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第二部

第107話 俺達と宝具の進化

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「よし、あとは宝箱の開封と鑑定だな」
「うんうん」


 熱い気持ちと興奮が冷め止まぬうちに、俺は金、虹、パンドラの三色の宝箱を『シューノ』から取り出した。
 こうして虹色の宝箱と比べると、パンドラの箱の禍々しさがより際立つな。

 ロナが金の宝箱と初めての虹の宝箱を、俺が別室でパンドラの箱を開封し、鑑定する準備は整った。


「良いやつを後に調べるか」
「じゃあ、まずは金の宝箱だねっ」
「そうなるな」


 今回の金の宝箱の中身は三つ。

 そのうち二つは赤い宝石だった。形からして緑宝玉や青宝玉と同じ類のものだろう。売値も近いかもな。

 そしてもう一つは保存玉の中に入っていたため、叩き割って中身を取り出してやると、変わった色をした艶やかな箱が現れた。
 箱の中の玉の中の箱……か。


「ね、これって叔父さんが言ってたアレじゃない?」


 そうロナは言った。
 なるほど、確かにその可能性はある。

 ──── 俺達は何日か前に、叔父からとある箱型の宝具の話を聞いた。別にいつものように宝具の自慢話をされたわけじゃあない。

 その箱型のアイテムは、様々な宝具を一段と上手く扱うために必須なものの一つであり、ザスターはダンジョン攻略家に必要な知識として教えてくれたんだ。

 で、彼女はこの箱がそのアイテムなんじゃないかと思ったようだな。

 とりあえず、鑑定してみればわかる話だが……。


-----
「融合の箱」<宝具>
 
 このアイテムの中には大きさに関係なく二つまで宝具と分類されるアイテムを入れることができる。
 ただし、この箱に【覚醒】【強化】【融合】の印を持つ宝具を入れることはできない。
 
 先に入れた宝具を基準とし、後に入れた宝具の能力を【融合】したとして一部付与することができる。

 その後、このアイテムと後に入れた宝具は消滅し、基準とした【融合】状態の宝具がその場に出現する。

【融合】された宝具は、【強化】と【覚醒】ができない。
-----


 なんと、当たっていた。


「大正解だ。勘が冴えてるじゃないかレディ」
「おー、やった! それにしてもこんな感じなんだねー」
「な。思ったより早く手に入ったぜ」


 これこそが、宝具と宝具を合体させる箱か。
 まさに使い方によっては無限の可能性を秘めていると言っても過言じゃないだろう。

 そう……全ての宝具はただ手に入れただけで終わりじゃない。
 こういった、『進化』と言われる次の段階があるんだ。

 まず、その『進化』という次の段階に至った宝具は普通に鑑定したんじゃ内容をまともに見ることができない。

 つまり、それこそが俺が博物館で見た鑑定できない『四つ身の剣 フォルテット』の正体だ。
 ふふふ、あの時の俺の予想は当たってたってわけだな。

 そんでもって、実は叔父の愛剣である『巨星剣 メデル』も、俺じゃ鑑定できない宝具だった。

 だから俺は、なぜそれが鑑定できないかを所有者であるザスター本人に直接尋ね……その話から繋がって、進化というジャンルの存在とその基本を教えてもらえることになったのさ。

 まず宝具の進化には三つのパターンがあるらしい。
 この箱を使う【融合】と、【強化】、そして【覚醒】だ。

 【融合】は箱の効果説明の通り、宝具同士の効果を掛け合わせる。

 【強化】はこの箱のようにそれ専用のアイテムがあり、それを宝具に使うことで行える。既存の効果が文字通り強化されるようだ。
 例えば『○○属性を特大アップ』と表記されてるものを『極大アップ』に上げたり、な。

 そして【覚醒】。これはちょっと特殊だ。
 特別な道具は不要な代わりに、進化させたい宝具の正式な所有者が、その宝具をめっちゃ使って、めっちゃ大事にすれば成る可能性があるらしい。

 覚醒した宝具は元の効果に関連した新しい効果が追加される。
 追加される効果は宝具や所有者によって多種多様で、具体例を挙げるのが難しいとザスターは言っていた。

 また、この【覚醒】だけは、宝具だけでなく究極魔法・術技や一部の能力も成ることがあるようだ。

 ちなみにザスターの愛剣はこの【覚醒】をしているぜ。

 このように、どれもこれも魅力的ではあるが……しかし。
 この三種類の進化のうち、一つの宝具につきどれか一つしか施すことができないそう。

 【強化】した宝具を【融合】して使う……なーんてことは、させちゃくれない。できたら面白かったんだけどな。

 兎にも角にも、俺たちがこの『融合の箱』を入手した時点で、「どの宝具をベースにどの宝具を合体させるか」や、「その融合は強化や覚醒より優先すべきか」などをよくよく考え、数多の選択肢から最適な答えを導き出す必要ができた。

 最悪、下手に使ってただ単に宝具二つを失う大損となるだろう……が、そういう選択を考えさせられるの、この紳士的にはクレバーで嫌いじゃないぜ。

 なんならもう幾つか良いアイデアが思い浮かんでることだしな。


「それにしても……ど、どう使おうか? ね、これ」
「はは、使ってみるかい? レディ」


 ま、たとえ俺自身が使ってみたくても、紳士としてレディファーストは絶対だ。
 とはいえ思った通り……ああ、いやいや、残念ながら彼女は首を横に振った。


「うーん……こういうのってザンのが上手くできそうだし、私は遠慮しておくね」
「なら、このまま俺がいただいても……?」
「うんうん、もちろん良いよ」
「いやぁ、ありがとうッ! 感謝するぜ」
「でも、どう使うの?」
「はは、それは全部を鑑定し終えてからのお楽しみさ」


 正直、俺が一番試したい融合を実現させれば、俺の弱点のいくつかが解消される。ワクワクして仕方がない。
 ……が、今から新たに融合に有効に使える宝具が出てくるかも知れないからな、後回しにした方が賢いのさ。


「んー、わかった。それじゃ、次はどっちの宝箱を見るの?」
「お姉さんはパンドラの箱にいいものを入れたと言っていたからな……虹色の箱の方が先だな」


 というわけで、俺は続いて虹色の宝箱の中を覗いた。
 
 




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