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第1章 セーラム

第1章8幕 大工<carpenter>

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 「すいません。おそくなりました」
 ドアをバンと開き、女性がはいってきます。
 「「「「いらっしゃいませ」」」」
 4人集まって関節可変像をいじって遊んでいましたがすぐに仕事スイッチが入ります。
 カラガマも慣れているようで安心しました。

 「なにかお探しですか?」
 フランがそう話しかけます。
 「いえ。今日面接できました」
 あっ面接の人か。そういえば【高位調薬師】の人も面接あるっていってましたね。
 人のこと言えませんが、もう夜ですよ。
 どっかで見たことあるNPCだなぁと思いましたが、思い出せないので諦めます。
 「では2階へどうぞ。ご案内いたします」
 「お願いします」
 ちょっと気になったので私も行きましょうかね。
 
 2階の応接室に二人が入ったあと続いて入り。扉の横に立ちます。
 カラガマの時のように面接が始まります。
 「ではお名前と希望の業種を教えていただけますか?」
 「はい。私ポテトと申します。調薬の仕事をさせていただきたく参りました」
 えっ。
 ポテト?
 別人じゃん!!
 メイド服着てなかったら全く分からないじゃん!
 「ポテトさんですね。どうして『セーラム』に来てくださったんですか?」
 「少しばかりチェリー様とは縁がありまして。私達は外の人達が初ログインしたときに説明役をやるじゃないですか。そのとき私が担当させていただいたのがチェリー様だったのです」
 えっそうなの?
 全員ポテトがやってるんだと思ってた。
 「そうですね。私も一人変な男性を担当しましたし。でもわかりましたそういうことでしたらすぐに仕事内容について話させていただきますね」
 「お願いします」
 ちょっと他の2人にも聞いてこよう。
 静かにドアを開け、売り場に戻ります。
 「ラビ、カラガマさん。……もう呼び捨てでいいですか?」
 「はいどうぞ!」
 「では改めて、ラビとカラガマは外の人達のチュートリアルとか担当したの?」
 「担当しましたよ!」
 「僕もやりました」
 ほうほう。
 「職探し中だとそうやって呼び出されるみたいです」
 なるほど。
 「一人一回だけなんですけどね」
 「そうなんだ。今面接に来てる人ポテトさんっていうんだけど、私その人に担当してもらったんだ」
 「そうだったんですね。ちょうど募集を見かけて来たって感じですかね」
 「カラガマ、敬語じゃなくていいよ」
 「わかりました。僕たちは担当した外の人についていろいろしれるんだ」
 「たとえば?」
 「ホームがどこにあるかとかギルドに入っているかとかね」
 「なるほど」
 「職探し中だからいいなと思えばアプローチすることがでるんだ」
 「すげー」
 「ちなみに僕は侍みたいな人を担当したよ」
 「私はおとなしそうな男の子だった!」
 「へぇ。二人はその人達のとこに行かなかったのはなんで?」
 「どう見ても店もってるようには見えなかったので」
 「私もー」
 「そうなんだ。うちに来てくれてありがとね」
 「こちらこそ雇ってくれてありがとう」
 「ここで働けてうれしい!」
 ふっ……なんて可愛い子たちだ。お給料アップ検討しちゃうぞ。

 チュートリアルの時のことをあれこれ聞いているとフランとポテトが下りてきました。
 「ポテトさんは採用ということになりましたのでこれから職場を案内してきます」
 「あっもう遅いし私も行くよ」
 「ありがとううございます」
 
 夜も更け、人通りが少なくなった通りを歩きます。
 「ポテトってよんでもいいかな?」 
 「かまいませんよ。チェリー様のお店で働けることになってうれしいです」
 「呼び捨てでいいよ」
 「かしこまりました。ではチェリー。これからもよろしくお願いします」
 「よろしくね」
 
 「ここが職場になる『セーラムツー』です」
 フランが先導し、説明します。
 「1階はレストランにするそうです。【調薬師】の仕事をしていただく部屋はまだ決まっていないので好きに選んでいただいてかまいません」
 「かしこまりました」
 フランはそう言って階段を上り、各フロアを案内します。
 「2階は鍛冶場と錬金場、素材管理場になっています。必要なものがありましたらここからも調達してください。一部屋空いていますがそちらにしますか?」
 「いえ。そちらは【魔具職人】の方がいいでしょう」
 「そうですね。3階4階は完全に空いているのでこちらから選んでください」
 「でしたら3階の一番奥にしていただいてもよろしいですか」
 「もちろんです。ではそちらで押さえますね」
 「あと相談なのですが」
 「なんでしょうか?」
 「調薬は混ぜてしばらく寝かせたり、粉砕機を回したりするので基本的にやることがないのです。その間他の仕事をやらせていただいてもいいですか?」
 フランが不安そうにこちらをみます。
 せっかく空気になってたのに。
 「大丈夫だよ。1階のレストランか、本店か、どうする?」
 「では昼間はレストラン、夜間は本店で働かせていただきます」
 「だめだよ! ブラック労働反対!」
 「いえ。ほんとに調薬はやることがないので。細かく言えば午前中に素材を集めて、機械等を回し、あとは夕方まですることがないんです」
 まじか。調薬。私でもできるじゃん。
 「フランさんとラビさんは基本昼間の勤務ですよね?」
 「今はそうですがラビさんの研修が終わり次第時間を変えます。私が朝6時出勤13時からラビさんが出勤ですね。ラビさんの仕事が21時終わりになります」
 でしたら私は20時から朝の7時までですね」
 「ちょっとまって」
 口を挟まずにはいられません。
 「それじゃポテトが休む時間が無くなっちゃう。却下」
 「あっ」
 「こうしよう。ポテトは夕方、ラビの休憩時間に本店に来てもらっていい?」
 「夜間はどうするのですか?」
 「夜は……うん。もう一人雇うよ」
 「昼間はレストランのほうというわけですね」
 「うん。お給料は【調薬師】の分と【女給】分だすね」
 「たすかります」
 「従業員が増えたらまたかわるかもしれないけど、とりあえずはそれでお願い。あっあとまだレストランはオープンしないから、本店に来てね」
 「かしこまりました」
 「では私室の案内に移りますね」
 「あっそこも相談なのですが」
 「はい?」
 「本店の上に住まわせてもらえませんか?」
 「大丈夫だよ」
 「ありがとうございます。素材の調達のために市場を見なければいけないので、ついでに登録もできますから」
 働きものめ……。
 「でしたらお部屋は本店の上にしましょう。いったん帰りましょう」
 「はい」

 ホームに戻り階段を上ります。
 …………。
 エレベーター欲しい。
 「4階の部屋が1部屋と3階が4部屋空いてます」
 「では4階の部屋でお願いします」
 「では4階まで行きましょうか」
 電気的なものもあるしたぶん作れるはず。
 まずはエレベーターの仕組みから勉強しないと……。
 「この部屋をお使いください」
 「かしこまりました」
 「仕事道具は明日になってから買いに行った方がいいでしょう。家具は倉庫にいくつかありますのでお使いください」
 「そうします」
 「チェリーあしたからよろしくお願いします」
 この世界エレベーターないのかな?
 「チェリー?」
 「はい?」
 「聞いてませんでしたか?」
 「聞いたよ。部屋を4階にするんでしょ?」
 「……。明日からお願いします」
 「こちらこそお願いね」
 そう言うとポテトは簡易倉庫を持って1階に下りていきます。
 「フランちょっと調べ事があるから一回ログアウトしてくるね」
 「はい! いってらっしゃい!」

 ログアウトしパソコンでエレベーターについて調べます。

 ロープ式と油圧式か。水圧式なんていうのもあるのか。
 どれがいいのわからんね。

 とりあえず仕組みが単純そうだったロープ式を採用します。
 水とか楽そうに思えたんですが、そちらで制作していると失敗する気しかないので止めました。
 
 ログインし、作業に取り掛かります。
 「おかえりー!」
 ちょうどポテトの部屋から出てきたフランに声を掛けられます。
 「調べものはおわったの?」
 「うん一応」
 「なにを調べてたの?」
 「うーんとね。エレベーターっていう外の世界の便利アイテムだよ」
 「えれべーたー?」
 可愛く首を斜めに倒し人差し指を顎に持っていきました。
 可愛い。これだけでごはん3杯はいける。
 っとそうじゃなくて。
 「エレベーターっていうのはね。人が乗れるカゴを用意して、それをあげたりおろろしたりして上と下を楽に移動するものだよ」
 「へぇ! 楽しそう!」
 「楽しいかどうかはわからないけど楽だよ」
 「おお! 完成したら乗せてね!」
 「もちろんだともさ」
 「じゃぁチェリーおやすみ!」
 「うん。おやすみ」

 フランと会話を終え、まずエレベータを設置するための穴を各階に開けることにします。
 インベントリに有った大斧を取り出し、廊下の奥まで歩いていきます。
 この辺は下まで何もないのは確認済みなのでぶち抜いても大丈夫でしょう。
 えーい。
 と斧を振りかぶり、床を殴りつけます。
 ガッという音とともに床に斧がめり込みます。
 …………。
 これあと何億回やらないといけないの?
 誰かこういうの得意な人いないかなーとフレンド欄を見回していると昔、ハリリンがエレベーターの点検のバイトしてたということを思い出しました。
 これは手伝ってもらうほかないですね。

 ギルドチャットの欄を開きメッセージを送ります。
 『ハリリン。いる?』
 『チェリー? どうしたんすか?』
 『助けて……』
 『何があったんすか!? すぐいくっす』
 『『セーラム』にいるよ』
 『ギルドホームなんで走っていくっす』
 『早く来て。お願い』
 『うっす』

 これでおっけい。
 
 1分ほど待っていると、「じゃまするっすー」と扉を開けハリリンが入ってきます。
 「チェリー大丈夫っすかー? 助けにきたっすよー?」
 と言っているので4階まで早く来いと大声を出します。

 ダダダッと階段を駆け上る音がし、ハリリンが現れます。
 「強盗でもでたっすか?」
 「ううん。でもハリリンじゃないと駄目だから……」
 「俺にできることならなんでもするっす」
 「今なんでもって言ったな?手伝え」
 「えっ? ちょっちょちょ状況が読めないっす! なんすか!? なんなんすか!?」
 「見てわからんか。エレベーターの作成中」
 「いや……いやいやいや! 斧が床にささってるのしかわからないっすよ!」
 「だから穴を開けようとして斧を床にぶつけたところじゃん」
 「意味が分からないっす」
 「意味などいい。とりあえず穴を開けるの手伝って」
 「えっ。俺これから狩り行くんすけど」
 「命と狩り。どっちが大切かおしえてやろうか?」
 「さーってこの斧で穴開ければいいんすよね?」
 「うん」
 一瞬で斧の前まで移動したハリリンが斧を握ります。
 「あれっ!? この斧びくともしないっすよ?」
 そんなわけ……
 「そんなわけないでしょ」
 「さすがにチェリーの力でめり込んだ斧はぬけないっすね」
 「なんか言ったか?」
 「いってないっす!とりあえず斧抜くの俺じゃ無理っす。ファンダン呼ぶっすよ」
 「わかった」

 数分後ファンダンがやってきたので斧を引き抜いてもらいます。
 「よっと……。結構エグイ入り方してたな」
 「ありがとうファンダン」
 「助かったっすー」
 「なんでこんな状況になってるんだ?」
 「かくかくしかじかっす」
 「わからん」
 「えーっとね……」
 成り行きを説明しファンダンにも手伝ってもらいます。
 「わかった。同じギルドのよしみだ。俺も手伝わせてもらおう」
 ちょっとおもしろそうだしなって付け足したファンダンにちょっとキュンとしつつもすぐに作業に取り掛かります。
 「まず斧で床を抜くのは止めろ。建物まで壊すつもりか」
 「ごめんなさい」
 「ごめんっす」
 なんでお前もあやまってんだ。
 「設計図とかあるか?」
 「たぶん倉庫にあるっす」
 何で知ってんだお前。
 「俺とってくるっす」
 「何で知ってんだよ!」
 おっとついに口から漏れてしまいました。
 「俺この店のファンでいつも来てたっす。なるべくチェリーがいないときにっすけど」
 「なんでいないときに来るの?」
 「怖いっす」
 「屋上」
 「ここ屋上ないっす」
 「死ぬか?」
 「エレベーター完成した後ならよろこんで」
 もうこいつわからない。
 
 すぐハリリン倉庫から設計図をもってもどってきました。
 「これ設計図っす」
 「ありがとよ」
 「ファンダンわかるの?」 
 「わかるも何もおれは大工だぞ」
 「えっ?」
 「えっ?」
 「ん? 言ってなかったか?」
 「初耳」
 「初耳っす」
 「そうか。言ったはずなんだがな」
 「お、おう」
 「そうっすか」
 「興味なさそうだな……。まぁいい。図を見ると……そうだな。この辺は確かに抜いてもよさそうだな」
 そう言ってインベントリから物騒なものを取り出します。
 「こっちで【木工職人】やっててよかった。趣味だけどな」
 「初耳」
 「初耳っす」
 「お前らそれしか言えんのか?」
 
 機械の尻のほうについてるハンドルを引っ張ると音が鳴りました。
 「あっ。それアレか! ゾンビ倒すやつ」
 「あぁーそうっすね。よくスプラッター的な映画で出てくる奴っすね」
 「お前ら……これはチェーンソーだ。鋸の進化版だ。人をきるもんじゃねぇ」
 「鋸って進化するんだ」
 「初耳っす」
 「……。どいてろ。《部位欠損》したくないだろ」
 「はーい」
 「ういっす」
 
 ファンダンがチェーンソーとやらで床を切断していきます。
 「おー。結構粉とんでくるんすね。ぺっぺ」
 「ファンダン粉まみれじゃん」
 「集中してる。黙ってろ」
 「はーい」
 「はーいっす」

 数分で4階の床がぽっかり開きます。
 「ふぅ。あと3階と2階も開けてくる。チェリー1階部分も床あけちゃっていいか?」
 「いいよ」
 「ロープ式で行くなら確かに下にスペースあったほうがいいっすね」
 「ということだ。ちょっとまってろ。あっあとこれで天井までの高さと穴の大きさ測っておいてくれ」
 「ういっす」
 そう言ったハリリンがメジャーのようなものを受け取っています。
 あっ。私やることない。
 適当に余ってるものでもプレゼントしよう。
 
 「VR端末発売の時、秋葉の家電量販店にならんでたっすか?」
 「ならんでたよ?」
 「やっぱりそうっすよね」
 「なんで?」
 「VRで見たら一瞬でわかっちゃったすよ。姿勢とか胸とかそっくりっすもん」
 「お前やっぱしぬか?」
 「完成まではまってっす」
 「完成したら殺す」
 「楽しみっす」
 …………。
 「いやーギルドのみんなで話してたんすよねー。あれはチェリーとエルマじゃないかって」
 「忘れて」
 「いやー無理っすねー。さすがに記憶に残りすぎてもう一生忘れられないっす」
 「リアルでも殺すぞ」
 「エルマとチェリーに殺られるならちょっと考えちゃうっす。師匠ならすぐに住所言って裸待機っすね」
 「師匠?」 
 「俺の師匠っすよ。このゲーム始めたときに出会ったっす」
 「ほう。それは興味ある。許す話せ」
 「ういっす。あれはエレベータの点検の仕事辞めた後っす」
 
 「そうだったのか」
 「そうなんす」
 「お前も大変だったんだな。食えよ」
 〔マッスルガーゴイルの筋肉〕が結構のこってたので差し出します。
 「えっ生じゃないっすか」
 「生はきらいか?」
 「好きっす」
 「遠慮すんな。一口でくっていいぞ」
 「これやくとめっちゃ旨いらしいすっよ」 
 そう言って生肉をもしゃもしゃ食べるハリリンを見ているとファンダンがもどってきます。
 
 「おまたせ」
 「おかえり」
 「ふぉふぁふぇふぃっふー」
 「お前は何してるんだ」
 「ごく……生肉頂いたのでくってたっす」
 「そうか。腹壊すなよ。床は全部抜けたな。次はカゴを作るぞ」
 「わかったっす」
 「わかったっす」
 口調が移った……。

 ファンダンが持っていた木材を取り出します。
 「ここにこれをくっつけて釘を打て」
 「了解っす」
 「チェリーは……ワイヤーを制作しろ」
 「ワイヤー?」
 「つるすのに必要だろ?あと滑車だ」
 「どうやってつくるの?」
 「自分で考えろ」
 「…………」
 「鍛冶できるんだろ?」
 「一応。VRになってからやってないけど」
 「そんな手間じゃないはずだ。やれ」
 「はーい。じゃぁ私は『セーラムツー』の鍛冶場にいくね」
 「遅いから気を付けろよ」
 「きをつけるっすー」
 「わかってる。いってきます」

 『セーラム』をでて『セーラムツー』の鍛冶場にきます。
 「あっチェリー。こんな時間になにか用かな?」
 「いや。少し鍛冶場を借りようと思ってきただけ」
 「鍛冶できるんですか!?」
 「一応ね。ワイヤーと滑車を作ってこいって言われて」
 「ワイヤー……滑車……何に使うのはわからないけど僕も手伝うよ。ちょうど新しい道具に慣れようと使ってみてるとこだったしね」
 「それは助かる」
 「じゃぁ僕は滑車を作るからワイヤーは自分で作って」
 「うん」
 ワイヤーってどうやってつくるんだろう。
 「カラガマ。ワイヤーってどうやってつくるの?」
 「……。まず金属の棒作って。それを細い穴に通し、引っ張って延ばすんだ。その後もっと細い穴に通してまた延ばすんだよ」
 「な……なるほど」
 「まず金属の棒をつくってみて」
 「わかった」

 カラガマが購入したと思われる、倉庫に入れてあった金属を取り出し、棒状に引き伸ばします。
 必要な機械が全部あり、ポチっとボタン押すだけでできました。
 楽ですね。
 「棒状になったら次はこの機械に通して」
 「わかった」
 機械に入れてポチっと押します。
 おーめっちゃ細くなった。
 うん。何もしなくてもいい気がしてきた。
 「じゃぁ次はこの機械ね」
 「わかった」
 機械を通し、さらに細くなった金属を見てカラガマが言います。
 「もういい感じだね。もうすぐこっちもできるよ」
 トンカントンカンやってたカラガマの手元で滑車が完成します。
 「できた。ちょっとワイヤーかして」
 「どうぞ」
 ワイヤーを滑車の溝に合わせているようですね。
 「もうちょっと溝ほったほうがいいかな」
 そう言って謎の台のところにもっていきガリガリやっています。
 数分して出来上がったらしくホクホクした顔でこちらにもどってきました。
 「できた! いい出来だよ」
 「ありがとうカラガマ」
 「いいよ」
 「じゃぁまた何かあったらくるからね。あまり夜更かしはしちゃだめだよ」
 「うん。おやすみ」
 「おやすみ」

 受け取った滑車と作ったワイヤーをもって『セーラム』に帰ります。
 「ファンダン。できたよ」
 「早いな。みせてみろ」
 「ほい」
 「うん。いい出来だな。お前のとこの新人はいい腕だ」
 「失礼な。私が作ったんですー」
 「はいはい。こっちもいい感じだ」

 汗を流しながら作業しているハリリンには目もくれずファンダンの作業の成果をみます。
 抜けた床部分が補強されており、各階の部分に扉が付いています。
 「重りももう地下に用意してある。あとはハリリンがカゴを完成させればいいだけだ」
 「ハリリン早くしろ」
 「一生懸命やってるっす」
 「早く」
 「倍速でいくっす」
 「よろしい」
 
 2分ほどでカゴが完成し、カゴにワイヤーを付け、滑車を通し、重りにくっつけます。
 「ここのレバーを操作すれば滑車が回る……はずだ」
 「じゃぁやってみるね」
 グイっとレバーを引くとしゅるしゅる糸が擦れるような音が鳴りカゴが持ち上がってきます。
 「おお」
 「ためしにハリリンのってみろ」
 「俺っすか? 一番乗りもらっちゃっていいんすか?」
 「かまわん。チェリーもいいな?」
 「いいよ」
 「いただきっすー」
 そういって扉を開け、カゴに乗り込みます。
 「じゃぁいくぞ。3……2……1……」
 ファンダンが扉を開けたままレバーを操作します。
 「あっあああああああああとまらないっすぅー!!!」
 ハリリンの悲痛な叫びが下から聞こえ、ドンッという音ととグシャという音がしたから聞こえてきました。
 「失敗か……」
 「失敗か」
 ファンダンと私が同時に呟きます。
 「死んじゃったじゃないっすか!! ちゃんとつくってくださいよ!! カゴもダメになっちゃったっすよお!」
 蘇生したハリリンの声が聞こえてきます。
 「おい、カゴ作り直す。早く登ってこい」
 ファンダンがそういうとハリリンが下で叫びます。
 「だからこれじゃだめだっていったんっすよー!」
 そうなの? とファンダンを見ます。
 「……行けると思ったんだが」
 「次はハリリンの言う通りにしよう。たぶんあいつ何か隠してる」
 「そうだな。とりあえず腹が減った。何か食い物買いに行こう」
 「そうだね」
 「おいハリリンとりあえず休憩だ。1階でまってろ」
 「了解っすー」

 この時間も営業している『飯処 廁』でごはんでも食べながら作戦タイムです。
                                      to be continued...
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