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212話 ドキドキする報告なのでございます……!

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 眠れなかった。
 宴会が終わったあと、実際にギルドの隅っこの方で私と彼は話し合いをした。
 ガーベラさんはもう一度私に、本当に好きだということと、これからよろしくお願いします、と言ってくれ、その後に今後の付き合い方について決めていくことにしたの。

 まず、私はロモンちゃんとリンネちゃんのパーティから出るつもりはないことを伝えた。
 ガーベラさんもそのつもりだったみたいで、冒険者同士としての関係は、付き合ってる段階では今のままってことに。共同で行う仕事を増やすって話もでたけどね。

 ……付き合ってる段階ではって、たしかに彼は言ったのよ? 間違いなくガーベラさんはそう言ったの。
 裏を返せば私とずっと一緒にいるつもりがあるということでもあるってことよね? 結婚とか。
 宿に帰ってきて……寝る支度をして、寝れずにいて、1時間経ったぐらいからそれに気がついて、さらに眠れなくなった。
 
 次に会う日も決めた。
 とりあえず、明日の同じ時間にギルドで会うことに。そこからお互いの予定を合わせて初デートをする。
  
 うん、話したことはそのくらいかしら。
 でも、でも……なんだかとっても緊張して、まともに彼の顔を見ることもできなかった。やっぱり私の方も彼のことが好き……なのよね、うん。そうよね、うん。
 
 初デート、あの人の私(人間態)と比べて大きくて男の人らしい手を握ったり……寄り添って歩いたり、下手したらキスなんかもしてしまうのかしら。
 ガーベラさんは私に異性としての魅力を感じて、気になってくれて、告白してくれた。その私の魅力とかも詳しく聞けたりするかな? 
 ますます眠れない。

 そんなわけだから、眠らなくても何とかなるゴーレムの姿になって一夜を明かすことにしたの。
 ガーベラさんのことを考えて数時間。
 狙い通り、寝不足だなんてことは起こらずに夜を越えられた。


「ん…んん……あれ!? アイリスちゃんがいな……あ、そこにいた」
「アイリスちゃん…むにゃ…おはよう! なんでゴーレムの姿なの? ふぁ…そういう気分だったの?」
【当たらずとも遠からずと言ったところでしょうか】


 ついに、この二人にガーベラさんとお付き合いを始めたという報告をしなければならない。まだ寝ぼけてるし、朝ごはん中の方がいいかもしれないけど。
 

【とりあえず、朝ごはん作っちゃいますね】
「……人に戻らないの?」
「……昨日、夜にギルドに遊びに行ったでしょ、また。そこで何かあった?」


 あ、相変わらずロモンちゃんが鋭い。
 

【実はそうなんです。人のままだと動揺して上手く手が動かせない可能性があるのでゴーレムでいるんです。この身体だと、精神の不安定さが身体に反映しませんから】
「まあ、アイリスちゃんって見た目とは違って感情豊かだからねぇ」
「照れてる顔とか喜んでる顔とかがすごーく可愛いよね」
【そ、そんなことありませんよっ……!】
「様子を見る限り、悪いことじゃなさそうなのは良かったよ」


 あー、もう照れる。
 人間態のままなら、今頃、このオムレツのタネに卵の殻が入ってしまっていたはず。
 二人の冷やかしに耐えながら、私は朝ごはんを作り上げ、テーブルの上に並べた。ここまでくれば手が滑って大変なことになるなんて無いだろうし、私は人間の姿に戻った。


「あー、本当に何かあったんだねぇ」
「ほんのり赤いね、顔」
「嘘、まだ赤いですか!?」


 まさかそんなことって。いくらなんでも照れすぎじゃないかしら私。
 ロモンちゃんとリンネちゃんは席に着き、私も椅子に座ったところでじーっとこちらを見てきた。
 二人の方が絶対可愛いんですよね。
 

「さて! 何があったか白状してもらおう!」
「ぼくからは逃げられないから、諦めて言っちゃいなよ!」
「じ、実はですね……」
「「うんうん!」」
「わ、私……」
「「うんうん!!」」
「こ、告白されてしまいまして……それで、オーケーして……お付き合いすることになりました」


 報告するだけでかなり勇気がいる。
 ノリノリで聞いていてくれた二人は、なんとも言えない表情で、私に向かって同じ格好で身を乗り出して固まっている。


「告白……されたんだ」
「アイリスちゃん狙ってる人多いのは知ってたけど」
「で、誰なの?」
「あの蟹の人みたいなのじゃないよね? アイリスちゃん、そういうところ怖いから」
「うんうん、変な人だったらぼく達がアイリスちゃん守らないと」
「あの森で出会った怪しいけどかっこいい人とか?」


 詰め寄ってくるの、怖い。というか、二人にとって私のあの出来事はそこまで大きいことだったのね。いや、私にとっても(見ず知らずの)男性嫌いを加速させるきっかけになったけど。
 ロモンちゃんとリンネちゃんは食事中なのに席から立ち上がり、私の周りを囲むように側に立った。


「「それで、誰?」」


 に、逃げられない!
 逃げようともしてないし、普通に答えちゃうけれども。なんか怖いよ。


「お、お二人もよく知っている方です。が、ガーベラさんですよ……」


 そう告げると、二人は真顔に戻り、互いに互いを見つめ、さらにまた私のことを見た。
 そして、ものすごい笑顔になる。


「「ガーベラさんかぁ!」」
「ガーベラさんなら良いよね!」
「うんうん!」


 予想通り、この二人はあの人なら大手を振って賛成してくれた。でもなんでだろ。


「な、なぜお二人はそんなにもガーベラさんと私が付き合うのは良いと……?」
「えっ? ガーベラさんは良い人だよ、一目見たらわかるよ!」
「男の人に苦言を普段は言ってたアイリスちゃんが、ガーベラさんと初仕事した時にあの人には心許してた感じしたし」
「ガーベラさんはガーベラさんで、アイリスちゃん気にしてるのわかってたんだからね!」
「といっても……」
「「ほとんど、なんとなくお似合いだなぁとは思ってたんなんだけどね!」」
「勘みたいなものだよ!」
「直感みたいなものだよ!」

 
 周りのみんなも言ってたし、ナイトさんが言ってたのもちらっと聞こえたけど、周りすら私とガーベラさんがお付き合いすることに運命を感じるだなんて。
 これは一体どういうことだろう。
 ……前世でやっていた武術の流派も同じみたいで、だとしたらおそらく同じ地域に住む人間だったはずだし、なにか関連性があったのかしらね。


「ああー、ついにアイリスちゃんとガーベラさんが付き合ったねぇ!」
「そうだね、ロモン! なんかこっちも嬉しいね!」
「あ、あの、もう少し昨日なにがあったか、あの人とどんなお話があったかをしてよろしいですか?」
「「話して話して!」


 私は二人に昨日、ガーベラさんと会う約束をして別れるまでにあったことを全て話した。
 

「あの人、ナイトって名乗ったんだ。ていうか、本当にアイリスちゃんにデート誘いに来るなんてね」
「アイリスちゃん、モテモテだね!」
「なんででしょうかね……本当にわかりません」
「そういうところもまた可愛いんだよきっと」
「うんうん」
「それより、戦って付き合うかどうか決めたって、すごく独特だね」
「ぼくもそうしようかなぁ」


 それは同格くらいの冒険者同士だからできたことで、ロモンちゃんとアイリスちゃんに告白してきたのは今の所、村の幼馴染二人なわけだけど……あの二人じゃまず、ロモンちゃんとリンネちゃんに触れることすらできないだろうから、流石にそれは可愛そうなんじゃないかしら。


「で、付き合うの決めたんだ」
「はい。でも、ガーベラさん以外に告白されても、戦う以前に断ってる気がするんですよね」
「やっぱりアイリスちゃん、あの人のことが好きなんだよー」
「ひゅー! ひゅー!」
「やっぱり……そうなんでしょうね」



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