41 / 259
第2章 猫姫王国
第2章4幕 真空<vacuum>
しおりを挟む
階段を音を立てないように上るのはもはや意味をなさないので普通に上ります。
「階段での迎撃はなかったねー」
ステイシーがそういうように多少は警戒していたので、少し落ち着けます。
お互いにポーションをチビチビ飲みながら2階まで上りきりました。
「≪探知≫」
恒例の≪探知≫ですね。
「おやー?」
「どうしたの?」
「いやーこの階には誰もいないみたいなんだよー」
「隠形系のスキルの可能性は?」
「たぶんないかなー。僕のスキルレベルならほぼ無条件に見れるはずだからー」
「たしかに」
ということは、下の階も守りを捨て、愛猫姫の警護に全員が回ってると考えたほうがいいですね。
「ステイシー。援軍が来るまで、上るの中止」
「あいさー」
そう言って私達は先ほどリーフルがいた部屋の上の部屋に入ります。
「≪光学迷彩≫」
ステイシーのスキルで姿だけは隠します。
「どのくらいで到着しそう?」
「えっとー。あと4.5分ってところかなー。まだ正門前の突破に時間かかってるみたいー」
あそこはジュンヤが居るので問題ないでしょう。4.5分は長いですが、息を殺して待つことにします。
「チェリー。のむかいー?」
優雅にティーセットを取り出し、ステイシーが飲み始めます。
緊張感が……。
「もらう」
ずずっと紅茶を飲みながら到着を待っているとにわかに下の階が騒がしくなってきます。
「きたみたいだねー」
「そうみたい。≪光学迷彩≫といて」
「あいさー」
≪光学迷彩≫を解き、扉を少し開け、様子を確認します。
盾持ちの剣士が7.8人と遠距離支援職2人、ジュンヤ、纏花の姿もありますね。
「みんなーまってたよー」
ステイシーが顔をだし部屋へ呼び込みます。
「これで全員かなー」
「一応な。かなりの数がやられちまった。正門周辺の監視に半数残してきた」
ジュンヤ達と軽い情報交換を済ませ、今後の作戦を確認します。
「まず、チェリーとステイシーはお互い連携して愛猫姫を追い詰めろ。盾持ちと支援はその援護だ」
「のこりはどうするんです?」
纏花がジュンヤに聞きます。
「俺とお前で雑魚は狩る」
「それが一番ですかね」
「あとは臨機応変に頼む」
まずは先頭に盾持ち剣士を4人配置し、その後方にジュンヤ、纏花が続きます。
そして盾持ち剣士をもう3人おいて、私とステイシー、支援職が続く形になりました。
「今のうちに回復できるもんは回復しておけよ」
「ポーションなら私たくさん持っていますので、よかったらお使いください」
インベントリから取り出した大量のポーションを地面に撒きます。
2分ほどの休憩を取り、進軍を再開します。
「さぁ気合入れていくぞ!」
「おー!」
便宜上第一班となずけられたジュンヤ隊が先に扉を出て、階段を駆け上っていきます。
数秒遅れて私達の第2班も続きます。
階段を上っていると激しい戦闘音が聞こえ始めます。
階段から察するにこの城は4階で構成されており、3階にも敵はおらず、そのまま4階まで上っていったようですね。
「≪探知≫」
私に言われるまでもなく、ベテランのステイシーが≪探知≫を使用します。
「うんー。いるねー。しかもこれはかなり強敵だよー」
「四天王クラス?」
ギルド『猫姫王国』には四天王と呼ばれる超人プレイヤーがいると聞きます。
貢いだ金と経験値が上位4人じゃないといけないとか……。
「僕一人じゃ厳しいかなー」
「二人でやろっか。盾持ち2人残ってください。残り一人の盾持ちと支援職の子は上階へ向かってください」
「わ、わかりました!」
そうしてステイシーが言う強敵のいる部屋へと向かいます。
「では作戦通りのお願いします」
事前に、盾持ちの人にはガードに徹してもらうことにしてもらっていたので確認しておきます。
「がんばります」
「1秒でも長く生きてます」
さすが正門前の混戦を勝ち残ってるだけはありますね。死ぬのがわかってらっしゃる。
実際、私とステイシー二人がかりで倒せなかったら、上階まで援護に行かれ、連合の敗北は必至ですからね。意地でも勝ちますよ。10日間のデスペナルティーの間に何が起こるか考えたくもないので。
「待っていた」
「しってました」
「しってたよー」
「ここに来るのは〔槍最強〕だと思っていたんだがな」
「ジュンヤじゃなくてごめんねー」
「なぁに。気にするな。早速始めるか。っとそのまえに……」
ゴゥっと風が吹いた瞬間に盾持ちの2人がパンと軽快な音を立て爆発し、消滅しました。
「邪魔者には退場していただこうか」
「やるねー」
こいつは強敵なんてもんじゃないですよ。
間違いなく〔最強〕クラスです。
「一応名乗りをあげておこうか?」
「じゃぁおねがいするよー」
「ギルド『猫姫王国』ナンバーツー【トリックスター】アイザック」
「ま……【真理の魔導士】ステイシー」
「【闇神官】チェリー」
少しばかり睨むような視線がこちらに向いて飛んできましたが嘘ではないので気付かなかったフリをします。
「こいつが地面に落ちたら勝負開始だ。最もその瞬間に勝敗は決するがな」
そう言い、懐から金貨を取り出し、上に放りました。
『まずはガードするね』
パーティーチャットでステイシーに伝えます。
『念のため僕もガードで』
キーンという音が鳴った瞬間、空間から音が消えました。
「≪フルキャスト・ドーム≫」
「≪フルキャスト・シールド≫」
全属性の魔法を一斉に発動するフルキャストで対策を打ちます。
私の張ったドームに激突する感触が音ののわりに大きい気がします。
「たぶん空気操作系のスキルを持ってるみたい。音が小さいのはドームの外が真空だから?」
盾持ちの二人がパンってなった理由が分かりました。
「真空……。ドームから出たらパーンだね。維持に全力だす」
「じゃぁ攻撃は僕が。真空状態の度合によるけどなら電気が有効のはずだから」
「物理はさっぱりだからまかせる」
ドームをさらに内側にマテリアル、フルキャスト、マジック、の順で3枚構築し、ステイシーの魔法を待ちます。
「≪テレ・サンダー・ストライク≫」
遠隔発動のできる雷属性魔法ですね。
青白い雷がドームの外に走りました。
「そこまで真空度合は高くないみたい」
そうなんですか。
「でもスキルの検討がつかないよ」
私もつかないです。
「とりあえず姿が見えないと攻撃も当てられないよー」
よく言われてみれば姿が見えませんね。
真空……。真空……?
真空って密閉されてないとならないよね?
「ステイシー。窓ガラス割ってみたら?」
「かしこい!」
「もっと褒めていいよ」
「≪テレ・ライトニング・ピアス≫」
ステイシーがガラスに向かって魔法を発動しました。
ピキッっと音はしなかったですが罅が入り、ガラスが粉々になりました。
室内の調度品が竜巻に巻き込まれたのではないかという錯覚に陥るほど荒れ狂い、部屋中を飛び回ります。
「グッ……」
姿を現した、アイザックは膝を地面に着き、頭部からだらだらと血を流しています。
「良く見破ったな。だがまだこれで終わりじゃな……」
「いえ。終わりです。≪マテリアル・キューブ≫」
私はそう言い放ち、キューブで拘束しました。マテリアルのキューブなので力業で壊すのは不可能でしょう。
「……≪フレイム・スピア≫」
こいつ魔法も使えたんですね。
「≪アクア・シールド≫」
キューブを貫通した魔法はステイシーによって受け止められました。
もっと大規模な魔法を撃たれていたらキューブが解けていたかもしれませんね。
「詰みだな。俺の負けだ。殺せ」
「では10日後を楽しみにしていたください。あなたのギルドはなくなっているでしょうが。≪インシネレート≫」
楽には殺しませんよ。じっくり火あぶりです。
「なかなかチェリーも性格が悪いねー」
「そう?」
悲鳴をあげつつ、初級の回復魔法と氷属性魔法でなんとか耐えようとしています。
「……。≪バーン≫」
火力をもう一段階あげてみましょう。
「あああああ!」
生成した瞬間氷が解け、回復量を上回る火傷のダメージで苦しんでいますね。
これが拷問ですか。
悪乗りしたくなってきますね。
「お前の知ってることを全部吐け!」
「くそおおお! 言えねぇ!」
「≪バーニング≫」
「あああああああああ!」
「言え」
「命に代えても……言えない!」
「≪ヘル・バーン≫」
「ぎゃああああああ! まった! 言う! 全部言う!」
おお! 効果ありましたね。
パチンと指を鳴らし、火を一度止めます。
「ふーふー……何が知りたい?」
呼吸を整えた、アイザックが聞いてきます。
「まずは誰の命令でこの国を建てたのか」
「それは……」
言い淀んでいるので指を鉄砲型にし突きつけてみます。
「ひっ! ナンバーワンのジルファリです!」
「知ってるステイシー?」
「しらないなー。君のところのハリリンに聞くのが一番じゃないかな?」
「そうだね」
『ハリリン。『猫姫王国』のジルファリって知ってる?』
すぐさまハリリンにチャットをします。
『ナンバーワンっすね。というより実質的なリーダーっす』
『そうなの?』
『愛猫姫にはそこまで戦力はないので、戦闘面ではってかんじっすけど』
『そうなんだー』
『愛猫姫にぞっこんでかなり貢いでるみたいっすよ?』
『それはどうでもいい情報。ていうかチャット送っておいて悪いんだけど』
『なんすか?』
『よく生き残ってたな』
『何度も死にかけてるっすよー!』
一応の裏が取れたのでアイザックに再び質問します。
「つまり、ジルファリさんっていうのが愛猫姫に国をプレゼントしたってこと?」
「そうなります!」
だとすると……。
愛猫姫は国の乗っ取りを知らない……?
いやそんなわけないですよね。
「上階の布陣は?」
「ナンバースリーーとフォーがいます!」
「愛猫姫は?」
「…………」
「よし、もう楽になれ。10日後……」
「俺は知らない! 本当だ!」
「……。そういうのはジルファリしか知らないんですよ!」
「つかえないなぁ」
「つかえないねー」
その後得る情報も大したことなかったので、脳天にステイシーが落雷を落としデスペナルティーにしました。
「つかれた……」
「僕も疲れたよ……」
「次で最終戦だといいね」
「ほんとにー」
そうポーションを飲みながら会話をしていると私はあることに気が付きます。
「あっ……」
「どうしたのー?」
「2連戦で姿消す系の人と戦ってるんだけど」
「そうだねー。ちなみに僕が倒してきたのも姿を消す系だったよー」
「やっぱり」
「んー?」
「このギルドの上位の奴らってみんなストーカーだとおもう。好き好んで姿消すなんてそうとしか思えない」
「……。ブッ!」
腹の底から声をだし、笑うステイシーを私は初めて見たかもしれません。
回復が終わったら最上階での戦闘ですね。
おそらく最上階の戦闘が最後の戦闘にはならないだろうという確信に似た推測をし、少しの休憩を満喫します。
to be continued...
「階段での迎撃はなかったねー」
ステイシーがそういうように多少は警戒していたので、少し落ち着けます。
お互いにポーションをチビチビ飲みながら2階まで上りきりました。
「≪探知≫」
恒例の≪探知≫ですね。
「おやー?」
「どうしたの?」
「いやーこの階には誰もいないみたいなんだよー」
「隠形系のスキルの可能性は?」
「たぶんないかなー。僕のスキルレベルならほぼ無条件に見れるはずだからー」
「たしかに」
ということは、下の階も守りを捨て、愛猫姫の警護に全員が回ってると考えたほうがいいですね。
「ステイシー。援軍が来るまで、上るの中止」
「あいさー」
そう言って私達は先ほどリーフルがいた部屋の上の部屋に入ります。
「≪光学迷彩≫」
ステイシーのスキルで姿だけは隠します。
「どのくらいで到着しそう?」
「えっとー。あと4.5分ってところかなー。まだ正門前の突破に時間かかってるみたいー」
あそこはジュンヤが居るので問題ないでしょう。4.5分は長いですが、息を殺して待つことにします。
「チェリー。のむかいー?」
優雅にティーセットを取り出し、ステイシーが飲み始めます。
緊張感が……。
「もらう」
ずずっと紅茶を飲みながら到着を待っているとにわかに下の階が騒がしくなってきます。
「きたみたいだねー」
「そうみたい。≪光学迷彩≫といて」
「あいさー」
≪光学迷彩≫を解き、扉を少し開け、様子を確認します。
盾持ちの剣士が7.8人と遠距離支援職2人、ジュンヤ、纏花の姿もありますね。
「みんなーまってたよー」
ステイシーが顔をだし部屋へ呼び込みます。
「これで全員かなー」
「一応な。かなりの数がやられちまった。正門周辺の監視に半数残してきた」
ジュンヤ達と軽い情報交換を済ませ、今後の作戦を確認します。
「まず、チェリーとステイシーはお互い連携して愛猫姫を追い詰めろ。盾持ちと支援はその援護だ」
「のこりはどうするんです?」
纏花がジュンヤに聞きます。
「俺とお前で雑魚は狩る」
「それが一番ですかね」
「あとは臨機応変に頼む」
まずは先頭に盾持ち剣士を4人配置し、その後方にジュンヤ、纏花が続きます。
そして盾持ち剣士をもう3人おいて、私とステイシー、支援職が続く形になりました。
「今のうちに回復できるもんは回復しておけよ」
「ポーションなら私たくさん持っていますので、よかったらお使いください」
インベントリから取り出した大量のポーションを地面に撒きます。
2分ほどの休憩を取り、進軍を再開します。
「さぁ気合入れていくぞ!」
「おー!」
便宜上第一班となずけられたジュンヤ隊が先に扉を出て、階段を駆け上っていきます。
数秒遅れて私達の第2班も続きます。
階段を上っていると激しい戦闘音が聞こえ始めます。
階段から察するにこの城は4階で構成されており、3階にも敵はおらず、そのまま4階まで上っていったようですね。
「≪探知≫」
私に言われるまでもなく、ベテランのステイシーが≪探知≫を使用します。
「うんー。いるねー。しかもこれはかなり強敵だよー」
「四天王クラス?」
ギルド『猫姫王国』には四天王と呼ばれる超人プレイヤーがいると聞きます。
貢いだ金と経験値が上位4人じゃないといけないとか……。
「僕一人じゃ厳しいかなー」
「二人でやろっか。盾持ち2人残ってください。残り一人の盾持ちと支援職の子は上階へ向かってください」
「わ、わかりました!」
そうしてステイシーが言う強敵のいる部屋へと向かいます。
「では作戦通りのお願いします」
事前に、盾持ちの人にはガードに徹してもらうことにしてもらっていたので確認しておきます。
「がんばります」
「1秒でも長く生きてます」
さすが正門前の混戦を勝ち残ってるだけはありますね。死ぬのがわかってらっしゃる。
実際、私とステイシー二人がかりで倒せなかったら、上階まで援護に行かれ、連合の敗北は必至ですからね。意地でも勝ちますよ。10日間のデスペナルティーの間に何が起こるか考えたくもないので。
「待っていた」
「しってました」
「しってたよー」
「ここに来るのは〔槍最強〕だと思っていたんだがな」
「ジュンヤじゃなくてごめんねー」
「なぁに。気にするな。早速始めるか。っとそのまえに……」
ゴゥっと風が吹いた瞬間に盾持ちの2人がパンと軽快な音を立て爆発し、消滅しました。
「邪魔者には退場していただこうか」
「やるねー」
こいつは強敵なんてもんじゃないですよ。
間違いなく〔最強〕クラスです。
「一応名乗りをあげておこうか?」
「じゃぁおねがいするよー」
「ギルド『猫姫王国』ナンバーツー【トリックスター】アイザック」
「ま……【真理の魔導士】ステイシー」
「【闇神官】チェリー」
少しばかり睨むような視線がこちらに向いて飛んできましたが嘘ではないので気付かなかったフリをします。
「こいつが地面に落ちたら勝負開始だ。最もその瞬間に勝敗は決するがな」
そう言い、懐から金貨を取り出し、上に放りました。
『まずはガードするね』
パーティーチャットでステイシーに伝えます。
『念のため僕もガードで』
キーンという音が鳴った瞬間、空間から音が消えました。
「≪フルキャスト・ドーム≫」
「≪フルキャスト・シールド≫」
全属性の魔法を一斉に発動するフルキャストで対策を打ちます。
私の張ったドームに激突する感触が音ののわりに大きい気がします。
「たぶん空気操作系のスキルを持ってるみたい。音が小さいのはドームの外が真空だから?」
盾持ちの二人がパンってなった理由が分かりました。
「真空……。ドームから出たらパーンだね。維持に全力だす」
「じゃぁ攻撃は僕が。真空状態の度合によるけどなら電気が有効のはずだから」
「物理はさっぱりだからまかせる」
ドームをさらに内側にマテリアル、フルキャスト、マジック、の順で3枚構築し、ステイシーの魔法を待ちます。
「≪テレ・サンダー・ストライク≫」
遠隔発動のできる雷属性魔法ですね。
青白い雷がドームの外に走りました。
「そこまで真空度合は高くないみたい」
そうなんですか。
「でもスキルの検討がつかないよ」
私もつかないです。
「とりあえず姿が見えないと攻撃も当てられないよー」
よく言われてみれば姿が見えませんね。
真空……。真空……?
真空って密閉されてないとならないよね?
「ステイシー。窓ガラス割ってみたら?」
「かしこい!」
「もっと褒めていいよ」
「≪テレ・ライトニング・ピアス≫」
ステイシーがガラスに向かって魔法を発動しました。
ピキッっと音はしなかったですが罅が入り、ガラスが粉々になりました。
室内の調度品が竜巻に巻き込まれたのではないかという錯覚に陥るほど荒れ狂い、部屋中を飛び回ります。
「グッ……」
姿を現した、アイザックは膝を地面に着き、頭部からだらだらと血を流しています。
「良く見破ったな。だがまだこれで終わりじゃな……」
「いえ。終わりです。≪マテリアル・キューブ≫」
私はそう言い放ち、キューブで拘束しました。マテリアルのキューブなので力業で壊すのは不可能でしょう。
「……≪フレイム・スピア≫」
こいつ魔法も使えたんですね。
「≪アクア・シールド≫」
キューブを貫通した魔法はステイシーによって受け止められました。
もっと大規模な魔法を撃たれていたらキューブが解けていたかもしれませんね。
「詰みだな。俺の負けだ。殺せ」
「では10日後を楽しみにしていたください。あなたのギルドはなくなっているでしょうが。≪インシネレート≫」
楽には殺しませんよ。じっくり火あぶりです。
「なかなかチェリーも性格が悪いねー」
「そう?」
悲鳴をあげつつ、初級の回復魔法と氷属性魔法でなんとか耐えようとしています。
「……。≪バーン≫」
火力をもう一段階あげてみましょう。
「あああああ!」
生成した瞬間氷が解け、回復量を上回る火傷のダメージで苦しんでいますね。
これが拷問ですか。
悪乗りしたくなってきますね。
「お前の知ってることを全部吐け!」
「くそおおお! 言えねぇ!」
「≪バーニング≫」
「あああああああああ!」
「言え」
「命に代えても……言えない!」
「≪ヘル・バーン≫」
「ぎゃああああああ! まった! 言う! 全部言う!」
おお! 効果ありましたね。
パチンと指を鳴らし、火を一度止めます。
「ふーふー……何が知りたい?」
呼吸を整えた、アイザックが聞いてきます。
「まずは誰の命令でこの国を建てたのか」
「それは……」
言い淀んでいるので指を鉄砲型にし突きつけてみます。
「ひっ! ナンバーワンのジルファリです!」
「知ってるステイシー?」
「しらないなー。君のところのハリリンに聞くのが一番じゃないかな?」
「そうだね」
『ハリリン。『猫姫王国』のジルファリって知ってる?』
すぐさまハリリンにチャットをします。
『ナンバーワンっすね。というより実質的なリーダーっす』
『そうなの?』
『愛猫姫にはそこまで戦力はないので、戦闘面ではってかんじっすけど』
『そうなんだー』
『愛猫姫にぞっこんでかなり貢いでるみたいっすよ?』
『それはどうでもいい情報。ていうかチャット送っておいて悪いんだけど』
『なんすか?』
『よく生き残ってたな』
『何度も死にかけてるっすよー!』
一応の裏が取れたのでアイザックに再び質問します。
「つまり、ジルファリさんっていうのが愛猫姫に国をプレゼントしたってこと?」
「そうなります!」
だとすると……。
愛猫姫は国の乗っ取りを知らない……?
いやそんなわけないですよね。
「上階の布陣は?」
「ナンバースリーーとフォーがいます!」
「愛猫姫は?」
「…………」
「よし、もう楽になれ。10日後……」
「俺は知らない! 本当だ!」
「……。そういうのはジルファリしか知らないんですよ!」
「つかえないなぁ」
「つかえないねー」
その後得る情報も大したことなかったので、脳天にステイシーが落雷を落としデスペナルティーにしました。
「つかれた……」
「僕も疲れたよ……」
「次で最終戦だといいね」
「ほんとにー」
そうポーションを飲みながら会話をしていると私はあることに気が付きます。
「あっ……」
「どうしたのー?」
「2連戦で姿消す系の人と戦ってるんだけど」
「そうだねー。ちなみに僕が倒してきたのも姿を消す系だったよー」
「やっぱり」
「んー?」
「このギルドの上位の奴らってみんなストーカーだとおもう。好き好んで姿消すなんてそうとしか思えない」
「……。ブッ!」
腹の底から声をだし、笑うステイシーを私は初めて見たかもしれません。
回復が終わったら最上階での戦闘ですね。
おそらく最上階の戦闘が最後の戦闘にはならないだろうという確信に似た推測をし、少しの休憩を満喫します。
to be continued...
0
お気に入りに追加
267
あなたにおすすめの小説
1人生活なので自由な生き方を謳歌する
さっちさん
ファンタジー
大商会の娘。
出来損ないと家族から追い出された。
唯一の救いは祖父母が家族に内緒で譲ってくれた小さな町のお店だけ。
これからはひとりで生きていかなくては。
そんな少女も実は、、、
1人の方が気楽に出来るしラッキー
これ幸いと実家と絶縁。1人生活を満喫する。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
春空VRオンライン ~島から出ない採取生産職ののんびり体験記~
滝川 海老郎
SF
新作のフルダイブVRMMOが発売になる。 最初の舞台は「チュートリ島」という小島で正式リリースまではこの島で過ごすことになっていた。
島で釣りをしたり、スライム狩りをしたり、探険したり、干物のアルバイトをしたり、宝探しトレジャーハントをしたり、のんびり、のほほんと、過ごしていく。
忘却の艦隊
KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。
大型輸送艦は工作艦を兼ねた。
総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。
残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。
輸送任務の最先任士官は大佐。
新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。
本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。
他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。
公安に近い監査だった。
しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。
そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。
機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。
完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。
意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。
恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。
なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。
しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。
艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。
そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。
果たして彼らは帰還できるのか?
帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?
Anotherfantasia~もうひとつの幻想郷
くみたろう
ファンタジー
彼女の名前は東堂翠。
怒りに震えながら、両手に持つ固めの箱を歪ませるくらいに力を入れて歩く翠。
最高の一日が、たった数分で最悪な1日へと変わった。
その要因は手に持つ箱。
ゲーム、Anotherfantasia
体感出来る幻想郷とキャッチフレーズが付いた完全ダイブ型VRゲームが、彼女の幸せを壊したのだ。
「このゲームがなんぼのもんよ!!!」
怒り狂う翠は帰宅後ゲームを睨みつけて、興味なんか無いゲームを険しい表情で起動した。
「どれくらい面白いのか、試してやろうじゃない。」
ゲームを一切やらない翠が、初めての体感出来る幻想郷へと体を委ねた。
それは、翠の想像を上回った。
「これが………ゲーム………?」
現実離れした世界観。
でも、確かに感じるのは現実だった。
初めて続きの翠に、少しづつ増える仲間たち。
楽しさを見出した翠は、気付いたらトップランカーのクランで外せない大事な仲間になっていた。
【Anotherfantasia……今となっては、楽しくないなんて絶対言えないや】
翠は、柔らかく笑うのだった。
DEADNIGHT
CrazyLight Novels
SF
総合 900 PV 達成!ありがとうございます!
Season 2 Ground 執筆中 全章執筆終了次第順次公開予定
1396年、5歳の主人公は村で「自由のために戦う」という言葉を耳にする。当時は意味を理解できなかった、16年後、その言葉の重みを知ることになる。
21歳で帝国軍事組織CTIQAに入隊した主人公は、すぐさまDeadNight(DN)という反乱組織との戦いに巻き込まれた。戦場で自身がDN支配地域の出身だと知り、衝撃を受けた。激しい戦闘の中で意識を失った主人公は、目覚めると2063年の未来世界にいた。
そこで主人公は、CTIQAが敗北し、新たな組織CREWが立ち上がったことを知る。DNはさらに強大化しており、CREWの隊長は主人公に協力を求めた。主人公は躊躇しながらも同意し、10年間新しい戦闘技術を学ぶ。
2073年、第21回DVC戦争が勃発。主人公は過去の経験と新しい技術を駆使して戦い、敵陣に単身で乗り込み、敵軍大将軍の代理者を倒した。この勝利により、両軍に退避命令が出された。主人公がCREW本部の総括官に呼び出され、主人公は自分の役割や、この終わりなき戦いの行方について考えを巡らせながら、総括官室へ向かう。それがはじまりだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる