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パソコンを起動させるとゴミ箱の隣に横向きの少年のイラストがついたアイコンがあった。星奈はまだ小学六年生だがダブルクリックすればこのアイコンが起動されることを知っている。兄の修一は今年市内でも難関の高校に入学し両親から最新のパソコンを買ってもらっていた。そしてこの少しだけ古いパソコンは妹の星奈のものとなった。少し緊張してダブルクリックをする。
高らかなトランペットのファンファーレが鳴り響き大きくタイトルが浮かび上がった。
『Knight Road』
星奈は音楽を聴きながら画面を眺めていると甲冑を着た戦士と木の杖を持ちローブを着た猫、筋骨隆々で弁髪姿の格闘家などが次々とポーズを決め始めた。
動画が止まると『ログイン』のボタンが現れる。星奈はそっとクリックした。
「修一、学校はどうだ?」
父親の伸二が威厳を感じさせるようにゆっくりと太い声で尋ねる。
「うん。まあまあかな。思ったよりも授業は難しくないみたい」
修一は最近かけ始めたウエリントン型の眼鏡の位置を細かく直しながら答えていた。
母親の奈保子は満足げに修一を眺めている。星奈は少しだけ疎外感を感じたが目の前の豪華な夕飯は修一の進学のおかげだと思い不満には感じなかった。
それよりも兄が眼鏡のせいで優しい瞳が隠され『メガネ男子』になってしまったことが残念だ。
星奈は『Knight Road』のことを教えてもらいたく食後すぐに部屋に戻ってしまった修一を追いかけた。
「お兄ちゃん、ちょっといい?」
ノックをすると「いいよ」と返事があったので「お邪魔します」と頭を下げて部屋に入る。
「あのね。ナイトロード?ってパソコンにあったんだけど遊んでもいいかなあ」
「んん?ああ。やろうとおもってインストールしてたんだった。でももうやる暇なさそうだなあ」
修一は椅子を回転させて天井を眺めている。
「やってないんだ」
「出来るならやっていいよ。ほら」
小さな紙切れに修一はIDとパスワードを書き星奈に渡す。
「ありがとう」
「まあほどほどにな。あと本名とかキャラにつけるなよ」
「うん」
操作について公式ページを読んでも理解できなかったところがあり星奈はもう少し修一に聞きたかったが奈保子がやってきた。
「星奈。お兄ちゃんの邪魔したらダメよ。これから忙しくなるんだから」
「あ、はーい」
「お風呂入って寝なさい」
「わかった。じゃ」
星奈は修一の部屋を出た後、これからの兄のことを想った。
――修一は小さい頃から喘息とアトピー性皮膚炎を患っており、身体も弱い方だった。母親の奈保子は常に息子の状態を気に掛ける日々で衣食住こと細かく管理していた。
部屋の掃除は勿論のこと洗剤や食物にも気を配られた。奈保子は良いと思えることはすべて試し継続させた。そのおかげなのか年齢なのかわからないが中学に入学するころには喘息の発作はもう出ず、アトピー性皮膚炎も落ち着いていた。それからはより高い学力を発揮し今では難関高校に入学。両親は鼻高々だ。修一は医師を目指すと言う。生来の虚弱さを克服し志を高く持つ修一は片桐家の中でスターだった。伸二も奈保子も彼に集中してしまっている。家族の盛り上がりを星奈は遠巻きから懸念していた。
トランペットのファンファーレが鳴り響き『Knight Road』の文字が浮かび上がってくる。正樹は音楽を聴きながらパソコンの画面のオープニングを少し眺めてスタートをクリックした。
中学生になった御祝いに父親の幹雄からパソコンを買ってもらった。母親の洋子からは渋い顔をされたが、ゲームで育った幹雄は寛容で、今時の子供が世代を超えて遊べる場所はネットゲームくらいしかないと逆に洋子を説得していた。
ただし、条件がある。成績と視力が著しく落ちることと両親との会話が無くなった場合には即パソコンを取り上げるというものだ。理解のある父親を尊敬の念を込めてこっそり元ネトゲ廃人と呼ぶ。
幹雄は結婚前の若い頃、一時ネットゲームにハマり引きこもったことがあったらしい。それを洋子がなんとか現実に引き戻し、今の状況があるようだ。その時の話を聞くと正樹でも事の大変さがわかった。半年間、幹雄は引きこもり食事も親に運ばせて部屋に出るのはトイレと週一の風呂くらい。隣に住む幼馴染の洋子が幹雄の様子を見かねて部屋に押し入りパソコンを机から落として壊したらしい。その後の警察を呼ぶ呼ばないの凄まじい喧嘩の後、幹雄は憑きものが落ちたようにネットゲームから引退し働きはじめ、やがて洋子と結婚した。
そして現在、双子の女児と正樹に恵まれ落ち着いた生活を送り続けている。
幹雄は今でもネットゲームをすることがあるが、週末プレイヤー程度でネット漬けになることもなかった。ネットゲームのハマりにはプレイヤー同士の人間関係も大きいらしく共存、依存の関係が現実のそれよりも濃密で短期間でなくてはならない存在になりやすいらしかった。そして現実より仮想現実のほうがリアリティを帯びてくるというものだ。インターネットに関することでは洋子が、幹雄と正樹に厳しい視線を送ってくる。しかし子供心にも友人の多い正樹はネットと現実の人間関係に区別がついているつもりではある。
プログラムされた同じ動き、決まった数値の敵を倒すことには少し飽きがきていて、敵も同じ人間なら熱いプレイができるはずだと期待を大きくし、キャラクターの設定を始めることにした。
『Knight Road』通称『KR』は二国に分かれて戦うMMORPGで大規模多人数同時参加型オンラインRPGと言われるものだ。二国はそれぞれ獣人である亜人種とヒューマンに分かれていて正樹は獣人国家を選んでいた。
どうせやるなら現実と違う方がよいと吟味した結果、銀色の毛並みを持つ兎の魔法使いになることにした。パラメーターの高さを考慮すると性別が女になってしまうが気にせずに魔力の数値が高い方を選ぶ。選択し作り上げたキャラクターに合うように『月姫』と適当な名前を付けた。これからこのネットゲームがどれだけ正樹に影響を与えることになるか、この時はまったく想像をしていなかった。ただ面白そうだという好奇心だけで繊細な少年の指先はキーボードを叩いている。
「ただいま」
正樹は元気よく玄関を開け階段を上がり二階の自分の部屋に帰ってきた。勢いのよい階段を駆け上がる音を聞きつけて洋子は正樹の部屋に行きノックをする。
「おかえりなさい。ちゃんとやることやりなさいよ」
「わかってるわかってる」
洋子は肩をすくめて階段を降り夕飯の支度の続きを始めることにした。(幹雄の二の舞になったら承知しないんだからね!)
ここ一週間ほどパソコンに夢中になっている様子が手に取るようにわかった。洋子としては早く部活動を決めて学校生活の充実を図ってもらいたく、今日こそ夕食時に幹雄に厳しく言ってもらおうと思っていた。(ニートにするために美味しいご飯作ってるんじゃないんだから!)ふんっと息巻いて洋子はまな板の上の玉ねぎを勢いよくみじん切りにした。
正樹はゲームにログインし月姫を操作はじめた。レベルは五で初心者マークが名前の横についている。まだレベルが低いので獣人国家とヒューマン国家の共通貿易港である港町の付近でレベルを上げるためモンスターを倒すことにした。月姫は難易度の高い雷を扱う魔法使いで、スキルを発動させるタイミングに少し難色を示したが、柔軟性が高く若い正樹は上達も早い。
いつもの狩場にやってくると人狼タイプの狂戦士が狩りをしている。名前はミスト。やはり初心者マークがついている。月姫の白っぽいシルクのローブ姿と違ってミストは鉛色の甲冑を着て大きな曲刀を振り回していた。
少し躊躇って眺めているとミストが声を掛けてくる。
ミスト:hi
月姫:こんにちは
ミスト:ここ使いたい?
月姫:いえー他探すのでいいですよ^^
ミスト:ペアってもいいですよ
月姫:邪魔じゃないですか?
ミスト:ボーナスつくでしょ
月姫:ペアボーナス?
ミスト:うんうまいとおもうw
月姫:じゃよろです^^
二人はパーティを組んでネズミのようなモンスターを狩ることにした。正樹は早々に自分のプレイスキルもなかなかだと自負していたが、ミストも結構な高プレイスキルだ。
月姫:ボーナスうまいですね^^
ミスト:でそw
月姫:ミストさんps高そうですねw
ミスト:ヲリは単純だからねwそっちこそ雷ウィズ難しいのに上手いねw
正樹は褒められて照れた。
二人で狩ると経験値が多くもらえ、しかも数をこなせるためレベルが大幅に上がって行く。月姫はタクトのような細い銀色のスタッフを振るい電撃魔法の雨を降らせ、ミストは確実に一匹一匹を素早く仕留めていく。
そこへ母の洋子から「ご飯だよ!」の声がかかる。(あー。もう飯か……)
逆らうことはできない。パソコン自体取り上げられかねないからだ。(面白いのになあ)
月姫:ご飯になっちゃったのでそろそろ落ちます
ミスト:うん。またね
月姫:またよろです^^
月姫の装備を修理し、ゲームをログアウトして正樹は食卓へと向かった。
公園を通りがかるると桜はもう葉桜でいつの間にか通学路は黄緑色がメインの色彩になっていた。正樹が中学に通い始めて一ヶ月が経っている。
部活動はあまりうるさく言われない水泳部に決めてマイペースに顔を出している。とりあえず問題なさそうな学校生活によって母の洋子からはまだ文句は出ていない。たまに父親の幹雄とネットゲームの話をすると怪訝そうな顔をするが今度のテストで、ほどほどの成績を見せられれば何も言ってこないだろう。(中の上ってラインが一番問題ないんだよな。)
双子の姉、知夏と実夏は正樹よりも五歳年上で今、高校三年生だ。その姉たちを見ていると自分にとって楽な立ち位置がよく分かった。『まあまあ』『だいたい』『そこそこ』を生活基盤としていれば、とりあえず間違いなさそうだ。
男の割に機転が利き、器用で柔軟性がある性格は姉たちのおかげだろうと思っていた。また女には逆らわないという姿勢も毎日を無難に送る秘訣だった。目下の楽しみの『KR』のことを考えながら正樹は浮足立って家路を急いだ。
洋子に声を掛け、軽く部活の話をした。どんな先輩がいるかとか今やっているトレーニングだとか。適当に情報を渡した後、正樹は制服を脱ぎシャツとトランクス姿になってパソコンを起動した。
ローディング画面が流れ、月姫が登場する。
もうレベルは三十になっていて初期装備に比べ守備力も上がっていた。本土の獣人国に行っても平気だろう。しばらくこの共通貿易港で狩りをすることもないと思いながら、クエストの取りこぼしがないかチェックしてみた。(ああ。虫退治三十匹残ってるのか)
大したクエストではないが一応コンプリートしておきたいと思い、狩場に行ってみた。どうやら先客がいるようだ。
名前は☆乙女☆。ピンクの妖狐で職業はヒーラーのようだ。ヒーラーは攻撃には向いておらず、基本的に攻撃職の回復を務める補佐役になる。一人で狩っているようで効率が悪そうだ。不格好な棍棒を振り回しているが大きなダメージを与えられず、返り討ちに会いながら自分の回復に努めているようだ。(うわー。一匹倒す前に湧いちゃってるよ)
見かねた正樹は声を掛けた。
『Knight Road』通称『KR』は二国に分かれて戦うMMORPGで大規模多人数同時参加型オンラインRPGと言われるものだ。二国はそれぞれ獣人である亜人種とヒューマンに分かれていてる。
星奈はゲームにログインした。
ローディング画面が流れ、☆乙女☆が登場する。
画面の中の☆乙女☆は桃色の妖狐だ。少し大人っぽい気がするが星奈は昔、修一に読んでもらった絵本のおかげで狐が好きなのだ。職業はヒーラーを選んだ。やはり修一の影響だろうか。自分でもなぜこのゲームを始めたのかわからない。兄のおさがりの携帯ゲーム機を少しばかり触ることはあったが特にゲームが好きと言うわけでもない。ただ年月とともに離れていく兄との距離が切なくなり、同じことに触れていたい気持ちがあったのだろう。ぼんやりとチュートリアルを眺め、促されるまま大きなミミズの様なワームと言うモンスターを倒しに行った。
レベル一ではマイヒールという少しだけHPを回復させられるスキルしかなかった。NPCからもらった棍棒を持ちワームを殴る。殴ると体当たりされ☆乙女☆のHPのゲージが三分の一が削られた。こちらが殴るとワームのHPは半分減る。一匹倒してはマイヒールを打ち、なんとか五匹倒した。しかしクエストでは三十匹倒さねばならない。
気が付くと近くで銀白色のウサギが立っていた。キャラクターの上には『月姫』と書いてある。☆乙女☆の武器とは違い金属の細長いタクトの様な杖を持っている。恐らく魔法使いだろう。
月姫:こん
声を掛けられた。これが初めてではなかったが、どうすれば会話ができるのか調べておらず無言で立ち尽くしていると相手は去っていった。星奈は今度もそうだろうと思いじっとしていた。すると再度、月姫は話しかけてくる。
月姫:チャットできる?Enter押して、普通に文字打つんだよ
☆乙女☆:ありがとお できませた
☆乙女☆:できました
月姫のおかげでチャットができるようになった。さらには一緒にクエストをこなしてくれるらしい。月姫は杖を振るい雷を落とす。五匹沸いてるワームをまとめて攻撃できる範囲魔法を使えるようだ。レベルが☆乙女☆に比べると随分高いのだろう。ワームに攻撃されてもあまりHPは減らないようだ。しかし☆乙女☆は気持ちばかりの回復魔法をかけワームの落とす宝箱を次々と開けて行った。レベルも三ほど上がった。
☆乙女☆:すごいいです ありがとうございあmす
月姫:ネトゲ初めて?
☆乙女☆:うn でもおもしろいよ
月姫:その職だと誰か攻撃職の奴と組まないとこれから辛くなるよ
☆乙女☆:そうですかあ 困ったなあ
月姫:ギルドはいったら
☆乙女☆:ぎるど・
☆乙女☆:?
親切な月姫は詳しくこのゲームでの目的を教えてくれる。☆乙女☆にはまだ目的意識がなかった。しかし一緒に遊べる仲間がこのネット上でいるのかと思うとなんだか世界が広がった気がする。なんせ目の前のこのウサギの魔法使いは自分と同じようにどこかでパソコンを使って操作しているのだから。
月姫とのチャットを食い入るように見ているとそこへ大きな狼の戦士が通りがかり声を掛けてくる。名前はミスト。月姫の知り合いのようだ。名前の上に『アンダーフロンティア』とギルド名が表示されている。
ミスト:hi
月姫:こんちゃ
☆乙女☆:こんいちは
ミスト:俺ギルド入ったんだけど月姫もどう?気楽でいいとこだよ
☆乙女☆:わたし入れてもらえmすか・?
ミスト:プリはいつでも歓迎だと思うよ
月姫:じゃあ私も入ろうかしら
ミスト:本土おいでよギルマスいるからさ
ミストと月姫についていくと港町についた。キャラクターを作り、ログインした時にも同じ場所に降り立ったが周囲を良く見ていなかった。改めて見ると、人間と獣人が入り乱れ、露店も多く出されている。最近学校で習った、外国の蚤の市のようだ。ここは中立的な場所のようで、敵味方関係なく売買を行えるようだ。月姫がここで装備を購入して、キャラクターを強くしたり、格好良くしたりすると教えてくれた。なるほど、☆乙女☆の持っている棍棒よりも洗練されたステッキがある。しかし先には殴られると痛そうな、棘のついたボールが施され、どうしてこれが『モーニングスター』と言う名前なのだろうか、とモニター前で首を傾げた。気が付くとミストと月姫がゲートと呼ばれる移動装置の前に居る。
月姫:ほら本土いくよ
☆乙女☆:はい
いよいよ獣人国家の本拠地に行くことになった。
大きなレンガ造りの門をくぐり、角ばったウエディングケーキの様な城の前に立つ。まるで古い時代の外国にでも来たような気分だ。
ミストが城の前に立つ、ライオン顔の甲冑を着たKAZUと言う名前の戦士に話しかける。ギルドマスターだ。狐が好きで安易に獣人国家を選んだが、この国の戦士は猛獣の類がほとんどで、近くで見ると味方であるのに怖かった。選択をミスしてしまったか、とも心配したが、月姫のたおやかなウサギ姿を見ると和んだ。知らず知らずに、月姫のそばに寄り添うように立っている。
色々と手続きを終え、晴れて☆乙女☆も『アンダーフロンティア』、通称『アンフロ』の一員となった。
このオンラインゲーム『Knight Road』は配信されたばかりで、今はまだレベルや装備に差は現れていない。ほかのギルドメンバーが五人ほどいて、みんなで一緒に狩りに行ったが特別☆乙女☆が劣っている様子はなく安心した。(月姫のおかげだ)月姫が夕ご飯を食べると言いログアウトしたので、☆乙女☆も同じくログアウトした。
パソコンの電源を落としてしまうと、少し疲れを感じぼんやりした。しかし夕方の物悲しい時間帯を楽しく過ごせて満足している。(明日も月姫いるかなあ)星奈は、漂うだしの香りに気づき、空腹を覚えて食卓へ向かった。
高らかなトランペットのファンファーレが鳴り響き大きくタイトルが浮かび上がった。
『Knight Road』
星奈は音楽を聴きながら画面を眺めていると甲冑を着た戦士と木の杖を持ちローブを着た猫、筋骨隆々で弁髪姿の格闘家などが次々とポーズを決め始めた。
動画が止まると『ログイン』のボタンが現れる。星奈はそっとクリックした。
「修一、学校はどうだ?」
父親の伸二が威厳を感じさせるようにゆっくりと太い声で尋ねる。
「うん。まあまあかな。思ったよりも授業は難しくないみたい」
修一は最近かけ始めたウエリントン型の眼鏡の位置を細かく直しながら答えていた。
母親の奈保子は満足げに修一を眺めている。星奈は少しだけ疎外感を感じたが目の前の豪華な夕飯は修一の進学のおかげだと思い不満には感じなかった。
それよりも兄が眼鏡のせいで優しい瞳が隠され『メガネ男子』になってしまったことが残念だ。
星奈は『Knight Road』のことを教えてもらいたく食後すぐに部屋に戻ってしまった修一を追いかけた。
「お兄ちゃん、ちょっといい?」
ノックをすると「いいよ」と返事があったので「お邪魔します」と頭を下げて部屋に入る。
「あのね。ナイトロード?ってパソコンにあったんだけど遊んでもいいかなあ」
「んん?ああ。やろうとおもってインストールしてたんだった。でももうやる暇なさそうだなあ」
修一は椅子を回転させて天井を眺めている。
「やってないんだ」
「出来るならやっていいよ。ほら」
小さな紙切れに修一はIDとパスワードを書き星奈に渡す。
「ありがとう」
「まあほどほどにな。あと本名とかキャラにつけるなよ」
「うん」
操作について公式ページを読んでも理解できなかったところがあり星奈はもう少し修一に聞きたかったが奈保子がやってきた。
「星奈。お兄ちゃんの邪魔したらダメよ。これから忙しくなるんだから」
「あ、はーい」
「お風呂入って寝なさい」
「わかった。じゃ」
星奈は修一の部屋を出た後、これからの兄のことを想った。
――修一は小さい頃から喘息とアトピー性皮膚炎を患っており、身体も弱い方だった。母親の奈保子は常に息子の状態を気に掛ける日々で衣食住こと細かく管理していた。
部屋の掃除は勿論のこと洗剤や食物にも気を配られた。奈保子は良いと思えることはすべて試し継続させた。そのおかげなのか年齢なのかわからないが中学に入学するころには喘息の発作はもう出ず、アトピー性皮膚炎も落ち着いていた。それからはより高い学力を発揮し今では難関高校に入学。両親は鼻高々だ。修一は医師を目指すと言う。生来の虚弱さを克服し志を高く持つ修一は片桐家の中でスターだった。伸二も奈保子も彼に集中してしまっている。家族の盛り上がりを星奈は遠巻きから懸念していた。
トランペットのファンファーレが鳴り響き『Knight Road』の文字が浮かび上がってくる。正樹は音楽を聴きながらパソコンの画面のオープニングを少し眺めてスタートをクリックした。
中学生になった御祝いに父親の幹雄からパソコンを買ってもらった。母親の洋子からは渋い顔をされたが、ゲームで育った幹雄は寛容で、今時の子供が世代を超えて遊べる場所はネットゲームくらいしかないと逆に洋子を説得していた。
ただし、条件がある。成績と視力が著しく落ちることと両親との会話が無くなった場合には即パソコンを取り上げるというものだ。理解のある父親を尊敬の念を込めてこっそり元ネトゲ廃人と呼ぶ。
幹雄は結婚前の若い頃、一時ネットゲームにハマり引きこもったことがあったらしい。それを洋子がなんとか現実に引き戻し、今の状況があるようだ。その時の話を聞くと正樹でも事の大変さがわかった。半年間、幹雄は引きこもり食事も親に運ばせて部屋に出るのはトイレと週一の風呂くらい。隣に住む幼馴染の洋子が幹雄の様子を見かねて部屋に押し入りパソコンを机から落として壊したらしい。その後の警察を呼ぶ呼ばないの凄まじい喧嘩の後、幹雄は憑きものが落ちたようにネットゲームから引退し働きはじめ、やがて洋子と結婚した。
そして現在、双子の女児と正樹に恵まれ落ち着いた生活を送り続けている。
幹雄は今でもネットゲームをすることがあるが、週末プレイヤー程度でネット漬けになることもなかった。ネットゲームのハマりにはプレイヤー同士の人間関係も大きいらしく共存、依存の関係が現実のそれよりも濃密で短期間でなくてはならない存在になりやすいらしかった。そして現実より仮想現実のほうがリアリティを帯びてくるというものだ。インターネットに関することでは洋子が、幹雄と正樹に厳しい視線を送ってくる。しかし子供心にも友人の多い正樹はネットと現実の人間関係に区別がついているつもりではある。
プログラムされた同じ動き、決まった数値の敵を倒すことには少し飽きがきていて、敵も同じ人間なら熱いプレイができるはずだと期待を大きくし、キャラクターの設定を始めることにした。
『Knight Road』通称『KR』は二国に分かれて戦うMMORPGで大規模多人数同時参加型オンラインRPGと言われるものだ。二国はそれぞれ獣人である亜人種とヒューマンに分かれていて正樹は獣人国家を選んでいた。
どうせやるなら現実と違う方がよいと吟味した結果、銀色の毛並みを持つ兎の魔法使いになることにした。パラメーターの高さを考慮すると性別が女になってしまうが気にせずに魔力の数値が高い方を選ぶ。選択し作り上げたキャラクターに合うように『月姫』と適当な名前を付けた。これからこのネットゲームがどれだけ正樹に影響を与えることになるか、この時はまったく想像をしていなかった。ただ面白そうだという好奇心だけで繊細な少年の指先はキーボードを叩いている。
「ただいま」
正樹は元気よく玄関を開け階段を上がり二階の自分の部屋に帰ってきた。勢いのよい階段を駆け上がる音を聞きつけて洋子は正樹の部屋に行きノックをする。
「おかえりなさい。ちゃんとやることやりなさいよ」
「わかってるわかってる」
洋子は肩をすくめて階段を降り夕飯の支度の続きを始めることにした。(幹雄の二の舞になったら承知しないんだからね!)
ここ一週間ほどパソコンに夢中になっている様子が手に取るようにわかった。洋子としては早く部活動を決めて学校生活の充実を図ってもらいたく、今日こそ夕食時に幹雄に厳しく言ってもらおうと思っていた。(ニートにするために美味しいご飯作ってるんじゃないんだから!)ふんっと息巻いて洋子はまな板の上の玉ねぎを勢いよくみじん切りにした。
正樹はゲームにログインし月姫を操作はじめた。レベルは五で初心者マークが名前の横についている。まだレベルが低いので獣人国家とヒューマン国家の共通貿易港である港町の付近でレベルを上げるためモンスターを倒すことにした。月姫は難易度の高い雷を扱う魔法使いで、スキルを発動させるタイミングに少し難色を示したが、柔軟性が高く若い正樹は上達も早い。
いつもの狩場にやってくると人狼タイプの狂戦士が狩りをしている。名前はミスト。やはり初心者マークがついている。月姫の白っぽいシルクのローブ姿と違ってミストは鉛色の甲冑を着て大きな曲刀を振り回していた。
少し躊躇って眺めているとミストが声を掛けてくる。
ミスト:hi
月姫:こんにちは
ミスト:ここ使いたい?
月姫:いえー他探すのでいいですよ^^
ミスト:ペアってもいいですよ
月姫:邪魔じゃないですか?
ミスト:ボーナスつくでしょ
月姫:ペアボーナス?
ミスト:うんうまいとおもうw
月姫:じゃよろです^^
二人はパーティを組んでネズミのようなモンスターを狩ることにした。正樹は早々に自分のプレイスキルもなかなかだと自負していたが、ミストも結構な高プレイスキルだ。
月姫:ボーナスうまいですね^^
ミスト:でそw
月姫:ミストさんps高そうですねw
ミスト:ヲリは単純だからねwそっちこそ雷ウィズ難しいのに上手いねw
正樹は褒められて照れた。
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逆らうことはできない。パソコン自体取り上げられかねないからだ。(面白いのになあ)
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ミスト:うん。またね
月姫:またよろです^^
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部活動はあまりうるさく言われない水泳部に決めてマイペースに顔を出している。とりあえず問題なさそうな学校生活によって母の洋子からはまだ文句は出ていない。たまに父親の幹雄とネットゲームの話をすると怪訝そうな顔をするが今度のテストで、ほどほどの成績を見せられれば何も言ってこないだろう。(中の上ってラインが一番問題ないんだよな。)
双子の姉、知夏と実夏は正樹よりも五歳年上で今、高校三年生だ。その姉たちを見ていると自分にとって楽な立ち位置がよく分かった。『まあまあ』『だいたい』『そこそこ』を生活基盤としていれば、とりあえず間違いなさそうだ。
男の割に機転が利き、器用で柔軟性がある性格は姉たちのおかげだろうと思っていた。また女には逆らわないという姿勢も毎日を無難に送る秘訣だった。目下の楽しみの『KR』のことを考えながら正樹は浮足立って家路を急いだ。
洋子に声を掛け、軽く部活の話をした。どんな先輩がいるかとか今やっているトレーニングだとか。適当に情報を渡した後、正樹は制服を脱ぎシャツとトランクス姿になってパソコンを起動した。
ローディング画面が流れ、月姫が登場する。
もうレベルは三十になっていて初期装備に比べ守備力も上がっていた。本土の獣人国に行っても平気だろう。しばらくこの共通貿易港で狩りをすることもないと思いながら、クエストの取りこぼしがないかチェックしてみた。(ああ。虫退治三十匹残ってるのか)
大したクエストではないが一応コンプリートしておきたいと思い、狩場に行ってみた。どうやら先客がいるようだ。
名前は☆乙女☆。ピンクの妖狐で職業はヒーラーのようだ。ヒーラーは攻撃には向いておらず、基本的に攻撃職の回復を務める補佐役になる。一人で狩っているようで効率が悪そうだ。不格好な棍棒を振り回しているが大きなダメージを与えられず、返り討ちに会いながら自分の回復に努めているようだ。(うわー。一匹倒す前に湧いちゃってるよ)
見かねた正樹は声を掛けた。
『Knight Road』通称『KR』は二国に分かれて戦うMMORPGで大規模多人数同時参加型オンラインRPGと言われるものだ。二国はそれぞれ獣人である亜人種とヒューマンに分かれていてる。
星奈はゲームにログインした。
ローディング画面が流れ、☆乙女☆が登場する。
画面の中の☆乙女☆は桃色の妖狐だ。少し大人っぽい気がするが星奈は昔、修一に読んでもらった絵本のおかげで狐が好きなのだ。職業はヒーラーを選んだ。やはり修一の影響だろうか。自分でもなぜこのゲームを始めたのかわからない。兄のおさがりの携帯ゲーム機を少しばかり触ることはあったが特にゲームが好きと言うわけでもない。ただ年月とともに離れていく兄との距離が切なくなり、同じことに触れていたい気持ちがあったのだろう。ぼんやりとチュートリアルを眺め、促されるまま大きなミミズの様なワームと言うモンスターを倒しに行った。
レベル一ではマイヒールという少しだけHPを回復させられるスキルしかなかった。NPCからもらった棍棒を持ちワームを殴る。殴ると体当たりされ☆乙女☆のHPのゲージが三分の一が削られた。こちらが殴るとワームのHPは半分減る。一匹倒してはマイヒールを打ち、なんとか五匹倒した。しかしクエストでは三十匹倒さねばならない。
気が付くと近くで銀白色のウサギが立っていた。キャラクターの上には『月姫』と書いてある。☆乙女☆の武器とは違い金属の細長いタクトの様な杖を持っている。恐らく魔法使いだろう。
月姫:こん
声を掛けられた。これが初めてではなかったが、どうすれば会話ができるのか調べておらず無言で立ち尽くしていると相手は去っていった。星奈は今度もそうだろうと思いじっとしていた。すると再度、月姫は話しかけてくる。
月姫:チャットできる?Enter押して、普通に文字打つんだよ
☆乙女☆:ありがとお できませた
☆乙女☆:できました
月姫のおかげでチャットができるようになった。さらには一緒にクエストをこなしてくれるらしい。月姫は杖を振るい雷を落とす。五匹沸いてるワームをまとめて攻撃できる範囲魔法を使えるようだ。レベルが☆乙女☆に比べると随分高いのだろう。ワームに攻撃されてもあまりHPは減らないようだ。しかし☆乙女☆は気持ちばかりの回復魔法をかけワームの落とす宝箱を次々と開けて行った。レベルも三ほど上がった。
☆乙女☆:すごいいです ありがとうございあmす
月姫:ネトゲ初めて?
☆乙女☆:うn でもおもしろいよ
月姫:その職だと誰か攻撃職の奴と組まないとこれから辛くなるよ
☆乙女☆:そうですかあ 困ったなあ
月姫:ギルドはいったら
☆乙女☆:ぎるど・
☆乙女☆:?
親切な月姫は詳しくこのゲームでの目的を教えてくれる。☆乙女☆にはまだ目的意識がなかった。しかし一緒に遊べる仲間がこのネット上でいるのかと思うとなんだか世界が広がった気がする。なんせ目の前のこのウサギの魔法使いは自分と同じようにどこかでパソコンを使って操作しているのだから。
月姫とのチャットを食い入るように見ているとそこへ大きな狼の戦士が通りがかり声を掛けてくる。名前はミスト。月姫の知り合いのようだ。名前の上に『アンダーフロンティア』とギルド名が表示されている。
ミスト:hi
月姫:こんちゃ
☆乙女☆:こんいちは
ミスト:俺ギルド入ったんだけど月姫もどう?気楽でいいとこだよ
☆乙女☆:わたし入れてもらえmすか・?
ミスト:プリはいつでも歓迎だと思うよ
月姫:じゃあ私も入ろうかしら
ミスト:本土おいでよギルマスいるからさ
ミストと月姫についていくと港町についた。キャラクターを作り、ログインした時にも同じ場所に降り立ったが周囲を良く見ていなかった。改めて見ると、人間と獣人が入り乱れ、露店も多く出されている。最近学校で習った、外国の蚤の市のようだ。ここは中立的な場所のようで、敵味方関係なく売買を行えるようだ。月姫がここで装備を購入して、キャラクターを強くしたり、格好良くしたりすると教えてくれた。なるほど、☆乙女☆の持っている棍棒よりも洗練されたステッキがある。しかし先には殴られると痛そうな、棘のついたボールが施され、どうしてこれが『モーニングスター』と言う名前なのだろうか、とモニター前で首を傾げた。気が付くとミストと月姫がゲートと呼ばれる移動装置の前に居る。
月姫:ほら本土いくよ
☆乙女☆:はい
いよいよ獣人国家の本拠地に行くことになった。
大きなレンガ造りの門をくぐり、角ばったウエディングケーキの様な城の前に立つ。まるで古い時代の外国にでも来たような気分だ。
ミストが城の前に立つ、ライオン顔の甲冑を着たKAZUと言う名前の戦士に話しかける。ギルドマスターだ。狐が好きで安易に獣人国家を選んだが、この国の戦士は猛獣の類がほとんどで、近くで見ると味方であるのに怖かった。選択をミスしてしまったか、とも心配したが、月姫のたおやかなウサギ姿を見ると和んだ。知らず知らずに、月姫のそばに寄り添うように立っている。
色々と手続きを終え、晴れて☆乙女☆も『アンダーフロンティア』、通称『アンフロ』の一員となった。
このオンラインゲーム『Knight Road』は配信されたばかりで、今はまだレベルや装備に差は現れていない。ほかのギルドメンバーが五人ほどいて、みんなで一緒に狩りに行ったが特別☆乙女☆が劣っている様子はなく安心した。(月姫のおかげだ)月姫が夕ご飯を食べると言いログアウトしたので、☆乙女☆も同じくログアウトした。
パソコンの電源を落としてしまうと、少し疲れを感じぼんやりした。しかし夕方の物悲しい時間帯を楽しく過ごせて満足している。(明日も月姫いるかなあ)星奈は、漂うだしの香りに気づき、空腹を覚えて食卓へ向かった。
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検索用キーワード
百合ん百合ん女子高生/よくわかる献血/ハガキ職人講座/ラジオと献血/百合声優の結婚報告/プリント自習/処世術としてのオネエキャラ/告白タイム/ギャルゲー収録直後の声優コメント/雑誌じゃない方のVOGUE/若者の缶コーヒー離れ
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毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
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2023.01.14
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