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カフェ 卯月(うげつ)堂
第十四話
しおりを挟む「一人で探すより、大勢で探した方が効率良いじゃない」
ナオヤがへらりと笑みを見せる。
「私は貴方達と出会ったばかりなのに?」
知り合いでも、友達でもないのに。
「私の問題なの。貴方達には何のメリットもないわ」
「メリット?」
きょとんとトシキが目をしばたたかせた。
「チヒロちゃんがそれで笑ってくれるなら、嬉しいから……かな。俺達の自己満足」
彼はそう答えると朗らかな笑みを浮かべた。
彼女の心に暖かな何かを感じ始めたそのとき、トシキの視線が徐々に泳ぎ始める。
チヒロが注意深く眺めていると、
「自分でもクサイ台詞吐いたなぁ」
そう呟いて、気恥ずかしげに顔を両手で覆った。
「うん、さらりと凄いこと言ったなぁって思ってた」
「青春だなぁ」
「その台詞、使わせてもらいます」
コウスケが、そしてナオヤとノリヒトが言葉を続けると、
「やめて、穴掘って埋まりたくなるから!」
穴を掘って埋まる代わりにカウンターへと突っ伏す。
耳まで真っ赤だ。
少し天然らしい。
「ふふっ」
チヒロは小さく笑いを漏らした。
「さて、目的の物はわかったとして……」
ナオヤがトシキに目配せをする。
彼は察したのか、溜め息と共に、
「探しに行きたいんでしょ?」
「あ、わかった?」
「……良いよ。仕入れの方は俺が回るから」
「悪いね! 今度は一緒に行くからさ」
「はいはい」
ナオヤがあっけらかんとした表情で謝罪するのを、慣れた様子でトシキはひらりと手を振った。
「それじゃあ、探しに行こうか!」
張り切った様子でカウンターから出てくると、チヒロに手を差し伸べる。
今から大冒険に出掛けるかのように楽しそうだ。
「ノリ君とコウスケも一緒に来る?」
「あ、私は原稿があるので」
「僕は行く!」
「よし、それじゃあコウスケも行こう!」
「よーし、探そう、探そう!」
ナオヤとコウスケが盛り上がる中、
「あまり遅くならないようにしてくださいね」
ノリヒトは紅茶を飲み干して、カップを片付け始める。
「ここは私が片付けますから、皆さん、行ってください」
「ノリ君、ありがとう!」
チヒロは、ほんわかと微笑むコウスケに、僅かながらもほんわかとした笑みをノリヒトが返したように見えた。
「夕飯までには帰ってくるんだよ!」
トシキの声を背に受けながら、彼女は右手をナオヤに、左手をコウスケに、二人に引かれて店を後にした。
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