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カフェ 卯月(うげつ)堂

第八話

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 人懐こそうな、甘く目尻の垂れた目と合う。

 青年達の中で一番彼の背が高かった。
 色白で、顎がやや尖った整った顔。
 悪戯好きのガキ大将といった面影が残っている。
 青年は照れくさそうに笑い、自分の白いシャツを整えた。

 彼だけ眼鏡を掛けていない。

「ノリ君、俺、そんなこと言ってない、よ?」

「私を叩こうとした、その右手が何よりの証拠ですし、ぎこちなさがわざとらしいんですよ」

 ノリ君と呼ばれた狐顔の青年は淡々と彼に答える。

 そんな彼等を見上げていると、柔和な顔をした青年が彼女に手を差し伸べた。

「ごめんね、うるさくて。それと、今日はもうお店、終わりなんだ。お客さんに出せる材料が全部なくなっちゃって」

 その申し訳なさそうな顔を見ながら少女は、彼の手を取って立ち上がる。

 タイミングを見計らったかのように、彼女の中にある大きな腹の虫が、不満そうに声を上げた。

「え?」

「うぅ」

 どうしてこんなときに?

 恥ずかしさで顔から火が噴きそうだ。
 彼女はもう片方の手で顔を覆った。

「あらら」

 猫っ毛の青年から思わずといった声が漏れ、小さく笑う。

「ねえ、僕達の賄いご飯で良かったら食べる? ナオヤ君、まだアレ、残ってたよね?」

 そう言って、彼は背の高い青年を見上げた。

「うーん、あれは俺の夜食なんだけど……まぁ、良いか。お嬢さん、食べて行きなよ!」

 ナオヤと呼ばれた青年は快諾する。
 人懐こい笑みで、目尻の下がった目を更に緩ませた。

「あ、ありがとう……」

 少女は小さな声で頭を下げる。

 柔和な顔をした青年が彼女の手を取りながら、カウンターの席へと案内した。

「ようこそ、カフェ・卯月堂へ」


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