夏の行方。

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2章 蠢く者

-零話- 旅立

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「班長!ここです!!」

ダッダッダッタッ...

「容態は!?出血は!?」
「激しいです!」
「止血!脈は!」



「もしもーし!聞こえますかー!?聞こえたら声を出さずに合図をしてください!聞こえますかー!目でも首でも構いません!合図できますかー?」


「意識、脈拍、呼吸なし」
「AED!」

ピーポー

ピーポー

ピーポー





.........



ここは...?眩しいな...朝か。音も何もないな。周りの景色が眩しい...そっか...深森神社に来てたのか。刺されたんだった...なんで晴雄が...あれは夜だったはずだ。そうか俺はもう。だとしたら今俺は...




.........


病院だ。俺がいる。そうか、死んだのか...お母さん、お父さん...泣くなよ。そんな姿見せられたら...




........


体が浮き始めた...?そうかいよいよか。少し早すぎたな。親より先になるなんてな...おじいちゃん、おばあちゃんに会えるしそれも悪くねぇか...
長生きしろよ...お父さんお母さんなにもしてやれなかったな。いつも冷たくしてごめん。あと40年は生きろよ。元気でな。




.......


夏美「ごめん!待ったぁ!?...よね?今日はお祭りだしちょっと化粧頑張ってみたんだよね!どう?可愛い??」

月也「んー?いつもと変わらない!」

夏美「はぁー!?人が遅刻してまで作り上げた作品を!」

月也「作品って言ってる時点でもう自分じゃねぇだろ...」

夏美「ま、いっか!今日は中学最後の夏休み!中学最後の夏祭り!でも月也とは初めてのちゃんとしたデート!楽しもうね!」

月也「あぁ。だな!じゃあ行くか」



あれ...幻想?そうか、あの日こんな未来が待ってたんだな...

夏美、最後に会えたな...ありがとう。



........


お父さんお母さんこんな俺を15年間育ててくれてありがとう。



........




ありがとう。
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