上 下
164 / 378

163話 特訓後の安らぎでございます!

しおりを挟む
「わ……ふ?」


 あのあと疲れ切ったケル君は眠ちゃって、置きたのは午後6時だった。仕事の内容だったゴブリン4体の討伐はしっかり終わらせて、ちゃんと報酬も貰ってる。


【ケル、おはよー】
【ゾォ…オイラ、ネタンダゾ?】
【うん、魔力切れでね】
【オシゴトハ?】
【ちゃんと済ませたから大丈夫】
【ソウナノカゾ!】


 ロモンちゃんに膝に抱えられて撫でられながらケル君は状況を把握した。クンクンと鼻を鳴らし始める。


【トッテモ オイシソーナ ニオイガ…】
【今ね、アイリスちゃんがお肉焼いてるのよ?】
【オニク! オニクダゾ!】


 ケル君は生肉よりミディアムに焼かれた肉の方が好きだとさっきロモンちゃんに聞かされたから、その通りに私は調理したの。
 このお肉はとても高いお肉。
 ゴブリン3体分くらいの値段をケル君の一食分につぎ込んだからね。あ、私たちは普通にいつものお肉なの。
 特に何のお祝いでもないし、今日はいい報酬のお仕事じゃなかったからね。


【はい、夕飯ですよ。ロモンちゃんとリンネちゃんも】
「「わーい!」」
【ゾー!】


 私達はテーブルに。ケル君はジーゼフおじいさん特製の犬魔物専用のお皿の前に着いたの。


「「いただきます!」」
【イタダクンダゾ!】
「はい、召し上がれ」


 ケル君はお皿に鼻を突っ込んだ。口を開けて含み、咀嚼し始めるの。


【ゾー! ウマインダゾ! ウマー!】

 
 千切れそうなくらい激しく尻尾を振りまくってる。喉に詰まりそうなくらいがっついてるわ。


「すごい食べっぷりだね!」
「ぼくたちも負けてられないね!」
「いえ…二人はセーブしてください、お願いします」
「「冗談だよー」」


 この二人が本気出したらたった二人でお店一件の1日分の仕込み全て食べ尽くしかねないからね。セーブとかできるだけ普通の大食いよりはマシだけど。
 

【ウマカッタゾー!】
「お、ケル君はやーい」
「ねー」
「……お二人ももうすでに終わってるじゃないですか」
「「えへへー、まあねー」」


 ケル君の食べるスピードは普通だったと思うけど、美味しすぎると早いのは人と同じで、結局私が一番遅かった。ケル君がきてもビリなのは変わらないのね。
 でも私も食べるスピードが上がってきてる気がする。


「よぅし! じゃあお風呂はいろーね!」
「ケルも一緒に入れるよ!」
「そうですか、ケル君もですか」


 女子三人のお風呂に雄が紛れ込む……!
 まあ、ケル君だから許されるのよ、うんうん。


【ナンゾ?】
【ケル、お風呂はいろ】
【ぼくたち三人と!】
【イイゾ、ユルリト ハイルンダゾ】


 というわけで私達二人と二匹……じゃなくて、三人と一匹はお風呂に入るの。
 一日1回の目の保養。
 私自身の身にあんなことがあったから、この二人をエロい目で見るのをやめるだなんて、そんなことはないの。
 なぜなら女同士だから! そして仲が良いから!
 
 でも気をつけて見ないとロモンちゃんがその視線に気がついちゃうからそこは注意しないといけない。
 
 三人でいつもは背中を洗いあってるけど、その最後尾に今回は…いえ、これからはケル君が追加される。
 その役割はロマンちゃんがやるわ。私は真ん中だから二人の背中を触り放題なの。ふひひひ。
 身体を洗ってる最中に胸を鷲掴む…ことは今日もできずに身体をしっかりと洗ってから湯船に浸かる。
 いつかあの柔らかそうな発達途中の胸を堂々と掴めるようになろう。うん。


【アアー、キーモチイーゾー】
【よかったね!】
【犬の魔物ってお基本お風呂嫌い多いけど、昔から入れてあげてたもんね】


 溺れないようにロモンちゃんに抱っこされながらケル君は目を細めてる。
 唐突にロモンちゃんの胸の間に頭を擦り始めた。
 犬だから許される行為よ。


【……ゾ?】
【どうしたの? ケル】
【……ロモン、ダッコ、リンネ ト カワッテ ホシインダゾ】
【いいけど…? はいお姉ちゃん】
【はいだっこ!】


 指名されたリンネちゃんは嬉しそうにケル君を受け取ると軽く抱きついた。いいなー。前までああいうポジション私だったからなー。ほんの少しだけ嫉妬しちゃう。


【ゾー……ゾ!】
【どうしたの?】
【……ツギハ アイリス ダッコ シテホシインダゾ!】
【ええ、いいですよ】


 ロモンちゃんにしたような一連の動作をリンネちゃんに一通り繰り返したケル君は私の元へ。 
 ああ、やっぱり仔犬ってかわいいわぁ…癒される。


【ゾッ…ゾッゾッゾ】
【あう…ちょっとケル君?】


 今度は私にもお腹から胸にかけて頭をスリスリしてくる。これは何かの愛情表現なのかしら? 
 でもさっきから毛が擦れてこそばゆくてこそばゆくて。


【ゾ! カクシンシタゾ! ノア ガ イチバン オオキインダゾ!】
【え? ……あーっ!?】


 私達はその一言でケル君が何をしようとしていたか確信。なんということなの!? ケル君がまさか私達の感触とサイズを自分の後頭部で測ってたなんて……強かな子っ。


【ゾー! オテテ ソンナニ プニプニ シタラ ダメナンダゾ!】
【ふーんだ、仕返しだもんねー】
【ねー】
【私もやります】
【ナニガ イケナカッタノカゾ!? オシエテホシインダゾ! トリアエズ、プニプニヤメルンダゾー!】

 
◆◆◆


【ゾー……。デリケートゾーンッテヤツダッタノカゾ。ソレハワルイコトシタンダゾ。ゴメンナサイゾ】
【知らなかったなら仕方ないです。今後気をつけてください】


 デリケートゾーンってほどでもないけど、まあそう言っておけばことの重大さがわかるわよね。
 

【ブラッシングするよー】
【ゾ! ツヤツヤニ ナルンダゾ!】


 毛を良く拭かれたケル君はロモンちゃんからブラッシングを受けるの。毛のある魔物の特権ってやつね、羨ましいわ。……かくいう私も磨かれたりしてたんだけど。


「ロモン、アイリスちゃんも構わなきゃダメだぞー」
「いいの、あとでギュッてするから」
「じゃあそれまでぼくがギュッてしてる」
「ふふふ、ありがとうございます」


 ふひひ、幸せじゃい。
 お風呂はいってるときは大きい私だったけれど、今は一番年下な私になって、リンネちゃんのお膝に乗せられ、さらに撫でててもらってるの。


「はい、ブラッシングおわり!」
【……オワッタノカゾ? アリガトナンダゾ!】
【どういたしまして】


 おお、ケル君の毛並みがツヤツヤしてて綺麗になってる。さすがは専門家のロモンちゃん。こういうこととても上手。


「さて、アイリスちゃんだね! おいで!」
「はーい! いきますよー!」


 私はロモンちゃんに抱きついた。お風呂から上がったばかりだからいい匂いがする。そして柔かい。


【ゾ? モウネテ イイノカゾ? ネルマエニ キ ノレンシュウ スルンダゾ!】


 あら、なんだかケル君が張り切ってる。無理しないように言わなきゃね。


【ケル君、何も寝る前まで練習しなくて良いのですよ?】
【キ ノレンシュウ ハ オイラ マダ タクサン マジックパワー ツカウンダゾ! ネタラ マジックパワー ハ カイフク スルンダゾ! ダカラ レンシュウ スルンダゾ!】
【おお、いいですね! その心意気です!】


 ふむふむ、かなり熱心じゃないか。
 そして合理的だ。もしかしたら普通に人間の言葉を理解できる日も近いかもしれない。
 ……とりあえず今日は寝ましょうね。


#####

次の投稿は8/12です!
しおりを挟む
感想 142

あなたにおすすめの小説

家族と移住した先で隠しキャラ拾いました

狭山ひびき@バカふり160万部突破
恋愛
「はい、ちゅーもーっく! 本日わたしは、とうとう王太子殿下から婚約破棄をされました! これがその証拠です!」  ヴィルヘルミーネ・フェルゼンシュタインは、そう言って家族に王太子から届いた手紙を見せた。  「「「やっぱりかー」」」  すぐさま合いの手を入れる家族は、前世から家族である。  日本で死んで、この世界――前世でヴィルヘルミーネがはまっていた乙女ゲームの世界に転生したのだ。  しかも、ヴィルヘルミーネは悪役令嬢、そして家族は当然悪役令嬢の家族として。  ゆえに、王太子から婚約破棄を突きつけられることもわかっていた。  前世の記憶を取り戻した一年前から準備に準備を重ね、婚約破棄後の身の振り方を決めていたヴィルヘルミーネたちは慌てず、こう宣言した。 「船に乗ってシュティリエ国へ逃亡するぞー!」「「「おー!」」」  前世も今も、実に能天気な家族たちは、こうして断罪される前にそそくさと海を挟んだ隣国シュティリエ国へ逃亡したのである。  そして、シュティリエ国へ逃亡し、新しい生活をはじめた矢先、ヴィルヘルミーネは庭先で真っ黒い兎を見つけて保護をする。  まさかこの兎が、乙女ゲームのラスボスであるとは気づかづに――

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

追放された引きこもり聖女は女神様の加護で快適な旅を満喫中

四馬㋟
ファンタジー
幸福をもたらす聖女として民に崇められ、何不自由のない暮らしを送るアネーシャ。19歳になった年、本物の聖女が現れたという理由で神殿を追い出されてしまう。しかし月の女神の姿を見、声を聞くことができるアネーシャは、正真正銘本物の聖女で――孤児院育ちゆえに頼るあてもなく、途方に暮れるアネーシャに、女神は告げる。『大丈夫大丈夫、あたしがついてるから』「……軽っ」かくして、女二人のぶらり旅……もとい巡礼の旅が始まる。

異世界に転生したので幸せに暮らします、多分

かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。 前世の分も幸せに暮らします! 平成30年3月26日完結しました。 番外編、書くかもです。 5月9日、番外編追加しました。 小説家になろう様でも公開してます。 エブリスタ様でも公開してます。

【完結】天下無敵の公爵令嬢は、おせっかいが大好きです

ノデミチ
ファンタジー
ある女医が、天寿を全うした。 女神に頼まれ、知識のみ持って転生。公爵令嬢として生を受ける。父は王国元帥、母は元宮廷魔術師。 前世の知識と父譲りの剣技体力、母譲りの魔法魔力。権力もあって、好き勝手生きられるのに、おせっかいが大好き。幼馴染の二人を巻き込んで、突っ走る! そんな変わった公爵令嬢の物語。 アルファポリスOnly 2019/4/21 完結しました。 沢山のお気に入り、本当に感謝します。 7月より連載中に戻し、拾異伝スタートします。 2021年9月。 ファンタジー小説大賞投票御礼として外伝スタート。主要キャラから見たリスティア達を描いてます。 10月、再び完結に戻します。 御声援御愛読ありがとうございました。

絶対婚約いたしません。させられました。案の定、婚約破棄されました

toyjoy11
ファンタジー
婚約破棄ものではあるのだけど、どちらかと言うと反乱もの。 残酷シーンが多く含まれます。 誰も高位貴族が婚約者になりたがらない第一王子と婚約者になったミルフィーユ・レモナンド侯爵令嬢。 両親に 「絶対アレと婚約しません。もしも、させるんでしたら、私は、クーデターを起こしてやります。」 と宣言した彼女は有言実行をするのだった。 一応、転生者ではあるものの元10歳児。チートはありません。 4/5 21時完結予定。

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。 退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた! 私を陥れようとする兄から逃れ、 不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。 逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋? 異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。 この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました

下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。 ご都合主義のSS。 お父様、キャラチェンジが激しくないですか。 小説家になろう様でも投稿しています。 突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

処理中です...