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131話 久しぶりの故郷でございます!

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「「ついたー!」」


 二人は馬車から飛ぶように降りる。
 懐かしいこの雰囲気を深呼吸して全身で感じてるみたいだ。ちなみに私はさっきまで二人の温もりと柔らかさを全身で感じていたの。ふへへ。


「じゃあここら辺に魔法陣貼るね!」


 リンネちゃんはカバンの中から転移二式を一つ取り出し、この馬車停留所の入り口付近に設置した。
 大抵の村は村の中に転移魔法陣が置けないようにしてるからね、無論、この村もそう。
 防犯のためだね。


「よし、じゃあ村に入ろっか!」
「おー!」
「オー!」


 私たち3人は急いで村の入り口まで2分ほど歩いた。
 ちゃんと門番の人が見張りしている。
 …どうやら門番の人は私達に気がついたみたいだ。


「んおおお!!? リンネちゃんとロモンちゃん!?」
「ただいまです!」
「時間ができたんで帰ってきちゃいました!」


 久しぶりにあった昔からの知り合いに、二人は少し嬉しそうに話しかける。


「そうなのか…おかえりなさい! いやぁ聞いてるよ! 二人とも大会で優勝しちまったんだもんなぁ…さすがあの方の孫であり、あの二人の娘だな」
「えへへへへ」


 歯がゆそうに二人は同時に照れた。
 

「もういっぱしの一流冒険者だよなぁ。見送ってからまだ数ヶ月しか経ってないのに、もう数年経った気分だぜ」
「そんなことないですよー」
「まだまだですよー」


 まあ確かに普通の人が数年でたどりつけるかどうかの境地に、数ヶ月で辿り着いてしまったことは否めない。事実だし。


「…そういや、アイリスちゃんはどこだい? 進化したっていうから見てみたいんだけど」


 キョロキョロと門番の人は首を動かす。
 そして私と目があった。


「彼女は二人の仲間?」
「ううん、仲魔」
「ん?」
「この子がアイリスちゃんなのです!」


 門番の人はしばらく私を見つめた後、視線を二人の元に戻す。そしてもう一度私の顔を見る。


「ん?」
「もぉ。アイリスちゃん、ゴーレムに戻ってあげて!」
「承知しました」


 私は彼の目の前でゴーレムに戻るの。
 

「ねっ!」
「う…お…おわああああ!?」


 門番の人は腰を抜かした。


◆◆◆


 そのあとぽかんとしながらも門番の人は私達を村に入れてくれたの。あ、腰痛するかもいけないから私が回復魔法かけてかけて上げておいたよ。
 
 それで村の中を村長であるおじいちゃんの家に向かって歩くんだけど、当然のことながら村は知り合いしかいないわけだから、すぐ誰かに発見されるの。

 今の時間帯はみんなバリバリ働いてる時間だからそんなに人数合わなかったけれど、8人くらいは私のことに関して腰を抜かさせることができたわ。

 みーんなして私がアイリスだって気がつかないの最初。
 冒険者界隈くらいにしか半魔半人の話は広まってないから仕方のないことかもしれないけどね。

 私にリボンをくれた服屋さんとか、道具屋さん(残念ながら出掛けてるようでロモンちゃんに告白してきた彼はいなかった)とか、ゴブリンに食い荒らされてたあの梨農家のおじさんとか。 
 驚かせて回るのは楽しい。
 ……っていうかお母さんとお父さんの遺伝子を受け継いでおり、ドッキリ好きの二人が一番その様子を楽しんでるみたいだったけれど。


「「ついたー!」」


 そんなこんなでとりあえずおじいちゃんの家に辿り着いたの。出ていってから変わったところは特にないみたい。
 

「じゃあおじいちゃん呼ぼうね!」
「家の中に居るといいんだけど」


 二人は戸をノックした。
 ここで過ごして、ここで暮らして、ここで成長してきた二人にとって実家の戸をノックするなんて珍しいことだよね。
 しばらくして戸は開かれる。
 中から出てくるのは老いを全く見せない、あのおじいちゃん。


「お…おお、おおお! 帰ってきたのか!」


 二人を見るなり目を見開き、嬉しそうににっこりするおじいちゃん。唐突の訪問なのにしっかりと受け入れてくれてる。


「えへへ、ただいま、おじいちゃん!」
「お手紙もらってね、ちょうど余裕があったし帰ってきたの!
「そうかそうか、唐突で少しびっくりしたが手紙を見て帰ってきたか」


 おじいちゃんは本当に嬉しそう。
 孫たちがやってきて嬉しくないおじいちゃんなんて居ないのかもしれない。


「「おじいちゃんっ!」」
「おおお、お」


 二人はおじいちゃんに抱きついた。
 その衝撃で体制を崩すも転びはしなかったみたいだね。
 おじいちゃんは二人を抱きしめるように腰に手を回す。


「よく、無事で帰ってきてくれたの。……おじいちゃんはそれが一番嬉しいんじゃよ」
「「えへへへへ」」


 抱きついたままで数分が経つの。
 お父さんとお母さんに再開した時も抱きついてたし、この姉妹は抱きつくのが好きなのかもしれない。
 私には毎日抱きついてくれるしね。


「……それで、アイリスちゃん」
「は、はい!」


 さっきまでの村人たちのような驚きはなく、私を一瞬で認知したおじいちゃん。流石だね。


「いやぁ本当に人間になれて良かったのぉ。会ったその時からいっておったものな。ワシも昔、何度か魔物を人にしてやったことはあるんじゃが…ほとんどみーんな手元を離れていったわ」


 ……んえええ!? 
 魔物を人にしたことあるの!? 
 さ、さすがおじいさん…只者じゃない。


「対してアイリスちゃんはこの子らのそばにいてやっている」
「うん、アイリスちゃんは誰かのお嫁さんになるまで私たちの所に居てくれるんだって!」
「あっ…ちょっ…」


 ロモンちゃんったら勝手なこと言う。
 まあでも本当のことだし否定はしない。
 ……私が結婚したいって思えるくらいの人ってどんな人だろう。


「ほっ…と。二人とも大きくなったな」


 おじいさんは抱きつかせるのをやめると、二人の頭に手を置いてそう言った。
 ロモンちゃんとリンネちゃんはそれぞれ互いをみつめ、まず顔を見て、胸を見て、顔を見て、そしておじいちゃんの方を向く。


「うん!」
「大きくなったよ!」


 いや…確かに結構たくさん食べさせてるから胸が半カップくらい大きくなったけど、おじいさんが言ってるのは身長のことでしょう。
 もしかしてこの二人、私に感化されてる?
 ……いえ、私がむっつり助平(同性限定)なのバレてないはずだし……。


「ははは、そうかそうか。とにかく、お帰りなさい。とりあえず中に入ろうか」
「うんっ!」


 私達は家の中に入る。
 うん、まだ数ヶ月前だし、過ごして居た期間もほんの2ヶ月くらいだけどなんだか懐かしい。
 あのテーブルで二人の誕生日の時にもといた世界のお料理ご馳走したっけ。
 二人のどっちが一緒にお風呂に入るか、私を求めあうなんてこともあったなぁ。
 あの頃はあの頃でいい身体してましたぜ、ぐへへ。


「実は部屋はそのままだから、今日は泊まっていけるがどうする?」
「どうしよっかな。転移魔法陣、じつはさっきこの村の入り口に置いたから行ったり来たり簡単にできるんだよね」
「ダンジョンなどに転移魔法陣使わんでいいのか?」
「転移二式ってやつ買ったの! 4つまで魔法陣置けるんだよ!」
 

 ほぉ、とおじいさんは感心したように口をすぼめた。


「そんな高級なものを買えるようになったんじゃな」
「うん!」
「頑張ってるからね!」


 二人はドヤ顔でおじいさんにそう返したの。


######

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