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第一部
第15話 俺達とダンジョンの戦利品 後編
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ひとまずこれで行き先が決まってない宝具は残り四つとなっただろうか。あとは全部モノとして残るアイテムばかりだ。
「それじゃあ、それぞれどちらが所有するかをひとつずつ決めるか。剣は間違いなくロナが持つべきだろ? 宝具の剣なんだ、少なくとも、もう新しく剣を買い換える必要はないな」
「そだね! 剣士として心が躍るようだよ!」
あの骸骨はこの剣を使って俺たちを苦しめたからな、強さを目の当たりにしている分、ロナの喜びも大きいだろう。先ほど手に入れた術技と掛け合わせたら凄いことになりそうだ。
次に帽子をどうするか。それを考えようとしたところで、ロナはそれを手に取り、俺にかぶせてきた。なんだこれ、胸がキュンとしちゃう。
「うん、いいね! 帽子はザンが持っててよ!」
「たしかにあの骸骨は俺に授けたが、効果的にロナの方が良くないか?」
「効果じゃなくて見た目で! ほら、やっぱり似合ってるもん!」
「ふっ……。まあ、俺はなんでも着こなせるからな」
たしかに効果はさておき、この帽子のデザインは最高にいい。被り心地も、俺の趣味とのフィット感も、まさに宝具級。俺の持ってる服ともかなりフィーリングするだろう。本当にこのまま俺のものにしていいのなら、めちゃくちゃお気に入りの一品となりそうだが……。
「それと私、そういうタイプの帽子被れないの。やっぱりザンが持ってた方がいいよ」
ロナはそう言いながら自分の頭についてるものを軽く触った。なるほど、たしかに言う通りかもしれない。
「ああ、竜族だもんな。わかったこれは俺が普段使いしよう」
「それでいいと思うよ!」
やった。正直嬉しい。ふふふ、この黒い中折れ帽をかぶることで、この俺がよりクールで、より紳士的に見えるだろうか。なんにせよカッコよさに磨きがかかったことは間違いない。
「そうだ! あのクロスボウもザンが持っておいたらどうかな?」
そう言いながら、ロナが例のクロスボウも俺に差し出してきた。
「呪われてても魔力は『2』あるんだし、その帽子の効果と合わせて二発だけだけど光の矢を射てるよね」
「ああ。たしかにただ撃つだけなら能力も要らない……か」
そうだ、その通りだ。俺はあの骸骨と戦って、ステータスが互角になっても装備の質の差はそのままであるということを学んだ。さらにその装備の使い手自身の才能や経験も重要であることも知れた。
つまり、これから俺がこのクロスボウとやらを能力による補正無しでも使いこなせるよう努力すれば、二発分ではあるが、こんなステータスでも一時的に戦闘に参加できるわけだ。悪くない。
「うん、うん! ロナ、めちゃくちゃ良い提案だぜ、それ!」
「ほんと? えへへ」
役に立たない宝具だと思ってしまったが、使い方が大事だったってことだな。ナイスすぎるぜロナ。ってわけでこのクロスボウは俺の取り分となった。これで行き場が決まってないのは指輪だけか。
「その指輪どうしよっか? 物をあやつる……私にもザンにも合わないよね」
「でも中々面白そうだから取ってはおきたいよな」
「だよね。私、一回使ってみていい?」
「ああ」
ロナは指輪をその細くて綺麗な指にはめ、ベッドの上にある枕に視線を送った。その途端、枕の輪郭が緑色を帯びてふわふわと宙に浮き出した。
「おお、面白い!」
「いいな、次、俺もやってみたい」
「はい、どうぞ」
ロナがしていた指輪を今度は俺がはめた。あれ、指輪のやり取りってよく考えたらドキドキするな……ロナが意識していなさそうなのも相まって尚更。なんで俺、こんな気軽に指輪を貸してだなんて言ってしまったんだ。
……それはそうと、俺が指輪に触れた瞬間にこのゴツゴツした手に合うようちょっとだけ指輪が大きくなった気がした。
そういえば装備するタイプの宝具全般にサイズを自動調整する機能があるとは聞いたことがある。たぶんそれだろう。
となると帽子もできるかもしれないが、これに関してはサイズを調整したところでロナがかぶるのはやはり難しいんじゃないだろうか。
「その帽子があるとはいえ、使いすぎて魔力切れにならないようにね」
「ああ、気をつけるさ」
さっそく俺も枕を宙に浮かせてみた。まるで手で持ち上げような感覚があり、ロナが操作したのと同様に枕がフワフワ飛んでいる。さらに前後左右上下に動かしてみたり、俺の頭の上で旋回させたりもしてみる。たしかにこれは面白い。
「ね、ねぇ、もう止めなよ!」
「へ?」
急に、ロナが慌てた様子で俺の手首を掴んできた。いきなりそんなことされたらドキドキしちゃうじゃないか。
「ど、どど、どうした?」
「この宝具、使っている時間の長さでも魔力が取られるみたいなの。私はさっき十秒ごとに3だけ消費したもん。でもザンはもう三十秒も経ってるよ? たとえ帽子の効果があったとしても、もう魔力が……」
「いや、なんともないが……?」
「え、なんで?」
ロナの言う通りならおかしいのは確実。俺はステータスカードを取り出して自分の残りの魔力を見てみた。そして……驚きのあまり口が開いてしまった。
「な、なんだこれは……! 魔力が減ってない……⁉︎」
そう、魔力の残量の欄の表示が2/2から一切変わっていないのだ。魔力を消費したなら普通は1/2だとか0/2といったようになるはずなのに。
「どうゆこと……?」
「俺にもさっぱり……。いや、まてよ」
自分の呪いをもう一度確認してみる。なぜか頭にそいつらがふと浮かんできたからだ。そのうち特に【最弱の呪い】の効果がひっかかった。
この呪いはステータスが全て初期値で完全に固定される。魔力残量の初期値は2/2。これより変わることはないらしい。
数値の……完全な固定? まて、要するにだ。もしかしたら俺の魔力はこの『2/2』という数値が増えもしないが、逆に、減りもしないのか? 魔力の消費が『2』以内なら使い放題の体になっているってことなのか?
そしてこのお気に入りとなった帽子を被っている限り、アイテムの効果による魔力の消費は必ず『1』になるから………!
ちょっと信じられない、が、正直この仮説以外で俺の魔力が減っていないことに対する説明が思いつかない。そして本当にそうだとしたらかなり面白いことになる。
それに思い返してみれば、あの骸骨はわざわざ俺にこの帽子を被せてきたんだ。アイツは戦闘中に弱体化したのを俺が原因だと見抜き、執拗に攻撃してきた。つまり俺と互角になった後のステータスも把握していたわけだ。
まさかあの骸骨、こうなることが分かっててわざわざ俺に帽子を授けてくれたのか? なんかどうにもそんな気がしてきたぜ……。
=====
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あの骸骨はこの剣を使って俺たちを苦しめたからな、強さを目の当たりにしている分、ロナの喜びも大きいだろう。先ほど手に入れた術技と掛け合わせたら凄いことになりそうだ。
次に帽子をどうするか。それを考えようとしたところで、ロナはそれを手に取り、俺にかぶせてきた。なんだこれ、胸がキュンとしちゃう。
「うん、いいね! 帽子はザンが持っててよ!」
「たしかにあの骸骨は俺に授けたが、効果的にロナの方が良くないか?」
「効果じゃなくて見た目で! ほら、やっぱり似合ってるもん!」
「ふっ……。まあ、俺はなんでも着こなせるからな」
たしかに効果はさておき、この帽子のデザインは最高にいい。被り心地も、俺の趣味とのフィット感も、まさに宝具級。俺の持ってる服ともかなりフィーリングするだろう。本当にこのまま俺のものにしていいのなら、めちゃくちゃお気に入りの一品となりそうだが……。
「それと私、そういうタイプの帽子被れないの。やっぱりザンが持ってた方がいいよ」
ロナはそう言いながら自分の頭についてるものを軽く触った。なるほど、たしかに言う通りかもしれない。
「ああ、竜族だもんな。わかったこれは俺が普段使いしよう」
「それでいいと思うよ!」
やった。正直嬉しい。ふふふ、この黒い中折れ帽をかぶることで、この俺がよりクールで、より紳士的に見えるだろうか。なんにせよカッコよさに磨きがかかったことは間違いない。
「そうだ! あのクロスボウもザンが持っておいたらどうかな?」
そう言いながら、ロナが例のクロスボウも俺に差し出してきた。
「呪われてても魔力は『2』あるんだし、その帽子の効果と合わせて二発だけだけど光の矢を射てるよね」
「ああ。たしかにただ撃つだけなら能力も要らない……か」
そうだ、その通りだ。俺はあの骸骨と戦って、ステータスが互角になっても装備の質の差はそのままであるということを学んだ。さらにその装備の使い手自身の才能や経験も重要であることも知れた。
つまり、これから俺がこのクロスボウとやらを能力による補正無しでも使いこなせるよう努力すれば、二発分ではあるが、こんなステータスでも一時的に戦闘に参加できるわけだ。悪くない。
「うん、うん! ロナ、めちゃくちゃ良い提案だぜ、それ!」
「ほんと? えへへ」
役に立たない宝具だと思ってしまったが、使い方が大事だったってことだな。ナイスすぎるぜロナ。ってわけでこのクロスボウは俺の取り分となった。これで行き場が決まってないのは指輪だけか。
「その指輪どうしよっか? 物をあやつる……私にもザンにも合わないよね」
「でも中々面白そうだから取ってはおきたいよな」
「だよね。私、一回使ってみていい?」
「ああ」
ロナは指輪をその細くて綺麗な指にはめ、ベッドの上にある枕に視線を送った。その途端、枕の輪郭が緑色を帯びてふわふわと宙に浮き出した。
「おお、面白い!」
「いいな、次、俺もやってみたい」
「はい、どうぞ」
ロナがしていた指輪を今度は俺がはめた。あれ、指輪のやり取りってよく考えたらドキドキするな……ロナが意識していなさそうなのも相まって尚更。なんで俺、こんな気軽に指輪を貸してだなんて言ってしまったんだ。
……それはそうと、俺が指輪に触れた瞬間にこのゴツゴツした手に合うようちょっとだけ指輪が大きくなった気がした。
そういえば装備するタイプの宝具全般にサイズを自動調整する機能があるとは聞いたことがある。たぶんそれだろう。
となると帽子もできるかもしれないが、これに関してはサイズを調整したところでロナがかぶるのはやはり難しいんじゃないだろうか。
「その帽子があるとはいえ、使いすぎて魔力切れにならないようにね」
「ああ、気をつけるさ」
さっそく俺も枕を宙に浮かせてみた。まるで手で持ち上げような感覚があり、ロナが操作したのと同様に枕がフワフワ飛んでいる。さらに前後左右上下に動かしてみたり、俺の頭の上で旋回させたりもしてみる。たしかにこれは面白い。
「ね、ねぇ、もう止めなよ!」
「へ?」
急に、ロナが慌てた様子で俺の手首を掴んできた。いきなりそんなことされたらドキドキしちゃうじゃないか。
「ど、どど、どうした?」
「この宝具、使っている時間の長さでも魔力が取られるみたいなの。私はさっき十秒ごとに3だけ消費したもん。でもザンはもう三十秒も経ってるよ? たとえ帽子の効果があったとしても、もう魔力が……」
「いや、なんともないが……?」
「え、なんで?」
ロナの言う通りならおかしいのは確実。俺はステータスカードを取り出して自分の残りの魔力を見てみた。そして……驚きのあまり口が開いてしまった。
「な、なんだこれは……! 魔力が減ってない……⁉︎」
そう、魔力の残量の欄の表示が2/2から一切変わっていないのだ。魔力を消費したなら普通は1/2だとか0/2といったようになるはずなのに。
「どうゆこと……?」
「俺にもさっぱり……。いや、まてよ」
自分の呪いをもう一度確認してみる。なぜか頭にそいつらがふと浮かんできたからだ。そのうち特に【最弱の呪い】の効果がひっかかった。
この呪いはステータスが全て初期値で完全に固定される。魔力残量の初期値は2/2。これより変わることはないらしい。
数値の……完全な固定? まて、要するにだ。もしかしたら俺の魔力はこの『2/2』という数値が増えもしないが、逆に、減りもしないのか? 魔力の消費が『2』以内なら使い放題の体になっているってことなのか?
そしてこのお気に入りとなった帽子を被っている限り、アイテムの効果による魔力の消費は必ず『1』になるから………!
ちょっと信じられない、が、正直この仮説以外で俺の魔力が減っていないことに対する説明が思いつかない。そして本当にそうだとしたらかなり面白いことになる。
それに思い返してみれば、あの骸骨はわざわざ俺にこの帽子を被せてきたんだ。アイツは戦闘中に弱体化したのを俺が原因だと見抜き、執拗に攻撃してきた。つまり俺と互角になった後のステータスも把握していたわけだ。
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