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第1章 セーラム
第1章14幕 人工<artificiality>
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3人仲良く≪泥酔≫になり各々が宿の部屋に帰ります。
帰りの日程がまだ決まっていないということで私達も当分『岩塩都市 ファイサル』に滞在することになりました。
何度か来たことはあったのですが、素材の買い付けや販売、クエストで来た限りだったのでいい機会ですね。
≪泥酔≫が治るまで部屋で休み、治ったら観光に行こうと思いベッドに入りましたが、疲れていたこともありすぐに夢の世界へと落ちて行ってしまいました。
「チェリー。チェリー起きて」
夢の中で私を呼ぶ声がします。
この声はエルマ?
「あと5分……。いや。あと2時間は寝かせてほしいな」
「起きろー!」
ペシペシと肩を叩かれ起こされます。
夢じゃなくて現実だったみたいですね。
「おはようエルマ」
「おはよう。今何時だと思う?」
「朝の7時くらい?」
「夜の7時だよ」
「はい?」
視界の端に表示されている時間を確認してエルマが嘘をついていないことを確認します。
「うかつだった。18時間も寝ちゃうなんて」
色々警報が出てますね。空腹とかトイレとか。
「ごめんお腹空いたからちょっとリアルでごはん食べて、トイレに行ってくるよ」
「いってらっしゃい!」
現実に戻りトイレを済ませご飯を食べます。
最近自動調理機の食事も飽きてきましたね。
気が向いたら料理でもしますか。
気が向いたらですけど。
歯を磨いてログインしようかなと思ったのですが何処からか汗の臭いがしてきたので、服の洗濯ついでに自分の洗濯もすることにします。
服を脱ぎ、洗濯機に放り込み、お風呂場にきました。
向こうと比べると狭くて不便な感じがしてきます。
一応向こうで髪は洗ったのでお風呂につかり汗を流すだけにしておきます。
十数分つかり、体の芯まで温まったあと予備のもこもこしたワンピースを着用します。
こういうもこもこの服を着れば身体拭かなくていいって田舎のばぁちゃんがいってた。
ログインし宿屋に戻ります。
「エルマおまたせー……っていないじゃん」
とりあえず戻ったことをパーティーチャットで伝えます。
『ただいま』
『おかえりー』
『おかえり!』
エルマいるじゃん。
『みんなどこにいるの?』
『僕は戦利品の売却にー』
『あたしはベッドだよ』
『私も売却しなきゃ。エルマは寝るの?』
『のんのん! よく部屋を見渡してごらん?』
『誰の?』
『チェリーの!』
ん? と思いつつも部屋を見渡してみます。
あっベッドが人型にもっこり盛り上がってますね。
「ここかー!」
「だーい正解ー!」
「気付かなかったら置いていくとこだった」
「おいて行かれなくてよかった」
「私達も売却いこっか」
「あたしはもう売却すませたよ!」
さすがエルマ。行動が早い。
「そっか。私は売却した後に案内所にいってくるね」
「クエスト?」
「まぁ暇だしね。あとはうちのお店の従業員探しに」
「目的は従業員か!」
「ばれたか」
「いっておいで。おねぇさんはここで寝てるから」
「自分部屋あるでしょ?」
「……。スースー」
…………。
ほっときましょう。
宿を出て案内所まで定番のスライド移動で向かってると焼き鳥の匂いがしてきます。
こっちの身体はまだ何も食べていなかったのでついでに食べていこうと思い、匂いのもとへ一目散です。
若い女性の「おいしいよー! やすいよー!」という声にふと懐かしさを感じます。
やっぱりあのおっちゃんの屋台だったみたいですね。
「お久しぶりです。といっても数日しか経っていませんが」
「おう! あんときの嬢ちゃんじぇねぇか! ここであうたぁ奇遇だな!」
「とりあえず15本ください。『マスティア』で食材探しはよかったんですか?」
「行ったんですがねぇ見つからなかったんですわ」
「そうなんですか? 実は私も焼くとおいしいっていう食材見つけたんですよ」
「ほーう? そりゃ興味あるってもんですわ」
「これなんですけど……」
残り少ない〔マッスルガーゴイルの筋肉〕を取り出します。
「へぇーこれがねぇ。見た感じ硬そうであんま旨くなさそうなもんですがねぇ……」
「生のまま食べてた知人が焼くとおいしいって言ってたんですよ」
「これを生でねぇ……。ちーっと焼いてみるか」
「興味あるんでお願いします」
「でもどうして『ファイサル』に?」
「いえねぇ。うちの店たれしかないんですわ。そんで美味い塩があるなら塩もだせるかとおもったんですわ」
なるほど。ここ『岩塩都市』ですもんね。
「なるほど。おいしい塩ありましたか?」
「うまいっちゃうまいんだがちーっと物足りないんですわ。こうパンチがねぇっていうか」
「なるほど。今度おいしい塩見つけたらまたお店探してお伝えしますね」
「悪いねぇ! そんときゃサービスさせてもらいますわ。っととりあえず焼き鳥15本お待ち! 3000金ですわ」
「こないだは1本ありがとうございました」
「……気にすんな。お嬢ちゃんまだわけぇんだ。わけぇ子には頑張ってもらわんと」
お、おう。
「こっちのなんたらの筋肉ってやつももうすぐ焼きあがるから待ってな」
「はい」
「味はどうする? たれにすっか? 塩も一応だせますが味の保証はできないですわ」
「では1本づつでおねがいします」
「あいよー!」
おっちゃんの味見のためにか4本焼かれていた〔マッスルガーゴイルの筋肉〕を受け取ります。
「ではいただきます」
「おう、俺もちーっと味見だ」
パクッと口に入れると、筋肉のどこにため込んであったのかわからない謎の脂と少し硬めの肉から噛むほどにあふれてくる肉汁が口の中を満たします。
こ……これは……旨い!
「おっちゃん!! これめっちゃおいしい!」
「お、おう……お嬢ちゃん俺もびっくりですわ……。触感は硬めだが部分的にとろけるような舌ざわり……これは強いて言うなら……」
「「牛スジ!」」
「お、お嬢ちゃんわけぇのに牛スジの良さがわかるたー恐れ入ったなぁ」
「結構好きなんです。牛スジ」
「あんなもんがこんなうまいものになるたーなぁ。お嬢ちゃんこれどこで手に入れたんだ?」
「えーっと……『マスティア』の料理屋さん?ですね。たしか……『ポンドバーグ』でしたかね」
「ありがとうなお嬢ちゃん! もっかい行ってきますわ。おい、トマトもう一度『マスティア』いくぞ!」
「はい! 大将!」
「お嬢ちゃん急で悪いがこれで失礼しますわ。また会ったらよろしくな!」
「はい。では」
『マスティア』とは逆の方向に走り出すおっちゃんを見送り、買った焼き鳥を食べます。
おいしい……。
エルマとステイシーに分けるつもりで買った焼き鳥が全部なくなるころ案内所に着きました。
まずは職場募集の方でも見てみましょうか。
さーっと眺めていると【魔具職人】のものがありました。
『職場募集』
『俺様がつくった魔具を使いこなせる奴のとこ、もしくは俺様が作った魔具を超えるものを持つ奴』
『4番街『アンチドーテ』まで来い』
うわー……。
でもこういう職人さんってほんといいもの作ったりするんですよね。
ちょっと興味があるので行ってみましょうか。
『アンチドーテ』という店を探しに4番街まで来たのですが見当たりません。
誰か通れば聞けるのですがほとんど人通りもありませんね。
シャッターが全部しまってる商店街のような雰囲気がある4番街をふらふらと移動していると曲がり角で酒瓶を持って、座り込んでいる老人を見つけました。
心配なので話しかけてみます。
「あの……? 大丈夫ですか?」
「……ンガッ」
「大丈夫ですか?」
「……。お、おう……大丈夫だ…大丈夫……」
「……。風邪ひきますよ?」
「なんだってぇー? そりゃーいかんのぉー帰るかーヒック」
おおう……。漫画以外で初めてヒックって聞いた……。
「家わかりますか?」
「家……? なんだぁー?」
あーもうほんと酔っ払いキツイ……。
「お! う! ち!」
「おもち?」
…………。
「風邪ひかないように早めに帰ってくださいね。では」
無視することにしました。
老人が倒れている所から路地を少し行ったところに一つ灯りのともっているお店があるようです。
何かあったらご老人を保護してもらえるように一言言っておきますか。
古く、錆びた扉を開け、中に入ります。
「ごめんください」
「……。あいよ」
「この店をでたところでご老人が酔っぱらっていたのですが、もしよろしければ保護をお願いできませんか?」
「……。そいつはこんなナリしてなかったか?」
絵のようなものを描いて見せてくれました。
「そうですね」
「……。ならほっといて大丈夫だ。じきにかえってくる」
「えっ? どういうことですか?」
「……。俺様の師匠だ」
「ん?」
「……。なんだ?」
良く見渡してみると鍛冶場に少し近いけれど布を裁断したりする機械があったりしました。
つまりここは魔具工房です。
「失礼ですがお店の名前をおききしてもよろしいですか?」
「……。あぁ『アンチドーテ』だ」
やった! なぜか着いた!
「えっと案内所で職場募集の張り紙をみたのですが」
「……。それで?」
「えーっと……。よかったら作品を見せてもらえないですか?」
「……勝手にしろ。そこの棚にある」
「ありがとうございます」
棚に歩いていき魔具を見させてもらいます。
どれも高いレベルの装備効果が付いており、スキルもなかなかいいですね。
でも値札がないですね。
「あの……」
「……? なんだ?」
「値札がないのですが」
「値札はない。俺様が売るときに決める」
「なるほど」
一通り見させてもらってわかったのですがここの魔具の全てが【上級魔具職人】の手によるものでしょう。
「これはすべてあなたが制作したのですか?」
「……。すべてではない。一部俺様と同じ弟子や師匠が作っている」
「なるほど」
腕はかなりよさそうですね。
ちょっとコミュニケーション取りにくいですけど。
「……。おい、職場募集の見て来たんだろ?」
「そうですが?」
「……。お前の装備見せてみろ」
「えっ……? あっはい。どうぞ」
外したリングとブレスレットを置きます。
「……。製作品じゃねぇな。しかし、かなりの業物だな」
まぁ一応【神器】ですしね。
「……。制作でこれに匹敵するものはあるか?」
「いえ。今手元にはないです」
「……。持ってこい」
「えっ?」
「……。持ってこい」
「あっはい。あっ持ってる人ここに呼んでもいいですか?」
「……。かまわん」
『ステイシーいる?』
『いるよー』
『ちょっと来てほしいんだけど』
『うんー? どこにー?』
『『アンチドーテ』っていう魔具工房』
『チェリーの座標に≪テレポート≫するねー』
『ありがとう』
「やーやー。おまたせー」
「ステイシー来てくれてありがとう」
「いいよー。それでなにかなー?」
「こちらの職人さんに【再誕神器】をみせてあげてほしいの」
「お安い御用さー」
手に持っていた杖をぽいっと机の上に置きました。
「……。【再誕神器】か。これの制作者は誰だ?」
「めのまえにいるじゃないー」
「……。どういうことだ」
「この女性がそれを作ったんだよー」
「……。それは本当か?」
「え、えぇ……まぁ一応」
「……。なぜ俺様の工房にきた? これほどのものが作れるならてめぇでやったらどうだ?」
「一理あるー」
おい。
「他にもいろいろやっていましてちょっと時間が足りない……んですよね」
「……。ほう?」
「素材集めたりとかしますし……」
「……。てめぇこれ使えるか?」
ひょいっとブックを投げ渡してきます。
【テウルギア】……?
「……。裏手が少しくらいなら魔法をぶっ放しても大丈夫なようになってる。使ってみろ」
「あっはい。わかりました」
裏手まで移動します。
ステイシーと魔具職人の人もついてきました。
「……。なんでもいい。スキルが発動できるかやってみろ」
やってみろっていわれても……これスキル何もついてないんですけど……。
「……。スキルが書いてないんですけど」
「……。そうか。≪ヘノーシス≫と言え」
「……? ≪ヘノーシス≫」
…………。
何も起きませんね。
「……。やはりか。もういい返せ。使えるようになったと思ったらまた来な」
「えっ? ちょっと状況が読めない」
「……。帰れ」
「じゃぁ僕はかえるよー。チェリーまたあしたー」
「うん。また明日ね」
仕方ないので私も帰ることにします。
店を抜け路地に出ると先ほどの老人が立っていました。
「ヒック……。お前さんあの魔具使えなかったんじゃろ……」
「なぜそれを?」
「あいつはいつもああやっての、使えない魔具を渡して試してるのさ……」
「つまりどういうことですか?」
「自分が作った【人工神器】を目覚めさせる奴がいるかどうかの……」
「【人工神器】?」
「文字通りじゃよ。【神器】を人の手で作り出そうとしてるのさ」
「できるものなんですか?」
「わしにゃーわからん。あいつはできると信じとる。それだけじゃよ」
「【人工神器】か……」
「ひっひ。気になるかの?」
「気になりますね」
「ならもう一度【神器】を持つときと同じようにもってみたらどうかの……?」
「わかりました。では出直してきます」
「ぬう? 今行かんのかの?」
「追い出されてしまったので」
「そういうことか。ならわしについてこい」
「わかりました」
そうしてご老人をつれ再び『アンチドーテ』に入ります。
「……。俺様は帰れといったぞ?」
「あなたの……あなたの作った【神器】に命を吹き込むためにもう一度来ました」
「……。くそじじい話しやがったのか」
「ほっほ。よいではないか」
「……。何度やったって無駄だ」
「もう一度だけやらせてください」
「……。好きにしろ」
再び【テウルギア】を受け取りました。
普段【神器】を使うとき微塵も意識したことはなかったのですが、今回は意識して持ってみます。
お前は【神器】です。
複数の【神器】を持ってきた私が保証します。
【神器】の【神器】たる所以、みせなさい。
心の中で呪文のように唱えると、手に持った【テウルギア】がドクンっと脈動したように感じました。
MPを注ぎ込みます。
ドクン……ドクン……と次第に早くなる鼓動のように脈打っています。
さらにMPを注ぎます。
すると【テウルギア】が私の手を離れて浮きはじめました。
次の瞬間まばゆい光を放ち、床にポトリとおちました。
私はそれを拾い上げます。
【人工神器 テウールギアー】
装備効果:MND+50
INT+50
武器固有スキル:≪ヘノーシス≫
「できました。魂を、宿しました」
「……。そうか」
「私の店で【魔具職人】をやっていただけませんか?」
「……。師匠世話になった。俺様はこいつと一緒に行く」
「いいのか?」
「……。他に弟子もいるんだそいつらに継がせろ。俺様は出ていくと決めた」
「ひっひ。そうかい。元気でやれよ」
「……。あぁ。じゃあなくそじじい」
「……。店はどこだ?」
「『花の都 ヴァンヘイデン』にある『セーラムツー』です」
「……。くそじじい。あと2日だけおいてくれ。準備する」
遠いですもんね……。
本店と分店の場所を描いた地図を渡し、困ったら本店のフランに相談するように言い、私は店を後にしました。
to be continued...
帰りの日程がまだ決まっていないということで私達も当分『岩塩都市 ファイサル』に滞在することになりました。
何度か来たことはあったのですが、素材の買い付けや販売、クエストで来た限りだったのでいい機会ですね。
≪泥酔≫が治るまで部屋で休み、治ったら観光に行こうと思いベッドに入りましたが、疲れていたこともありすぐに夢の世界へと落ちて行ってしまいました。
「チェリー。チェリー起きて」
夢の中で私を呼ぶ声がします。
この声はエルマ?
「あと5分……。いや。あと2時間は寝かせてほしいな」
「起きろー!」
ペシペシと肩を叩かれ起こされます。
夢じゃなくて現実だったみたいですね。
「おはようエルマ」
「おはよう。今何時だと思う?」
「朝の7時くらい?」
「夜の7時だよ」
「はい?」
視界の端に表示されている時間を確認してエルマが嘘をついていないことを確認します。
「うかつだった。18時間も寝ちゃうなんて」
色々警報が出てますね。空腹とかトイレとか。
「ごめんお腹空いたからちょっとリアルでごはん食べて、トイレに行ってくるよ」
「いってらっしゃい!」
現実に戻りトイレを済ませご飯を食べます。
最近自動調理機の食事も飽きてきましたね。
気が向いたら料理でもしますか。
気が向いたらですけど。
歯を磨いてログインしようかなと思ったのですが何処からか汗の臭いがしてきたので、服の洗濯ついでに自分の洗濯もすることにします。
服を脱ぎ、洗濯機に放り込み、お風呂場にきました。
向こうと比べると狭くて不便な感じがしてきます。
一応向こうで髪は洗ったのでお風呂につかり汗を流すだけにしておきます。
十数分つかり、体の芯まで温まったあと予備のもこもこしたワンピースを着用します。
こういうもこもこの服を着れば身体拭かなくていいって田舎のばぁちゃんがいってた。
ログインし宿屋に戻ります。
「エルマおまたせー……っていないじゃん」
とりあえず戻ったことをパーティーチャットで伝えます。
『ただいま』
『おかえりー』
『おかえり!』
エルマいるじゃん。
『みんなどこにいるの?』
『僕は戦利品の売却にー』
『あたしはベッドだよ』
『私も売却しなきゃ。エルマは寝るの?』
『のんのん! よく部屋を見渡してごらん?』
『誰の?』
『チェリーの!』
ん? と思いつつも部屋を見渡してみます。
あっベッドが人型にもっこり盛り上がってますね。
「ここかー!」
「だーい正解ー!」
「気付かなかったら置いていくとこだった」
「おいて行かれなくてよかった」
「私達も売却いこっか」
「あたしはもう売却すませたよ!」
さすがエルマ。行動が早い。
「そっか。私は売却した後に案内所にいってくるね」
「クエスト?」
「まぁ暇だしね。あとはうちのお店の従業員探しに」
「目的は従業員か!」
「ばれたか」
「いっておいで。おねぇさんはここで寝てるから」
「自分部屋あるでしょ?」
「……。スースー」
…………。
ほっときましょう。
宿を出て案内所まで定番のスライド移動で向かってると焼き鳥の匂いがしてきます。
こっちの身体はまだ何も食べていなかったのでついでに食べていこうと思い、匂いのもとへ一目散です。
若い女性の「おいしいよー! やすいよー!」という声にふと懐かしさを感じます。
やっぱりあのおっちゃんの屋台だったみたいですね。
「お久しぶりです。といっても数日しか経っていませんが」
「おう! あんときの嬢ちゃんじぇねぇか! ここであうたぁ奇遇だな!」
「とりあえず15本ください。『マスティア』で食材探しはよかったんですか?」
「行ったんですがねぇ見つからなかったんですわ」
「そうなんですか? 実は私も焼くとおいしいっていう食材見つけたんですよ」
「ほーう? そりゃ興味あるってもんですわ」
「これなんですけど……」
残り少ない〔マッスルガーゴイルの筋肉〕を取り出します。
「へぇーこれがねぇ。見た感じ硬そうであんま旨くなさそうなもんですがねぇ……」
「生のまま食べてた知人が焼くとおいしいって言ってたんですよ」
「これを生でねぇ……。ちーっと焼いてみるか」
「興味あるんでお願いします」
「でもどうして『ファイサル』に?」
「いえねぇ。うちの店たれしかないんですわ。そんで美味い塩があるなら塩もだせるかとおもったんですわ」
なるほど。ここ『岩塩都市』ですもんね。
「なるほど。おいしい塩ありましたか?」
「うまいっちゃうまいんだがちーっと物足りないんですわ。こうパンチがねぇっていうか」
「なるほど。今度おいしい塩見つけたらまたお店探してお伝えしますね」
「悪いねぇ! そんときゃサービスさせてもらいますわ。っととりあえず焼き鳥15本お待ち! 3000金ですわ」
「こないだは1本ありがとうございました」
「……気にすんな。お嬢ちゃんまだわけぇんだ。わけぇ子には頑張ってもらわんと」
お、おう。
「こっちのなんたらの筋肉ってやつももうすぐ焼きあがるから待ってな」
「はい」
「味はどうする? たれにすっか? 塩も一応だせますが味の保証はできないですわ」
「では1本づつでおねがいします」
「あいよー!」
おっちゃんの味見のためにか4本焼かれていた〔マッスルガーゴイルの筋肉〕を受け取ります。
「ではいただきます」
「おう、俺もちーっと味見だ」
パクッと口に入れると、筋肉のどこにため込んであったのかわからない謎の脂と少し硬めの肉から噛むほどにあふれてくる肉汁が口の中を満たします。
こ……これは……旨い!
「おっちゃん!! これめっちゃおいしい!」
「お、おう……お嬢ちゃん俺もびっくりですわ……。触感は硬めだが部分的にとろけるような舌ざわり……これは強いて言うなら……」
「「牛スジ!」」
「お、お嬢ちゃんわけぇのに牛スジの良さがわかるたー恐れ入ったなぁ」
「結構好きなんです。牛スジ」
「あんなもんがこんなうまいものになるたーなぁ。お嬢ちゃんこれどこで手に入れたんだ?」
「えーっと……『マスティア』の料理屋さん?ですね。たしか……『ポンドバーグ』でしたかね」
「ありがとうなお嬢ちゃん! もっかい行ってきますわ。おい、トマトもう一度『マスティア』いくぞ!」
「はい! 大将!」
「お嬢ちゃん急で悪いがこれで失礼しますわ。また会ったらよろしくな!」
「はい。では」
『マスティア』とは逆の方向に走り出すおっちゃんを見送り、買った焼き鳥を食べます。
おいしい……。
エルマとステイシーに分けるつもりで買った焼き鳥が全部なくなるころ案内所に着きました。
まずは職場募集の方でも見てみましょうか。
さーっと眺めていると【魔具職人】のものがありました。
『職場募集』
『俺様がつくった魔具を使いこなせる奴のとこ、もしくは俺様が作った魔具を超えるものを持つ奴』
『4番街『アンチドーテ』まで来い』
うわー……。
でもこういう職人さんってほんといいもの作ったりするんですよね。
ちょっと興味があるので行ってみましょうか。
『アンチドーテ』という店を探しに4番街まで来たのですが見当たりません。
誰か通れば聞けるのですがほとんど人通りもありませんね。
シャッターが全部しまってる商店街のような雰囲気がある4番街をふらふらと移動していると曲がり角で酒瓶を持って、座り込んでいる老人を見つけました。
心配なので話しかけてみます。
「あの……? 大丈夫ですか?」
「……ンガッ」
「大丈夫ですか?」
「……。お、おう……大丈夫だ…大丈夫……」
「……。風邪ひきますよ?」
「なんだってぇー? そりゃーいかんのぉー帰るかーヒック」
おおう……。漫画以外で初めてヒックって聞いた……。
「家わかりますか?」
「家……? なんだぁー?」
あーもうほんと酔っ払いキツイ……。
「お! う! ち!」
「おもち?」
…………。
「風邪ひかないように早めに帰ってくださいね。では」
無視することにしました。
老人が倒れている所から路地を少し行ったところに一つ灯りのともっているお店があるようです。
何かあったらご老人を保護してもらえるように一言言っておきますか。
古く、錆びた扉を開け、中に入ります。
「ごめんください」
「……。あいよ」
「この店をでたところでご老人が酔っぱらっていたのですが、もしよろしければ保護をお願いできませんか?」
「……。そいつはこんなナリしてなかったか?」
絵のようなものを描いて見せてくれました。
「そうですね」
「……。ならほっといて大丈夫だ。じきにかえってくる」
「えっ? どういうことですか?」
「……。俺様の師匠だ」
「ん?」
「……。なんだ?」
良く見渡してみると鍛冶場に少し近いけれど布を裁断したりする機械があったりしました。
つまりここは魔具工房です。
「失礼ですがお店の名前をおききしてもよろしいですか?」
「……。あぁ『アンチドーテ』だ」
やった! なぜか着いた!
「えっと案内所で職場募集の張り紙をみたのですが」
「……。それで?」
「えーっと……。よかったら作品を見せてもらえないですか?」
「……勝手にしろ。そこの棚にある」
「ありがとうございます」
棚に歩いていき魔具を見させてもらいます。
どれも高いレベルの装備効果が付いており、スキルもなかなかいいですね。
でも値札がないですね。
「あの……」
「……? なんだ?」
「値札がないのですが」
「値札はない。俺様が売るときに決める」
「なるほど」
一通り見させてもらってわかったのですがここの魔具の全てが【上級魔具職人】の手によるものでしょう。
「これはすべてあなたが制作したのですか?」
「……。すべてではない。一部俺様と同じ弟子や師匠が作っている」
「なるほど」
腕はかなりよさそうですね。
ちょっとコミュニケーション取りにくいですけど。
「……。おい、職場募集の見て来たんだろ?」
「そうですが?」
「……。お前の装備見せてみろ」
「えっ……? あっはい。どうぞ」
外したリングとブレスレットを置きます。
「……。製作品じゃねぇな。しかし、かなりの業物だな」
まぁ一応【神器】ですしね。
「……。制作でこれに匹敵するものはあるか?」
「いえ。今手元にはないです」
「……。持ってこい」
「えっ?」
「……。持ってこい」
「あっはい。あっ持ってる人ここに呼んでもいいですか?」
「……。かまわん」
『ステイシーいる?』
『いるよー』
『ちょっと来てほしいんだけど』
『うんー? どこにー?』
『『アンチドーテ』っていう魔具工房』
『チェリーの座標に≪テレポート≫するねー』
『ありがとう』
「やーやー。おまたせー」
「ステイシー来てくれてありがとう」
「いいよー。それでなにかなー?」
「こちらの職人さんに【再誕神器】をみせてあげてほしいの」
「お安い御用さー」
手に持っていた杖をぽいっと机の上に置きました。
「……。【再誕神器】か。これの制作者は誰だ?」
「めのまえにいるじゃないー」
「……。どういうことだ」
「この女性がそれを作ったんだよー」
「……。それは本当か?」
「え、えぇ……まぁ一応」
「……。なぜ俺様の工房にきた? これほどのものが作れるならてめぇでやったらどうだ?」
「一理あるー」
おい。
「他にもいろいろやっていましてちょっと時間が足りない……んですよね」
「……。ほう?」
「素材集めたりとかしますし……」
「……。てめぇこれ使えるか?」
ひょいっとブックを投げ渡してきます。
【テウルギア】……?
「……。裏手が少しくらいなら魔法をぶっ放しても大丈夫なようになってる。使ってみろ」
「あっはい。わかりました」
裏手まで移動します。
ステイシーと魔具職人の人もついてきました。
「……。なんでもいい。スキルが発動できるかやってみろ」
やってみろっていわれても……これスキル何もついてないんですけど……。
「……。スキルが書いてないんですけど」
「……。そうか。≪ヘノーシス≫と言え」
「……? ≪ヘノーシス≫」
…………。
何も起きませんね。
「……。やはりか。もういい返せ。使えるようになったと思ったらまた来な」
「えっ? ちょっと状況が読めない」
「……。帰れ」
「じゃぁ僕はかえるよー。チェリーまたあしたー」
「うん。また明日ね」
仕方ないので私も帰ることにします。
店を抜け路地に出ると先ほどの老人が立っていました。
「ヒック……。お前さんあの魔具使えなかったんじゃろ……」
「なぜそれを?」
「あいつはいつもああやっての、使えない魔具を渡して試してるのさ……」
「つまりどういうことですか?」
「自分が作った【人工神器】を目覚めさせる奴がいるかどうかの……」
「【人工神器】?」
「文字通りじゃよ。【神器】を人の手で作り出そうとしてるのさ」
「できるものなんですか?」
「わしにゃーわからん。あいつはできると信じとる。それだけじゃよ」
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「ひっひ。気になるかの?」
「気になりますね」
「ならもう一度【神器】を持つときと同じようにもってみたらどうかの……?」
「わかりました。では出直してきます」
「ぬう? 今行かんのかの?」
「追い出されてしまったので」
「そういうことか。ならわしについてこい」
「わかりました」
そうしてご老人をつれ再び『アンチドーテ』に入ります。
「……。俺様は帰れといったぞ?」
「あなたの……あなたの作った【神器】に命を吹き込むためにもう一度来ました」
「……。くそじじい話しやがったのか」
「ほっほ。よいではないか」
「……。何度やったって無駄だ」
「もう一度だけやらせてください」
「……。好きにしろ」
再び【テウルギア】を受け取りました。
普段【神器】を使うとき微塵も意識したことはなかったのですが、今回は意識して持ってみます。
お前は【神器】です。
複数の【神器】を持ってきた私が保証します。
【神器】の【神器】たる所以、みせなさい。
心の中で呪文のように唱えると、手に持った【テウルギア】がドクンっと脈動したように感じました。
MPを注ぎ込みます。
ドクン……ドクン……と次第に早くなる鼓動のように脈打っています。
さらにMPを注ぎます。
すると【テウルギア】が私の手を離れて浮きはじめました。
次の瞬間まばゆい光を放ち、床にポトリとおちました。
私はそれを拾い上げます。
【人工神器 テウールギアー】
装備効果:MND+50
INT+50
武器固有スキル:≪ヘノーシス≫
「できました。魂を、宿しました」
「……。そうか」
「私の店で【魔具職人】をやっていただけませんか?」
「……。師匠世話になった。俺様はこいつと一緒に行く」
「いいのか?」
「……。他に弟子もいるんだそいつらに継がせろ。俺様は出ていくと決めた」
「ひっひ。そうかい。元気でやれよ」
「……。あぁ。じゃあなくそじじい」
「……。店はどこだ?」
「『花の都 ヴァンヘイデン』にある『セーラムツー』です」
「……。くそじじい。あと2日だけおいてくれ。準備する」
遠いですもんね……。
本店と分店の場所を描いた地図を渡し、困ったら本店のフランに相談するように言い、私は店を後にしました。
to be continued...
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しかし、妻は
「嫌よ! 毎日見てる顔とゲーム内でも一緒とか」
少々愛情を疑う夫であったが、妻の意見を採用する。
さて、VRゲームを始める二人、どんなゲーム・ライフを送ることになるのやら……
*先の長い小説です。のんびり読んで下さい。
*この作品は、「小説家になろう」様、「カクヨム」様でも連載中です。
インフィニティ・オンライン~ネタ職「商人」を選んだもふもふワンコは金の力(銭投げ)で無双する~
黄舞
SF
無数にあるゲームの中でもβ版の完成度、自由度の高さから瞬く間に話題を総ナメにした「インフィニティ・オンライン」。
貧乏学生だった商山人志はゲームの中だけでも大金持ちになることを夢みてネタ職「商人」を選んでしまう。
攻撃スキルはゲーム内通貨を投げつける「銭投げ」だけ。
他の戦闘職のように強力なスキルや生産職のように戦闘に役立つアイテムや武具を作るスキルも無い。
見た目はせっかくゲームだからと選んだもふもふワンコの獣人姿。
これもモンスターと間違えられやすいため、PK回避で選ぶやつは少ない!
そんな中、人志は半ばやけくそ気味にこう言い放った。
「くそっ! 完全に騙された!! もういっその事お前らがバカにした『商人』で天下取ってやんよ!! 金の力を思い知れ!!」
一度完結させて頂きましたが、勝手ながら2章を始めさせていただきました
毎日更新は難しく、最長一週間に一回の更新頻度になると思います
また、1章でも試みた、読者参加型の物語としたいと思っています
具体的にはあとがき等で都度告知を行いますので奮ってご参加いただけたらと思います
イベントの有無によらず、ゲーム内(物語内)のシステムなどにご指摘を頂けましたら、運営チームの判断により緊急メンテナンスを実施させていただくことも考えています
皆様が楽しんで頂けるゲーム作りに邁進していきますので、変わらぬご愛顧をよろしくお願いしますm(*_ _)m
吉日
運営チーム
大変申し訳ありませんが、諸事情により、キリが一応いいということでここで再度完結にさせていただきます。
沢山寝たい少女のVRMMORPG〜武器と防具は枕とパジャマ?!〜
雪雪ノ雪
ファンタジー
世界初のフルダイブ型のVRゲーム『Second World Online』通称SWO。
剣と魔法の世界で冒険をするVRMMORPGだ。
このゲームの1番の特徴は『ゲーム内での3時間は現実世界の1時間である』というもの。
これを知った少女、明日香 睡月(あすか すいげつ)は
「このゲームをやれば沢山寝れる!!」
と言いこのゲームを始める。
ゲームを始めてすぐ、ある問題点に気づく。
「お金がないと、宿に泊まれない!!ベットで寝れない!!....敷布団でもいいけど」
何とかお金を稼ぐ方法を考えた明日香がとった行動は
「そうだ!!寝ながら戦えばお金も経験値も入って一石三鳥!!」
武器は枕で防具はパジャマ!!少女のVRMMORPGの旅が今始まる!!
..........寝ながら。
Free Emblem On-line
ユキさん
ファンタジー
今の世の中、ゲームと言えばVRゲームが主流であり人々は数多のVRゲームに魅了されていく。そんなVRゲームの中で待望されていたタイトルがβテストを経て、ついに発売されたのだった。
VRMMO『Free Emblem Online』
通称『F.E.O』
自由過ぎることが売りのこのゲームを、「あんちゃんも気に入ると思うよ~。だから…ね? 一緒にやろうぜぃ♪」とのことで、βテスターの妹より一式を渡される。妹より渡された『F.E.O』、仕事もあるが…、「折角だし、やってみるとしようか。」圧倒的な世界に驚きながらも、MMO初心者である男が自由気ままに『F.E.O』を楽しむ。
ソロでユニークモンスターを討伐、武器防具やアイテムも他の追随を許さない、それでいてPCよりもNPCと仲が良い変わり者。
そんな強面悪党顔の初心者が冒険や生産においてその名を轟かし、本人の知らぬ間に世界を引っ張る存在となっていく。
なろうにも投稿してあります。だいぶ前の未完ですがね。
VRおじいちゃん ~ひろしの大冒険~
オイシイオコメ
SF
75歳のおじいさん「ひろし」は思いもよらず、人気VRゲームの世界に足を踏み入れた。おすすめされた種族や職業はまったく理解できず「無職」を選び、さらに操作ミスで物理攻撃力に全振りしたおじいさんはVR世界で出会った仲間たちと大冒険を繰り広げる。
この作品は、小説家になろう様とカクヨム様に2021年執筆した「VRおじいちゃん」と「VRおばあちゃん」を統合した作品です。
前作品は同僚や友人の意見も取り入れて書いておりましたが、今回は自分の意向のみで修正させていただいたリニューアル作品です。
(小説中のダッシュ表記につきまして)
作品公開時、一部のスマートフォンで文字化けするとのご報告を頂き、ダッシュ2本のかわりに「ー」を使用しております。
【第1章完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。
鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。
鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。
まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。
Recreation World ~とある男が〇〇になるまでの軌跡〜
虚妄公
SF
新月流当主の息子である龍谷真一は新月流の当主になるため日々の修練に励んでいた。
新月流の当主になれるのは当代最強の者のみ。
新月流は超実戦派の武術集団である。
その中で、齢16歳の真一は同年代の門下生の中では他の追随を許さぬほどの強さを誇っていたが現在在籍している師範8人のうち1人を除いて誰にも勝つことができず新月流内の順位は8位であった。
新月流では18歳で成人の儀があり、そこで初めて実戦経験を経て一人前になるのである。
そこで真一は師範に勝てないのは実戦経験が乏しいからだと考え、命を削るような戦いを求めていた。
そんなときに同じ門下生の凛にVRMMORPG『Recreation World』通称リクルドを勧められその世界に入っていくのである。
だがそのゲームはただのゲームではなく3人の天才によるある思惑が絡んでいた。
そして真一は気付かぬままに戻ることができぬ歯車に巻き込まれていくのである・・・
※本作品は小説家になろう様、カクヨム様にも先行投稿しております。
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