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完結編

23 ありがとう さようなら

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 黒彦と桃香が改めて結ばれ、仲間たちは安堵する。

「さーてやっと次の行動がとれるよな」
「彼女たちを待たせてしまったよ」

そろそろ結婚しようかという矢先に、宇宙へ旅立つこととなり、やっと帰ってきたと思うと黒彦の記憶喪失。
さすがにイベントが多く、みんな落ち着きたい気持ちが強かった。

「もうさ。ドキドキしなくていいよねー」

 新しいものが好きで気まぐれな白亜ですら、そう思っている。
 それぞれ神前、教会、海外、人前、色々と結婚式を挙げ家庭を築いていった。


 やがて仲の良い6人組のカップルたちは、同時期に仲良く子供を授かる。

「また同級生になるのね。あなたたちみたいに。う、っぷ」
「大丈夫? 今レモンジュースでも作って来るね」

黄雅は身重の菜々子を心配しながら、急いで台所へと向かった。

「次世代戦隊って必要になるのかなあ」

少し膨らんだ腹をさすって菜々子は想像する。

「ま、まだまだ先の事ねー」

手元に目をやり、またチクチクと針仕事を始める。出産までには今作っているつるし雛が完成するだろう。

「名前何にしようかなあ。つるし戦隊大集合かなあ」

ただのつるし雛ではなかった。シャドウファイブたちと菜々子たちの女性戦隊、クリーミーキュア、そして宇宙船や星々が作られている。

「というか。売れるかしら……」

黄雅の考案で作ってはいるが、菜々子には売れ筋になるのかどうか疑問だ。しかし菜々子の予想と違い、つるし戦隊は人気商品となり多忙となる。機械生産されず一つ一つ手作りということも好まれるようだ。将来、菜々子はつるし雛教室を始めるのだった。



 ミサキの美しい綺麗な髪の毛先をそっと指で挟み、白亜はハサミで切って揃える。

「また綺麗になってるよ、髪」
「そうです? 不思議ですね。でも産まれると抜けたりしちゃうみたい」
「そっかあ……」

 残念そうな白亜にミサキは笑顔で「その時は綺麗にカットしてくださいね」と応えた。

「任せておいて。しかし胸も膨らんできたねえー」
「ええ。これはびっくりですね!」
「はあ。でもそれって俺のじゃなくて赤ちゃんのものだよねえ」

更にがっかりする白亜にミサキは笑う。

「ふふっ。大丈夫ですよ! 赤ちゃんには内緒にしときますから」

実際、赤ちゃんが生まれると誰よりも子煩悩になる白亜は、背中に子供を背負ってカットを続けるのだ。商店街の子連れカリスマ美容師として名を馳せるのだった。


 青音は子供の産着を縫っていた。古布とバトルスーツの素材を合わせたスーパーベビー服だ。

「ただいまー」
「おかえり、優奈さん。猫は見つかった?」
「ええ。予想通り家の軒下に潜ってましたよ」
「ふむ。まあ、もうあまり無理しないで」
「ええ。そろそろお腹邪魔だし歩くくらいにしときますね」
「うん」
「あ、そろそろ出来上がりですか?」

青音の膝に置かれたベビー服に優奈は目をやる。

「ほぼ完成」

立ちあがり袖を持ち、広げて見せる。色々なシルクの布地のパッチワークキルトに、足の裏と肘と膝はバトルスーツの素材になっている、ロンパースだった。

「すごーい!」
「あとは、これにバトルスーツ素材でフードをつけようかと」
「いいアイデアですね! 安心感ある!」

2人の様子をそっと桂子は伺う。

「若いのに渋い好みねえ……」

桂子は青音の赤ん坊の頃の写真を取り出して眺める。彼の産着は、青いシルクのサテン地のカンフー服で、肩に龍のモチーフが付き、胸のあたりに『闘将!!』と文字が入っていた。



 赤斗と茉莉はもう離乳食について研究している。世界各国の離乳食を調べ、試作品を繰り返す。

「栄養も大事だけど、味もだいじだよね」
「そうですよ。美味しいって思うって食べると、身体にすごくいいみたいですもんね」

美味しい離乳食を作り始めた二人は、母親のあつ子の勧めで販売も始めた。すると好評を得てよく売れた。
将来『イタリアントマト』はリニューアルし『イタリアンファミリートマト』となる。
カップルの多かった店だが、家族連れも増えていった。
 気が付くと赤斗は父の健一そっくりでかっぷくがよくなる。不思議なことに茉莉はスマートな体型を維持した。
どちらも心が満たされているのだろうことは、誰が見ても明らかだった。
彼らのおかげで、この商店街の人たちは、皆で美味しいものをゆっくり味わうのが大好きなのだ。


 腹が大きくなってきた理沙は、激しい技を繰り出すことから、ゆるゆる気の流れを感じる動きに変えた。いつの間にか氣を練り溜め、発することが出来るようになる。緑丸と祖父の朱雀は、理沙の武術のレベルがどんどん高くなることに驚きを隠せない。

「すごいな……。もう、達人の域に達しそうだ」
「そうか? 身体の変化に合わせていっただけなんだがな」
「ふぉーっふぉっふぉ。うんうん。そこが女性のええとこじゃのお。お前たちの母親もみんなそうじゃったのぉ」

満足そうに朱雀は目を細める。

「羨ましいよ。俺はいつになったら氣を扱えるんだろうな」
「ふぉっふぉふぉ。焦らんでええ。ロクはロクで到達するときがあるしの」

武術としては今、理沙が先を歩いている感じだが、理沙にしてみると緑丸のほうが自分よりずっと強いと思っている。

「緑丸。お前は心も強い。私はまだまだ不安定だからな。これからのこともちょっと怖いし。だから、よろしく頼む」

理沙は腹を撫でながら、緑丸に強い視線を送る。

「ああ。何があっても俺が君たちを守る」

そっと理沙の手の上に緑丸も手をのせた。
 ひ孫の顔を見た後、朱雀は天寿を迎える。満足そうで安らかなその死に顔は、皆、眠っているだけだろうと信じて疑わなかった。



 黒彦はたくさんの絵本を読み比べる。

「これは色が激しいようだな。こっちは昔話か……。うーん、この動物は一体なんだ?」
「黒彦さん、どれもいいと思いますよー」

ダメ出しばかりしている黒彦に桃香は口を挟む。

「いや。絵本は幼年期の情緒を形成する。ちゃんと選んでやらねば」
「うふふっ。いっそのこと、黒彦さんが絵本でも作ったらどうです?」
「むっ! 俺が、絵本、だと?」
「ええ。いいと思う絵本を。なければ生みだせばいいんですよ」
「うーむ。考えてみるか……」
「ふふふっ」

やがて黒彦は一冊の絵本を完成させる。それを桃香は優しい声で読み聞かせするのだった。
『昔々、あるところに仲良しの6人兄弟がいました。ある時、彼らは――』(6にんはともだち 著 ハヤシクロヒコ)







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