上 下
100 / 109
完結編

14 黒彦とイサベル

しおりを挟む
 午後六時を過ぎると、帰宅途中の会社員や学生たちで書店は混んでくる。しかしいつも以上に客は会計を済ませずに帰っていく。それもそのはずだ。スーツで決めた黒彦が尊大な雰囲気でレジにいるからだ。参考書を買いに来た男子高校生がひそひそと話をしている。

「なんか買いづらくね?」
「いつもの優しそうなお姉さんだとなあ」
「今からアカデミー賞でも受賞しそうだよな」

 チラチラ見られていることに気づき、黒彦は気を利かせて彼らに近づいた。

「お客様、何かお困りでも?」

 威圧的な黒彦に、男子高校生は緊張し口をパクパクさせる。

「ああ、これか」

 参考書のコーナーで選んでいるの察し、何冊か手に取り黒彦は彼らに解説を始めた。

「こっちは受験向きで、こっちは授業の理解に向いている。どっちにしろ先に自分の将来の希望を考えないとな」

 もともとカリスマ性の高い黒彦は、若い彼らをあっという間に魅了する。高圧的に見えたのは彼の自信による堂々とした態度によってであるが、実際は親しみやすい。2人の男子高校生は緊張感を伴ってはいるが、少しずつ黒彦に親しみを感じ、質問を始める。

「あ、あの俺、いや僕、親はこの学校行けって言うんですけど、ホントは――」
「うん、うん。確かに親はある程度経験があるからな――」
「あの僕はこの方向性が好きなんですが、得意なのはこっちって言うか――」

 いきなり始まる進路相談に、黒彦は臆することなく答えていく。説得力と落ち着いた成熟した男性の雰囲気に、しばらくすると高校生たちは魅了されはじめる。黒彦の話を熱心に聞き入り彼らは頬を紅潮させ、明るい表情を見せ始めた。そして参考書ではなく全然別のジャンルの本を買っていった。
 この高校生たちが将来この国の経済と医療に大発展をもたらす二人になるとは、今はだれも予想できなかった。

「今日もなかなかだったな」

 売り上げを確認していると、ガラッと扉が開き「クロヒコー。コンバンワ」とイサベルの声がかかった。

「ん、今閉店だ。んん? なんだその恰好」
「え? クロヒコこそそんな恰好でどこに行くツモリ?」
「いや、鈴木さんが……。ちょっと待ってて着替えてくる」
「ごゆっくりドーゾ」

 イサベルはカットソーにカプリパンツだった。黒彦もカジュアルなシャツとパンツに着替え、店のシャッターを降ろした。

「さて、何食べたい?」
「そうねえ。サシミ、テンプラ、ポンシュを堪能したいワ」
「ふーむ。じゃ緑丸とか黄雅のたむろしてるところにでも行くか」

 食に頓着がない黒彦は、緑丸と黄雅がよく行くという海鮮居酒屋に向かうことにした。

「今日はお付きの者はいないのか」
「エエ。呼べばいつでも執事は迎えにくるワ。遅くなってもヘーキよ」
「まあ、そんなに遅くはならないだろう」
「えー。オールナイト! オールナイトッ!」
「いや。勘弁してくれ……」

 商店街を2人で少し歩くとすぐに海鮮居酒屋が見えてきた。イサベルは紺の暖簾を指さし「この布カワイイ。欲しい」と黒彦にせがむ。

「ダメだ。これは店の看板と同じだからな」
「ふーん。どこかで売ってるカナ」
「カーテンを取り扱ってる店にあるかな」
「ワタシの国の建物、カタイから、こういう柔らかそうなモノ欲しい」
「なるほどな。オリエンタルで価値のあるものなら青音のとこにあるかもしれない」
「オウ! セイネのとこでいっぱい買い物したい!」

 店の中に入り、座敷に上がるとやはりイサベルは畳みやら座布団やらを欲しがる。そんな様子を見ていると、外国の研究所での生活に慣れていた黒彦もやはり和風は良いものだと再認識する。

「適当に頼むか」
「お願いネ」

 刺身と天ぷらの盛り合わせと日本酒を頼む。

「なんか変わったものあるかなあ」

 せっかくなのでナマコと牡蠣の酢の物を頼み、イサベルに勧めた。

「これはなかなか珍味ってやつかな」
「うーん。グロテスクね。でも、エイっ! あ、んん? カタイわ! オウ! でもオイシイ」
「だろう。こっちは柔らかい」
「うー。ふにゃふにゃネ。すべって掴めないネ」
「ああ、フォーク使うといい」
「エイっ! う、ぬるっとして、んん。このひらひらしてるとこ、何かしら? つるっと入っチャウ。オウッ! オイシイ!」
「感想が激しいな……」

 襖の外から「あのー、すみません」と声がかかったので黒彦が襖を開けると黄雅がいた。

「やっぱり、黒彦たちか。騒いでるのイサベルだと思ってさ」
「オウ。コウガいたのね」
「やあ、イサベル堪能してる?」
「エエ。コウガは1人なの?」
「いや、4人だよ」
「オウッ! パーティね。ゴウリュウゴウリュウ!」
「え、合流する? 黒彦いいの?」
「ああ、俺はどっちでもいい」
「じゃ、ちょっとみんなに聞いてくるよ」

 黒彦とイサベルは黄雅たちに加わり、もう一つ広い座敷に移る。メンバーは黄雅、菜々子、緑丸、理沙だった。

「緑丸のフィアンセの高村理沙だ」
「私は、えーっと、あ、名刺作ってない! 山崎菜々子です」
「ヨロシク。研究仲間のイサベラよ」

 名前は聞いていたが理沙と菜々子がイサベラに会うのは初めてだった。

「とりあえず、また乾杯でもしようか」
「そうしよう」

 しばらく飲んだのち理沙は率直にイサベラに尋ねる。

「イサベラは恋人はいないのか?」
「エエ、残念ながら」

 菜々子もそれを聞きつけ会話に加わる。

「イサベラさん。まさか黒彦くん狙ってないわよね?」
「フフっ。どうかしらネ」

 思わせぶりなイサベラに菜々子は黒彦に聞こえないように「事情知ってるんでしょ?」と小声で話す。
 記憶のない黒彦に気を使っている菜々子だが、彼ら三人はこちらの話に耳を傾けることなく話し合っていた。

「そうだ。イサベル。人の恋路を邪魔してはいけないぞ」

 理沙も菜々子の応戦を始める。イサベルは2人の女性が黒彦と桃香を応援しているのだと分かっていたし、長く一緒に研究をしていた黒彦との関係はなんら発展性がないものだとわかっていた。

「ご心配ナク。彼らの邪魔をするつもりはないノ。でも……」
「どうしたんだ、イサベル。悩みでもあるのか」
「いきなり暗いじゃない。あなたラテン系じゃないの?」

 人の好い二人は桃香のライバルだと思いイサベルに好意的ではなかったが、思いつめる彼女を心配し始める。

「来月結婚スル。子供のころから決まったフィアンセがイルから」
「ほう。めでたい話じゃないか」
「なになに、で、何でそんなに暗いのよ」
「顔もみたことがナイ。歳は同じみたいだけど」
「えー! 今どきそんな結婚があるのか!?」

 イサベルの一族では当然のことであったが、理沙と菜々子は驚きを隠せない。

「みんなが羨ましい。好きな人と恋がしてみたかったカナ」
「そうか……」
「まあ、じゃあ、とりあえず飲もう!」

 女性たちの雰囲気が良くなったので、緑丸や黄雅も安心して飲み始める。明るく楽しく飲んだ後。案の定、菜々子と理沙はしたたかに飲み黄雅と緑丸に背負われて帰っていった。

「じゃあね。イサベル」
「おやすみ」
「マタネ! コウガ、ロクマル。リサとナナコによろしく言っといて」

 2組のカップルを見送り、黒彦も「さて、執事呼ぶか」とイサベルに帰宅を促す。

「クロヒコ。おねがい。もう少し付き合ってくれない?」
「ん、まあいいか」
「公園行くネ」
「酔い覚ましにいいか」

 2人は恋人たちのメッカである公園を散歩することにした。もう夜も遅いので恋人たちもいない。噴水の水もとまって静かだ。
 ベンチに腰掛け黒彦とイサベルは薄曇りの夜空を見上げる。

「あの宇宙にいたなんて、ここにいるとあまり信じられないな」
「ソウネ。でもホント無事に帰ってきてくれてヨカッタ」
「SFじゃないからな。案外宇宙の方が安全だな。交通事故もないし」
「クロヒコ、ロマンがない」
「ふっ。仕事にロマンは求めないよ」
「クロヒコ。あの、私帰国したら、結婚スル」
「そうか。おめでとう」
「でも私クロヒコが好き!」
「え、そう言われてもな……」
「今晩一晩だけでイイ! 思い出が欲しい!」
「イサベル……」

 彼女は真剣に黒彦に訴える。

「今、クロヒコ、恋人イナイ。いいでしょう?」
「確かに今は恋人はいない。だけど」
「だけど?」
「イサベル。君は大事な研究仲間だ。おまけに婚約者もいる。だからダメだ」
「どうしてもダメ? 遊びでもイイ。ずっとずっとクロヒコ好きだった」
「いや。やめておこう。俺と君はそういう結ばれ方をするべきじゃない」
「……。頑なネ」
「お互いが愛し合っていなければ、そういうことは後悔の元になると思う」
「ロマンチストね」
「仕事じゃないからな」
「ワカッタ。でもありがとう。付き合ってくれて」
「いつでも付き合うさ。大事な仲間だからな」
「ん……」

 しばらく宇宙を眺め、イサベラは執事を呼び帰っていった。


 イサベラは帰国後、王族の決まりにより顔も知らない婚約者と結婚することになるが、相手の顔を見た途端、憂いはなくなった。

「オウッ! イケメン! よかったー、クロヒコとそうならなくて」

 後々、イサベラは自分を拒んでくれたロマンチストの黒彦に大いに感謝するのだった。


 黒彦は1人で夜空を眺め、人恋しい気持ちを感じる。

「誰か分からないが誰かを求めている気もするな……」

 ふっと桃香の顔が浮かぶ。

「鈴木さん……。そういえば彼女も恋人がいないようだな」

 スタアシックスの仲間たちが随分桃香の事を気に入っているようで、黒彦に会うと必ず彼女の様子を聞き褒める。

「あいつらも恋人がいるくせに、鈴木さんと親密そうだよなあ」

 黒彦よりもスタアシックスの仲間たちの方が、桃香との物理的な距離が実際に近かった。

「白亜は確か鈴木さんの髪を触っていた気がする……。美容師だからって、まったく」

 白亜の態度になぜか黒彦はイラつく。

「まあ鈴木さんは可愛いからな……」

 自分で言っておいて黒彦はハッとする。そしてまたあの淫靡な夜を思い出してしまった。耳の奥で桃香の耳触りの良い声が記憶に残っている。『てん、ちょう……』

「いけないいけない。彼女は大事なうちの店員だ。――自制しなければな」

 こぶしを握り締め黒彦はベンチを立ち、闇の中に紛れていった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

「こんな横取り女いるわけないじゃん」と笑っていた俺、転生先で横取り女の被害に遭ったけど、新しい婚約者が最高すぎた。

古森きり
恋愛
SNSで見かけるいわゆる『女性向けザマア』のマンガを見ながら「こんな典型的な横取り女いるわけないじゃん」と笑っていた俺、転生先で貧乏令嬢になったら典型的な横取り女の被害に遭う。 まあ、婚約者が前世と同じ性別なので無理~と思ってたから別にこのまま独身でいいや~と呑気に思っていた俺だが、新しい婚約者は心が男の俺も惚れちゃう超エリートイケメン。 ああ、俺……この人の子どもなら産みたい、かも。 ノベプラに読み直しナッシング書き溜め中。 小説家になろう、カクヨム、アルファポリス、ベリカフェ、魔法iらんどに掲載予定。

私を裏切った相手とは関わるつもりはありません

みちこ
ファンタジー
幼なじみに嵌められて処刑された主人公、気が付いたら8年前に戻っていた。 未来を変えるために行動をする 1度裏切った相手とは関わらないように過ごす

完結 お飾り正妃も都合よい側妃もお断りします!

音爽(ネソウ)
恋愛
正妃サハンナと側妃アルメス、互いに支え合い国の為に働く……なんて言うのは幻想だ。 頭の緩い正妃は遊び惚け、側妃にばかりしわ寄せがくる。 都合良く働くだけの側妃は疑問をもちはじめた、だがやがて心労が重なり不慮の事故で儚くなった。 「ああどうして私は幸せになれなかったのだろう」 断末魔に涙した彼女は……

ほらやっぱり、結局貴方は彼女を好きになるんでしょう?

望月 或
恋愛
ベラトリクス侯爵家のセイフィーラと、ライオロック王国の第一王子であるユークリットは婚約者同士だ。二人は周りが羨むほどの相思相愛な仲で、通っている学園で日々仲睦まじく過ごしていた。 ある日、セイフィーラは落馬をし、その衝撃で《前世》の記憶を取り戻す。ここはゲームの中の世界で、自分は“悪役令嬢”だということを。 転入生のヒロインにユークリットが一目惚れをしてしまい、セイフィーラは二人の仲に嫉妬してヒロインを虐め、最後は『婚約破棄』をされ修道院に送られる運命であることを―― そのことをユークリットに告げると、「絶対にその彼女に目移りなんてしない。俺がこの世で愛しているのは君だけなんだ」と真剣に言ってくれたのだが……。 その日の朝礼後、ゲームの展開通り、ヒロインのリルカが転入してくる。 ――そして、セイフィーラは見てしまった。 目を見開き、頬を紅潮させながらリルカを見つめているユークリットの顔を―― ※作者独自の世界設定です。ゆるめなので、突っ込みは心の中でお手柔らかに願います……。 ※たまに第三者視点が入ります。(タイトルに記載)

本編完結R18)メイドは王子に喰い尽くされる

ハリエニシダ・レン
恋愛
とりあえず1章とおまけはエロ満載です。1章後半からは、そこに切なさが追加されます。 あらすじ: 精神的にいたぶるのが好きな既婚者の王子が、気まぐれで凌辱したメイドに歪んだ執着を持つようになった。 メイドの妊娠を機に私邸に閉じ込めて以降、彼女への王子の執着はますます歪み加速していく。彼らの子どもたちをも巻き込んで。※食人はありません タグとあらすじで引いたけど読んでみたらよかった! 普段は近親相姦読まないけどこれは面白かった! という感想をちらほら頂いているので、迷ったら読んで頂けたらなぁと思います。 1章12話くらいまではノーマルな陵辱モノですが、その後は子どもの幼児期を含んだ近親相姦込みの話(攻められるのは、あくまでメイドさん)になります。なので以降はそういうのokな人のみコンティニューでお願いします。 メイドさんは、気持ちよくなっちゃうけど嫌がってます。 完全な合意の上での話は、1章では非常に少ないです。 クイック解説: 1章: 切ないエロ 2章: 切ない近親相姦 おまけ: ごった煮 マーカスルート: 途中鬱展開のバッドエンド(ifのifでの救済あり)。 サイラスルート: 甘々近親相姦 レオン&サイラスルート: 切ないバッドエンド おまけ2: ごった煮 ※オマケは本編の補完なので時系列はぐちゃぐちゃですが、冒頭にいつ頃の話か記載してあります。 ※重要な設定: この世界の人の寿命は150歳くらい。最後の10〜20年で一気に歳をとる。 ※現在、並べ替えテスト中 ◻︎◾︎◻︎◾︎◻︎ 本編完結しました。 読んでくれる皆様のおかげで、ここまで続けられました。 ありがとうございました! 時々彼らを書きたくてうずうずするので、引き続きオマケやifを不定期で書いてます。 ◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎ 書くかどうかは五分五分ですが、何か読んでみたいお題があれば感想欄にどうぞ。 ◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎ 去年の年末年始にアップしたもののうち 「うたた寝(殿下)」 「そこにいてくれるなら」 「閑話マーカス1.5」(おまけ1に挿入) の3話はエロです。 それ以外は非エロです。 ってもう一年経つ。月日の経つのがああああああ!

BでLなゲームに転生したモブ令嬢のはずなのに

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ジーニアの中の人は気付いてしまった。ここがBLゲームの『光り輝く君の中へ』という世界であることに。このゲームは3つのシナリオがあり、それぞれのカップルを成就させていくというBLゲームである。そしてジーニアはそのゲームに登場する当て馬兼モブ令嬢なのだ。 選択するルートを間違えれば当て馬となって死んでしまう。しかし、カップリングのあんなことやそんなことは見たい。という葛藤の中、ジーニアは死なずにカップリングを堪能するルートを模索し始めるのだが、なぜか彼女自身がカップリング対象者の一人から狙われるようになり――。 腐った心を持つ令嬢とその令嬢に心を奪われてしまった腹黒男の物語――になるはず。ってなるの?なったのか?! ※BLではないため男性同士の絡みはありませんが、ヒロインが腐っているのでヒロインが勝手に妄想します。そういった表記が苦手な方は、ご注意ください。基本的にアホです。 ※複数モノではございません。逆ハーものでもございません。本命一人にしぼられてからのRになるため、後半戦です。 ※恐らく8万字以下で完結する予定。 ※1日3回くらいずつ更新予定(予約を忘れなければ……) ※Rはいつもな感じのしつこい感じですが、何しろギャグなので。ヒーローはいたって真面目なんですが、ヒロインが腐ってます。 ※HOTランキングありがとうございます!!8位だと?! ※ご感想ありがとうございます!!エタりそうな作品でしたが、みなさまからの感想のおかげで最後まで書くことができました!!

異世界の学園で愛され姫として王子たちから(性的に)溺愛されました

空廻ロジカ
恋愛
「あぁ、イケメンたちに愛されて、蕩けるようなエッチがしたいよぉ……っ!」 ――櫟《いちい》亜莉紗《ありさ》・18歳。TL《ティーンズラブ》コミックを愛好する彼女が好むのは、逆ハーレムと言われるジャンル。 今夜もTLコミックを読んではひとりエッチに励んでいた亜莉紗がイッた、その瞬間。窓の外で流星群が降り注ぎ、視界が真っ白に染まって…… 気が付いたらイケメン王子と裸で同衾してるって、どういうこと? さらに三人のタイプの違うイケメンが現れて、亜莉紗を「姫」と呼び、愛を捧げてきて……!?

どうせ結末は変わらないのだと開き直ってみましたら

風見ゆうみ
恋愛
「もう、無理です!」 伯爵令嬢である私、アンナ・ディストリーは屋根裏部屋で叫びました。 男の子がほしかったのに生まれたのが私だったという理由で家族から嫌われていた私は、密かに好きな人だった伯爵令息であるエイン様の元に嫁いだその日に、エイン様と実の姉のミルーナに殺されてしまいます。 それからはなぜか、殺されては子どもの頃に巻き戻るを繰り返し、今回で11回目の人生です。 何をやっても同じ結末なら抗うことはやめて、開き直って生きていきましょう。 そう考えた私は、姉の機嫌を損ねないように目立たずに生きていくことをやめ、学園生活を楽しむことに。 学期末のテストで1位になったことで、姉の怒りを買ってしまい、なんと婚約を解消させられることに! これで死なずにすむのでは!? ウキウキしていた私の前に元婚約者のエイン様が現れ―― あなたへの愛情なんてとっくに消え去っているんですが?

処理中です...