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166話 魔物嫌いさんとその理由でございます!
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「たっだいまー! ……んお?」
ギルドマスターが帰ってきた。
やっぱりおつまみとお酒がたくさん入ってる紙袋を抱えている。
集まっている私達に気がついたみたいで、買ってきたものをこのギルドのカウンター裏においてくるとすぐに駆けつけてきてくれた。
「どうしたんだ、アイリスと嬢ちゃんたちにヘリオトロープの4人。あとそいつは……?」
「ギルドマスター、貴方が居ない間にちょっとイザコザがありまして。私も途中から来たので詳しいことはわかりませんが……この4人の話をお聞きください」
「わかった。で、なにがあったんだ?」
「ギルマス、さっき__________」
アパタさんはしっかりと事の顛末まで覚えて居たようで全てを伝えてくれた。
また野次馬で何人か聞き耳立ててるわね…ま、もうでもいいけれど。
「んだ、そんなことが……兵に突き出すか?」
「シェリー、どうする?」
「いや……その、お酒に酔ってたみたいだし、幸いゴブザレスの傷はそこまで深くないし別にいいわ。それよりどうやらこの人、魔物にすごい恨みを持ってたみたいなの、ギルマス」
「まあ飼い主がそう言うならええんだ。……顔を突っ伏してて誰かわかんないな。アイリス、そいつの顔を見せてくれ」
「わかりました」
私は気絶している魔物嫌いの人の体をすこし動かし、ギルドマスターにその顔を見せてあげた。
ギルドマスターは顔を鈍らせる。
「こいつぁ、最近ファイブズ村から越して来たやつだな」
「ファイブズ村……ですか?」
「ああ」
ファイブズ村ってなにが有名だったっけ。
うーん、別に特産品がない村もたくさんあるし思い出さなくてもいっか。
「ファイブズ村はな、つい…先日だったかな、半壊しちまったんだよ。……多分、それで避難して来たかなんかだと思うが」
「……え?」
「初耳……」
「ん、なんだアイリス達は知らなかったのか?」
私達はギルドマスターからざっくりとなにがあったかを聞いた。
……ファイブズ村。
私も名産が何かわかるないほど田舎なこの村にSランクの魔物がいきなり出現し、半壊されたという事件が近いうちにあったらしい。
幸い、村の冒険者などが抵抗し死者は出なかったらしいけど。
それで、まだ村に残ってる人もいるけど、大半の人は近辺の村かこの王都に逃げ込んでる。この人もその一人。
「ご説明ありがとうございます。しかし、そんなことがあったならば、もっと大騒ぎになっているのでは?」
「ま、その後にこの王都で大事件があったからな。アイリスちゃん」
「なるほど」
私が起こしてしまった騒ぎに潰されてしまった。
だからニュースがあまり噂されなかった…と。
こちらは私以外あまり被害は出てないのに、村が半壊するよりも騒がれるのって不思議。これが重要都市とそうでないところの格差ってやつなのかしら。
「だからこの人はゴブザレスを……」
「でもそれだけが理由ってちょっと考えにくいわ」
「たしかにな」
シェリーさんの言う通り、単に魔物に村を半壊されたから他人の仲魔を攻撃してしまったのは考えにくい。
この世界でSランクの魔物に襲われるのは半ば災害のようなものだという認識らしいし…。
「まあ、今は王国の騎士団長の一人が兵を連れて視察に行ってるらしいが……」
「ね、お姉ちゃん。お父さんがこの間来れなかったのって」
「うん、その事件のせいかもしれないね」
「しばらく会えなさそうだね…」
「ね…」
たしかに時期的にも、『パパは別のところで仕事してる』と言っていたお母さんの言動的にも、この事件で駆り出されたのはお父さんっぽい。
ロモンちゃん達が危ない目にあったってだけですっ飛んできそうだからね、あの人は。
「うぅ…うお……」
「む、目を覚ましたか」
私が気絶させてしまったファイブズ村から来た魔物嫌いな人は、軽く唸り声をあげながら目を開けた。
それから周囲を確認する。
「なんだってんだ……うっ…」
「なにも覚えてないのか?」
「俺がなんかしたってのか? ……なにか若いにいちゃん…そうだ、あんたと口論してたってのはなんとなくわかるが……」
アパタさんの顔を見ながらその人は首をかしげる。
「本当にそれしか覚えていないのか!? 俺らの仲魔を斬りつけたってのに」
「……俺が? あんたの仲魔を?」
「感情的になっていても仕方ないです。私が説明しますよ」
「アイリスさん……頼む」
私はどうしてこうなっているのかを事細かに説明してあげた。彼の顔は少しずつ青ざめてくる。
「いや、本当に口論したのとヤケ酒してたのは覚えてるんだ。……そうか、悪い、本当にすまないことをしちまった。……確かに俺は魔物、それも人の中に潜む魔物に恨みはあるが……」
「……傷も治せるくらいには浅かったし、この子も今は寝てるだけ。……謝ってくれたのならこれ以上攻めるつもりはないわ」
幼体化してるゴブザレスを背負っているシェリーさんは、彼に傷つけられた場所を見せるようにさながらそう言った。
心が広いね。ロモンちゃんだったらどうしてたかな。
「……わるい、本当に悪かった。しかも、俺が本当に恨んでいるのは人の中に潜む魔物つっても、半魔半人なんだ。そのゴブリンにはとばっちりうけさせちまったな」
「えっ……」
話を主に聞いているロマンちゃんとリンネちゃんを含めた7人と、野次馬達がみんなして私の方を向いた。
まって、そんな注目したらこの人の矛先が私に向くかもしれないじゃない!
【み、みなさん、私が半魔半人であることはシーですよ、シー! お願いしますね?】
全員がこくこくと頷いてくれる。
めんどくさいことになるのは嫌だからねっ……。
「ん? そこの嬢ちゃんがどうかしたのか?」
「え、あ、いえ、お腹の音がなっただけですよ…はは…恥ずかしながら…」
「……そうかい」
あっぶなー。
というより、この人が半魔半人を恨んでる理由ってまさか。
「あの、ファイブズ村御出身なんですよね? 村が襲撃されたとお聞きしましたが…」
「ああ、その通りだ銀髪の嬢ちゃん。……Sランクの魔物な。あの村唯一のAランクの冒険者である俺が歯も立たなかった! 村を守れなかったんだ。人を守れたのはせめてもの救いだ」
悔しそうにドン、と拳で床を叩く。
いや…村人の死亡者数を0にするのに貢献したことは十分すぎるほどすごいと思うけどね。
「しかもな、奴は旅人を装って俺たちの村に泊まっていた!」
「ということは、そのSランクの魔物は半魔半人…だから恨んでいるんですね? 人に紛れる魔物を」
「そういうことだ」
半魔半人になれるSランクの魔物とか嫌な予感しかしないんだけども。半魔半人でSランクの超越種であり、魔王軍幹部を一度討伐した経験のあるお父さんが調査してるだけ良いか。
「……あんた、もう一度あやまる。酒に酔っていたとはいえ、大変なことをした。申し訳ない。ギルマスも村の近辺に魔物がいなくなるまでこのギルドに置いてくれるってのに、いきなり迷惑かけちまって、本当に悪かった」
「彼女も言ってたが、反省してるなら許してやるさ。ま、俺がいうのもなんだがしばらくは禁酒した方がいいと思うぜ」
「そうする」
人に諭してるとはいえ、まさかギルドマスターから禁酒という言葉を聞く日が来るとは。明日は雨が降るかもしれない。
「アイリスちゃん、私達そろそろ…」
いいタイミングだと思ったのか、ロモンちゃんがそう切り出して来る。
「そうですね、話には直接関係ないですし。仕事の達成報告だけして帰りましょうか」
「あ、アイリスさん、話をまとめてくれてありがとう」
「……銀髪の嬢ちゃんにも迷惑かけたな。そこの、魔物使いの嬢ちゃん達にも」
「いえいえ、では」
私とロモンちゃんとリンネちゃんは野次馬の人混みを抜け、カウンターへと向かいお仕事の完遂方向をした。
それからお家へと帰るの。
……それでもロモンちゃんはちょっとムスッとしてる。
ま、魔物使い大好きなロモンちゃんだからこの一連の事件で機嫌が悪くなるのは仕方ないかな。
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ギルドマスターが帰ってきた。
やっぱりおつまみとお酒がたくさん入ってる紙袋を抱えている。
集まっている私達に気がついたみたいで、買ってきたものをこのギルドのカウンター裏においてくるとすぐに駆けつけてきてくれた。
「どうしたんだ、アイリスと嬢ちゃんたちにヘリオトロープの4人。あとそいつは……?」
「ギルドマスター、貴方が居ない間にちょっとイザコザがありまして。私も途中から来たので詳しいことはわかりませんが……この4人の話をお聞きください」
「わかった。で、なにがあったんだ?」
「ギルマス、さっき__________」
アパタさんはしっかりと事の顛末まで覚えて居たようで全てを伝えてくれた。
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「いや……その、お酒に酔ってたみたいだし、幸いゴブザレスの傷はそこまで深くないし別にいいわ。それよりどうやらこの人、魔物にすごい恨みを持ってたみたいなの、ギルマス」
「まあ飼い主がそう言うならええんだ。……顔を突っ伏してて誰かわかんないな。アイリス、そいつの顔を見せてくれ」
「わかりました」
私は気絶している魔物嫌いの人の体をすこし動かし、ギルドマスターにその顔を見せてあげた。
ギルドマスターは顔を鈍らせる。
「こいつぁ、最近ファイブズ村から越して来たやつだな」
「ファイブズ村……ですか?」
「ああ」
ファイブズ村ってなにが有名だったっけ。
うーん、別に特産品がない村もたくさんあるし思い出さなくてもいっか。
「ファイブズ村はな、つい…先日だったかな、半壊しちまったんだよ。……多分、それで避難して来たかなんかだと思うが」
「……え?」
「初耳……」
「ん、なんだアイリス達は知らなかったのか?」
私達はギルドマスターからざっくりとなにがあったかを聞いた。
……ファイブズ村。
私も名産が何かわかるないほど田舎なこの村にSランクの魔物がいきなり出現し、半壊されたという事件が近いうちにあったらしい。
幸い、村の冒険者などが抵抗し死者は出なかったらしいけど。
それで、まだ村に残ってる人もいるけど、大半の人は近辺の村かこの王都に逃げ込んでる。この人もその一人。
「ご説明ありがとうございます。しかし、そんなことがあったならば、もっと大騒ぎになっているのでは?」
「ま、その後にこの王都で大事件があったからな。アイリスちゃん」
「なるほど」
私が起こしてしまった騒ぎに潰されてしまった。
だからニュースがあまり噂されなかった…と。
こちらは私以外あまり被害は出てないのに、村が半壊するよりも騒がれるのって不思議。これが重要都市とそうでないところの格差ってやつなのかしら。
「だからこの人はゴブザレスを……」
「でもそれだけが理由ってちょっと考えにくいわ」
「たしかにな」
シェリーさんの言う通り、単に魔物に村を半壊されたから他人の仲魔を攻撃してしまったのは考えにくい。
この世界でSランクの魔物に襲われるのは半ば災害のようなものだという認識らしいし…。
「まあ、今は王国の騎士団長の一人が兵を連れて視察に行ってるらしいが……」
「ね、お姉ちゃん。お父さんがこの間来れなかったのって」
「うん、その事件のせいかもしれないね」
「しばらく会えなさそうだね…」
「ね…」
たしかに時期的にも、『パパは別のところで仕事してる』と言っていたお母さんの言動的にも、この事件で駆り出されたのはお父さんっぽい。
ロモンちゃん達が危ない目にあったってだけですっ飛んできそうだからね、あの人は。
「うぅ…うお……」
「む、目を覚ましたか」
私が気絶させてしまったファイブズ村から来た魔物嫌いな人は、軽く唸り声をあげながら目を開けた。
それから周囲を確認する。
「なんだってんだ……うっ…」
「なにも覚えてないのか?」
「俺がなんかしたってのか? ……なにか若いにいちゃん…そうだ、あんたと口論してたってのはなんとなくわかるが……」
アパタさんの顔を見ながらその人は首をかしげる。
「本当にそれしか覚えていないのか!? 俺らの仲魔を斬りつけたってのに」
「……俺が? あんたの仲魔を?」
「感情的になっていても仕方ないです。私が説明しますよ」
「アイリスさん……頼む」
私はどうしてこうなっているのかを事細かに説明してあげた。彼の顔は少しずつ青ざめてくる。
「いや、本当に口論したのとヤケ酒してたのは覚えてるんだ。……そうか、悪い、本当にすまないことをしちまった。……確かに俺は魔物、それも人の中に潜む魔物に恨みはあるが……」
「……傷も治せるくらいには浅かったし、この子も今は寝てるだけ。……謝ってくれたのならこれ以上攻めるつもりはないわ」
幼体化してるゴブザレスを背負っているシェリーさんは、彼に傷つけられた場所を見せるようにさながらそう言った。
心が広いね。ロモンちゃんだったらどうしてたかな。
「……わるい、本当に悪かった。しかも、俺が本当に恨んでいるのは人の中に潜む魔物つっても、半魔半人なんだ。そのゴブリンにはとばっちりうけさせちまったな」
「えっ……」
話を主に聞いているロマンちゃんとリンネちゃんを含めた7人と、野次馬達がみんなして私の方を向いた。
まって、そんな注目したらこの人の矛先が私に向くかもしれないじゃない!
【み、みなさん、私が半魔半人であることはシーですよ、シー! お願いしますね?】
全員がこくこくと頷いてくれる。
めんどくさいことになるのは嫌だからねっ……。
「ん? そこの嬢ちゃんがどうかしたのか?」
「え、あ、いえ、お腹の音がなっただけですよ…はは…恥ずかしながら…」
「……そうかい」
あっぶなー。
というより、この人が半魔半人を恨んでる理由ってまさか。
「あの、ファイブズ村御出身なんですよね? 村が襲撃されたとお聞きしましたが…」
「ああ、その通りだ銀髪の嬢ちゃん。……Sランクの魔物な。あの村唯一のAランクの冒険者である俺が歯も立たなかった! 村を守れなかったんだ。人を守れたのはせめてもの救いだ」
悔しそうにドン、と拳で床を叩く。
いや…村人の死亡者数を0にするのに貢献したことは十分すぎるほどすごいと思うけどね。
「しかもな、奴は旅人を装って俺たちの村に泊まっていた!」
「ということは、そのSランクの魔物は半魔半人…だから恨んでいるんですね? 人に紛れる魔物を」
「そういうことだ」
半魔半人になれるSランクの魔物とか嫌な予感しかしないんだけども。半魔半人でSランクの超越種であり、魔王軍幹部を一度討伐した経験のあるお父さんが調査してるだけ良いか。
「……あんた、もう一度あやまる。酒に酔っていたとはいえ、大変なことをした。申し訳ない。ギルマスも村の近辺に魔物がいなくなるまでこのギルドに置いてくれるってのに、いきなり迷惑かけちまって、本当に悪かった」
「彼女も言ってたが、反省してるなら許してやるさ。ま、俺がいうのもなんだがしばらくは禁酒した方がいいと思うぜ」
「そうする」
人に諭してるとはいえ、まさかギルドマスターから禁酒という言葉を聞く日が来るとは。明日は雨が降るかもしれない。
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いいタイミングだと思ったのか、ロモンちゃんがそう切り出して来る。
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「あ、アイリスさん、話をまとめてくれてありがとう」
「……銀髪の嬢ちゃんにも迷惑かけたな。そこの、魔物使いの嬢ちゃん達にも」
「いえいえ、では」
私とロモンちゃんとリンネちゃんは野次馬の人混みを抜け、カウンターへと向かいお仕事の完遂方向をした。
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