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第二部
第97話 俺達と宝箱開封 後編
しおりを挟む……で、最後の宝箱だが。
いや、なんというか、これはマジで大当たりだった。
はっきり言って、一つ目や二つ目なんかとは比べ物にならないほどに。
出てきた宝具は以下の通り。
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「迅雷の槍 バリスギア」(宝具)
装備者の雷属性と風属性の攻撃の威力は極大アップする。
この槍を媒体にして雷属性か風属性の術技を発動した場合、その技に存在しない方の属性を付与する。
また、同条件で元から両属性を含む術技を発動した場合、その発動後から消費した魔力に応じた時間だけ、装備者の攻撃と速さの数値を一割増加させる。
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「術技の札 <疾迅雷突>」(宝具)
この札を使用することで術技<疾迅雷突>を習得することができる。
・<疾迅雷突>
魔力を90消費し発動することができる。
刃のある武器を持ち、前方へ刺突する動作をとることで、その先端より近距離に向けて風・雷属性の特殊な衝撃波が放たれる。
衝撃波の威力は使用者の攻撃・魔力強度によって変化し、さらに使用者の速さの数値も影響する。
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「迅雷の脚帯皮 バリバルド」
装備者の雷属性と風属性の攻撃の威力が特大アップし、速さの数値が二割半上昇する。
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やはり、どれも非常に強力だ。
まず槍は俺が『ソーサ』で投げ回すくらいにしか使てないだろうが、効果自体は強いことしか書いていない。
いつか、何か別の宝具と噛み合うかもしれないし、やはり持っておくべきだろう。……まあ、宝の持ち腐れなのは否めないがな。簡単に売るにはかなり惜しい。
次に究極術技。
一見すると突くという動作が必要なため槍専用の技に見えるが別にそんなことはない。
ザスターから講義中に、剣でも普通に突く系の術技は発動できると聞いているしな。なんなら最近、ロナがいくつかその系統の術技を習得したはずだ。
そういや《大物狩り》も、リオの剣で突き技を放とうとしていたような記憶があるな。……ま、俺のせいで不発だったけど。
とにかく、これはロナにとって二つ目の、「剣で使える」「風属性を含んだ」究極術技になるわけだ。
これは今の彼女にとって、非常に都合がいい。
……というのも。
ロナは叔父と話し合って、『夜風の剣 ヒューロ』と<月光風斬>を主軸とした戦闘スタイルの確立を、今後の鍛錬の方針にしたようだ。
その上で彼女は将来的に、胸を張って一番得意だと言えるようになる属性を風属性にしようと決めた。
【究極大器晩成】が悪く働いていた時期に数少ない習得できた技の一つが風属性の術技だったことも踏まえてな。
その直後にこうしてもう一つ風属性の究極術技を得られるというのは好都合以外の何物でもないだろう。
これでよりロナの風属性の扱いに磨きがかかること間違いなしだ。
……とまあ、技もかなりいいんだが。
なによりも一番いいのは、ベルト型のアクセサリーである『迅雷の脚帯皮 バリバルド』だ。
風属性含む二種類の属性強化に加え、速さのステータスが二割五分あがる。
たしかロナの今の速さが「121」だったはずだから、彼女がこれを装備すればおよそ30は上がることになるか。
上昇する値は流石にあの『リキオウ』ほどじゃないが、属性の強化があることも考えたら十分すぎる性能だと言っていい。
こうして改めて見ると、同じパンドラの箱でもやっぱピンからキリまであるよな。ほんと。
むしろ呪いを解除しないと中身を開けられないんだから、全て今回のこの雷属性の宝箱みたいな強力なものでいい気がするが。
「──── というわけで、今回、この六つがロナにもらってほしいアイテムだな。ダンジョン行く前に開けて正解だった。その雷属性のやつらだけで、一味……いや、二味や三味も違うだろうぜ!」
「あ、ありがと!」
俺は『スピルウル』の札と『魔法上昇の札』を三枚、『<疾迅雷突>』の札、『迅雷の脚帯皮 バリバルド』をロナに渡した。
約束通り彼女はきちんと受け取ってくれたが、実に申し訳なさそうな表情を浮かべている。
実際、彼女はオドオドしながら意見を述べ始めた。
「でも……その。決めたことだし、有り難く使わせて貰うけど、ね? 半分以上が私の取り分っていうのは流石にどうなのかな。せめて何かお礼をさせて欲しいな」
「……まあ、たしかにそうかもな」
「う、うんうん!」
俺が同じ状況だったら、彼女と同じことを言うはずだ。
さて、どうするか。
「……なんでもするよ?」
ロナはそうは言うが、笑顔を見せてくれればそれだけでいい……つっても納得しないよな絶対。
なら頬にキスをしてもらうとか、ハグしてもらうとか……?
いやいや、セクハラに片足を突っ込んでるのは紳士的にアウトだ。そういうのは正式に付き合ってからだぜ。
となると、一度やってもらったことのある膝枕か。
いや、あれもやってもらったから抵抗が薄れてるけど、自分で頼むのは十分に、セクハラという沼を爪先で突っついてるだろうと俺は考える。
あとはそうだな。家を折角建てたんだし、もっと家庭的なものを提示してみるか?
交代制にした風呂場や手洗いの掃除を丸一週間分代わってもらうとか。うん、それはかなり良いかもしれないな。
あー、でもな、残念ながら今の俺の気分じゃない。
セクハラは絶対ダメだけど、でも何か、こう……ロナの可愛さを活かしたことをして欲しいんだよな。
あー……あ、そうだ。
「肩たたき」
「かたたたき……?」
「いや、叩くってより揉む。マッサージだな。肩のマッサージをしてほしい」
「そ、そんなので良いの?」
「良いんだ。ロナのような麗しいレディからのマッサージってのは、男としちゃあ中々に夢のあることなんだぜ?」
これはかなりいいアイデアだろう。
疲れが取れるというより、俺を癒そうとしているロナを見ることで癒されるって寸法だ。
……ロナは器用な方じゃないから、失礼ながらマッサージとしては期待してないが、そんなことは関係ない。
「あぅ……そうなんだ? わかった、じゃあやろっか? その、あんまり慣れてないけど……」
「ふっ……頼んだぜ。優しくな」
俺はソファに座り、ロナはその後ろに立つ。
そして、彼女は四苦八苦しながら俺の肩を癒そうとし始めた。ちょっと痛い。
とはいえ、コロコロと表情を変えながら、ああでもない、こうでもないと試行錯誤する窓に映ったロナの姿は、それはもう大変癒され──── 。
「あ! こうがいいかな?」
「……」
後頭部や首筋にポヨンとしたものがたびたび当たるようになった。
なるほど、なるほど。これは想定外だったぜ……。
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