スカーレットオーク

はぎわら歓

文字の大きさ
上 下
100 / 140
第三部

7 バレンタインデー

しおりを挟む
 玄関を開けるとチョコレートの甘い、いい匂いが漂ってくる。
 優樹は今日もらったバレンタインデーのチョコレートを見つからないように、こっそりバッグの奥に入れ直してから家に上がった。

 「ただいまー」
  緋紗が笑顔で出迎える。
 「おかえり。今日はチョコレートケーキ作ってみたよ」
 「あ、ほんと。楽しみ」
 「ご飯のあとでね。手を洗ってうがいして」
 「はーい」

  直樹も帰宅して台所を覗いた。
 「ただいま。いい匂いだね」
 「おかえりなさい。食後のデザート作ったの。夕飯はもう三十分くらいあとね」
 「楽しみにしてるよ」

  直樹が作業服から部屋着に着替えていると優樹がやってきた。
 「お父さん、おかえり。あのさあ。今日ね。チョコもらったんだ」
 「へー。やるじゃないか。クラスの子?」
 「うん。でさあ」
  もじもじしている優樹の様子を見て、直樹は察した。
 「告白でもされた?」
 「うん。付き合ってほしいんだってさ」
 (小学生で、もう付き合うのか。ませてるなあ)

 「優樹はその子好きなのか?どんな子?」
 「うーん。和奏ねえちゃんに似てる。綺麗な子で頭もよくて。でもちょっと怖いかな。でも俺には優しいんだ」
  直樹は苦笑した。
 優樹は顔は直樹に似ているが性質はなんだか和夫に似ている。和奏と姉弟のように育ったせいかもしれない。
 「じゃ、どんな子が好きなんだ」
 「んー。なんか一生懸命な感じで可愛い感じかな。お母さんみたいな」
 (やれやれ……)

 「付き合ってる子って他にいるのか?早い気がするけど」
 「クラスの半分は付き合ってるよ。孝太にいちゃんだって彼女三人いるって言ってた」
  直樹は絶句した。(兄貴よりひどいな……)
 「ほかに好きな子がいなくて楽しく出来そうなら付き合ってもいいんじゃないのか」
 「そうだね。いいよって言ってみる」
  あっけらかんと言う優樹にため息交じりに直樹は続けて「じゃあ。今日から自分の部屋で寝ること。親と一緒に寝てるってばれたら恥ずかしいだろ」 と言ってみた。

 「そっかあ……。俺、来年中学だもんなあ。わかった。一人で寝るよ」
  (俺、グッジョブ)直樹は笑いそうになるのを堪えた。
 「ねえ。お父さんはお母さんのどこが好きなの?」
 「お前と同じだよ。一生懸命で可愛いところ」

  そう言いながら、自由で何ものからも束縛されないのに、直樹に征服されることを望むような、緋紗の官能的な赤い唇を思い出した。

 「ごはんよー」
  緋紗の声でハッとして我に返り直樹は優樹を食事に促した。
 「ご飯にするか」
 「うん。今の話お母さんに内緒ね」
  優樹は爽やかに笑った。


  バレンタインデーから一週間たつが、優樹が直樹と緋紗の寝室で眠ることが無くなった。
 「いきなり自分の部屋で朝まで寝るなんて。どうしたのかしら。何かあったのかな」
  心配する緋紗に直樹はほくそ笑んで答えた。
 「そろそろわかると思うけどあいつ、彼女ができたんだよ。優樹には話したってこと内緒にしてて」
 「ええ。そうなの?早すぎないかしら」
  緋紗は目を丸くする。
 「今時、高学年でもう半分は付き合ってるってさ」
 「へー。すごいのねえ」
 「一緒に下校したり宿題したりする程度らしいけどね」
 「そうなの。まあもうすぐ中学だからそれまでの間かな」
 「まあ。ちょっと様子見だね。でもしばらくは邪魔がはいらないか」

  直樹は緋紗のパジャマを脱がしにかかった。
 「あっ」
  荒々しい口づけをして緋紗の下着を下ろす。
 巧みな指使いですぐに緋紗を絶頂に導いた。
 「ああっ――」
 「それでもいつここに来るからわからないから、用心はしないとね」

  とぎれとぎれの息を吐き出す緋紗を見ながら「緋紗は可愛いよ」と囁いた。
すぐに挿入して奥まで押し付けると、緋紗は唇を噛んで耐えながら感じている。(こんな姿は俺しか知らない)
 未だに独占欲と征服欲が芽生えてしまう。

 「時間をもっとかけてあげたいけど」
  緋紗は快感に耐えられなくなっているようだ。
 「声が出ちゃう。もう……」
  直樹は人差し指を緋紗の口の中に入れて抜き差ししながら「もうちょっと我慢して」と言いながら腰を動かした。

 「んんっ」
 「いくよ」
  もう声が聴こえていないような緋紗は直樹の動きに応じて登りつめているようだった。
 直樹は恍惚とした表情の緋紗を見つめながら達した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

隣の人妻としているいけないこと

ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。 そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。 しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。 彼女の夫がしかけたものと思われ…

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

結構な性欲で

ヘロディア
恋愛
美人の二十代の人妻である会社の先輩の一晩を独占することになった主人公。 執拗に責めまくるのであった。 彼女の喘ぎ声は官能的で…

【R-18】クリしつけ

蛙鳴蝉噪
恋愛
男尊女卑な社会で女の子がクリトリスを使って淫らに教育されていく日常の一コマ。クリ責め。クリリード。なんでもありでアブノーマルな内容なので、精神ともに18歳以上でなんでも許せる方のみどうぞ。

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

孕ませねばならん ~イケメン執事の監禁セックス~

あさとよる
恋愛
傷モノになれば、この婚約は無くなるはずだ。 最愛のお嬢様が嫁ぐのを阻止? 過保護イケメン執事の執着H♡

処理中です...