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完結編
15 作戦会議
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黒彦抜きのシャドウファイブのメンバーが青音の家に集まった。
「さて、黒彦たちだが、最近どうかな」
赤斗の問いかけにみんな口々に「進展ないなあー」とため息交じりに話す。
「桃ちゃんは相変わらずのんびりだし、黒彦は逆に接触避けてる感じがするよなあー」
黄雅の感想に青音も同調する。
「黒彦は従業員に手を出さないようなことを言ってたな。赤斗と違って」
「え、ちょっと人聞きの悪い言い方しないでくれないかな。茉莉とは職場恋愛だって」
「そうだ。桃と黒彦を婚活パーティでくっつけてみるって言うのはどう。黄雅んとこみたいに」
「え? 俺たち? 婚活パーティ確かにでたけど委員長とはカップリングしてないよー」
「あ、そっか」
進展が遅いのでみんなじれているのだった。平和な毎日の中、黒彦も桃香も穏やかに過ごしているので問題がないと言えば問題はないが、以前の仲の良い二人を知っているだけに、他人であることが残念なのだ。
「これを使ってみてはどうだろうか」
青音が着物の袂からそっと小瓶を取り出す。
「それは?」
「黒彦の『正直になる薬』を改良した」
「ほうほう」
「効果は?」
「正直になるプラスフェロモン増加プラス感情表現が豊かになる、だ」
「強力そうだなあー」
「催淫剤でくっつけてしまうのは良くないしな」
実際に催淫剤を使っても黒彦と桃香にはもはや効果はなく、また結果も出なかったことをみんなは知らない。
「黒彦の記憶の欠けた部分を再現するのってどうかな」
「再現かー。けっこう大変だな。怪人とかブラックシャドウとかどうする」
「委員長たちに頼むってのは」
「始まるところが研究所の爆発からだろ? ちょっと厳しいよな」
「それをやるのはいいかもしれないが、問題がある」
いいアイデアかと思ったが緑丸が神妙な表情を見せる。
「なに?」
「桃香さんとのことだ……」
皆で顔を見合わせ納得する。再現を忠実にしようと思うと、桃香との関係も再現することになるのだ。
「あー、それは無理だなー」
「うん。さすがに今はもう墓場まで持っていくくらいの秘密だ」
青音はまるで真犯人のような表情で答える。
「じゃあ、再現ドラマはなしだな」
「うーん……」
緑茶を淹れ直し考え直していると「あ、そうだ」と黄雅が立ち上がりホワイトボードに図面を書き始める。
「これ、どうかな?」
「なにこれ」
「六芒星みたいだな」
「えーっと簡単に書きすぎたんだけどさ。この中心に向かって周囲の――」
「ああ、なるほど」
「さすが黄雅だな」
黄雅の発案にみんな時間の経つのも忘れ、話し合う。展望が見え始めると開発に取り掛かることにした。
「よし。時間がかかるかもしれないがやってみよう」
「本当は黒彦が関わると早いんだけどなあ」
「うーん」
「こそこそやってると怪しむし、仲間外れにされたと思うんじゃ? あいつ寂しがり屋だし」
「そうだなあ。目的はちょっとぼかして作業手伝ってもらうか」
「それがいい」
「じゃあ青音の薬品関係はプロジェクトエー、こっちはプロジェクトエックスね」
「ビーじゃないのかよ」
こうしてシャドウファイブによる、黒彦と桃香に対するプロジェクトが始まった。
まずプロジェクトエーは、シャドウファイブの恋人たちと緑丸の祖父、高橋朱雀にも協力を求める。初めは朱雀に協力を求める予定ではなかったが、彼は自分が一番桃香の事を知っているというので参加してもらった。
「モモカちゃんは、ちょっとのんびりじゃからの。後押ししてやらんと。ふぉーっふぉっふぉ」
とりあえず、みんなでどういうシチュエーションで恋が始まるか調査する。白亜の恋人のミサキに言わせると、桃香はすでに黒彦のことは意識しているらしい。
「何かイベント起こすしかないかなあ」
「爆発とか、高いところから落ちるのは無しね」
「桃香さんを怪人に襲わせるとか。それを黒彦さんが助けるという――」
「手っ取り早いかも。それ。怪人は誰がやる? あれけっこう辛い役だよね」
「黒彦相手だとなあ。緑丸かなあ」
「うーん。緑丸だとばれるんじゃない?」
「私がやってもいいぞ」
好戦的な理沙はもちろん立候補する。
「理沙ちゃんか。確かに手合わせした記憶がなくなってるから、ばれないだろうけど」
「理沙……」
緑丸も心配そうな顔で理沙を見つめるが、言い出したら聞かないことも知っている。
「じゃあ、理沙ちゃん候補として、どこで襲うかだよなあ」
「書店の中じゃちょっとまずいし」
「別々に呼び出すといいんじゃないですか? 公園にでも」
「ああ、そうか。一緒じゃなくてもいいんだよねえ」
「呼び出す理由は?」
「そうだなあー」
「黒彦は適当な理由だと面倒で出てこない気がするしな」
難しく考えているところに茉莉が「みんなでバスケットしません?」と発言する。
「なるほど! 単純に一緒に遊ぼうでいいかー」
「うんうん。俺たち別に遅れて行ってもいいしさ」
「茉莉。いいこと言うな」
赤斗は茉莉の肩をさっと抱き、鼻の頭を指先でくるっと撫でる。このカップルは青姦趣味のせいか、着衣中は人前でいちゃつくことには頓着がないのだった。他のメンバーはちらりと一瞥してまた話し合う。
「次の休みにバスケットしようって、桃香さんと黒彦を早めに呼び出すことにして、怪人に襲わせるんだな」
「そうだ。モモカさんを早めに呼び出すように」
「黒彦はたぶんちょっと遅刻すると思うよ」
「ああ、そうだな。ちょうどいいかも」
「じゃあ理沙ちゃん、怪人よろしく」
「ああ任せておけ。衣装もちゃんとある」
以前、緑丸と戦った時の紫怪人の衣装が残っているのだ。
「理沙さん、手加減してね」
「もちろんだ。桃香を痛めつけたりはしないぞ」
そうは言うものの、以前痛い目に遭った黄雅は心配だった。
「襲う振りだけでいいんだからね」
「わかったわかった」
計画は決まった。そこへ菜々子が挙手をする。
「はい。委員長」
「い、委員長は、もういいってば……。ところで薬どうするの? 青音くん開発の。飲ませてないと『ありがとうございました。店長』『無事でよかった』で終わらない?」
「ああ、そうだったなー」
「いつ、どうやって飲ませるかなあ」
また問題が発生する。菜々子の言う通り、助けられた桃香は黒彦により好意をもつが、黒彦は従業員を助けたとしか感想を持たないかもしれない。
「前日に渡しておくのはどうですか? 明日、バスケットする30分前に飲むといい栄養ドリンクと称して」
優奈の提案に青音は「なるほど。使用方法を提示しておくのか」と考え始める。
「もしくは……。そう、タイマーをかけて、天井から糸を垂らし――」
優奈が提案する方法がどんどん巧妙な手口に変わっていきそうなので、最初の案を採用する。
「ちゃんと飲むかなあ」
「桃香ちゃんは飲むわよ」
「じゃあ黒彦には出かける前に一緒に飲んで、荷物忘れたとかで先に行かせるとか」
「ああ、それいいな。それだと時間通りに黒彦も到着しそうだ」
「なら桃香さんにもそうします?」
「確実かも」
みんなの話し合いを見守っていた朱雀が最後にもう一押しのアドバイスをする。
「ふぉーっふぉっふぉ。なかなかいい計画じゃがの、もう一つ大事なことがある――」
「え、なに、じいちゃん」
「それはの――」
「ふんふん――」
こうして綿密な計画が立てられた。うまく事が運ぶかどうか神のみぞ知るのである。
「さて、黒彦たちだが、最近どうかな」
赤斗の問いかけにみんな口々に「進展ないなあー」とため息交じりに話す。
「桃ちゃんは相変わらずのんびりだし、黒彦は逆に接触避けてる感じがするよなあー」
黄雅の感想に青音も同調する。
「黒彦は従業員に手を出さないようなことを言ってたな。赤斗と違って」
「え、ちょっと人聞きの悪い言い方しないでくれないかな。茉莉とは職場恋愛だって」
「そうだ。桃と黒彦を婚活パーティでくっつけてみるって言うのはどう。黄雅んとこみたいに」
「え? 俺たち? 婚活パーティ確かにでたけど委員長とはカップリングしてないよー」
「あ、そっか」
進展が遅いのでみんなじれているのだった。平和な毎日の中、黒彦も桃香も穏やかに過ごしているので問題がないと言えば問題はないが、以前の仲の良い二人を知っているだけに、他人であることが残念なのだ。
「これを使ってみてはどうだろうか」
青音が着物の袂からそっと小瓶を取り出す。
「それは?」
「黒彦の『正直になる薬』を改良した」
「ほうほう」
「効果は?」
「正直になるプラスフェロモン増加プラス感情表現が豊かになる、だ」
「強力そうだなあー」
「催淫剤でくっつけてしまうのは良くないしな」
実際に催淫剤を使っても黒彦と桃香にはもはや効果はなく、また結果も出なかったことをみんなは知らない。
「黒彦の記憶の欠けた部分を再現するのってどうかな」
「再現かー。けっこう大変だな。怪人とかブラックシャドウとかどうする」
「委員長たちに頼むってのは」
「始まるところが研究所の爆発からだろ? ちょっと厳しいよな」
「それをやるのはいいかもしれないが、問題がある」
いいアイデアかと思ったが緑丸が神妙な表情を見せる。
「なに?」
「桃香さんとのことだ……」
皆で顔を見合わせ納得する。再現を忠実にしようと思うと、桃香との関係も再現することになるのだ。
「あー、それは無理だなー」
「うん。さすがに今はもう墓場まで持っていくくらいの秘密だ」
青音はまるで真犯人のような表情で答える。
「じゃあ、再現ドラマはなしだな」
「うーん……」
緑茶を淹れ直し考え直していると「あ、そうだ」と黄雅が立ち上がりホワイトボードに図面を書き始める。
「これ、どうかな?」
「なにこれ」
「六芒星みたいだな」
「えーっと簡単に書きすぎたんだけどさ。この中心に向かって周囲の――」
「ああ、なるほど」
「さすが黄雅だな」
黄雅の発案にみんな時間の経つのも忘れ、話し合う。展望が見え始めると開発に取り掛かることにした。
「よし。時間がかかるかもしれないがやってみよう」
「本当は黒彦が関わると早いんだけどなあ」
「うーん」
「こそこそやってると怪しむし、仲間外れにされたと思うんじゃ? あいつ寂しがり屋だし」
「そうだなあ。目的はちょっとぼかして作業手伝ってもらうか」
「それがいい」
「じゃあ青音の薬品関係はプロジェクトエー、こっちはプロジェクトエックスね」
「ビーじゃないのかよ」
こうしてシャドウファイブによる、黒彦と桃香に対するプロジェクトが始まった。
まずプロジェクトエーは、シャドウファイブの恋人たちと緑丸の祖父、高橋朱雀にも協力を求める。初めは朱雀に協力を求める予定ではなかったが、彼は自分が一番桃香の事を知っているというので参加してもらった。
「モモカちゃんは、ちょっとのんびりじゃからの。後押ししてやらんと。ふぉーっふぉっふぉ」
とりあえず、みんなでどういうシチュエーションで恋が始まるか調査する。白亜の恋人のミサキに言わせると、桃香はすでに黒彦のことは意識しているらしい。
「何かイベント起こすしかないかなあ」
「爆発とか、高いところから落ちるのは無しね」
「桃香さんを怪人に襲わせるとか。それを黒彦さんが助けるという――」
「手っ取り早いかも。それ。怪人は誰がやる? あれけっこう辛い役だよね」
「黒彦相手だとなあ。緑丸かなあ」
「うーん。緑丸だとばれるんじゃない?」
「私がやってもいいぞ」
好戦的な理沙はもちろん立候補する。
「理沙ちゃんか。確かに手合わせした記憶がなくなってるから、ばれないだろうけど」
「理沙……」
緑丸も心配そうな顔で理沙を見つめるが、言い出したら聞かないことも知っている。
「じゃあ、理沙ちゃん候補として、どこで襲うかだよなあ」
「書店の中じゃちょっとまずいし」
「別々に呼び出すといいんじゃないですか? 公園にでも」
「ああ、そうか。一緒じゃなくてもいいんだよねえ」
「呼び出す理由は?」
「そうだなあー」
「黒彦は適当な理由だと面倒で出てこない気がするしな」
難しく考えているところに茉莉が「みんなでバスケットしません?」と発言する。
「なるほど! 単純に一緒に遊ぼうでいいかー」
「うんうん。俺たち別に遅れて行ってもいいしさ」
「茉莉。いいこと言うな」
赤斗は茉莉の肩をさっと抱き、鼻の頭を指先でくるっと撫でる。このカップルは青姦趣味のせいか、着衣中は人前でいちゃつくことには頓着がないのだった。他のメンバーはちらりと一瞥してまた話し合う。
「次の休みにバスケットしようって、桃香さんと黒彦を早めに呼び出すことにして、怪人に襲わせるんだな」
「そうだ。モモカさんを早めに呼び出すように」
「黒彦はたぶんちょっと遅刻すると思うよ」
「ああ、そうだな。ちょうどいいかも」
「じゃあ理沙ちゃん、怪人よろしく」
「ああ任せておけ。衣装もちゃんとある」
以前、緑丸と戦った時の紫怪人の衣装が残っているのだ。
「理沙さん、手加減してね」
「もちろんだ。桃香を痛めつけたりはしないぞ」
そうは言うものの、以前痛い目に遭った黄雅は心配だった。
「襲う振りだけでいいんだからね」
「わかったわかった」
計画は決まった。そこへ菜々子が挙手をする。
「はい。委員長」
「い、委員長は、もういいってば……。ところで薬どうするの? 青音くん開発の。飲ませてないと『ありがとうございました。店長』『無事でよかった』で終わらない?」
「ああ、そうだったなー」
「いつ、どうやって飲ませるかなあ」
また問題が発生する。菜々子の言う通り、助けられた桃香は黒彦により好意をもつが、黒彦は従業員を助けたとしか感想を持たないかもしれない。
「前日に渡しておくのはどうですか? 明日、バスケットする30分前に飲むといい栄養ドリンクと称して」
優奈の提案に青音は「なるほど。使用方法を提示しておくのか」と考え始める。
「もしくは……。そう、タイマーをかけて、天井から糸を垂らし――」
優奈が提案する方法がどんどん巧妙な手口に変わっていきそうなので、最初の案を採用する。
「ちゃんと飲むかなあ」
「桃香ちゃんは飲むわよ」
「じゃあ黒彦には出かける前に一緒に飲んで、荷物忘れたとかで先に行かせるとか」
「ああ、それいいな。それだと時間通りに黒彦も到着しそうだ」
「なら桃香さんにもそうします?」
「確実かも」
みんなの話し合いを見守っていた朱雀が最後にもう一押しのアドバイスをする。
「ふぉーっふぉっふぉ。なかなかいい計画じゃがの、もう一つ大事なことがある――」
「え、なに、じいちゃん」
「それはの――」
「ふんふん――」
こうして綿密な計画が立てられた。うまく事が運ぶかどうか神のみぞ知るのである。
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