上 下
142 / 378

141話 デ、デートなんかじゃないですよ!?

しおりを挟む
 私はピザを専用のカッターで半分に分けてから、1枚分ちょうどいい感じに切り取ってお皿に乗せた。
 パスタより先にピザを食べるの。


「ところでアイリスちゃんの仲間ってどんな人達なんだい?」
「ふあい? …あ」


 頬張ろうとしたそんな時に到達に質問されるもんだから、ピザの具がお皿の上に落ちてしまった。


「ああ、ごめん」
「いえ、構いませんよ。それで…なんでしたっけ?」
「いやね、アイリスちゃんの仲間ってどんな子たちなのかなーって訊いてみたくてさ」


 自分の過去にナンパした相手が私の大切な仲間だってこと気がついてないのね。
 まあ二人ともナンパされた時、ほぼスルー同然な対応されたから覚えてなくても仕方ないかもしれないけれど。


「そうですね…。魔物使いと剣士で…」
「へぇ、女の子だっけ。可愛いのかな?」
「私なんかよりも相当可愛いです」
「いやぁ、あってみたいな…。でもアイリスちゃんも相当可愛いと思うけれど」


 可愛い女の子には目がないこの人に合わせたら、どうせまたナンパするわ。そうね、あくまでこの人は私の知人であり、二人には合わせないほうがよさそう。


「あわせられません。あなたのことですから、どうせまたナンパするんでしょう」
「そんな見境なくしないってば。ともかくあわせたくないってことなら仕方ないな」


 簡単に引き下がってくれて助かった。
 そのことについてグイグイ来てたら、私からの好感度はまた下がってたわね。


「ところで食事が終わった後、暇っ?」


 私の目をジッとみながら、何かに期待するようにそうきいてきた。さっきまでとは全然テンションか違う。
 ちょっと彼の目が黒目が全体的に黒っぽくなってるような気がする…のは気のせいだとして…そんなにこの時間が楽しいのかしらね。


「まあ、暇ですけど…」
「よし、ならこの1週間近くこの街にいて良い場所をたくさん見つけたんだ。行かないかい?」


 む、これは正式なデートのお誘いかしら。
 いやいや、デ…デートなんかじゃないしっ。ただ友人とどこか出かけるだけでしょう。 
 どうしよう、相手は返事を待っている。
 グラブアさんはそう、どこに行くつもりなのかしらね。


「ど、どこに行くんです?」
「ん? 例えばあの城の外壁を眺めるとかね」
「外壁ですか」
「そうそう。俺みたいに普段王都に住まない人間は城を眺めるだけでも十分時間を潰せるんだよ」


 お城の近くなら、もし彼が危ない人で本性を現したとしても大丈夫なはず。もうそんなことはないと思うけどね。


「わかりました。1、2時間程度なら付き合いましょう」
「よかった! 城を眺めるのに良い場所を見つけたんだ。この王都に親しい人はアイリスちゃんしか居ないから、誰かと一緒に行こうと思っても君しか誘う相手が居ないんだけどね…。でも君でよかった」
「そっ…そうですか…そうですね」


 君でよかったとはどういうことだろう。
 この人の趣味からして、私は可愛いらしいから、可愛い子と居られて嬉しいってことかな。
 …こ、ここ何週間かそう言われることが多いからって私は有頂天にならなきゃいいんだけど…。
 とりあえず一緒に後でどこか行く約束をしてしまった。
 デートではない、断じて違うの。


「そ、そういえば王都にはどれくらい滞在するんですか?」
「そうだね、そろそろ水も恋しいしあと2日くらいで帰るよ。帰ったら海を泳ぎまくるつもりさ」


 片目ウインクしながら答えてくれる。やっぱりこの人は海好きなのね。


「お仕事の方は今お休みに?」
「そうだね。家宝を買戻したとしてもまだ余るくらい貯金はあるから、しばらくはのんべんだらりとやってくつもりだよ」


 働かないのか、しばらく。
 私的にはお金があってもちゃんと働く男の人がいいなぁ…。心から惚れたら一緒にいたいと思う時間とかの方がふえるのかな? わかんないや。
 ま、一つ言えるのはロモンちゃんとリンネちゃんも、働いてくれる人の方がカッコいいっと思うってことね。


「そういうアイリスちゃんはどうなんだい? アーティファクトを即金で買えるだけのお金があるんだ。なにか事業を起こしてみたり娯楽に使ったりはしないのかな? それとも何かあった時のために残しておくとか?」


 ああ、残りのお金の使い道かぁ…考えたこともなかったなぁ…。でもとりあえずは決められるかしら。


「そうですね後者の方ですかね。もし良いアーティファクトなどが出回っていたら買おうと思いますよ。そんな感じです」
「なるほどねぇ。あ、食べ終わっちゃった」
「え」


 おしゃべりしてる間に食べ終わったの!?
 私まだ全然食べてないのに…。私ってば、ロモンちゃんとリンネちゃんが食べるの早いってばっかり思ってたけど、私自身も食べるの遅かったのかしら?


「あははは、僕は食事しながら話しするの得意だから仕方ないよ。アイリスちゃんはゆっくり食べて」
「す、すいません」


 ちょっとだけ急いで食べる。
 相変わらずここのレストランのイタリアン料理は美味しい。まあこの世界ではイタリアンなんて言わないらしいけど。そもそもイタリアが無いわけだし。


「ご、ごちそうさまでしたっ」
「せっかくのさいご…食事を慌てて食べなくてもよかったのに」
「さいご?」
「あ、ああ。ほら今日でまた会えなくなるからさいごの食事でしょ」


 ああ、確かにあと2日でこの街を去るんだっけ。
 今日以降誘うつもりが無いってことかしらね。だとしたら確かに最後かも。


「すいません…」
「いや、いいよ。せっかくアイリスちゃんと食事できているのに先に食べてしまった俺も悪いさ」


 グラブアさんはにっこり微笑んだ。
 私とのせっかくの食事ねぇ。


「そろそろ店を出ようか」
「そうですね」


 私達は席を立ち上がり、カウンターへ行く。
 出会い頭に言っていた通りに全額奢ってくれたの。申し訳ない気もあるけれど、男の人としては女の人に奢りたいって気持ちはあると思うから、下手なことは言わずに御礼だけいっておきましょう。


「すいません、ありがとうございます」
「いやいや、いいんだよ。それじゃあそろそろお城の近くに行こうか」


 私はグラブアさんの後ろをついて行く。
 細身なのにがっしりとした身体と赤い髪がなんだか強者の雰囲気を醸し出しているわ。今までこの人をそこまで強そうだとか思ったことなかったのに。
 これは私の気持ちの変化の問題なの?
 ……よくわからない。


「こっちが近いんだよ」


 そういってグラブアさんは少し広め脇道…つまり裏路地に入った。裏路地は鍛冶屋さんに寄った時以外行ったことがない。
 …ここで襲われたりしたら、非力な女の子だったらものすごいピンチでしょうね。
 でもこの王都はおかげさまで治安が良いし、仮に襲われたとても私はBランクぐらいの冒険者なら返り討ちできるし。


「ん? どうしたんだい立ち止まって」
「え、あ、少し考え事を。今行きます」


 私はグラブアさんの後ろをついたまま裏路地へと入って行く。まさかこの人が襲うとかなんて想像をしてしまうけれど、今まで話してみてそれはないだろうと。

 そう、考えていたの。


「ワールドバブル」


 しばらくいつもと同じように雑談しながら裏路地を歩いていた。そんな中唐突に彼は魔法のようなものを唱える。


「え? 今の魔法は…」
「今の魔法は俺のオリジナルの魔法だよ。泡みたいな壁を作れるんだ。この中は探知できないし外に音も漏れない」
「え?」


 目つきが怖い。
 お化けのような怖さじゃない、大きな魔物と戦う時の怖さじゃない。今、自分の身が危険に晒されている恐怖、これだ。
 ビリ…と、布を裂くような音が聞こえた。
 気がつかなかった。いつのまにか私は服を破られ、下着を外にさらけ出している。


「さ、楽しもうよ」





#####

次の投稿は5/12です!

アイリスちゃんのノロケ回だと思った?
残念! ボスステージでした!
しおりを挟む
感想 142

あなたにおすすめの小説

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。 退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた! 私を陥れようとする兄から逃れ、 不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。 逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋? 異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。 この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

家族と移住した先で隠しキャラ拾いました

狭山ひびき@バカふり160万部突破
恋愛
「はい、ちゅーもーっく! 本日わたしは、とうとう王太子殿下から婚約破棄をされました! これがその証拠です!」  ヴィルヘルミーネ・フェルゼンシュタインは、そう言って家族に王太子から届いた手紙を見せた。  「「「やっぱりかー」」」  すぐさま合いの手を入れる家族は、前世から家族である。  日本で死んで、この世界――前世でヴィルヘルミーネがはまっていた乙女ゲームの世界に転生したのだ。  しかも、ヴィルヘルミーネは悪役令嬢、そして家族は当然悪役令嬢の家族として。  ゆえに、王太子から婚約破棄を突きつけられることもわかっていた。  前世の記憶を取り戻した一年前から準備に準備を重ね、婚約破棄後の身の振り方を決めていたヴィルヘルミーネたちは慌てず、こう宣言した。 「船に乗ってシュティリエ国へ逃亡するぞー!」「「「おー!」」」  前世も今も、実に能天気な家族たちは、こうして断罪される前にそそくさと海を挟んだ隣国シュティリエ国へ逃亡したのである。  そして、シュティリエ国へ逃亡し、新しい生活をはじめた矢先、ヴィルヘルミーネは庭先で真っ黒い兎を見つけて保護をする。  まさかこの兎が、乙女ゲームのラスボスであるとは気づかづに――

追放された引きこもり聖女は女神様の加護で快適な旅を満喫中

四馬㋟
ファンタジー
幸福をもたらす聖女として民に崇められ、何不自由のない暮らしを送るアネーシャ。19歳になった年、本物の聖女が現れたという理由で神殿を追い出されてしまう。しかし月の女神の姿を見、声を聞くことができるアネーシャは、正真正銘本物の聖女で――孤児院育ちゆえに頼るあてもなく、途方に暮れるアネーシャに、女神は告げる。『大丈夫大丈夫、あたしがついてるから』「……軽っ」かくして、女二人のぶらり旅……もとい巡礼の旅が始まる。

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

婚約破棄され逃げ出した転生令嬢は、最強の安住の地を夢見る

拓海のり
ファンタジー
 階段から落ちて死んだ私は、神様に【救急箱】を貰って異世界に転生したけれど、前世の記憶を思い出したのが婚約破棄の現場で、私が断罪される方だった。  頼みのギフト【救急箱】から出て来るのは、使うのを躊躇うような怖い物が沢山。出会う人々はみんな訳ありで兵士に追われているし、こんな世界で私は生きて行けるのだろうか。  破滅型の転生令嬢、腹黒陰謀型の年下少年、腕の立つ元冒険者の護衛騎士、ほんわり癒し系聖女、魔獣使いの半魔、暗部一族の騎士。転生令嬢と訳ありな皆さん。  ゆるゆる異世界ファンタジー、ご都合主義満載です。  タイトル色々いじっています。他サイトにも投稿しています。 完結しました。ありがとうございました。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。

克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。

身に覚えがないのに断罪されるつもりはありません

おこめ
恋愛
シャーロット・ノックスは卒業記念パーティーで婚約者のエリオットに婚約破棄を言い渡される。 ゲームの世界に転生した悪役令嬢が婚約破棄後の断罪を回避するお話です。 さらっとハッピーエンド。 ぬるい設定なので生温かい目でお願いします。

処理中です...