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後日談

告白はセックスの合間に②

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「何でこんなもの持ってんだ?」

 椎原の部屋に移動した2人。岡地は椎原に言われるままにベッドに横たわり、手錠で縛られた。両手の間にベッドフレームを通し、頭上に固定されている。岡地は突然出てきた拘束具を疑問に思うが、酔いが勝ってるのか抵抗しない。

「えー、これは……学生時代にドンキで……」
「お前がすぐ振られてた原因これだろ、どすけべ」
「うるせぇなあ、若気の至りだよ」

 探せば他のおもちゃも出てきそうだな、と思う岡地。今も自分の性欲に素直な椎原は、10代の頃となれば尚のこと歯止めが聞かず相手は大変だっただろう。その点、岡地は同じ男で多少無理が通る相手だ。

「拘束して何するんだ?」

 下半身を露出して手錠をはめられてる岡地を見下ろし、椎原は答えない。とてもいい光景だ。今なら岡地に対して何でも出来る。

「おい」
「大丈夫大丈夫。なんか人によってはすげー暴れるらしいから、保険で縛ってるだけ」
「は? 暴れる?」

 何一つ大丈夫ではない理由を椎原は答えながら、ローションの準備をする。それはいつもセックスのときに使ってるもので、今出てきても特に不自然ではない。だが、もう一つ、見慣れない白い布が出てきて椎原が「ローションガーゼって知ってる?」と聞けば、岡地はすべてを察した。

「やめろ!」
「おっ、知ってるじゃん。岡地もすけべだな~、もしかしてやったことある?」
「ねぇよ! あほか、やらねぇぞ!」

 がしゃん、と手錠が鳴った。やる前から暴れ始める岡地に手錠はめてて良かったと椎原はうんうんと頷く。蹴り上げようとする岡地の足を容赦なく掴んで、その足の間に体を入れてプレイの準備をする。岡地が本気で抵抗するならもっと強いはずだ。嫌がっても何だかんだ自分に本気を出すことができない夫を良くしてやろうと、椎原はローションをたっぷり浸したガーゼを岡地のものに被せる。ぴく、と岡地の体が反応した。

「お前、いつも先端の方擦るの好きって言うじゃん。だからこれ絶対好きだと思って」

 椎原はプレイをする理由を言いながら亀頭部分をガーゼで覆い、両手で端を持つ。そのまま左右に擦ると、一往復ですぐに岡地が声を上げた。

「あっ、ぐう」

 身をよじって、手錠で上げたままの腕で何とか口をふさぐ。そのままくぐもった声を上げ始めたが、声が大き過ぎて全く腕で防がれていない。

「んんっ、ぐ、うう~ッ!」
「声やば」

 椎原は岡地がこんなに鳴いてるのを初めて聞いた。摩擦が良すぎてすぐ岡地のものから外れようとするガーゼを何度もセットし直し、先端が擦れるように左右に引っ張る。その度にがくがくと震える岡地の足に挟まれ、邪魔される。

「擦ってるだけなのに、そんな気持ちいいの?」

 男性が絶頂を迎えるためには一般的に圧迫感が必要だ。だからこれだけでいくのは相当難しいはずだが、バキバキにフル勃起して腰を浮かせる岡地は今にもいきそうに見えた。

「んあっ、ちが……ッ、これ、きっつ、あっ」

 気持ちいいを通り越してきつい。ぬるぬるのローションの刺激がもどかしい。
 椎原と目を合わせてそう言おうとした岡地の顔を見て、椎原は生唾を飲み込む。悩ましげに歪んだ眉、熱を孕んだ目、汗で張り付いた前髪、快楽で上気した顔だ。いつものセックスでは見られない岡地の顔。

「やば、めっちゃエロいんだけど」
「ひっ、お、あっあっ」
「岡地えっち過ぎ、かわいー……」
「あっ、あ……っ!」

 片手でガーゼと一緒に竿を握り込み、上下に擦る。いつもと同じ岡地の好きなやり方で、握られた圧迫感もある。これならいけるだろうと椎原がやると、既に上り詰めていた岡地はすぐにいった。出し切った後も激しい運動した後のように、体全体で呼吸する。

「はーっ、はー……くそが……」

 脱力しながら悪態づく岡地を尻目に、椎原はごそごそとベッド脇の引き出しをあさる。気持ちいいのが大好きで、岡地と様々なプレイを楽しむための道具がこの中には入っている。その中でも一番始めに買ったものを取り出した。岡地に見せつける。

「次はこれ入れながらしよ」
「……は? 次?」

 もう一回するつもりかと聞き返し、椎原が手に持ってるものを見て岡地は青ざめた。
 エネマグラ。椎原のアナル開発に使った。

「嫌だ! 入れねぇ!」
「このくらいならすぐ入るって。ケツまでべったべただし」
「入れんなっつってんだ! やらないんじゃなかったのか!?」
「いや俺、前から思ってたんだけどさあ」

 岡地は抵抗するも手錠が鳴るだけだ。エネマグラにもローションをたらし、十分濡らしてから椎原は指で岡地の尻穴の様子を探る。

「岡地、随分前から俺とセックスしたかったって言うじゃん。それどのくらい前からか知らねぇけど、ずーっと俺のこと抱く側で想像してたわけ?」

 固く閉ざされた穴をぐりぐりと押す。その間も岡地の口からはやめろやらねぇといった言葉が椎原に呼びかけられていたが、指が入り始めると黙って声を抑えた。

「ふっ……ぐ」
「こっち側、全然想像しなかった?」

 改めて椎原が聞くが、岡地は答えない。
 今のセックスのポジションは椎原の方からそうしたいと提案したもので、岡地の想像と同じだったか椎原には分からない。でも椎原は自分で行為を想像して思った。
 岡地も、一度は椎原に想像の中で犯されてるんじゃないか。
 それを肯定するかのように、岡地は声を抑えて睨みつけてくる。支配欲がくすぐられた。

「あっ、嫌だ、触るな!」
「ここ、ここ。俺がいつもお前にされて気持ちいいところ」
「あっ……!」
「ほら、もう何か感じる? 気持ちいい? 今からここいっぱい押すから」

 これで、と椎原はおもちゃを見せつける。指よりも細いエネマグラは入れるだけなら簡単に入る。実際に椎原に使った岡地はそれを知っている。そしてそれで気持ちよくなることも。

「嫌だ、やだ……っ!」

 岡地が子供みたいに嫌がってることをやるのは妙に興奮する。その興奮を押さえつけて意識して理性的に「傷つけちゃうかもだから大人しくして」と椎原は言う。真に受けたのか、岡地は先端が中に入った瞬間にビクッと一度震えただけで、また口を引き結んだ。少し先に進めては止め、先に進めては止めを繰り返して中に入れていく。椎原の指で確かめた感じでは、エネマグラは全部中に入れてしまわないと岡地の良いところには当たらない。
 
「きつい?」

 さすがに痛いことはしたくない。椎原は強引に進めた行為を本当に良かったのか今更岡地に確かめる。
 
「……クソが逆流してきたみたいだ……」
「言いかたぁ」

 岡地のいつもの情緒の無い言い方に呆れつつ、椎原は抵抗しなくなった岡地に気付いた。そもそも最初からろくな抵抗はしていなかった。手錠してるとはいえ、自由に出来る足には何発か蹴られることを覚悟していたのだが、岡地はエネマグラを入れる間ずっと耐えていた。それは何だかんだ言いつつ受け入れてくれるいつもの岡地の態度だ。椎原はにっこりと笑う。

「じゃ、これするか~」

 再度ローションをひたひたに染み込ませたガーゼを広げると、流石の岡地もそれには声を上げる。

「この状態で……ッ、あっ」
「そうそう、動くといいところに当たるよな」
「クソッ……!」

 体に力が入ると中のエネマグラが動いて良いところを擦る。岡地はろくに喋ることも出来ない。中はエネマグラが勝手にやってくれるから、椎原は岡地の前のモノに集中できる。ガーゼをまた先端に被せると、もうそれだけで岡地はびくっと震えた。今度は両手でガーゼを引っ張って左右にこするのではなく、手を丸くしてガーゼの上から覆うようにして、いいこいいこと撫でる。こうすると手で上から押さえつけるから、ガーゼが滑って外れたりしない。ずっと同じ刺激を与え続けられ、岡地のうめき声が止まらない。

「ひっ、あぐぅ……あ~……ッ!」

 岡地がもどかしく腰を動かす度に中のエネマグラも動く。快楽から逃げるように腰が浮き上がるが、椎原の手によって押さえつけられてるガーゼに自分から当てに行き、ぬるぬるのローションで滑って擦れる。それがまた刺激になって体が強ばると、中の玩具が前立腺をえぐる。交互にひっきりなしに刺激を与え続けられ、短い間隔で息をしながら声を出す。

「あっあっ、ぐうっ、うっ」
「なあ、体の開発するとき、元々気持ちいいところも一緒にするといいって言ってたじゃん。これ、すげーぴったりじゃね?」
「いやだっ、いっ、おっ」
「は~、めちゃくちゃ可愛い、やばい……」

 同じように体を開発した椎原には、今の岡地の気持ち良さが想像できる。岡地も椎原の尻を開発するとき、一緒に前の方も触ってくれていた。そのときはローションガーゼではなかったが、岡地の気持ち良さそうな様子を見ていると、椎原は自分のときのことを思い出してしまう。こうやってたくさん気持ち良くして、尻でもいけるようになって、そして。
 カクカクと浮かせた状態で揺れる腰つきはエロいし、背をそらしてのけぞる首元には噛みつきたい。

「ひっ、椎原……っ! だしたい、だしたいッ」

 岡地は椎原と違って後ろだけではいけないし、前は先端を擦られてるだけで射精する決定打が無い。終わりが見えない快感に音を上げ始めた。

「もういぐっ、いぎだいっ、あーッ、あっ、あ」
「これ、後ろから押してたらいけない? 無理? ……ちゃんと前触んないと無理か」
「しいはらっ」

 いく、と言いつつもギンギンに勃ちあがったものからは何も溢れてこない。先走りだけが溢れる。何度も自分の名前を呼んで懇願する岡地に、椎原はぞくぞくと背中を駆け上がるものを感じた。岡地の痴態から目が離せない。下半身に血が集まってるのが分かり、パンツからそれを取り出す。自分自身で擦って慰めるが、本当はもっと違うことがしたかった。

「岡地、やらせて」

 挿れたい。セックスがしたい。抱きたい、と言えば息を吐きだしてばかりの岡地の喉がはっと空気を吸い込んだ。

「だめ、無理だ……ッ!」
「うん。今日じゃなくていいよ」
「あっ、う」
「今度やろ。約束して。ここ入れさせて」
「あーっ、あっ、んっ」

 ぐりぐりと椎原が手でエネマグラを押さえつける。途端にビクビクと跳ねる岡地の体はもしかしたらもう後ろの快感を知ってしまったかもしれない。
 次は入れたい、絶対入れる、と血走った椎原の目つきを岡地は見上げる。暴力的な岡地の夫は、すぐ理性を無くしてしまう。こうなった椎原を岡地は何度も止めてきたが、今は手は手錠に、足は椎原に押さえつけられている。快感を逃がそうと体をよじることすら出来ない。どうすることも出来ない。
 勃起し過ぎて痛いくらいのものにずっとガーゼを当てられ、逃げようとすると前立腺をえぐられ、もどかしさと快感で岡地は限界だ。

「分かっ、た」

 次は抱かせてほしい、という椎原の要求を飲んだ。すぐに椎原が「ほんと?」と確かめてくる。

「岡地、今、訳分かんなくとかなってないよな? 後で覚えてねぇとか、やっぱ無しとか言うなよ」
「言わ、ねぇ……ッ、もう、いぎだっ」
「絶対だかんな。逃げんなよ」

 念押しが脅迫のようだった。ぎらついた椎原の目はキレてるときと同じだ。それに岡地がもう声も出さずこくこくと頷くと、ようやく椎原の顔つきに柔らかさが戻る。

「やった。じゃ、一緒にいこ」

 ぴた、と椎原は取り出した自分のものを岡地のものと合わせる。その周りをガーゼで包んで、二本ともガーゼ越しに椎原の手が握る。びくっと体が跳ね、それだけで岡地はいきそうになった。二人で手コキしたこともオナホを使ったことがあったが、また違う刺激だ。ぬるぬるしたローションは手でやるよりも摩擦が少ないし、厚みの無いガーゼはオナホよりも手の温度が伝わってくる。椎原の手がガーゼとローションを温めて、それで擦られると岡地は低い声で呻いて達した。

「ふうっ、ぐ……っ! あっ、あ……っ!」
「やば、黒目どっかいった、すげぇ顔……っ」

 のけ反る岡地の体を抱き締めて、椎原が顔を覗き込む。岡地は顔を歪め、はっ、はっ、と口が開きっぱなしで息も整わない。目がイッてる、汚い顔、かわいい。あの岡地を自分がこうやって前後不覚になるまで追い詰めたのだと思うと、椎原は気分が良くえらく興奮する。既にいってる岡地のものを握り込んだまま、自分がいくために手の上下を続ける。前の刺激も後ろのエネマグラも刺さったままで、岡地が浅い息を繰り返して呻く。男の低いそれを「かわいい、かわいい」と繰り返し言って椎原はキスで塞いだ。

「んん、む、んあっ、んん」

 岡地の訴えは全部声に出させず椎原が飲み込んだ。椎原は自分がいくまで手の動きを続け、その間もがくがくと震え続ける岡地の体を抱きしめ続けた。

「好きだ、岡地、本当にかわいい」

 何が可愛いだ、何が好きだ。人の都合も考えずに好き勝手しやがって。ようやく解放されてピロートークさながらキスをする椎原に岡地はもう何も言えず諦めた。
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