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第二部
第83話 俺と挑戦 後編
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ああ……やっぱりこうなったか。
話してみたら良い人そうなのに。自分の趣味に興味を向けた途端、周りが見えなくなるタイプってのも考えものだな。
とはいえ……だ。
素直に挑戦を受けてみるってのもアリなんじゃないかと、正直、俺は思ってしまっている。
少しクールになれば物の見方ってのは違ってくるものだ。
本来は格上からケンカしろと迫られている恐怖的なこの状況。
しかし、世界トップクラスの冒険者が己の胸を借りていいと言ってくれている……そんな特別なチャンスなんだ考えたら、めちゃくちゃ良い気がしてこないか?
ステータスが育たないんだ、こういう経験こそ大事にすべきだろう。
ははは、威圧感も恐怖もちゃんと感じているのに、こんな答えを出しちまうなんて俺も大概だな。
しかし悪くない。そうしよう。
「その話 ──── 」
「ま、まって!」
愛帽を抑えながらダンディに立ちあがろうとしたその瞬間、ロナが俺とザスターの前に両手を広げながら割り込んだ。
「おっと」
「あ? なんだロナ、邪魔をする気か?」
「あっ……! いやその……えっと、あ、あのね? 私、ザンを守るって決めてるから……叔父さん。その、あの……ザンを傷つけるのは……その……」
そうか、俺が叔父にまるで襲われてるようなこの状況に反応して、不意に飛び込んでしまったみたいだな。
だが、そのまま俺たちの前から退こうともしない。震えながら俺を庇い続けようとしている。
自分の役割を全うするロナを称賛すべきか、それとも、ここまで大事に思われてる事実を喜ぶべきか……。
いや、どちらにせよ俺は男だ。
女の子に庇われながら、自分で今決めたことも曲げるってのは、まあまあジェントルじゃない。
というわけで俺は彼女の肩に触れ、こちらを振り向かせた。
「ザン?」
「……ありがとうロナ。だが、悪いな。俺もやる気になっちまったみたいだ」
「ええっ⁉︎」
「ほうッ……! それは嬉しいものだな!」
「で、でもザン……あ、相手は……あの……!」
ロナの顔はひどく青ざめている。
《竜星》ことザスターがどれほどのものか、よーく知っているからこそだろう。
ただ、今ソレに立ち塞がっているのは彼女自身だ。
こんな相棒の勇敢な姿を見せられたら、尚更、引き下がれないよな。
まあ、レディを心配をさせ続けるのも良くはないし、ちゃんと俺の意思と挑む理由を伝えて説得はすべきだろう。
「わかってる。だが、ロナは俺の力も把握しているはずだ」
「そ、それは……うん」
「ところで、ロナにとって叔父さんは最強なんだろう? 正直なところどうなんだ?」
「う、うんっ! それはそうだよ、叔父さんは間違いなく世界最強で……」
「なら、その最強にどれほど俺の力が通用するか知れるチャンスだ。逃す手はないのさ」
「な……なるほど!」
お? ロナの顔色が少し明るくなった。
どうやら今の説明で割とすんなり納得してくれたようだな?
戦い専門の民族だからか、ちゃんと戦う理由があるなら止めはしないって感じなのかもしれない。
「てなわけだ、ロナの叔父さん。よろしく頼むぜ」
「ハハハハハ! なんか新鮮な呼び方だな、それで構わん。そしてかなり良き闘志があって何よりだッ! さすが、我が姪が見込んだだけのことはある。だが……」
含みのある言い方をした彼はまず俺へ、続けてロナへ視線を流した。
「貴様らの戦い方が二人であることが前提なら、二対一でもいいぞ? 俺はSランク四人同時相手だってしたことがある故、問題はない。貴様の実力を存分に出せるのならその方がいいッ」
Sランク四人相手……!
俺や《大物狩り》のような力で楽をしてるわけでもなさそうだが……最強ってそんなに凄まじいもんなのか。
ますます、俺の『強制互角』をどう突破するのか気になってくる。
だからこそ、今回は一対一の方がいいよな。
その方がより濃い経験ができそうだ。
「あー、それもいいが俺とロナの二人がかりだと戦いってより、また別の何かになっちまうからな。今回は俺個人でお願いしたい」
「それはどう言う意味だ?」
「……それを知るには俺の力を全部バラす必要がある。俺もアンタの力を詳しくは知らない。仕合をする前なんだ、フェアじゃないよな?」
理由を説明すれば、ロナは納得してくれたんだ。つまり、戦うことに関してはそれっぽい理由があればある程度の融通が聞く。
それが竜族、あるいは、この家族の特徴の一つだとしたら、こう言っておけば彼も……。
「ハハハハハ! 言いおる。そう言われては仕方あるまい。まあ俺様とて、こーんな小ちゃい頃から知ってる姪を痛めつけるのは気が引けたからな、それならそれで構わん」
やっぱりな。なんとなくこの種族のことがわかってきたぜ。
「ロナもそれでいいか?」
「ん。挑まれたザン自身がそう言うなら、私もそれでいいよ」
「サンキュ」
よし! これで俺 対《竜星》の戦いが決まったか!
うん。決まったんだな……ああ、自分から説得や了承しといてなんだが、今更ちょっと怖くなってきた。
人って、決まりきってからちょっと後悔することあるけど、これかなり不合理だよな。
それともこれがノーマル族の特性だったりするのか?
ま、なんて思おうがこのままやり合うことには変わりないさ。
「さて、場所はどこにするか……」
「普通にギルドの地下でいいんと思いやすが?」
「それもいいが ──── 」
「お待ち!」
叔父達が戦う会場の相談を始めたその時、いきなりこの部屋の扉が開いて老婦人が現れた。
なんで彼女が……?
あ、いや、なんでじゃないぞ⁉︎ ロナの叔父のインパクトが強すぎてすっぽ抜けていたが、俺達って本当は……。
「なんだ婆さん。何か用か?」
「……やれやれ。アンタ達ね、本来の目的を忘れちゃいないだろうね」
「それはあれだろ、俺様が隠れた兵に……いや違う。それはついでで、姪であるロナの様子を見にきたんだったなッ」
「《竜星》ってのは脳みそも筋肉でできてるんじゃないだろうね? 違うだろ、アンタがここに来たのは『解呪の黒鍵』の取引をしにでしょうに」
「……あっ」
まあ、俺も忘れてたんだ。何も言うまい。
=====
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話してみたら良い人そうなのに。自分の趣味に興味を向けた途端、周りが見えなくなるタイプってのも考えものだな。
とはいえ……だ。
素直に挑戦を受けてみるってのもアリなんじゃないかと、正直、俺は思ってしまっている。
少しクールになれば物の見方ってのは違ってくるものだ。
本来は格上からケンカしろと迫られている恐怖的なこの状況。
しかし、世界トップクラスの冒険者が己の胸を借りていいと言ってくれている……そんな特別なチャンスなんだ考えたら、めちゃくちゃ良い気がしてこないか?
ステータスが育たないんだ、こういう経験こそ大事にすべきだろう。
ははは、威圧感も恐怖もちゃんと感じているのに、こんな答えを出しちまうなんて俺も大概だな。
しかし悪くない。そうしよう。
「その話 ──── 」
「ま、まって!」
愛帽を抑えながらダンディに立ちあがろうとしたその瞬間、ロナが俺とザスターの前に両手を広げながら割り込んだ。
「おっと」
「あ? なんだロナ、邪魔をする気か?」
「あっ……! いやその……えっと、あ、あのね? 私、ザンを守るって決めてるから……叔父さん。その、あの……ザンを傷つけるのは……その……」
そうか、俺が叔父にまるで襲われてるようなこの状況に反応して、不意に飛び込んでしまったみたいだな。
だが、そのまま俺たちの前から退こうともしない。震えながら俺を庇い続けようとしている。
自分の役割を全うするロナを称賛すべきか、それとも、ここまで大事に思われてる事実を喜ぶべきか……。
いや、どちらにせよ俺は男だ。
女の子に庇われながら、自分で今決めたことも曲げるってのは、まあまあジェントルじゃない。
というわけで俺は彼女の肩に触れ、こちらを振り向かせた。
「ザン?」
「……ありがとうロナ。だが、悪いな。俺もやる気になっちまったみたいだ」
「ええっ⁉︎」
「ほうッ……! それは嬉しいものだな!」
「で、でもザン……あ、相手は……あの……!」
ロナの顔はひどく青ざめている。
《竜星》ことザスターがどれほどのものか、よーく知っているからこそだろう。
ただ、今ソレに立ち塞がっているのは彼女自身だ。
こんな相棒の勇敢な姿を見せられたら、尚更、引き下がれないよな。
まあ、レディを心配をさせ続けるのも良くはないし、ちゃんと俺の意思と挑む理由を伝えて説得はすべきだろう。
「わかってる。だが、ロナは俺の力も把握しているはずだ」
「そ、それは……うん」
「ところで、ロナにとって叔父さんは最強なんだろう? 正直なところどうなんだ?」
「う、うんっ! それはそうだよ、叔父さんは間違いなく世界最強で……」
「なら、その最強にどれほど俺の力が通用するか知れるチャンスだ。逃す手はないのさ」
「な……なるほど!」
お? ロナの顔色が少し明るくなった。
どうやら今の説明で割とすんなり納得してくれたようだな?
戦い専門の民族だからか、ちゃんと戦う理由があるなら止めはしないって感じなのかもしれない。
「てなわけだ、ロナの叔父さん。よろしく頼むぜ」
「ハハハハハ! なんか新鮮な呼び方だな、それで構わん。そしてかなり良き闘志があって何よりだッ! さすが、我が姪が見込んだだけのことはある。だが……」
含みのある言い方をした彼はまず俺へ、続けてロナへ視線を流した。
「貴様らの戦い方が二人であることが前提なら、二対一でもいいぞ? 俺はSランク四人同時相手だってしたことがある故、問題はない。貴様の実力を存分に出せるのならその方がいいッ」
Sランク四人相手……!
俺や《大物狩り》のような力で楽をしてるわけでもなさそうだが……最強ってそんなに凄まじいもんなのか。
ますます、俺の『強制互角』をどう突破するのか気になってくる。
だからこそ、今回は一対一の方がいいよな。
その方がより濃い経験ができそうだ。
「あー、それもいいが俺とロナの二人がかりだと戦いってより、また別の何かになっちまうからな。今回は俺個人でお願いしたい」
「それはどう言う意味だ?」
「……それを知るには俺の力を全部バラす必要がある。俺もアンタの力を詳しくは知らない。仕合をする前なんだ、フェアじゃないよな?」
理由を説明すれば、ロナは納得してくれたんだ。つまり、戦うことに関してはそれっぽい理由があればある程度の融通が聞く。
それが竜族、あるいは、この家族の特徴の一つだとしたら、こう言っておけば彼も……。
「ハハハハハ! 言いおる。そう言われては仕方あるまい。まあ俺様とて、こーんな小ちゃい頃から知ってる姪を痛めつけるのは気が引けたからな、それならそれで構わん」
やっぱりな。なんとなくこの種族のことがわかってきたぜ。
「ロナもそれでいいか?」
「ん。挑まれたザン自身がそう言うなら、私もそれでいいよ」
「サンキュ」
よし! これで俺 対《竜星》の戦いが決まったか!
うん。決まったんだな……ああ、自分から説得や了承しといてなんだが、今更ちょっと怖くなってきた。
人って、決まりきってからちょっと後悔することあるけど、これかなり不合理だよな。
それともこれがノーマル族の特性だったりするのか?
ま、なんて思おうがこのままやり合うことには変わりないさ。
「さて、場所はどこにするか……」
「普通にギルドの地下でいいんと思いやすが?」
「それもいいが ──── 」
「お待ち!」
叔父達が戦う会場の相談を始めたその時、いきなりこの部屋の扉が開いて老婦人が現れた。
なんで彼女が……?
あ、いや、なんでじゃないぞ⁉︎ ロナの叔父のインパクトが強すぎてすっぽ抜けていたが、俺達って本当は……。
「なんだ婆さん。何か用か?」
「……やれやれ。アンタ達ね、本来の目的を忘れちゃいないだろうね」
「それはあれだろ、俺様が隠れた兵に……いや違う。それはついでで、姪であるロナの様子を見にきたんだったなッ」
「《竜星》ってのは脳みそも筋肉でできてるんじゃないだろうね? 違うだろ、アンタがここに来たのは『解呪の黒鍵』の取引をしにでしょうに」
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