身体を起こし、なんとか立ち上がります。
≪肋骨骨折≫、≪左肩脱臼≫など数種類の状態異常に罹っているようで、部分的に感覚が麻痺しているように感じます。
「≪ホーリー・ヒール≫」
失ったHPと状態異常をすべて消し、息を整えます。
「…………」
無言で彼を睨みます。
「怖い顔だね。僕が憎いかい?」
話しかけてきたので、無視してこちらの要求を突きつけます。
「今すぐラビと愛猫姫を開放してください」
「無理だね。そんなことしたらボスに二度とログインできなくされちゃうよ」
「そう。なら力づくで取り返しますので」
そうは言ったものの、内心は焦りが隠し切れません。
先ほど戦ったときと同様に、こちらは高威力の魔法が制限されています。
対して相手側は高レベルの魔法を発動してラビを巻き添えにしても良いのでこちらが圧倒的に不利ですね。
そう考えていると、右腕をとんとんと触られます。
なるほど。これでエルマの場所が分かりました。
そしてさらに強くとんとんとされます。
今度は背中です。
そんなやり取りがあるとは知られないように、ポーカーフェイスを気取ります。
『あ』
背中に指で文字を書かれます。
『た』
これで意思疎通ができますね。
『し』
あたし……。
『い』
あたしい……。
『く』
あたしいく……。あたし、行くですか!
ならば私は奴の気を逸らしましょう。
わからないように、しかし近くにいるエルマにはわかるようにコクっとうなずきます。
「≪フラッシュ・ライト≫」
閃光魔法を発動し、一時的に敵の視界を光で埋め尽くします。
「くっ!」
両の手を眼前で交差し、閃光から目を守る相手に向かってエルマが走っていく音が聞こえます。
直後エルマの≪蜃気楼≫が解け、相手の身体から噴水のように赤い血が噴き出します。
「ぎゃあああああああ!」
そう悲鳴をあげる彼をエルマが切り伏せ、彼の声をかき消します。
「チェリー!」
「わかってる!」
エルマの姿が見えた時に私はすでに階段を駆け上り、エルマが切り伏せた瞬間には追い抜きました。
階段を上りきると、拘束されているラビと愛猫姫を見つけることができたので、その勢いのまま接近します。
「ラビ! マオ!」
そう声をあげる私の視界に一人の人物が映り込み、こちらに向かって剣を振り下ろしてきます。
「邪魔……するなぁ! ≪フレイム・エンチャント≫」
それを躱し、魔法で武器を生成せずに、拳に火属性魔法を纏い、殴りかかります。
私の拳を受け止めた彼は、勝ち誇ったような顔をします。
「そのSTRで接近戦か?」
「ええ。あなたのSTRがどのくらいなのかは知りませんけどね。八城そこをどいてください」
そう彼、八城に向かって言います。
一郎の行動を見た時、八城も少し疑っていました。
だって彼も二度目の情報交換の時、遅れて来ましたから。
「俺は純粋なAGI,STRの振り方をしている。流石にお前に劣らない」
「レベルでは劣っているようですが?」
そう挑発しておきます。
「レベル? そんなものに興味ない。ステータスがすべてだ」
「それも真理ですね」
そう言って握られた拳を引き抜きます。
「そこのガキ。動くな」
八城がエルマに向かって目線をずらします。
ナイスエルマ! 心の中でそう思いながら魔法を発動させます。
「≪アクア・キューブ≫」
そして八城を≪キューブ≫シェイプの水魔法でとらえます。
「≪フィル・ウォーター≫」
そして水で満たしていきます。
「ボガガガ……」
なにか言いたそうな八城は無視して、ラビと愛猫姫に近寄ります。
「ラビ! マオ!」
すでにラビはエルマの手によって縄がほどかれ、口元を覆うように巻き付けられていた布を外されています。
私もすぐに愛猫姫の拘束を解き、布を外します。
「チェリー、来てくれ、たの、ね」
「あたりまえじゃん」
「うあああああああああん」
「らびぢゃあぁあん」
意外とケロっとしている愛猫姫と恐怖故か泣き出してしまったラビ。あとエルマ。
何はともあれ、二人を救出できてよかった。
外傷がないことなどを確かめ、振り向きます。
「八城。貴方は二つのミスをしました」
「ボガガガ!」
「聞こえているようですね。まず一つ目のミス。これは、簡単です。私を敵に回したこと」
「…………」
「二つ目のミス。これも私を敵に回したこと。おとなしくしていれば、ハリリンの部下のままでいられたのに」
「ボッガガッガッガ!」
「死ね」
私の言葉か中に吸い込まれるように響きます。
ちょっとむごい殺し方にしましょう。
私はオコなのです。
そうしてある装備を取り出します。
【フリージング・ロッド】という装備スキルに初級氷属魔法が付いているものを取り出します。
水を凍らせて足場にできるのでなかなか優秀な移動補助武器ですね。
それを八城を拘束している水の檻に向かって振りつつ、スキルを発動します。
「≪フリーズ≫」
ピシッと一瞬で凍った水の檻を見ます。
「よーし。みんなで仕返しだー!」
そう言ってインベントリから打撃系武器をごっそり取り出し、ばらまきます。
といっても3本しかなかったのですが。
「ハーイ。みんなこれ持ってー」
エルマとラビ、愛猫姫に各1本ずつもたせます。
「思いっきり……叩く!」
私はそう言って拳で氷を砕きます。
続くように、他の3人も氷の檻を叩き、凍った水とバラバラに砕け散った八城の身体があたりに散乱していきます。
しばらくするとデスペナルティー特有のエフェクトが発生し、八城はデスペナルティーになっていきました。
「ふー。すっきりした」
そう呟きながら私は頭で考えます。
一郎と八城が裏切った、元から仲間ではないと言っていましたが、そのことをリンプというマスターは知らなかったのでしょうか。無警戒だったとはいえ、カリアンを殺したのは一郎、八城に違いありません。その二人を、腕1本の犠牲だけで排除できるのでしょうか。もし排除できるんだとすれば、先ほどの2戦はありません。彼らには逃げる道理がありませんから。
私はそう考え、あのリンプというキャラクターに対し、警戒の度合いをあげます。
『その耳の通信機。外しておいた方がいいよ』
その声が何故か私の頭に再び現れました。
しかし、こういうことはいつもハリリンが考えてくれていたので、私にはわかりません。
彼は、わかっていたのかもしれませんね。
みんなで氷を殴り、憤りを解消したので、改めて二人を抱きしめます。
「怖い思いをさせてごめんね」
抱く力を強くします。
もう離さないように。
「やっぱり、私と一緒に行くのは危険だね。一回安全な場所に送るね」
心当たりのある、安全な場所に送ることにしました。
『ステイシー』
『どうしたのー?』
『お店の地下に愛猫姫とラビをかくまってほしい。あそこはダンジョンだから』
『なるほどー。いいよー。ついでにモンスターにかじられて愛猫姫がデスペナになればいいねー』
『いや。良くないから。とりあえずありがとう』
『あと30分くらいで設置おわるー』
『わかった』
ステイシーとのチャットを終え、ポーションを飲みます。
『これからステイシーのお店の地下にあるダンジョンにいくね』
誰かに聞かれている可能性も考え、パーティーチャットで話します。
『ダンジョン? そっちの方が危険なんじゃない?』
『えっとね、上4階、下4階の構造のダンジョンで1階にはモンスターが湧かないんだ』
『なるほどね』
『うん。少し薄暗くて気味の悪いところだけど、終わったらすぐに迎えにいくから』
そう話すと3人も納得してくれたのですぐに≪ワープ・ゲート≫で飛びます。
「≪ワープ・ゲート≫」
ステイシーの店の前に転移し、すぐに扉を開けます。
「はいって」
店主ではないですけど、手招きします。
そして3人が入ったことを確認し、扉を閉め、地下への通路を開けます。
「たしか……あっこれだ」
ステイシーがやった時のことを思い出しながら、地下への階段を出現させます。
「ついてきて」
コツコツと響く足音を聞きながら階段を下りていきます。
「ここがダンジョンの入り口」
入口が見えたのでそう告げます。
「ステイシーこんなの隠してたんだ」
「これ、がダンジョン、なのね」
「ダンジョン初めてー!」
「えっと……無茶はしないでね?」
「わかった!」
「わかった、わ」
「わかったー!」
エルマと愛猫姫、ラビの屈託のない笑みと、用意してあったような返事を聞き、ちょっと不安になりますが、諦めます。
と言ってもやはり諦めきれないので、分身を見張り係りとして置いていくことにしました。あとゴリラ。
「≪シャドウ・ドール≫≪召喚〔GGB〕≫。この子たちに監視させるからね? 無茶したら……」
「大丈夫だよチェリー! おねぇちゃんを信用しなさい!」
非常に信用できませんが、『ファイサル』に帰ることにしました。
振り向いて、階段を登ろうとすると後ろから「妹、なのね」と愛猫姫の声が聞こえてきます。ちょっと残念そうなのはなんででしょうか。
そこは後ほど本人に聞くとしましょう。
ポーションを再びガブ飲みし、『ファイサル』へと≪テレポート≫します。
to be continued...
「!?」
酷く驚き、反射的に障壁を生成しようとしますが、間に合わず、私の身体がその魔法を受け止めてしまいました。
「キャッ!」
誰の口から漏れたかわからない短い悲鳴をどこか遠くに聞き、私は階段を転がり降りていきます。
「チェリー!」
あっ。≪蜃気楼≫で隠れてるのに声をだしちゃ……。
「もう一人いるみたい」
そう聞き覚えのない声が私の耳に届きます。
霞む目で、残りのHPを確認します。
16000前後ですね。約四分の一のHPが持っていかれたようです。
高レベルの魔法系プレイヤーだったら私のHPを一つの魔法で0にすることくらいたやすいのでそこまで高レベルではなさそうですが、魔法の衝撃が強く、いまだに動くことができません。
「見えない誰かさんも吹っ飛んじゃえ≪シャドウ・ボール≫」
闇魔法……。人気がないのであまり使っている人いないんですよね。燃費悪いですし。
エルマは姿を隠しているので、私からは見えませんが、まだ階段付近にいるはずでしょう。そこで貫通力に優れた≪ピアス≫や≪スピア≫シェイプの魔法を放たれたら、私もろともデスペナルティーになります。
≪ボール≫なら一枚の障壁で防げる。
「……≪ホーリー・シールド≫っ……」
階段の上から3段目くらいに障壁を設置し、相手の闇魔法を防ぎます。
「もう瀕死かと思ったけどね? 魔法系にしてはVITが高いね」
私のことを詳しく知らないみたいですね。好都合です。
「いくらシールドを張ったって無駄だよ」
そう言ってポーションを飲む姿が私の目には映っていました。
あの程度の魔法を撃つだけでポーションを飲まないといけないのは、魔法系ではない証明になります。
なるべく早く見極めないと……!
冷たい地面から身体を起こし、なんとか立ち上がります。
≪肋骨骨折≫、≪左肩脱臼≫など数種類の状態異常に罹っているようで、部分的に感覚が麻痺しているように感じます。
「≪ホーリー・ヒール≫」
失ったHPと状態異常をすべて消し、息を整えます。
「…………」
無言で彼を睨みます。
「怖い顔だね。僕が憎いかい?」
話しかけてきたので、無視してこちらの要求を突きつけます。
「今すぐラビと愛猫姫を開放してください」
「無理だね。そんなことしたらボスに二度とログインできなくされちゃうよ」
「そう。なら力づくで取り返しますので」
そうは言ったものの、内心は焦りが隠し切れません。
先ほど戦ったときと同様に、こちらは高威力の魔法が制限されています。
対して相手側は高レベルの魔法を発動してラビを巻き添えにしても良いのでこちらが圧倒的に不利ですね。
そう考えていると、右腕をとんとんと触られます。
なるほど。これでエルマの場所が分かりました。
そしてさらに強くとんとんとされます。
今度は背中です。
そんなやり取りがあるとは知られないように、ポーカーフェイスを気取ります。
『あ』
背中に指で文字を書かれます。
『た』
これで意思疎通ができますね。
『し』
あたし……。
『い』
あたしい……。
『く』
あたしいく……。あたし、行くですか!
ならば私は奴の気を逸らしましょう。
わからないように、しかし近くにいるエルマにはわかるようにコクっとうなずきます。
「≪フラッシュ・ライト≫」
閃光魔法を発動し、一時的に敵の視界を光で埋め尽くします。
「くっ!」
両の手を眼前で交差し、閃光から目を守る相手に向かってエルマが走っていく音が聞こえます。
直後エルマの≪蜃気楼≫が解け、相手の身体から噴水のように赤い血が噴き出します。
「ぎゃあああああああ!」
そう悲鳴をあげる彼をエルマが切り伏せ、彼の声をかき消します。
「チェリー!」
「わかってる!」
エルマの姿が見えた時に私はすでに階段を駆け上り、エルマが切り伏せた瞬間には追い抜きました。
階段を上りきると、拘束されているラビと愛猫姫を見つけることができたので、その勢いのまま接近します。
「ラビ! マオ!」
そう声をあげる私の視界に一人の人物が映り込み、こちらに向かって剣を振り下ろしてきます。
「邪魔……するなぁ! ≪フレイム・エンチャント≫」
それを躱し、魔法で武器を生成せずに、拳に火属性魔法を纏い、殴りかかります。
私の拳を受け止めた彼は、勝ち誇ったような顔をします。
「そのSTRで接近戦か?」
「ええ。あなたのSTRがどのくらいなのかは知りませんけどね。八城そこをどいてください」
そう彼、八城に向かって言います。
一郎の行動を見た時、八城も少し疑っていました。
だって彼も二度目の情報交換の時、遅れて来ましたから。
「俺は純粋なAGI,STRの振り方をしている。流石にお前に劣らない」
「レベルでは劣っているようですが?」
そう挑発しておきます。
「レベル? そんなものに興味ない。ステータスがすべてだ」
「それも真理ですね」
そう言って握られた拳を引き抜きます。
「そこのガキ。動くな」
八城がエルマに向かって目線をずらします。
ナイスエルマ! 心の中でそう思いながら魔法を発動させます。
「≪アクア・キューブ≫」
そして八城を≪キューブ≫シェイプの水魔法でとらえます。
「≪フィル・ウォーター≫」
そして水で満たしていきます。
「ボガガガ……」
なにか言いたそうな八城は無視して、ラビと愛猫姫に近寄ります。
「ラビ! マオ!」
すでにラビはエルマの手によって縄がほどかれ、口元を覆うように巻き付けられていた布を外されています。
私もすぐに愛猫姫の拘束を解き、布を外します。
「チェリー、来てくれ、たの、ね」
「あたりまえじゃん」
「うあああああああああん」
「らびぢゃあぁあん」
意外とケロっとしている愛猫姫と恐怖故か泣き出してしまったラビ。あとエルマ。
何はともあれ、二人を救出できてよかった。
外傷がないことなどを確かめ、振り向きます。
「八城。貴方は二つのミスをしました」
「ボガガガ!」
「聞こえているようですね。まず一つ目のミス。これは、簡単です。私を敵に回したこと」
「…………」
「二つ目のミス。これも私を敵に回したこと。おとなしくしていれば、ハリリンの部下のままでいられたのに」
「ボッガガッガッガ!」
「死ね」
私の言葉か中に吸い込まれるように響きます。
ちょっとむごい殺し方にしましょう。
私はオコなのです。
そうしてある装備を取り出します。
【フリージング・ロッド】という装備スキルに初級氷属魔法が付いているものを取り出します。
水を凍らせて足場にできるのでなかなか優秀な移動補助武器ですね。
それを八城を拘束している水の檻に向かって振りつつ、スキルを発動します。
「≪フリーズ≫」
ピシッと一瞬で凍った水の檻を見ます。
「よーし。みんなで仕返しだー!」
そう言ってインベントリから打撃系武器をごっそり取り出し、ばらまきます。
といっても3本しかなかったのですが。
「ハーイ。みんなこれ持ってー」
エルマとラビ、愛猫姫に各1本ずつもたせます。
「思いっきり……叩く!」
私はそう言って拳で氷を砕きます。
続くように、他の3人も氷の檻を叩き、凍った水とバラバラに砕け散った八城の身体があたりに散乱していきます。
しばらくするとデスペナルティー特有のエフェクトが発生し、八城はデスペナルティーになっていきました。
「ふー。すっきりした」
そう呟きながら私は頭で考えます。
一郎と八城が裏切った、元から仲間ではないと言っていましたが、そのことをリンプというマスターは知らなかったのでしょうか。無警戒だったとはいえ、カリアンを殺したのは一郎、八城に違いありません。その二人を、腕1本の犠牲だけで排除できるのでしょうか。もし排除できるんだとすれば、先ほどの2戦はありません。彼らには逃げる道理がありませんから。
私はそう考え、あのリンプというキャラクターに対し、警戒の度合いをあげます。
『その耳の通信機。外しておいた方がいいよ』
その声が何故か私の頭に再び現れました。
しかし、こういうことはいつもハリリンが考えてくれていたので、私にはわかりません。
彼は、わかっていたのかもしれませんね。
みんなで氷を殴り、憤りを解消したので、改めて二人を抱きしめます。
「怖い思いをさせてごめんね」
抱く力を強くします。
もう離さないように。
「やっぱり、私と一緒に行くのは危険だね。一回安全な場所に送るね」
心当たりのある、安全な場所に送ることにしました。
『ステイシー』
『どうしたのー?』
『お店の地下に愛猫姫とラビをかくまってほしい。あそこはダンジョンだから』
『なるほどー。いいよー。ついでにモンスターにかじられて愛猫姫がデスペナになればいいねー』
『いや。良くないから。とりあえずありがとう』
『あと30分くらいで設置おわるー』
『わかった』
ステイシーとのチャットを終え、ポーションを飲みます。
『これからステイシーのお店の地下にあるダンジョンにいくね』
誰かに聞かれている可能性も考え、パーティーチャットで話します。
『ダンジョン? そっちの方が危険なんじゃない?』
『えっとね、上4階、下4階の構造のダンジョンで1階にはモンスターが湧かないんだ』
『なるほどね』
『うん。少し薄暗くて気味の悪いところだけど、終わったらすぐに迎えにいくから』
そう話すと3人も納得してくれたのですぐに≪ワープ・ゲート≫で飛びます。
「≪ワープ・ゲート≫」
ステイシーの店の前に転移し、すぐに扉を開けます。
「はいって」
店主ではないですけど、手招きします。
そして3人が入ったことを確認し、扉を閉め、地下への通路を開けます。
「たしか……あっこれだ」
ステイシーがやった時のことを思い出しながら、地下への階段を出現させます。
「ついてきて」
コツコツと響く足音を聞きながら階段を下りていきます。
「ここがダンジョンの入り口」
入口が見えたのでそう告げます。
「ステイシーこんなの隠してたんだ」
「これ、がダンジョン、なのね」
「ダンジョン初めてー!」
「えっと……無茶はしないでね?」
「わかった!」
「わかった、わ」
「わかったー!」
エルマと愛猫姫、ラビの屈託のない笑みと、用意してあったような返事を聞き、ちょっと不安になりますが、諦めます。
と言ってもやはり諦めきれないので、分身を見張り係りとして置いていくことにしました。あとゴリラ。
「≪シャドウ・ドール≫≪召喚〔GGB〕≫。この子たちに監視させるからね? 無茶したら……」
「大丈夫だよチェリー! おねぇちゃんを信用しなさい!」
非常に信用できませんが、『ファイサル』に帰ることにしました。
振り向いて、階段を登ろうとすると後ろから「妹、なのね」と愛猫姫の声が聞こえてきます。ちょっと残念そうなのはなんででしょうか。
そこは後ほど本人に聞くとしましょう。
ポーションを再びガブ飲みし、『ファイサル』へと≪テレポート≫します。
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